異世界転生後輩   作:一之三頼

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強さを求める所以

宴の翌日、起床して早速ソーオウに剣の稽古をつけてもらう。

 

まずは素振り100回と言う事で、やってみたが………

 

 

 

「ぜぇ………ぜぇ………。」

 

「いやぁ、なんて言うか…………。」

 

「ひ弱だな!」

 

 

 

途中で力尽きた。

 

倒れ伏した俺を見たソーオウは言葉を濁し、いつからか見に来ていたジャックはストレートに感想を述べる。

 

前の世界で運動部にでも入っていたら、この結果は違ったのだろうか………。

 

 

 

「大丈夫ですか?お水飲みますか?」

 

「ぜぇ………あ、ありが、とう、アニー………。ふぅ………。」

 

「ひ弱だな!」

 

「二回も言わないでくれ………。って言うか、暇のか?ジャック。」

 

「息抜きだよ、息抜き。書類仕事ってのは、どうにも肩が凝るぜ。」

 

「そりゃあジャックがロッキーから色々学んでるからな。一番適役だろ。」

 

 

 

アニエスから水を受け取り、喉を潤す。

 

ジャックから二度目の感想を受け取り、そもそも仕事をしているはずのジャックがこの場にいる事に疑問を抱く。

 

アニエスは昨夜、ジャックに

 

『教会にはちょっと居づらいのでここにいても良いですか?』

 

『おう!良いぜ!』

 

と、あっさりした会話で居候する事が決まったのでまだ分かるが、ジャックはサボっているのでは?と思ってしまう。

 

本人曰く、息抜きらしいが………。

 

 

 

「まぁジャックと比較しなくても体力ねぇなぁとは思うがな。」

 

「鍛えるのがこんなに大変なんて思ってもいなかったんだよ。」

 

「こう言っちゃなんだがよ、向いてねぇと思うぜ。」

 

 

 

ソーオウとジャックに向いていないと言われ、自分でも自分の情けなさを痛感している為、余計にへこむ。

 

そんな俺の姿を見かねたのか、ジャックがフォローするように言葉を発する。

 

 

 

「一応言っとくが、お前なら他の連中に勉強を教えてやるって大事な役割があるんだし、自分の身を守れるに越したことはねぇが、それでも無理に剣を覚えろなんて言うつもりは無いぜ?」

 

「いざ荒事ってなった時に頭数に入れられる奴がいるのに越したことはないが、ウチは基本的に頭よりも腕っぷしの方が強ぇ奴の方が多いからな。」

 

「………ジャックはあの時。」

 

「ん?」

 

「リエフの街から出る時。」

 

「…………。」

 

「ニコライに止められて、俺達が足手まといじゃなかったら、あいつだって倒すことが出来て、先輩は連れて行かれなかったんじゃないか…………?」

 

 

 

ずっと心の底にあった後悔。

 

新しい出会いや出来事に慌ただしく接してきたが、それは後悔を塗りつぶすようなものではない。

 

どれほど明るく振舞おうとも、ポジティブに考えるようにしようとも、ずっと沈殿し続けていた気持ちを吐露する。

 

 

 

「なぁ、リョータ。」

 

「お前、過去に戻ったり出来るか?」

 

「は?いや、そんなの無理に決まって「だったら過ぎた事をいつまでもうだうだ言ってんじゃねぇ。どうやったって過去は変えられねぇから、未来を切り開く為に足掻くんだろうが。」…………!」

 

 

 

過去には戻れない。

 

過去は変えられない。

 

しかし未来に進んで行くことは出来る。

 

しかし未来を変える事は出来る。

 

ジャックの真剣な眼差しは、雄弁にそう語っていた。

 

 

 

「もし『たられば』の為に剣を学びてぇってんなら、止めとけ。」

 

「違う!それだけじゃない!皆の足を引っ張りたくないし、自分の身を守れるようになりたい!アニーの仲間たちだって助けたい………!それに、何よりも、今度は俺が先輩を助けたいんだ!」

 

「なら、それで良い。強くなりてぇ理由があるなら、前を向く為に必要な力になるなら、それで良いんだよ。」

 

「ジャック…………!」

 

 

 

強くなりたい理由は、確かに後悔によるものだ。

 

だけど、それだけじゃない。

 

他にも強くなりたい理由はたくさんあるんだ。

 

本心からそれを語ると、ジャックはそれで良いと言ってくれた。

 

ソーオウも、何も言わず目を閉じて笑みを浮かべ、ゆっくりと頷く。

 

 

 

「リョータさん、正直頼りないかなって思ってたんですけど………。」

 

「ぐっ………。さっきの姿を見せた後だと、何も言い返せない………。」

 

「教区長様たちの事を、私の家族の事を気に掛けてもらって、嬉しかったです!私も自分に出来る事を頑張るので、一緒に頑張りましょう!」

 

「あぁ、もちろんだ!」

 

 

 

アニエスからも率直な感想を聞かせられ、またしてもへこみそうになるが、後半を聞いてみれば一緒に頑張ろうと言う内容だった。

 

満面の笑みと共に告げられた激励の言葉は、俺を奮い立たせるには十分なほど、輝いて見えた。

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