「ご理解いただけましたか?犯人は紛れもなく教会に属する者です。」
「ふーむ、分かりました。我々一同、捜査に協力しましょう。しかし当ても無しに探しては無実の者に罪を擦り付ける事になりかねません。何か情報や心当たりはありませんか?」
ディーゴの意見に納得したアンジェロは手がかりになりそうな情報提供を求める。
ここにきて遂に俺たちの出番が回って来た。
ディーゴが横に退き、俺が一歩前に出る。
正直、アンジェロが教皇なんて思ってもいなかったから未だに混乱と緊張でいっぱいだが、それでもやるしかない。
「具体的に言うと狙われたのはこの者たちです。」
「なるほど、リョータさんがディーゴ商会長に連れられていたのは、それが理由だったのですね。このような事をしでかす不心得者が居ようとは……大変申し訳ございませんでした。」
「アンジェロさん!?じゃなくてアンジェロ様!そのように頭を下げないで下さい!」
「教会の者が悪行を働いたと言うのに、どうして長が責を負わずにいられましょうか。それと以前の様に呼んで下され。ただ一介の聖職者として触れて頂けると言うのは、この身の上だと中々に嬉しい者なのですよ。」
覚悟を決めていた俺にアンジェロは頭を下げ、その覚悟も動揺に変わる。
しかも教皇相手にこれまで通りの態度で接してほしいと言うのだ。
とは言え、立場的にも、個人の関係的にも、その願いを無下には出来ない。
落ち着く為に一度、息を吸ってゆっくりと吐き、努めて心を落ち着け、話を始める。
「分かりました、アンジェロさん。えっと俺たちはアニエスに会うために最近ルーメンに来てまして……」
「確か、王都でもそのような話をされていましたな。枢機卿の幾人かが何やら携わっているらしいですが……レナード、ウィム、ワシに知らせずに動いている貴方たちならば知っていますよね?」
「それは、その……」
「教皇猊下のお手を煩わせない為に、詳細が詰まり次第お伝えしようと考えておりました。」
「そう、そうです!教皇猊下の御心を乱さぬためにも些事は我々が」
「聖者の選出が些事、ですか。」
「あぁ、いえ、些事と言うのは言葉の綾でして……」
「教皇猊下、今はリョータ殿の証言を聞く事が優先されるでしょう。このような事件を引き起こした不心得者を野放しにしていては聖者の選出の話どころではありますまい。」
「……良いでしょう。リョータ殿、話の腰を折ってしまいましたね。続きを話して頂いても?」
途中でアンジェロがレナードたちに話を振り、脱線するが、流れが悪くなってきたレナードが話を戻す。
重要事項を最上位の立場にある教皇に話を通さずに進めるのは問題があると思うのだが、アンジェロは追及を止めた。
もしかすると俺が思っているよりもアンジェロは立場が強力では無いのだろうか?
ともあれ今はその疑問を上げる場ではないので俺は話を続ける。
「ルーメンに来てからアンジェロさんに大聖堂を案内してもらった後、翌日もう一度大聖堂に来てアニエスに会わせてもらおうとしたら牢屋に入れられました。その時はレナードさんに助けてもらって、それで、その……どうにかしてアニエスと会って話をして、その日の晩に襲われました。」
「なるほど、お話し頂きありがとうございます。捜査の参考にさせて頂きましょう。」
俺の話を聞いたアンジェロは頷きながら謝辞を述べる。
実際の所は忍び込んだ訳だが、その『どうにかして』の部分を追及されずに助かった。
レオノーラたちと話していた時はキールソンが怪しいと言う意見も出たが、それをアンジェロに話して、もしも真犯人が別にいた場合に隠れ蓑にされる可能性もある。
一旦個人的な予想の域を出ない話はする必要が無いと考え、彼の事は言わずにいた。