「ちなみに調味料は何があるんですか?」
「塩と砂糖。」
「酢とバターもあるぜ。」
ワーズギーとジャックさんは三種類の調味料を挙げる。
醤油や味噌が無いのは何となく察していたが、それでも想像以上に種類が少ない。
特にジャガイモを使った料理に慣れている訳では無いが、それでもポテトサラダくらいなら作れるだろうと思っていた。
しかし慣れ親しんだ調味料の名前が挙がらず、若干不安になる。
念のため、こちらから聞いてみよう。
「マヨネーズとか、胡椒とかはありますか?」
「マヨネーズ?ってのが何かは分からねぇが、胡椒は今は無いぜ。」
「そうですか……。」
そうなるとバターと酢でどうにか味を調えてポテトサラダっぽく仕上げるか、いっその事じゃがバターを提案するか、どうしよう………。
そもそもジャガイモを蒸かして食べていたのなら、バターを付けて食べていた可能性もある訳だし、その点について少し聞いてみるとしよう。
「そう言えば、ジャガイモを蒸かしてから何か調味料を付けて食べたりはしなかったんですか?」
「あぁ、最初はそのまま食ってたが、飽きてきて塩をかけて食うようになったぜ。」
なるほど、塩しか使ったことが無いならじゃがバターを提案するのは悪い選択肢ではなさそうだ。
「オレはそれでもあんまり食う気にならなかったけどな。」
「ワーズギー、食い物を無駄にするんじゃねぇぞ。」
「わぁーってるって!だから文句は言うがちゃんと食ってただろ?それに捨てるのは芽が出て食えなくなった奴だけ!」
「そうだ。それで良い。食い物は粗末にしちゃいけねぇぜ。そんでもって食える時にしっかり食っとくべきだ。」
ワーズギーがぼやくとジャックさんは真剣な表情で持論を語る。
日本人的には勿体無い精神と言う物に馴染みがあるが、ジャックさんも似たような事を言っていて驚きだ。
しかし確かにジャックさんの言い分は理解も納得も出来る。
だからこそワーズギーも文句を言いつつ従っているようだ。
「まったく、ジャガイモを異端だ何だと言っている連中にもジャックの姿勢を見習わせたいものだね。」
「フリードはフリードで食べたがらない奴に無理矢理食べさせようとするのは逆効果だと思うけどな。」
「最初は普通に勧めていたさ。でも彼らが聞く耳を持たないからね。」
「だからと言って強硬手段はダメだろ。」
フリードはやれやれと首を振り、呆れた様子を見せるが、そう言っている本人も自分の姿勢を省みた方が良いと思うぞ。
そんな話をしていると神妙な表情でジャックさんが声を掛けて来る。
「なぁ、リョータ。」
「はい。」
「フリードの事は呼び捨てで呼ぶのに、オレにはまだ他人行儀なのかよ。シンディには昔、もっと気楽に接してくれって言ったが、お前にも言っておくぜ。そんな畏まった話し方なんてしなくて良いんだよ。」
「でも、ジャックさんはこの組織のリーダーじゃないですか。」
流石にそんな立場の人にタメ口は良くないのではないだろうか?
まぁそれを言ったら気楽に接しているフリードはどんな立場か、しっかり理解していない状態ではあるが。
「良いんだよ。他の連中を見てみろ。オレに対して遠慮なんて欠片もねぇぞ。そもそもオレは堅っ苦しいのは苦手なんだよ。」
「………確かに。ちなみにレオノーラさんは?」
「アイツは誰に対してもああだ。シンディやレオノーラみたいに変わらねぇってんならオレはこれ以上はどうこう言わねぇさ。」
「………それじゃあ、よろしく。ジャック。」
「おう!改めてよろしくな!」
そう言ってもらえるのなら、俺も素直に厚意に甘えよう。
それに正直、俺にあまり礼儀正しく振舞うのは得意じゃないし。
そしてジャックさん、いや、ジャックが差し伸べた手を取り、握手をする。