「うらあああああ!」
ジュンが雄叫びを上げ、両手剣を振り下ろしてくる。
大太刀を上に跳ね上げ、両手剣にぶつける。
キンッ!
甲高い金属音が響き、ジュンの持った両手剣が弾かれる。
俺は大太刀を素早くジュンの喉元に突きつける。
「ま、まいった」
ジュンが降参し、俺は大太刀を下ろす。
《スリーピング・ナイツ》のメンバーと出会って約一週間が経った。
あの日から、俺は都合が付く限り、《スリーピング・ナイツ》の皆に顔を出し、戦闘訓練やボス戦での戦い方などを教えた。
全員もの覚えが良く、ボス戦での戦い方をすぐに覚え、現在は戦闘訓練をしてる。
全員の装備はユウキが片手剣、ジュンは両手剣、テッチさんがヘビーメイス。
タルケンさんはロング・スピアで、ノリさんはクオーター・スタッフ。
シウネーさんはロッド。
以上の装備だ。
ジュンとテッチさんは俺と同じ重量級の武器だから戦い方を教えれるが、他の四人、特にシウネーさんに戦い方を教えることは難しかった。
とりあえず戦うだけでも、いい訓練にはなるから実戦形式の訓練をしている。
ユウキとの訓練を終えると、ユウキはいつも通り、辻デュエルをしに二十四層に向かい、残りのメンバーで訓練を行った。
ジュンとの訓練を終え、今日の訓練は終了となった。
「お疲れ様でした。宿屋に戻りましょう」
俺の合図を聞き、全員が武器を杖代わりに立つ。
少ししごき過ぎたと思い、宿屋での食事代を俺が持つことにした。
暫く全員で飲んでいると、宿屋の扉が開いた。
「皆!見つかったよ!」
来たのはユウキだ。
その後ろに見慣れた人を連れて。
「あ、アスナさん!?どうしてここに?」
「れ、レイン君!?それはこっちのセリフだよ!」
「え?知り合いだった?」
ユウキは首を傾げて聞いて来る。
………確かに、アスナさんは戦いの駆け引きなどがうまいし、それにウンディーネだ。
手伝ってもらうには打って付けかもしれない。
「ユウキ、アスナさんに話はしたのか?」
「あ!ボク、また話すの忘れてたや!」
そう言うユウキに、全員がずっこけ笑う。
「紹介するよ。ボクのギルド《スリーピング・ナイツ》の仲間たち」
ユウキは俺の時にしたみたいに、メンバーを紹介する。
この前と同じ順番で自己紹介をし、そして、俺の時と同じ説明をして、アスナさんをボス攻略戦に誘う。
アスナさんは俺と同様の反応をし、そして、快くボス戦を引き受けてくれた。
「でも、どうしてレイン君が一緒にやってあげないの?それに、私よりも強い人はいっぱいいたと思うんだけど。特に黒づくめで片手直剣使いのスプリガン。覚えてない?」
キリトさんもユウキと戦ってたのか……
「あー……うん、憶えてる。確かにあの人も強かった!」
「じゃあ、どうして助っ人を頼まなかったの?」
「うーん………」
ユウキは口ごもってから、不思議な笑みを浮かべた。
「やっぱり、あの人はダメ」
「な……なんで?」
「ボクの秘密に気づいちゃったから」
秘密?なんだそれ?
秘密とやらが気になったが、ユウキやシウネーさんたちも話したからなさそうな雰囲気だし、聞かない方がいいな。
「それで……攻略の、具体的な手順は、ど………どうなるのでしょう?」
タルケンさんが丸眼鏡を押し上げながら問う。
「まず大事なのは、ボスの攻撃パターンをきっちり把握すること。避けるところは避け、護るべきところは護り、攻めるべきところは全力で攻める。こうすれば、勝機は見えて来るかもしれない。問題は、その情報をどうやって得るかってこと。多分、ボス攻略専門の大ギルドに聞いても無駄でしょうね。一度、全滅覚悟で挑戦してみる必要があるともう」
「うん、僕たちは大丈夫だよ!ただ……前の層でも、その前も、ぶっつけ本番で全滅した後、すぐに他のギルドが攻略しちゃったんだ」
「三時間後に出直したらもう終わってたんだよなー。気のせいかもしれないけど………なんか、僕らが失敗するのを待ってたみたいな………」
「へぇ………」
ジュンの言葉にアスナさんが口元に手を当てて考える。
俺も少しばかり気になり、考える。
確かに最近第ギルドによる、ボス攻略の管理が過ぎるという噂はあるが、六人程度の少数ギルドまで注意を払うか?
「じゃあ、念を入れて、全滅したらすうに再挑戦できるように準備を整えておきましょう。皆の都合がいいのはいつなのかな?」
「あ、ゴメン。アタシとタルケンは夜ダメなんだ。明日の午後一時からはどうかなあ?」
ノリさんが黒髪を掻きながらすまなさそうに言う。
「うん、私は大丈夫じゃあ、明日一時にこの宿に集合でいい?」
オッケー、了解と口々に全員頷き、アスナさんは最後に大きな声で言った。
「頑張ろうね!」
何度もありがとうと言う、ユウキの肩を叩きながらアスナさんは宿屋を出る。
「俺も今日は帰るな、ユウキ、明日は頑張れよ」
そう伝え、扉に手を掛ける。
「あ、レイン」
ユウキに声を掛けられ振り向く。
ユウキは何故か頬を赤らめながら、もじもじとして俺を上目づかいで見て来る。
………だから、その可愛い姿はやめろ……色々、反則だから。
「も、もし良かったら、明日来てもらえるかな?」
「明日か?俺はパーティーに入れないけど」
「ううん、ただ見送りに来てほしいんだ。そうしてくれたら、ボク頑張れそうだなっていうか、嬉しいっていうかその…………とにかく、見送りに来てくれないかな?」
「………ああ、いいぞ。じゃあ、また明日な」
「うん、また明日!」
笑顔で手を大きく振るユウキに手を振り返しながら、宿屋を出る。