フリードが王族用の隠し通路の存在を知っていた理由、それは……
「以前の会議の後、レアン公とやり取りをしていてね。彼に教えてもらったのさ。」
「レアン公に……?」
レアン公。
以前フリードに連れられて行った諸侯会議に参加していた貴族の一人だ。
会議では特にフリードと敵対することも無ければ、味方をしている訳でもない、言ってしまえば存在感を発揮しない立ち位置だった。
他の貴族と比較して老齢で、その分知識が豊富でもおかしくは無いが、それでも王族用の隠し通路の存在を知っている事に対しては疑問を呈さずにはいられない。
「彼は亡くなった王の叔父、つまりは王族の生き残りだからね。」
「!?」
王族の生き残り!?
フリードの口から重要情報がサラッと出てきた。
これまで王族の話を聞いてこなかったから、てっきり全滅しているのかと思ったが、よくよく考えれば隠し通路があるのならば生き残りがいてもおかしくはない。
しかし王族の生き残りならば、何故……
「ふむ、王族の生き残りならば、何故王国軍のリーダーを務めていないのかと言いたげな表情だね。彼に王位継承権はないよ。その昔、政治的なしがらみ故に権力を手放し、レアン公に封ぜられているらしいんだ。もっとも、彼本人も一領主としての地位に満足しているようで主体的に活動するつもりはないようだけどね。」
「へぇ…………ん、昔?」
ジョセフが王国を乗っ取ったのは六年前だし、昔と言えば昔だがフリードの語り口では数年単位ではないように聞こえる。
それこそ十年、二十年単位で過去の事の様に。
「今回の反乱以前からレアン公はレアン領を治める貴族だよ。」
「それなら他の王族の生き残りは?」
「いないね。王も妻子も一緒にいた所を襲撃されて、隠し通路まで逃げられずに一網打尽だったそうだよ。」
レアン公が隠し通路を使った訳では無い事と隠し通路を活かせなかったという事がよく分かった。
やや脱線してしまったが、フリードは話を戻し、続ける。
「まぁレアン公の話は置いておくとして、隠し通路についても問題ないよ。マスカを攻めた際に騒ぎが起こるように煽動工作をしていてね。その際に何度か利用しているんだ。以前ジャックに『第四鉱山組合』なる組織を教えてもらって、こちらからコンタクトを取って今回の煽動にも協力してもらう事になっているんだよ。」
「確認込みで準備は整ってるって訳か。」
俺が心配するまでもなく準備万全だったようだ。
とは言っても不安もあったので確認はしておきたかったし、疑問も解消しておきたかったので質問自体はしていただろう。
俺の質問の後は将官たちがそれぞれ補給路や王都のどこで煽動を起こすのかを確認し、軍議は終了した。
ジャックは終始真顔だったが、恐らく話に付いていけないから護衛の役割に徹していたのだろう。