進軍再開から三日。
敵の本拠地に近づくにつれて抵抗が激しくなると予想していた。
予想したのだが……
「なんか平和だな……。」
その予想は外れた。
平和な事自体は良い事だ。
しかし予想していたよりも敵の抵抗が少ないのだ。
既に街を一つ制圧し、敵の本拠地へと迫っているにも関わらず、抵抗らしい抵抗が無い。
鎧袖一触と言わんばかりに、まともな戦闘が無いのだ。
これには違和感を抱かずにはいられない。
そんな事を考えていると……
「ゲハハハハハ!こりゃあ共和国の連中、フリードの策にまんまと掛かってるみてぇだな!」
「ゲーラン!?」
前方で指揮を執っていたはずのゲーランが隣にいた。
「あんた隊列の前の方に配置されてたんじゃないのかよ!?」
「暇すぎて駄弁りに来た!」
「緊張感!緊張感を持てよ!」
「つってもなぁ……。あんな小勢、オレが出るまでもねぇっての。」
戦中にも関わらず暇だからとのたまう王国一の将軍。
敵が弱いからやる事が無いと言っているが、そんな姿勢で良いのか。
思わず大声でツッコミを入れてしまった。
「まぁとにかくだ。フリードの策、気になるだろ?」
「気にならないと言えば嘘になるけど……。」
「そうだろう、そうだろう!どんな策だと思うよ?」
しかしゲーランは俺の意見なんてどこ吹く風。
そんな事よりも、と言わんばかりにフリードの策について言及して来た。
実際、戦中にも関わらず何故ここまで穏やかな行軍が出来ているのか気になってはいた。
「いきなりそんな事言われたって分からないぞ。あー、進軍しない方向にいる共和国軍に果たし状でも送ったとか?」
「ゲハハハハハ!は、果たし状!?ゲハハハハハハハ!」
「笑い過ぎだろ!」
「ゲハハハハハ!いやぁ……グッ……ゲハハハハハ!」
どんな策と言われても、さっぱり分からなかったので勘で答えたが、それがゲーランの笑いのツボにはまったらしい。
腹を抑え、口元を手で覆いながら、どうにか笑いを止めようとしているが、噴き出している。
自分でも違うだろうなとは思ったが、そこまで笑う事は無いだろう。
「その作戦、悪くねぇかもなぁ!いつか使ってみるか!ゲハハハハハ!」
「正気かよ……。」
果たし状作戦が正式採用って…………。
いや、流石に冗談だろう。
「フリードが『リョータに問題を出してみると良い。きっと面白い答えが返ってくるよ。』たぁ言ってたが、期待以上だぜ!」
「あいつ…………!」
だから唐突にどんな策だと思うか聞かれたのか。
フリードには今度文句を言ってやる。
「あー、笑った笑った!よし、良い事を教えてやるぜ。クヌミンを制圧した日の夜、捕虜が何人か逃げ出したみてぇだな。」
「は、捕虜?」
捕虜が策と何の関係が……。
いや、フリードの性格の悪さと合わせて考えると……
「まさかとは思うけど、逃げた捕虜に聞こえるように嘘の進軍路の話でもしてたのか?」
「まさしくその通りよ!しかもわざわざその為に捕虜をバラバラに収容して逃げ道を用意したんだぜ!いやぁ狡い事するよな、あいつ!おかげで今頃、共和国の連中は誰も来ない街道で待ち惚けだろうよ!ゲハハハハハ!」
「フリードらしいな。」
味方の立場としては頼もしいが、同時にゲーランの狡いという評価に同意せざるを得ない。
戦わずに済むのならそれに越した事は無いが、安全に進めるのならそれに越した事は無いが、それはそれとして狡いのだ。