「秘密の抜け道?」
「はい。まぁ見ていて下さい。…………よし。」
「っ!?」
トムスがそれについて問おうとするが、その前にマーティンは秘密の抜け道を開く。
彼はおもむろに寝床を退かし、その下の石畳を外すと、そこには大人一人が通れるサイズの穴があったのだ。
思わず声を上げて驚きそうになるが、万が一にも牢番が異常を感知してこちらに来るとマズいので声を押し殺す。
「あんた、神父サマだろ?なんでこんな事知ってるんだよ?」
「ふふっ、以前懺悔に来た男が言っていたのですよ。つまらない罪を犯しては捕まって牢獄に入れられ、その度に脱獄しての繰り返した結果、ここの牢獄はどこもかしこも抜け道だらけだと。偶然、彼の言っていた牢獄に捕らわれたのは不幸中の幸いでしたね。」
「……そいつは教会に懺悔に行くよりも衛兵の詰所に出頭するべきじゃねぇのか?」
「どのような人間であれ、己の罪を告白する権利はありますよ。」
トムスは何故このような抜け道を知っているのか疑問に感じ、マーティンに問い掛ける。
一瞬、この神父が只者ではないのではと考えたが、帰ってきた答えはある意味で神父らしいものであった。
「まぁいい。さっさとここから出て行こう。」
「そうですね。それではついて来てください。それと非常に暗いので足元には気を付けて。」
マーティンに先導されて地面の穴に入り、石畳を戻す。
暗い地下道を手探りで進んで行き、しばらくすると………
「さて、無事に外に出れましたね。」
「ここは………」
無事に牢屋から出る事に成功し、周りを見渡す。
そこはスメイの外の雑木林だった。
「ここならば兵士たちに見つからないでしょう。」
マーティンは抜け道から出た際に付いた土埃と草花を払いながら安堵する。
彼の言う通り、周囲に人の気配は、ましてや兵士の姿はどこにもない。
これならば無事に旅立つ事が出来るだろう。
しかしマーティンはどうするのか考え、トムスは彼に問い掛ける。
「マーティン、あんたはどこかに避難する当てはあるのか?匿ってくれる所とか。」
「いえ、ありませんね。」
「そうか…………。」
行く当てがないと語るマーティン。
それを聞いたトムスは逡巡する。
その上で………
「なぁ、マーティン。あんたも一緒に来ないか?」
「私が、ですか?」
「あぁ、脱獄に協力してもらったし、向こうならここよりかは安全だろう。」
彼はマーティンに手を差し伸べる。
一人で旅をした方が確かに安全だろう。
しかしマーティンに行く当てはないかも知れない。
この先、また捕まって処刑される危険が高い。
故に、助けられ、共に脱獄をした相手を彼は見捨てられなかった。