異世界転生後輩   作:一之三頼

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教育は続く

教育係のアウグストスが訪れてから一週間が経過した。

 

 

 

「また背筋が曲がっていますよ。自然に姿勢が崩れないように意識して下さい。」

 

 

 

「お辞儀をする時に首だけ下がっていますよ。腰から頭までを一本の直線にして曲げるようにして下さい。」

 

 

 

「言葉遣いも見直す点が多々ありますね。『です』『ます』調で話すだけが礼儀ではありませんよ。」

 

 

 

「食事の際も気を抜かないように。スープを飲む時に音を立てないようにして下さい。」

 

 

 

「表情もしっかりと使い分けるようにして下さい。基本的には口角を上げて笑みを意識するのです。」

 

 

 

「歩き方も直さなくてはなりませんね。この地面に引いた直線を軸に、後ろ足の正面に踏み込む足が来るようにして下さい。」

 

 

 

「指先まで意識を疎かにしないように。細やかな部分を軽んじてはいけませんよ。」

 

 

 

午前中の鍛錬と授業に加えて、午後からの礼儀作法の教育。

 

肉体以上に精神的な疲弊を重ねる日々に辟易とする。

 

 

 

「げっそりしてんなぁ。オレには貴族様の振舞いなんざ分からないが、そんなに大変なのか?」

 

「大変だよ………。フリードにはいつ交渉に行くのか聞いてないし、いつまで続くんだ………。」

 

「私たちは応援しかできませんが、頑張って下さい!それになんだか以前よりも立ち振る舞いが綺麗になってる気がしますよ!」

 

「そうかな?自分じゃよく分からないな。」

 

 

 

授業の後、ソーオウに同情の目を向けられ、アニエスに励まされる。

 

アニエスには成長していると言われたが、ダメ出しされる日が無いこともあって実感が湧かない。

 

この後もダメ出しの時間があると思うと気が滅入る。

 

そんな話をしていると話を聞いていたアウグストスがこちらに来る。

 

 

 

「えぇ、初めて会った時と比べると見違える程ですよ。」

 

「あ、アウグストスさん。本当ですか?」

 

「はい。それとフリード様から『一週間後、迎えに行く』との言伝を授かっております。」

 

「交渉の日程が決まったんですね。」

 

 

 

交渉さえ乗り越えればこの地獄の日々は終わりを告げるだろう。

 

交渉の参加自体にはあまり乗り気ではないが、それでも礼儀作法の教育が終わるのであれば早くその日が来てほしいとすら思う。

 

 

 

「そこまで時間がありませんので、それまでにしっかりと仕上げていきましょう。これからは少々厳しくさせて頂きますよ。」

 

「はい?」

 

 

 

少々厳しく?

 

まるでこれまでが厳しくなかったかのような物言いじゃないか。

 

正直言って現時点で結構厳しさを感じていたのだが。

 

 

 

「あの、厳しくって………?」

 

「大まかな部分は良くなっていますが、細かい点で改善しなくてはならない箇所が多々ありますからね。それを一週間で矯正するのです。今まで通りとはいきませんよ。」

 

「マジか…………。」

 

「あー、まぁ頑張れ。うん。」

 

「大丈夫です!主はいつでも見守っていられますよ!」

 

 

 

今まで地獄だと思っていた日々は地獄ではなかったようだ。

 

絶望する俺を憐憫の視線で同情するソーオウと、祈りの姿勢で励ますアニエス。

 

地獄よ、早く終わってくれ………。

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