ジャックの部屋から出てきた後、レオノーラと別れてトムスを食堂に案内する。
「リック、ちょっと食事を作ってもらっていいか?」
「食事?飯の時間はまだ先だぞ。と言うか、そいつは?」
「あぁ、こいつはトマス。実は………」
ちょうど厨房担当のリックがいた為、事情を説明して軽食を作ってもらう。
「なるほどな。そういう事だったらすぐに作るぞ。ちょっと待っててくれ。」
「ありがとう………。」
そして軽食を摂り、寝室へと案内する。
「あ、貴方がトマスさんですね!濡れタオルを用意しておいたので、良ければ使ってください!」
そこにはアニエスがいて、身体を拭くためのタオルを用意していた。
「アニー?どうしてトマスの事を?」
「レオノーラさんから聞きました!」
何故アニエスがトマスの事を知っているか疑問だったが、どうやらレオノーラさんが伝えていたようだ。
「使い終わったタオルは選択するので部屋の外に出しておいて下さい!」
「それじゃ、ゆっくり休んでくれ。」
「あぁ、何から何までありがとう………。」
トムスにゆっくり休むように言ってアニーと共に部屋を出て廊下を歩いていると、
「あ、そうだ!」
「ん?どうした?」
アニエスが何かを思い出したように声を上げる。
一体どうしたのかと思い、問いかけると、その答えは実にアニエスらしいものだった。
「リョータさん!お帰りなさい!」
「あぁ、ただいま。」
はにかむような笑顔で『お帰りなさい』と告げるアニエス。
彼女の純真な在り方は、曇る事を知らぬかのようであった。
その笑顔に思わずこちらも表情を綻ばせて返事をする。
時を同じくしてジャックの部屋では、
『拝啓、トムスの知人へ
危険なウラッセア共和国内を越えて大陸西部へと向かうと言う事は、
恐らく重要な案件を抱えているのだろう。
そんな彼を利用するのは心苦しいが、
どうか共和国の勢力外にいる人に伝えたいことがある。
現在、共和国内の村落では徴税と言う名目の略奪がまかり通っている。
有志と言う建前で徴兵が行われている。
反乱分子を処分すると言う理由で無辜の人々が強制労働を課せられている。
その暴挙に対し、我々は立ち上がった。
いや、立ち上がらざるを得なかった。
そして影に潜み、僅かながらも抵抗を続けている。
この手紙を受け取った人よ、この惨状を西部の人たちに広めてくれ。
そして外部からも共和国を打倒してほしい。
それまで我々は内部から抗い続ける。
第四鉱山組合より』
「なるほどな………。」
トムスから渡された手紙を読んでいた。
そこに記されていたのは共和国内の過酷な現状と助けを求める声。
それらに目を通したジャックは沈痛な面持ちで思案するのであった………。