二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第5話 大規模ギルドの真実

翌日、いつもの宿屋に集まり全員がボス戦の準備をする。

 

やはりと言うか、全員、古代級武装の装備で身を固めていた。

 

ユウキの実力は言わずもがな、ユウキ以外のメンバーもユウキに匹敵するだけの実力がある。

 

でなければ、これだけの装備を集めるのはできない。

 

アスナさんは後衛がシウネーさん一人と言うことで細剣から杖に変えた。

 

杖は先端に葉っぱ一枚残した生木だが、それは、世界樹の天辺の枝を切ったもので、入手するには、巨大な守護竜を倒さないといけない。

 

装備を整え終わると、全員宿を飛び出し、二十七層の迷宮区に向かう。

 

迷宮区に向かいながら俺はあることを思った。

 

《スリーピング・ナイツ》のメンバーは一体どのようにして結成されたんだろう?

 

今日は一月八日。

 

本来なら、仕事始め、学期始めで、殆どの人は忙しいはずだ。

 

強さのことも含め、普通なら現実の時間を犠牲にして、ゲームに費やしてる超コアプレイヤーと考えるのが妥当だが、そうとは思えない。

 

《スリーピング・ナイツ》のメンバーからは、その手のギルドが拭いがたく漂わせる強い自尊心は感じられない。

 

このメンバーはどこまでもゲームをナチュラルに楽しんでいる。

 

一度でいいから、現実のみんなに会ってみたい。

 

そう思えた。

 

「迷宮区が見えてきたよ!」

 

ユウキの元気な声に気付き、入口周辺にモンスターの影が無いのを確認して降り立つ。

 

「じゃあ、打ち合せ通り通常モンスターとの戦闘は極力回避で行きましょう」

 

アスナさんのセリフに全員無言で頷きそれぞれの獲物を構える。

 

シウネーさんが長杖掲げ、支援魔法を幾つもバフする。

 

次にノリさんが暗視魔法を掛け準備が整った。

 

そこで、全員がもう一度無言で頷き、ユウキを先頭に迷宮区に入る。

 

入口の最初は天然の洞窟の造りだが、途中で石畳みが組み合わせられた迷宮区に変わった。

 

旧SAOと同じく、新SAOのダンジョンはうんざりする程広く、出現するモンスターもフィールドとは比較にならない。

 

おまけに、飛行も不可能。

 

マップデータはあらかじめ情報屋から購入してあるが、おそらくボス部屋まで三時間はかかるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思っていたが、一時間程度でボス部屋前に着いてしまった。

 

こんなに早く着けたのも、ユウキたちの連携技術が素晴らしかったからだ。

 

言葉を交わさずに、最小限の身振り手振りで合図をし、止まるところは止まり、突っ切るところは突っ切る。

 

殆ど、俺とアスナさんはパーティーの後ろを歩いてるだけだった。

 

途中三回ほど戦闘になったが、アスナさんの指示でリーダーを倒し、敵が混乱したので、簡単に振り切れた。

 

「私、本当に必要だったのかな?」

 

俺も同じくです。

 

見送りに行くとは言ったが、実際のところ、ボス部屋までのモンスターは俺が相手しようと考えていたのだが、その必要すらなかった。

 

「ちょっと待って!」

 

アスナさんが声を上げると、前衛の三人が止まる。

 

一瞬何か分からなかったが、俺もすぐにその違和感に気付いた。

 

アスナさんは隠蔽呪文を看破する魚型の《サーチャー》を召喚した。

 

召喚された五匹の内の一匹が空中で何かとぶつかり、サーチャーは消え、その後に緑色の空気の膜が現れ崩れ出した。

 

そこから現れたのはインプ二人にシルフが一人だ。

 

三人共短剣装備と軽装だが、武器のグレードはかなり高く、おまけに表示されてるギルドアイコンは二十三層以降のボスを立て続けに攻略してる有名大規模ギルドのものだ。

 

こんなモンスターもいない所で隠蔽呪文を使う理由が無い。

 

なら、考えるのは一つ、PKだ。

 

アスナさんが杖を掲げると同時に、俺も背の大太刀の柄を握る。

 

「ま、待ってくれ!戦う気は無い!」

 

戦闘になると思ったが、予想に反してインプの一人が手を上げて叫ぶ。

 

「なら、武器をしまって!」

 

アスナさんの言葉に三人は短剣を鞘にしまう。

 

「アスナさん、連中が抜剣する素振りを見せたら、シウネーさんとすぐに《流水縛鎖(アクアバインド)》を」

 

「分かった。シウネーさん、いいですね?」

 

「はい!ALOで対人は初めてなんですよ。どきどきしますね」

 

どちらかというと、どきどきよりわくわくと言った表情だ。

 

俺は数歩進み、三人の前に立つ。

 

「戦う気が無いなら、何故ハイドしてたんですか?」

 

俺が問うと、先程のインプが答える。

 

「仲間を待ってたんだ。それまで、モンスターにタゲられると面倒だから隠れてたんだ」

 

怪しい。

 

短剣装備で迷宮区のボス部屋に来れるレベルのプレイヤーが、そこまでして戦闘を避ける理由が無い。

 

それに、隠蔽呪文は発動中MPの消費が桁違いだ。

 

使い続けるには高価なポーションを数十秒おきに呑む必要がある。

 

だが、会話の中にこれ以上のほころびが見当たらない。

 

ここでキルするのも手だが、大型ギルドとトラブルになると後々面倒だ。

 

「これから彼女達がボスに挑戦します。そちらの準備がまだなら先に彼女たちが挑戦してもいいですよね?」

 

「ああ、どうぞ」

 

即答だった。

 

てっきり、ボスへの挑戦を妨害してくると思ったんだがな。

 

「俺たちはここで仲間を待つよ。ま、頑張ってくれ」

 

インプが笑みを浮かべると、仲間のシルフがスペルを詠唱し、隠蔽呪文で再びハイドした。

 

「……取り敢えず一度中の様子を見ましょう」

 

アスナさんは三人の行動を怪しみながらも、肩をすくめユウキたちに言う。

 

「いよいよだね。頑張ろう!」

 

ユウキが元気な声を上げて意気込む。

 

シウネーさんが全員にリバフをし、前衛のジュンとテッチさんの二人が扉を開ける。

 

開けるとそこは暗闇だった。

 

そう思った瞬間、青白い炎が二つ灯り暫く時間を置き、無数に青白い炎が灯る。

 

「行くわよ!」

 

アスナさんの掛け声と共に、ジュンとテッチさんが突入。

 

それに続いて五人も走り出す。

 

「ユウキ、頑張れよ!」

 

「ありがとう、レイン!」

 

ユウキにエールを送ると、ユウキは僅かに振りむいて笑顔で手を振る。

 

そして、扉が勢いよく閉まる。

 

「勝ってくれよな」

 

そう願い、扉の近くに寄り掛かり、ユウキたちを待つ。

 

 

 

 

 

 

「ん?メールだ」

 

数分経った頃、行き成り視界にメール受信のアイコンが現れ、俺はアイコンをタップする。

 

『話シタイコトガアル ケットシー領 武器屋裏路地ニテ待ツ ネズミ』

 

アルゴさんからだ。

 

珍しいな。

 

ALOでの情報は掲示板で公開されてたりするから、情報屋としてあまりもうからないから、ALOにはあまりログインしないのに。

 

取り敢えず、メールに従い、迷宮区を出て、翅を出して飛ぶ。

 

アインクラッドを出るとアインクラッドは丁度、ケットシー領の真上を飛行していた。

 

そのままケットシー領に降り、武器屋の裏路地へ向かう。

 

裏路地は灯りが一つも無く、とても暗い。

 

「アルゴさん、メール見ましたよ」

 

「よぉ、レーくん。久しぶりダナ」

 

暗闇からフードを被り、目を隠した女性が現れた。

 

顔は分からないが、尻尾が見えているから種族はケットシーなのだろう。

 

「どうして、俺を呼んだんですか?」

 

「あることを調べてたら、オモシロいことが分かったのサ」

 

「あること?」

 

「大規模ギルドが二十三層以降立て続けにボス攻略してることサ」

 

「………どういうことですか?」

 

その言葉を聞いて俺は目を僅かに細める。

 

「いくら大規模ギルドとはいえ、一回でボスを、オマケに被害は最小限、POT代も最低限で抑えてル。ちょっと不自然じゃないカイ?」

 

言われてみれば………

 

「そんで、気になったから調べて見リャ、あいつら《盗み見(ピーピング)》してたんだよ」

 

「な、何だって!?」

 

「ボス部屋前でハイドして、他のギルドやボス攻略を考えてるヤツが来たら妨害魔法を使ッテ、プレイヤーに使い魔をくっつけル。そんで、戦い方を盗み見したら、それを元に自分達はボス攻略。早い話、囮にされたノサ」

 

「でも、妨害魔法を使ったら、一秒だけアイコンが出るはず………」

 

「ボス部屋前では、誰もがリバフするダロ。アイコンが山ほどある中に一つだけ、オマケに一瞬しか映らないアイコンが一つ混ざってても気付かれないサ」

 

ってことは、ユウキたちが二十五層、二十六層で全滅した後、大規模ギルドがボスを倒したのは偶然じゃなかったってことか!

 

「アルゴさん!情報ありがとうございます!」

 

「気にしなくていいゼ。お代は特別に無料ダ」

 

「ありがとうございます!」

 

裏路地を飛び出し、すぐに上昇する。

 

アインクラッドは少しケットシー領の上空から離れた所に居る。

 

《ロンバール》を目指して、俺は勢いよく翅を振るわせる。

 

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