異世界転生後輩   作:一之三頼

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トムスの旅路

「旅の最中、大きな町や検問を避けて進んだからな。その分、時間も掛ったんだ。」

 

「あぁ、確かに共和国の兵士に見つかると面倒な事になりそうだからな。」

 

 

 

安全を優先した道行きであれば時間が掛かったのも納得出来る。

 

リエフの街から出る時にタガミ先輩を連れて行かれた件を考えると安全こそ最重要だろう。

 

 

 

「基本的には食料の補充は小さな集落で行っていたんだが、どこもかしこも裕福とは言えない、貧しい場所ばかりだった。それに加えて物資の徴収もされているみたいだから、補充するのも一苦労だった。なんせ食料を売ってくれない村もあったからな。」

 

「だったら食べるものも無い状態で旅をしたのか?よく無事にここまで辿り着けたな。」

 

 

 

野草や木の実を採取したり、川で魚を釣っていたのだろうか。

 

それとも野生の動物でも狩ったのだろうか。

 

 

 

「昔、商人から購入した地図を基に、『差し伸べる手』で協力して更に精巧な地図を作ったからな。どうにか近隣の村で食料を買う事が出来たんだ。それがなかったら今頃飢え死にしてたよ。」

 

 

 

そんなものがあったのか。

 

かつてウラッセア王国がジョセフに乗っ取られた時に、先を見越して組織を大きくしたとジャックが語っていた。

 

ここでその決断が活きたと言えるだろう。

 

 

 

「だけどそれでも食料が手に入らなくて、大きな町に行かざるを得なかったんだ。」

 

「大規模な街って事は共和国の兵士が巡回してたり検問があるよな?仕方がなかったとは言え、大丈夫だったのか?」

 

 

 

かつての嫌な記憶が思い起こされる。

 

トムスがこの場にいると言う事は無事だったと言う証左になるが、それでも心配せざるを得ない。

 

 

 

「そこで捕まっちまってな。」

 

「捕まった!?」

 

 

 

それならどうして無事ここまで来れたのだろうか。

 

いや、理由はどうあれ、一度捕まったトムスがここまで来れたと言う事は、タガミ先輩も無事であると信じられる一因になる。

 

トムスの無事とタガミ先輩の生存の可能性に、今は喜ぶべきだろう。

 

 

 

「同じ牢屋に捕まってた教会の人に助けてもらったんだよ。」

 

「教会の人に………。」

 

 

 

かつてアニエスを拒絶したワシャールの街の教会を思い返す。

 

その件から教会全体が悪いとは言わないが、印象はあまり良くなかった。

 

しかしトムスの一件を聞いた後だと、教会がどうと言うよりは個人の善悪と感じる。

 

 

 

「その後はまた旅を続けていたんだが、運悪く食料補充の為に立ち寄った村で徴収が始まっちまってな。」

 

 

 

次は徴収に遭遇したと語るトムス。

 

災難は続くものだと感じざるを得ない。

 

その時は隠れてやり過ごしたか、はたまた誰かに助けてもらったのだろうか。

 

 

 

「そこで第四鉱山組合って連中が現れて、徴収に来た連中を倒してくれたんだ。」

 

「そこで手紙の主が関わってくるのか。」

 

「あぁ、『差し伸べる手』の詳細を省いて話をしたら『この手紙を君が向かっている先の人に届けてほしい』って渡されたんだ。それで、その後は何事もなく、無事にここまで辿り着いたって訳だ。」

 

 

 

手紙にはそういう経緯があったのか。

 

ともあれ、共和国内が非常に危険な状態である事と、共和国に反抗する勢力がいると言うことが分かった。

 

そしてトムスの話を聞いていると、朝食を摂りに来たアニエスに声を掛けられる。

 

 

 

「リョータさん!トムスさん!おはようございます!」

 

「アニー、おはよう。」

 

「配膳してもらっている時に聞こえたのですが、教会の人たちの話をしていませんでしたか?良ければ私も聞かせてもらっても良いですか?」

 

 

 

どうやらアニエスもトムスの話が気になるようだ。

 

確かに彼女も元々住んでいた町で教会にいたらしいし、気になるのも当然だろう。

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