二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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エピローグ

夕方になり、教会に残っていた人たちも徐々に減って行った。

 

明日菜さんも、和人さんと一緒に帰宅した。

 

俺はまだ帰る気になれなく、暫くユウキが住んでいたこの街を歩くことにした。

 

隣には珪子もいて、なんとなく二人で歩いている。

 

歩きながら、ユウキがこの街でどのように過ごしたのか想像する。

 

こうして母親と一緒に歩いて買い物に行ったり、お姉さんの藍子さんと遊んだり、父親の背中に乗って寝たりとかしたのかな………

 

この街には、ユウキとユウキの家族の思い出がある。

 

そして、あの家にも…………

 

あの家はどうなるんだろう?

 

話の通り、取り壊されるのか?

 

ユウキの想いや魂は俺の心に残って、息づいている。

 

でも、あの家が壊されるってことはユウキが存在した証が一つ消えるってことだ。

 

………そんなこと、許せるかよ!

 

「珪子!俺、行くところ思い出した!先に帰ってくれ!」

 

「ちょ、ちょっと!雫!?」

 

珪子の声を無視し、俺は走り出す。

 

一月に、通った道を思い出しながらユウキの家に向かう。

 

家に着くと、そこには前のような静けさは無かった。

 

家の中に人がいるみたいだ

 

サビでざらつく門扉に手を掛け、ゆっくりと押す。

 

ギッギギィと音が鳴り、開く。

 

ゆっくりと歩き、扉のドアノブに触れ、回すと呆気なく扉は開いた。

 

中から声が聞こえる。

 

玄関にはたくさんの靴があった。

 

声はリビングに続くと思われる扉の向こう側から聞こえた。

 

寒そうな廊下を歩き、近づくとだんだんはっきりと声が聞こえた。

 

『で、この家は結局どうなるんだ?』

 

『やはり、取り壊すしかないだろ』

 

『そうじゃない。取り壊した後、誰がこの土地の権利を持つのかっということだ』

 

『それは、やはり俺だろ。俺はあいつの兄なんだからな』

 

『待ちなさい!アンタは長男だけど、一番上は私よ!権利は私が持つべきよ!』

 

『ふん!どうせ、お前の事だ。跡地にコンビニでも建てるつもりだろ』

 

『そういうお前だって、随分借金があるそうじゃないか。どうせ、権利なんかすぐに売っちまう!』

 

数人の大人が自分の利益の為にこの家と土地の権利を求め言い争ってる。

 

俺は、扉を開けた。

 

中には、五人の大人がいた。

 

全員、行き成り入って来た俺に驚いている。

 

「……誰だい?他人の家に勝手に入るのは感心しないな」

 

「俺、朝霧雫って言います。ユウキ……紺野木綿季さんの友達です」

 

俺がそう言うと、五人の内四人は驚いていた。

 

よく見れば、あの女の人は喪主を務めていた人だ。

 

「そうか。なら、今日の告別式にも来てくれたんだね。いや~、ありがとう。きっとあの子も感謝してるよ」

 

作ったような笑みを貼り付け、男が俺に話掛けて来る。

 

「……お願いします。この家を、残してください」

 

俺は頭を下げお願いする。

 

「ユウキは、この家を残してほしいと言ってました。管理費ならユウキの父親の遺産で、十年は出せるって言ってました。せめて……その十年だけでも残してください」

 

「………あのねぇ。これは私達の問題だ。そこに、他人の君が介入するのは間違いなんじゃないかな?」

 

「それは分かっています。でも、お願いします!」

 

「悪いけど、この家の取り壊しはもう決まってる。帰った帰った」

 

手で追い返す仕草をして、男はそっぽを向く。

 

「だいだい、あんな病気を持っていた家族が住んでいた家なんて無い方がいいんだよ。もしかしたら、ウイルスが残ってるかもしれないだろ」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺は顔を上げ、男を睨みつけた。

 

「……ふざけんなよ!ユウキたちがHIVになってから、避けていたくせに!それどころか、ユウキが死んだら、残った家や土地を奪おうとしやがって!お前たちなんか、人間じゃない!動物の死骸を貪るハゲタカと同じだ!」

 

「んだと!ガキの癖に調子にのってんじゃねぇぞ!」

 

男が椅子を蹴っ飛ばすように立ち上がり、俺の胸倉を掴み上げる。

 

「いいか、よく聞けよ。俺達は奪おうとしてんじゃねぇ。残ったものを有効活用しようとしてるだけだ。ただ残しておくより、その方がいいに決まってる。それを……ハゲタカ呼ばわりとは、随分抜失礼こと言ってくれるじゃねぇか!」

 

そう言うと、俺を勢いよく突き飛ばす。

 

突き飛ばされ、頭を強く壁に打ち付ける。

 

おまけに、突き飛ばされたと同時に唇も少し切った。

 

「さっさろ出ていきな。今なら、見逃してやるよ」

 

くそ……こんな奴に、ユウキの家が、思い出が、いいように扱われちまう。

 

なんとか……なんとかしないと………

 

「出ていくのは貴方方ですよ」

 

聞覚えぼある声に振り向くと、そこには、黒い礼服を着た俺の父さんが居た。

 

「と、父さん……」

 

「雫!大丈夫!?」

 

「け、珪子まで」

 

珪子は俺の下に走り寄ってくると、心配そうに俺の怪我を見て来る。

 

「なんだ、アンタ?」

 

「この子の父親です」

 

「そうかい。父親なら子供の躾ぐらいちゃんとしとけよ」

 

「そうですか………それより、早くこの家を出で行って下さい。ここは、貴方方の家ではないです」

 

「それは、こっちのセリフだ。俺たちはこの家の主だった奴の親族だ。出ていくのはお前たちだ」

 

男は勝ち誇るような笑みを浮かべ、父さんを睨みつける。

 

しかし、父さんは、そんな睨みを物ともせず、後ろの方を見る。

 

「先生、お願いします」

 

「はい」

 

すると、父さんの後ろから、スーツを着て眼鏡を掛けた男に人がいた。

 

「私、弁護士の北野と申します。本日は、紺野孝明様のご遺言の発表に参りました」

 

「ゆ、遺言だと?」

 

「はい。では、失礼して」

 

弁護士の人は鞄から、一つの封筒を取り出し、中の遺言状を読みだした。

 

 

『遺言状

 

この遺言状は藍子、木綿季が二十歳になった時に発表とする。

 

私の死後、家、土地の権利書は妻の文江に譲り渡す。

 

しかし、遺言状の発表の際に、妻が他界していれば、権利書は全て娘の藍子と木綿季に譲り渡す。

 

だが、娘たちが二十歳になる前に他界してしまったら、告別式の後に発表をする。

 

そして、全ての権利書は、私の親友、朝霧零矢に全て譲り渡すことにする。

 

二○二四年五月二十三日 紺野孝明 印』

 

 

「以上で、遺言状の発表を終わりにします。この遺言状の通り、この家、土地の権利書は全てこちらの朝霧零矢様に譲り渡されることになります」

 

「ふ、ふざけるな!そんな遺言状、認められるか!!」

 

「ですが、この遺言状は紺野孝明様が、生前、私の目の前で書かれ、その後は、銀行に預けてありありました。法的に、遺言状に問題はありません。なんなら、裁判を起こしますか?」

 

「………くそっ!」

 

男はそう吐き捨てると、床を踏み抜かん勢いで、歩き、部屋を出る。

 

それに続いて、他の連中も出ていく。

 

「では、朝霧様、後ほど事務所まで。手続きなどがありますので」

 

「分かりました」

 

弁護士の人も頭を下げ、家を出ていく。

 

「………父さん。その………ありがとう」

 

「………礼を言われる理由は無い。私は、孝明との約束を果たしただけだ」

 

小さな約束をなっと父さんは付け加え、出て行った。

 

珪子に手を取ってもらいながら、立ち上がり、部屋を見渡す。

 

「よかった………この家が残ってくれて」

 

「……そうだね」

 

俺の呟きに珪子が答える。

 

「……帰るか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に着くともう陽は沈み、夜になっていた。

 

帰る間、珪子はずっと無言だった。

 

「じゃあ、また明日な」

 

家の前まで送り、自分の家に帰ろうとすると、袖が掴まれた。

 

見ると、珪子が袖を掴んでいた。

 

「……ちょっと、上がってかない?」

 

少し様子がおかしかったが、厚意に甘え、家に上がる。

 

家に上がると、そのまま珪子の部屋に通される。

 

家の中が静かだな。

 

誰もいないのか?

 

そう思い、聞こうとしたら、珪子は行き成り俺に飛びつき、そのままベッドに俺を押し倒した。

 

「珪子、どうした?」

 

見て見ると、珪子の肩が震えていた。

 

「……お願い……暫くこのままでいさせて」

 

いつもと違う様子に戸惑ったが、何も聞かないで、頭を撫でてやった。

 

暫くそうやっていると珪子は少しずつ話し始めた。

 

「……不安だった」

 

「…何がだ?」

 

「……レインが、ユウキに取られちゃうんじゃないかって」

 

「え?」

 

「レイン、ユウキと一緒にいるとよく笑ってたし、楽しそうだったし………なんか、あたしといる時より、恋人らしくて………とても不安だった」

 

その言葉に俺は何も言えなかった。

 

思えば、ユウキと知り合ってからあまり珪子に構ってやれなかった。

 

最後にちゃんと話したのはいつだったかすら覚えてない。

 

「………ユウキが亡くなったばっかりなのに、あたし何言ってるんだろう……ごめん」

 

珪子が俺から離れて起き上がろうとする。

 

珪子の手を掴み、そのまま引き寄せ、抱きしめながらキスをする。

 

珪子も最初は驚いていたが、徐々に落ち着き、黙ってキスを受け入れた。

 

何秒がキスし、離れると珪子は俺を見つめて来る。

 

「ごめんな……俺、ユウキの事しか考えてなくて、お前の事放りっぱなしだった。お前の彼氏なのに、ごめんな」

 

「ううん、あたしの方こそごめん。つまらない嫉妬なんかして」

 

「確かにさ、ユウキに好きって言われた時、素直に嬉しかった。でも、俺にはお前しかいない。約束する、もう二度とお前を不安にさせない。絶対だ」

 

「うん……信じてる」

 

そして、俺たちはもう一度キスを交わす。

 

「……ねぇ、しばらくこのままでいさせて」

 

「……ああ」

 

俺に寄り添うように抱かれ、珪子は目を閉じる。

 

俺は何も言わず、珪子の頭を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゃんと、シリカの事愛してあげなよ。でないと、呪うからね!

 

ああ、判ってるよ。………ユウキ

 




なんかグダグダな感じになってしまった。

原作ではユウキの家がその後どうなったか書かれて無かったので書きました。

では、アンケートの途中経過を報告します。

アンケート途中経過

1 10票

2 6票

3 11票

4 10票

5 8票

以上の結果となります。

アンケートは十二月五日、即ち今日までとなります。

では、お待ちしております。

それと、次回は番外編として今までの振り返りをレインとシリカ+ゲストの三名でやる予定です。

内容としては、詳しい設定、没になった設定、原作との変更点、またどうして変更したのかなどを書く予定です。

そこで、アンケートの結果も発表します。

では、次回もお楽しみに
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