二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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バレンタインなんてなくなればいいのに

彼女いない歴=年齢のほにゃーです。

そんな恨みを込めて、こんな話を書きました。


バレンタイン特別篇

朝、机の上に置いてあるデジタル時計がアラーム音を響かせる。

 

布団の中は温かく、布団の外は冷える。

 

できれば、このまま惰眠をむさぼりたい所なのだが、今日は学校。

 

登校しないといけない。

 

それに、このうるさいアラーム音も止めないといけない。

 

布団から出て、アラームを止める。

 

欠伸を一つし、制服に手を掛ける。

 

制服に着替え、一階に降りると、既に父さんが朝食を作り終えていた。

 

うちの両親は共働きで、特に母さんは朝早く出かけることがある。

 

そんな日はこうして父さんが作るのが我が家の決まりだ。

 

父さんが夜勤で、母さんが朝早く出かけるときは俺が作る。

 

「父さん、おはよ」

 

「おお、おはよう。すまんが、もう病院にいかないといかん。雹とつららはもう学校に行ったから、戸締りは頼んだぞ」

 

そう言って父さんは、鞄とコートを手に取り、作った弁当を手に家を出る。

 

「いってらっしゃい」

 

「いってきます」

 

父さんを見送ると、俺は席に着き、朝食を食べる。

 

ニュースではバレンタイン特集だとかで盛り上がっている。

 

そうか、今日はバレンタインか。

 

………………珪子の奴、くれるかな?

 

…………いや、くれるよな。

 

だって…………俺、彼氏だし。

 

少しだけ期待をし、朝食のパンを食べ終える。

 

 

 

 

 

コートを羽織り、マフラーを着けて家を出る。

 

鍵をしっかり締め、振り返ると、珪子が家の前で待っていた。

 

俺に気付くと、笑顔を浮かべる。

 

「おはよ、雫」

 

「おお、おはよ、珪子」

 

「じゃあ、行こう」

 

そう言って珪子はすたすたと前を歩く。

 

あれ?チョコくれないの?

 

もしかして学校で渡すつもりか?

 

頭の中にいくつか疑問が思い浮かびながらも、学校へと向かう。

 

教室に入ると、暖かい空気が顔に当たる。

 

マフラーとコートを脱ぎ、鞄を机に置く。

 

「おっす、おはよーさん」

 

「よぉ、ギン。相変わらず人生が楽しそうな顔だな」

 

「どんな顔だよ」

 

いつも通り前の席のギンに挨拶をし、ホームルームまで雑談をして時間を潰す。

 

珪子も女友達と雑談をしている。

 

あれ?くれないの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

今日は父さんが作ってくれた弁当を教室で食べた。

 

珪子は女友達と食べるとかで、今日は一緒じゃない。

 

「あ、雫君」

 

名前を呼ばれ前を見ると、扉から顔を出してる明日菜さんと里香さん、それと危さんがいた。

 

「どうしたんですか?一年の教室にまで」

 

「これだよ。はい、雫君へのチョコレート」

 

「私からも、感謝して食べなさい」

 

「ほら、詩乃からお前にだとよ。後で礼言っとけ」

 

三人からチョコを渡される。

 

「ありがとうございます。詩乃さんにも後でお礼言っときます」

 

「でさ~、どうなのよ?」

 

行き成り里香さんが俺に肩を組みながら話しかける。

 

「どうって何がですか?」

 

「だから、珪子からはどんなチョコもらったのかって話よ」

 

珪子………からね…………

 

「あ………あれ?その様子だと、まだ貰ってない?」

 

「……はい」

 

「えっと…………どんまい」

 

別に悲しくなんかないもん。

 

「でも変だなぁ」

 

「何がだ?」

 

「昨日、皆と一緒にチョコ作った時、珪子ちゃんもちゃんと雫君の分の手作りチョコ作ってたよ。だから、渡さないってことはないと思うけど」

 

「少なくとも昨日までは渡す気ではいたんだな」

 

「なら、考えられるのは」

 

そう言って明日菜さんと危さんが俺を見る。

 

「「雫(君)、今朝、珪子(ちゃん)に何した?」」

 

「何もしてませんよ!!」

 

昨日は会ってないし、それに機嫌を損なうようなことをしてないはずだ。

 

「あ、あれよ、あれ。今日の帰りに渡すつもりなんじゃない」

 

「そう、それだ。なにも人前で渡す必要もないしな」

 

「わ、わたしも和人君には、帰りに渡すつもりだし、きっと珪子ちゃんもそのつもりだよ」

 

「フォロー……どうもです」

 

少し落ち込みながら席に戻り鞄の中にチョコを放り込む。

 

残りの時間はふて寝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になり、俺と珪子はいつも通り一緒に帰る。

 

そして、後僅かで珪子の家に着く。

 

此処に来るまでにチョコのチの字はおろか、バレンタインのバの字も出てこない。

 

まさか、くれないのか?

 

「じゃあ、後でね」

 

そう言って、珪子は家に入って行った。

 

「結局、くれなかったか」

 

少し期待していたため、その分ショックも大きい。

 

「はぁ~」

 

溜息を吐いて、家に戻ると、リビングで雹がチョコを食っていた。

 

実のところ、コイツはモテる。

 

それに比べて小学生時代の俺はモテなかった。

 

まぁ、それも仕方ないがな。

 

「よぉ、大量に貰ったな」

 

「うん、多分学年全員分ぐらいあるかな」

 

本当によくモテる。

 

「お兄ちゃん、お帰り」

 

台所からつららが顔を出す。

 

「お兄ちゃんの分のチョコ、冷蔵庫にあるからね」

 

「ああ、分かった。じゃあ、飯出来たら呼んでくれ。少し寝る」

 

階段を上がり、自室の扉を開ける。

 

鞄を机に置き、コートを脱ぎ、制服のままベッドに横になる。

 

別に、ふて寝ではない。

 

ふて寝ではない。

 

大事なことなので二回言うぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雫、起きて」

 

身体を揺さぶられながら、誰かが俺の名前を呼ぶのが聞こえた。

 

目を開けると、珪子の顔が近かった。

 

「珪子……どうしてここに?」

 

目を擦り、あくびを一つする。

 

「さっき、また後でって言ったじゃん」

 

そう言えば言ってたような………

 

少し前の事を思い出しながら、ベッドから置き上がり、ベッドに腰掛けるように座る。

 

「まったく、チョコあげなかったからふて寝?」

 

「ち、違う!!」

 

図星を突かれ思わず慌てる。

 

そんな俺を見て、珪子はにやにやと笑う。

 

「笑うな!」

 

「ぷっ……あはははははははは!!」

 

そう言うと、珪子は口を開けて、涙目になりながら笑う。

 

「くっ!」

 

悔しさと恥ずかしさからそっぽを向くと、珪子が隣に座るのが分かった。

 

「そんな顔しないでよ。ちゃんとあげるから」

 

その言葉に反応して、振り向くと、珪子の手にはチョコが入ってるであろう箱があった。

 

珪子が蓋を取ると、中にはトリュフチョコが仕切りで分けられ十五個あった。

 

「うまそうだな」

 

「食べる?」

 

「あ、ああ」

 

そう言って手を伸ばすと、珪子が一個手に取る。

 

そして、そのまま口の中に入れ数回咀嚼する。

 

え?なんで?

 

疑問符を浮かべていると、すぐに答えが分かった。

 

珪子は俺を行き成りベッドに押し倒し、そのまま唇を重ねた。

 

舌で唇をこじ開けられ、口の中にチョコが入ってくる。

 

チョコの甘さと僅かな苦さを味わいながら、チョコでコーティングされた珪子の舌を自分の舌で感じる。

 

ディープキスをされ、鼓動が早くなるのが分かった。

 

十数秒程、ディープキスをして、唇同士が離れると、珪子は小悪魔みたいな笑顔を浮かべていた。

 

きっと俺の顔は真っ赤だろう。

 

「チョコの味はどうだった?」

 

「………甘くて………少し苦かった」

 

「うん、少しビターの風味も加えたの」

 

そう言って、珪子はもう一個トリュフチョコを掴み上げる。

 

「……ねぇ、もう一個食べる?さっきと………同じように」

 

その言葉に、俺は無言で頷いた。

 

「ふふ、まだ沢山あるから……ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

危と詩乃SIDE

 

「はい、危。チョコどうぞ」

 

「ああ、ありがとな」

 

危の部屋で、詩乃はチョコを手渡す。

 

「その……初めて作ったから出来が悪いけど」

 

「いいよ。詩乃が俺に作ってくれたってだけで充分だ」

 

「………ありがと」

 

恥かしくなり詩乃はそっぽを向く。

 

その姿に、危は笑みを浮かべ立ち上がる。

 

「ちょっと待っててくれ」

 

そう言って、棚から何かを取り出す。

 

「これ、開けてみろよ」

 

渡された箱を開けるように言われ、詩乃は疑問に思いながら蓋を開ける。

 

「うわぁ……綺麗」

 

箱の中にはシルバーネックレスが入っており、ハートの輪っかが付いていた。

 

「外国だと、男性からも贈るらしいからな」

 

危は照れ臭そうに笑いながら、笑う。

 

「ありがとう、危」

 

「おう」

 

二人は見つめ合い、同時に口を開く。

 

「「ハッピー・バレンタイン」」

 

 

 

 

 

 

白牙&里香

 

「はい、チョコ」

 

「おお」

 

帰り道、里香は恥ずかしさから、白牙の顔を見ないでチョコを渡す。

 

そして、白牙も里香の顔を見ずにチョコを貰う。

 

「「…………」」

 

互いに恥ずかしいため、会話が続かなかった。

 

白牙は、今、篠崎家に居候しているので、帰っても顔を合わせることになるのでどちらにしろ気まずい。

 

そんなのは嫌なため、白牙は口を開く。

 

「……来月、ちゃんと返すな」

 

「……うん」

 

しかし、会話が終わる。

 

「……ホワイトデー、出かけるか」

 

「……いいわよ」

 

一言に一言返すだけの時間。

 

それだけだったが、その時間が心地よいと白牙は感じた。

 

(あの家に居た時では、感じられなかったな)

 

そう思っていると、不意に右手に温かさを感じた。

 

見ると里香が白牙の左手の手袋を外し、同じく右手の手袋を外した状態で、右手で白牙の左手を握っていた。

 

「お、おい」

 

「……たまにはいいでしょ」

 

「……ああ」

 

繋がれた手を離したくないなぁっと思いながら白牙は頬を赤らめ里香の手を強く握る。

 

それに応えるかのように、里香も手を強く握り返した。

 

そんな行動を二人は家に着くまでの間ずっと繰り返した。

 

そして、その様子を影から里香の両親が見ており、温かい目をしていたのは言うまでもない。

 




書いていて悲しくなってきた。

そして、楽しくもあった。

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