異世界転生後輩   作:一之三頼

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不幸中の幸いだった後輩

「ふあぁ~………。」

 

「眠そうだな、ユウキ。」

 

「あ、タガミ先輩。おはようございます。ちょっと眠れなくて………。」

 

 

 

昨日あんな話を聞いてしまっては眠れない。

 

タガミ先輩は人を殺したことがあるんだろうか。

 

それを聞いてしまっても良いんだろうか……。

 

 

 

「タガミ先輩は………。」

 

「ん?どうした?」

 

「いや、何でもないです。」

 

「なんだよ、気になるな。」

 

 

 

俺にはそれを聞く勇気は、まだ無かった。

 

 

 

「まぁいいや。話したくなったら話してくれればいいや。それよりも出立の準備は出来てるか?」

 

「はい。と言っても大して持ち物なんて無いですけどね。」

 

「そりゃそうだ。もうそろそろジャックさんも来てもおかしくはないんだけどな。」

 

 

 

この拠点を出る準備をしてタガミ先輩とジャックさんを待っている。

 

次はどこに行くんだろうか。

 

そんな事を考えているとジャックさんが現れる。

 

 

 

「待たせたな。」

 

「ジャックさん!それは!」

 

「おう、ウチの馬車だ。普段は他の支部と使いまわしてるが、他の支部も避難が終わったからな。後は俺たちが脱出すれば、取り敢えずは安全だ。」

 

 

 

天蓋と言うか、天幕のような物が付いた、いわゆる幌馬車に乗って。

 

馬車か。いかにも異世界って感じがするな。

 

しかし、

 

 

 

「脱出?」

 

「昨日話してたが、この国はジョセフがトップになってからは活動するにはちょっとばかり危険でな。シンディがリョータを拾って来る前から、少しずつ組織の連中を国外に脱出させてたんだ。リョータは運が良かったぜ。もう少し遅けりゃ『差し伸べる手』と出会うことが出来なかったんだからな。」

 

 

 

こんな世界で誰の手も借りずに生きていくなんて難易度が高過ぎる。

 

言われてみれば不幸中の幸いだった。

 

先輩には感謝してもしきれない。

 

 

 

「それに最近は転生者狩りも活発になって来てますからね。」

 

「転生者狩り?」

 

 

 

物騒な言葉がタガミ先輩の口から発せられる。

 

でも確かに私もこの世界で最初に出会った商人に騙されて身ぐるみ剝がされたし、そう言う事もあるのか。

 

 

 

「言っとくが、ユウキが最初に服とかを騙し取られたって言ってたけど、それくらいなら優しいくらいだぞ。」

 

「え?」

 

「そうだな。国が主導してる転生者狩りは捕まったら処刑だからな。」

 

「え?」

 

 

 

しかしタガミ先輩とジャックさんの口からは想像を絶する事実が飛び出してきた。

 

身ぐるみ剝がされた時点で治安悪いと思ったが、そこまで行くと最早世紀末だろ。

 

冗談じゃないぞ、何も悪い事してないのに捕まって即処刑だなんて。

 

 

 

「ジョセフは転生者を危惧してるんだよ。自分がやったように政権を転覆されないか、国を乗っ取った後も、この国の東西じゃ転生者が主導する勢力が強固に抵抗している。この世界に来た転生者は決して少ない数じゃねぇ。」

 

「優秀な人間が反抗する前に処理をする、って事ですか。」

 

「そういう事だ。だから商人に服を騙し取られたのも決して悪い事だけじゃなかったってこった。上手い事国外に伝手がある商人とかならともかく、右も左も分からない奴だったら墓まで一直線だったからな。」

 

 

 

最初に出会った商人はムカつくけど、それはそれとして一応、少しばかり、僅かながら感謝はしておこう。

 

身ぐるみ剝がしたことは絶対に忘れないけど!

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