コボルトロードが消え、周りには静寂が漂った。
誰もが緊張に包まれた。
もしかしたら、βテストの時と違うとこがあるかもしれない。
だが、何も起こらない。
そしたら、急に目の前に獲得経験値と分配されたコルが表示された。
それを見て確信した。
勝った。
まわりもそれを見たらしく歓声を上げた。
「お疲れ様。」
横にいたシリカがそう言ってきた。
皆が仲間と勝利を喜んでいる。
すると、アヤメさんが、やってきて声をかけてくれた。
「おい、お前ら!!やるじゃねーかよ!
まさか、子供に勝利をとられるなんてよ!」
そう言いながらアヤメさんは俺の頭を撫ではじめた。
「おわ!?ちょ、アヤメさん!?」
「・・・・ありがとな。」
「えっ?」
急にアヤメさんがお礼を言ってきた。
てか、何にたいして?
「ディアベルの仇を討ってくれて、ディアベルの意思を守ってくれてな。」
アヤメさんの顔は友の死を悲しんでいる顔だった。
「・・・すみません。ディアベルさんを・・・助けられなくて。」
「・・・気にすんなよ。お前らはよくやった。
少なくとも俺はそう思う。」
アヤメさんは、俺を励ますかのように言ってくれた。
強い人だ。
俺よりも力も、心も。
「さぁ、今日は皆でMVPのお前らを褒め称えて「何でや!!」
アヤメさんの言葉を遮ったのはキバオウだった。
周りも何事かと騒ぎをやめ、キバオウを見る。
「何でディアベルはんを見捨てたんや!!」
見捨てただって・・・
「どういうことだ?キバオウ。」
アヤメさんがキバオウに問いかける。
「決まっとる!攻略本と情報が違っとったのに
こいつはボスが使うスキルのこと知っとった!
それを、ディアベルはんに伝えっとったらディアベルはんは死なずに済んだはずや!」
キバオウはキリトさんに指を突き付けながらそういった。
そのセリフを始めに周囲に不穏な空気が流れた。
「そ、そうか!こいつ、元βテスターだ!
だから、ボスの使うスキルを知ってたんだ!」
キバオウの仲間がそう言ってキリトさんを指差した。
「待てよ!もし彼が元βテスターだとしたら
知識は攻略本と同じのはずだろ?」
エギルさんが両手を上げ皆を制するよう言う。
「あの攻略本が偽物なんだ!
タダで情報を公開してるなんて話が良過ぎる!
アイツら、情報を公開するきなんて無いんだ!」
勝手な憶測を言い、勝手に腹を立てる。
ふざけてるのかよ。
こんな状況でそんなことすると思ってるのかよ。
持っている剣に力が入る。
だが、今ここで怒鳴ってもβテスターの印象を悪くするだけだ。
それに、下手すればβテスターをあぶり出し、粛清する動きが起きたりするかもしれない。
「お前な・・」
「おい、お前・・・」
「あなたね・・・」
アヤメさんとエギルさん、アスナさんの三人が何か言おうとした。
次の瞬間
「・・・・あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
笑い声が響きわたった。
「元βテスターだって?俺をあんな素人連中と一緒にしないで貰おうか。
いいか。SAOのCTB(クローズドベータテスト)はとんでもない倍率の抽選だったんだぜ。
受かった1000人のプレイヤーで何人、本物のMMOゲーマーがいたと思う?
殆どが、レべリングも知らない初心者だった。
あんたらの方が100倍マシだぜ。
だが、俺は違う。」
キリトさんの言葉に皆が驚きを隠せなかった。
無論、俺も同じだ。
「俺はβテストの時、誰も到達できなかった層まで到達し、
カタナスキルのことを知った。
他にもいろんな情報を知っている。
アルゴなんか話にならないぐらいにな。」
キリトさんは嘘をついてる。
βテストの時、俺たちは10層までしか行けてない。
知ってる情報だってそんなにはない。
そこでキリトさんの考えが読めた。
キリトさんは、元βテスターと情報を独占する元βテスターという風に分けるつもりなのだ。
そんなことをすればキリトさんはギルドや前線のパーティーに入れなくなるかもしれない。
それを承知な上でキリトさんは一人で汚名を被ろうとしているのだろう。
「なんだよ・・・それ、そんなのβテスターどころじゃねーよ。
もう、チートじゃねーかよ!!」
「そうだ!βテスターのチーターだからビーターだ!」
βテスターのβとチーターを合わせてビーターか。
「・・・ビーターか。いいな、それ。使わしてもらおう。
俺はビーターだ。
これからは、元βテスターと一緒にしないでもらおうか。」
右手でウインドウを操作し、黒い裾が長いコートをキリトさんは身に着けた。
「第2層の転移門は俺が有効化(アクティベート)しといてやるよ。
町までフィールドを少し歩くからな。
初見のModに殺される覚悟があるなら、ついてきてもいいぜ。」
そう言ってキリトさんは踵を返して、第2層へ続く階段を昇って行った。