二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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気が付いたら百話超えていた。

驚きだった。


エピローグ

アヤメさんのサポートとシノンさんの狙撃技術のお陰で無事エクスキャリバーは中央大空洞に落下せず、シノンさんの手元にある。

 

そのエクスキャリバーをキリトさんは物欲しそうに見つめる。

 

「そんな顔しなくてもあげるわよ」

 

そう言ってシノンさんはエクスキャリバーをキリトさんに渡そうとする。

 

が、キリトさんが受け取る直前で引き戻す。

 

「え?」

 

「その前に、一つだけ約束」

 

するとシノンさんはALO来てから最大級にして、アヤメさん曰く、見たことのない笑顔をしていた。

 

「この剣を抜くたびに、心の中で私の事を思い出してね」

 

その言葉に全員がえっ?と呟く。

 

とくにアヤメさんなんか凄い慌てている。

 

「あ、ああ!思い出して、心の中で礼を言うよ!ありがとな!」

 

「どういたしまして」

 

シノンさんは止めにウインクして、身をひるがえし、新しいハッカ草の茎を咥え一服する。

 

「し、シノン!さっきのはどういう意味だ!?」

 

アヤメさんが普段からは想像できないぐらいに慌てながら問い詰める。

 

「別に。ただ、どっかの誰かさんが、フレイヤさんがトールになった時酷くがっかりした顔をしてたから、その仕返しよ」

 

「べ、別にそんなにがっかりしてない!」

 

「へぇ~、そんなにってことは少しはしたってこと?」

 

「そ、それは………」

 

シノンさんの言葉に何も返せなく、アヤメさんは困り顔をする。

 

「そういえば、アルブスも凄くがっかりしてたわよね」

 

「い、いや、別に俺はがっかりなんて」

 

「ふん!どうだか?」

 

「な、何怒ってんだよ?」

 

「別に怒ってないわよ!」

 

「怒ってるだろ!」

 

あっちもあっちで言い合いを始めちゃったか。

 

「ねぇ、レインはがっかりした顔してなかったよね」

 

「ああ、がっかりと言うより、驚きの方が強かったからな」

 

「そっか」

 

そう言うとシリカは少し嬉しそうに俺にもたれ掛ってくる。

 

「くおおぉ―――ん!」

 

行き成りトンキーが鳴き出し、言い合いをしていたアルブスとリズさんが大人しくなる。

 

トンキーは、8枚の翼を打ち鳴らして上昇を始める。

 

つられるように上空を見ると、今回のクエストで恐らく最大最後のスペクタクル・シーンが今まさに開始されるところだった。

 

地底世界ヨツンヘイムの天蓋中央に深々と突き刺さっていたスリュムヘイム城が、ついに丸ごと落下しはじめた。

 

「あのダンジョン、一回の冒険で無くなっちまうんだな」

 

「ちょっと、もったいないよね。まだ言ってない部屋とかあったし」

 

「マップの踏破率は三十七.二パーセントだよ」

 

スリュムヘイム城が落下し、巨大な氷塊も中央大空洞に落ちる。

 

すると、穴の底で何かが光った。

 

青く揺れ、きらきらと輝きを放つそれは、水だった。

 

底なしと思っていた空洞から大量の水があふれ出し迫り上がってくる。

 

「あっ・・・上!」

 

突然シノンさんが、右手を上げた。

 

反射的に振り仰ぐと、またしても途轍もない光景が眼に飛び込んだ。

 

天蓋近くまで萎縮していた世界樹の根が、スリュムヘイム城の消滅に伴って解放され、生き物のように大きく揺れ動きながら太さを増していくのだ。

 

互いに寄り集まり、何かを求めるようが如く真下へと突進する。

 

そして、それらは中央大空洞を満たす清らかな水面に吸い込まれると、大波を立てて放射状に広がる。

 

たちまち広大な水面を編み目のように覆い、先端は岸まで達する。

 

その光景は、ウルズさんが見せてくれた光景と、うり二つだった。

 

ようやく動きを止めた世界樹の巨大な根から、歓喜のような何らかの波動が強く発せられる。

 

「見て……根から、芽が。」

 

囁くようなアスナさんの言葉に眼を凝らすと、四方八方に広がる根から、大木サイズの若芽が立ち上がり、黄緑色の葉を次々に広げた。

 

そして、風が吹いた。

 

今までヨツンヘイムに吹いていた骨まで凍るような木枯らしではなく、春の訪れを告げるようなそよ風だ。

 

同時に、世界全体の光量が増し、上を見上げるとおぼろに光っていた水晶群が小さな太陽のように光っていた。

 

「くおおぉぉ——————ん……」

 

突然、トンキーが8枚の翼と広い耳、更に鼻までもいっぱいに持ち上げ、高らかな遠吠えを響かせた。

 

数秒後、世界の各所から、トンキーの仲間のものと思わしき返事が、こだまのように戻ってくる。

 

あちらこちらの泉や川の水面、世界樹の根が張る巨大な湖からもトンキーと同じ象水母や、動物型邪神が現れ、フィールドを闊歩する。

 

見渡せば動物型邪神を攻撃していた人型邪神の姿は見えなかった。

 

そして、原野のそこかしこで固まって立ち尽くしているレイドパーティーも視認で来た。

 

スィアチからスロータークエを受領して、後もう少しで狩り尽すって時に、味方の邪神が消え、フィールドが激変すれば呆然としても無理ない。

 

「……よかった。よかったね、トンキー。ほら、友達がいっぱいいるよ。あそこも、あそこにも、あんなに沢山………」

 

リーファさんは涙を流しながら、トンキーの背中に座り込み、トンキーの背中を優しく撫でる。

 

リズさんとアスナさんは目元を拭い、笑う。

 

ユイちゃんは、キリトさんの頭から移動し、アスナさんの肩に着地して、髪に顔を埋める。

 

アルブスも感極まったのか目元を擦り明後日の方向を向く。

 

クラインさんは腕を組み、そっぽを向く。

 

アヤメさんとシノンさんは何度も瞬きを繰り返していたが、すぐに笑顔になり、二人は拳をぶつけていた。

 

「……本当によかったな」

 

「……うん」

 

俺の前でシリカは何度も何度も目を擦り、涙を吹く。

 

ユウナは泣き顔をみられるのが恥ずかしいのか、ずっと前を向いて俺に顔を見せない。

 

「見事に、成し遂げてくれましたね」

 

その時、声が聞こえ顔を正面に向ける。

 

現れたのはウルズさんだった。

 

最初に会った時の透き通った感じとは違い、実体があった。

 

「《全ての鉄と木を斬る剣》エクスキャリバーを取り除かれたことにより、イグドラシルから断たれた《霊根》は母の元に還りました。木の恩寵は再び大地に満ち、ヨツンヘイムはかつての姿を取り戻しました。これも全て、そなたたちのお陰です」

 

「いや……そんな。スリュムは、トールの助けがなかったら到底倒せなかったと思うし……」

 

キリトさんの言葉に、ウルズはそっと頷いた。

 

「かの雷神の力は、私も感じました。ですが……気をつけなさい、妖精たちよ。彼らアース神族は、霜の巨人の敵ですが、決してそなたらの味方ではない」

 

「あの……スリュムもそんなことを言っていましたが、それは、どういう……?」

 

涙を吹いて立ち上がったリーファさんが問うが、その質問が自動応答エンジンに認識されなかったのか、ウルズさんは無言のままだ。

 

「私の妹たちからも、そなたらに礼があるそうです。」

 

ウルズさんがそういうと、彼女の右側が水面のように揺れ、人影が現れる。

 

ウルズさんよりやや小さめの優美な女性だ。

 

「私の名は《ベルザンディ》。ありがとう、妖精の剣士たち。もう1度、緑のヨツンヘイムを見られるなんて、ああ、夢のよう……」

 

甘い声でそう囁きかけると、ベルザンディさんはふわりとしなやかな右手を振った。

 

途端、俺たちのテンポラリ・ストレージに大量のアイテムやユルド貨が流れ込んで消える。

 

更に、今度はウルズさんの左側にもつむじ風が巻き起こり、3つ目のシルエットが出現。

 

こちらは、他の2人とは打って変わって鎧兜姿だ。

 

ヘルメットの左右とブーツの側面から、長い翼が伸びている。

 

金髪は細く束ねられ、美しくも勇ましい顔の左右で揺れている。

 

そして、身長がウルズさんの半分ほど、つまり俺たちと同じ、妖精サイズだ。

 

「我が名は《スクルド》!礼を言おう、戦士たちよ!」

 

凛と張った声で短く叫び、スクルドもまた大きく手をかざした。

 

再度、報酬の滝が俺たちのストレージに降り注ぐ。

 

ついに、容量が限界に近いという警告メッセージが、俺の視界右側に表示される。

 

妹2人が退き、もう1度ウルズさんが進み出る。

 

「私からは、その剣を授けましょう。しかし、ゆめゆめ《ウルズの泉》に投げ込まぬように」

 

「は、はい、しません」

 

子供のようにキリトさんが頷くと、エクスキャリバーが姿をけし、キリトさんのストレージに格納される。

 

キリトさんは右拳を握りよしと小さく呟いた。

 

3人は、ふわりと距離を取り、声を揃えて言った。

 

『ありがとう、妖精たち。また会いましょう。』

 

同時に視界中央に、凝ったフォントによるシステムメッセージが表示され、クエストの終了を告げる。

 

その一文が薄れると、3人は身を翻した。

 

そして飛び去ろうとした時、後ろから飛び出してきたクラインさんが叫んだ。

 

「すっ、すすスクルドさん!連絡先をぉぉ!」

 

「フレイヤはどうしたんだが」

 

「それ以前にNPCがメルアドをくれる訳ないだろ」

 

クラインさんの背後でアヤメさんと、アルブスがぼそっと聞こえない声量で呟く。

 

すると、スクルドさんはくるりと振り向くと、気のせいか面白がるような表情を作り、もう一度小さく手を振った。

 

何かキラキラした物が宙を流れて、クラインさんの手にすぽりと飛び込んだ。

 

今度こそスクルドさんも飛び去り、トンキーの上には沈黙と微風だけが残される。

 

やがて、リズさんが小刻みに首を振りながら囁いた。

 

「クライン。あたし今、あんたのこと、心の底から尊敬してる」

 

多分、全員がそう思ったに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、キリトさんが打ち上げ兼忘年会をしようと言い、全員が賛成する。

 

だが、ALOでするかリアルでするかキリトさんは悩んでいた。

 

ALOですればユウナとユイちゃんも参加できるが、アスナさんが明日から京都にある父方の本家に一週間滞在するそうで、今日を逃したら年内にはもう会えなくなるからだ。

 

しかし、ユウナとユイちゃんはその辺を汲んで、「「リアルで」」と言ってくれた。

 

場所は《ダイシ―・カフェ》になり、俺たちは樹上の階段からトンキーに手を振り、中都アルンまで長い階段を上り、宿屋でログアウト。

 

シリカと待ち合わせをし、一緒に店まで向かう。

 

店にはすでにシノンさんとアヤメさんが到着していて、次にキリトさんとリーファさんが着た。

 

エギルさんに挨拶を済ませると、キリトさんは運んできたハードケースを開く。

 

中には四つのレンズ可動式カメラと制御用のノートPCだ。

 

レンズ可動式カメラを店内の四か所に設置し、キリトさんはノートPCを操作する。

 

「どうだ、二人とも」

 

『見えます。ちゃんと見えますし、聞こえます、パパ!』

 

『キリトさん、すご~い!』

 

PCのスピーカーからユイちゃんとユウナの声が聞こえた。

 

「なに、あれ?」

 

アヤメさんの横からシノンさんが聞く。

 

「ああ、あれはダイシー・カフェのリアルタイム映像を擬似3D化してるんだよ」

 

「OK。動いて見てくれ、二人とも」

 

『『はい!』』

 

返事に続いて、キリトさんは一番近くのカメラのレンズを動かす。

 

「今、ユイとユウナちゃんはこの店の中を飛んでると感じてるはずだ」

 

「つまり、あのカメラとマイクは、ユイちゃんとユウナちゃんの端末感覚器ってことね」

 

「お兄ちゃん、学校でメカ……メカトニ……」

 

「メカトロニクス。俺と同じコース選択してて、これ授業の課題で作ってるんだが、どう考えてもユイちゃんとユウナちゃんのためなんだよなー」

 

『『がんがん注文だしてます!』』

 

あははと、五人が笑う。

 

キリトさんはジンジャーエールを啜り、反論する。

 

「そ、それだけじゃないぞ!カメラをもっと小型化して、肩とか頭とかに装着できるようになれば、どこでも自由に連れていけるし……」

 

「だから、それも二人の為でしょ!」

 

そこでキリトさんは反論できなかった。

 

「キリトさん、すみません。ユウナの分まで頼んじゃって」

 

「いいさ。ユウナちゃんはユイの妹みたいな者だ。それに、レインとシリカの妹ってなら尚更さ」

 

「ありがとうございます」

 

キリトさんに、頭を下げたお礼言う。

 

その後、アスナさん、クラインさん、リズさん&アルブスの順にメンバーが集まり、テーブルを二つ並べた卓上に料理が並べられる。

 

エギルさんもエプロンを脱ぎ、全員のグラスに飲み物が注がれる。

 

「祝、《聖剣エクスキャリバー》と《雷槌ミョルニル》ゲット!お疲れ、二○二五年!乾杯!」

 

『かんぱーい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、どうしてエクスキャリバーなのかしら?」

 

アヤメさんの右隣に座ってるシノンさんがそう呟いた。

 

「え?どうしてって?」

 

キリトさんが料理を咀嚼しながら聞き返す。

 

「ファンタジー小説や漫画だと大抵《カリバー》でしょ。《エクスカリバー》って」

 

「シノンさん、その手の小説読むんですか?」

 

リーファさんの質問に照れくさそうにシノンさんは答える。

 

「中学生の頃は図書館の主だったから。アーサー王伝説も何冊か読んだけど、訳は全部《カリバー》だった気がするの」

 

「うぅーん、それはもう、ALOにあのアイテムを設定したデザイナーの趣味というか気まぐれというか・・・」

 

情緒のないキリトさんの反応に、左隣に座るアスナさんが苦笑した。

 

「たしか、大本の伝説ではもっといろいろ名前があるのよね。さっきのクエストじゃ偽物扱いされてたけど、《カリバーン》もその1つじゃなかったかしら」

 

『主なところでは、《カレドヴルフ》、《カリブルヌス》、《カリボール》、《コルブランド》、《カリバーン》、《エスカリボール》等があるようです』

 

「うは、そんなにあるのか」

 

「まあ、別に大したことじゃないんだけど……《キャリバー》って言うと、私には別の意味に聞こえるから、ちょっと気になっただけ」

 

「意味って?」

 

「銃の口径だろ。まぁ、エクスキャリバーとは綴りは違うだろうが」

 

コーヒーを飲みながらアヤメさんが言う。

 

そして、一息吐き、キリトさんを見る。

 

「あとは、そこから転じて、《人の器》っていう意味もある。《a man of high caliber》で《器の大きい人》とか《能力の高い人》ってな」

 

「へぇー、覚えとこ」

 

感心するリーファさんに、シノンさんは「多分、テストではでないだろうけど」と言う。

 

「なら、キリトさんにはぴったりな剣ですね」

 

「おいおい、俺はそんな大層な人間じゃないぞ」

 

俺の言葉に、キリトさんは照れ笑いを浮かべる。

 

「なら、その器がでかいキリトにはその器のデカさを見せて貰いたいものだな」

 

「なんか、短期のアルバイトでどーんと稼いだとか」

 

アルブスとリズさんがにやにや顔を作る。

 

それって、《死銃事件》での調査協力費のことだよな。

 

「も、もちろん。今日の払いは任せろって言うつもりだったぞ」

 

途端、四方から盛大な拍手とクラインさんの口笛が響いた。

 

キリトさんは口元を引き攣らせながら、乾いた笑みを浮かべる。

 

キリトさん………俺も少し出します。

 




アンケート途中経過

1、3票

2、2票

3、2票

4、2票

今の所、アリシゼーション編をやってほしいに票が3票入ってます。

ですが、まだアンケート終了期間まで時間はあります。

皆さん、是非投票して下さい。

尚、アリシゼーション編に決まったら、原作のアリシゼーション編が完結してから始めます。
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