バレンタインなので、これを機に更新を再開できたらいいと思ってます。
今回の話は、ユウキが助かったIFのバレンタインとの話になります。
2月14日、バレンタインデー
それは乙女にとっては戦いの日である。
意中の彼に想いを伝える日。
恋人と素敵な一日を過ごす日。
外国風に男の方から贈り物を渡す日。
チョコが貰えず一人男泣きする日。
この様に、バレンタインデーは様々な過ごし方ができる。
そして、VRMMPRPG“アルヴヘイム・オンライン”でも、乙女たちの戦いが繰り広げられていた。
「ねぇ、ユウキ。バレンタインはどうする?」
現在、シリカはレインと借りてる宿屋の一階にある食事処で、ユウキと話をしていた。
ユウキは生れた時に、HIVに感染し、小学生の時にAIDSが発症した。
あと一年、生きられるかどうか。
そんな状態だった。
だが、奇跡は起きた。
カナダに住む白人の骨髄に、AIDSに耐性を持った骨髄が見つかったのだ。
幸いなことにその人は骨髄バンクにドナー登録をされていて、すぐにその人の骨髄は日本に送られ、ユウキは骨髄移植を行った。
その結果、ユウキのAIDSは完治し、それに伴ってHIVも完治した。
だが、三年間VR空間で過ごして来たユウキの体力も筋力も衰え、退院するまでにはまだ時間が掛かると、倉橋先生は言っていた。
今は、病院で失った体力や筋力を回復するリハビリをこなしつつ、生活してる状態だった。
そして、今日はリハビリ休みで、こうしてシリカと遊んでいた。
「え?どうするって?」
「チョコ、レインに上げるの?」
「ふぇ!?」
この発言の通り、ユウキはレインに対して好意を抱いている。
だが、そのレインには既にシリカと言う恋人がいる。
ユウキはそれを承知で、シリカにレインへの思いを打ち明け、レインに想いを伝えた。
無論、レインはユウキ相手に浮気をするつもりも、シリカを捨ててユウキと付き合うといった考えはなく、ユウキのことはフったのだが、シリカは違った。
シリカは、ユウキがレインを好きになったことについて「別にいいじゃん」の一言で済ませ、挙句「私が一番だから問題ない」と言い放ち、むしろユウキの恋を応援していた。
これも、自分がレインの一番であると言う自信があるが故にできることだった。
「上げたいけど………いいの?」
「当たり前だよ。でも、リアルじゃ、まだ渡せないよね?」
「そうなんだよね………やっぱALOの中で渡す感じかな」
「あ!ならさ、材料取りに行こうよ!」
「材料?」
「うん。今、バレンタインイベントってのがあって、期間限定のダンジョンで出てくるモンスターを倒すと、チョコの材料が手に入るんだ。それを集めて、ゲームの中でしかできないチョコ作ろうよ!」
「なにそれ!?すごい面白そう!」
「じゃ、行こっか!」
「うん!」
二人は立ち上がり、期間限定ダンジョンへと向かった。
「それで、ユウキはどんなチョコを渡すの?」
「どんなって?」
「チョコにも色々あるでしょ。だから、どんなのがいいかなって」
世間話をするかのようにシリカは、目の前のチョコクランチデーモンを切り裂きつつ、訪ねる。
「う~ん、でも、僕チョコって板チョコとチロルチョコぐらいしか知らないしな~」
ユウキも、チョコスケルトンを刺突で粉々にしつつ、言う。
「そうだ。ちなみにシリカはレインにはどんなの渡したの?」
「あたし?SAOに居た時は、ゲーム内で買ったものかな。でも、去年はトリュフチョコ渡したよ」
「へ~」
「口移しで」
「へ~…………へっ!?」
衝撃的な渡し方に、ユウキは攻撃の手がミスる。
そんなユウキを、シリカはピックを投げてモンスターに攻撃し、フォローする。
ユウキはすぐに態勢を立て直し、モンスターを倒す。
「け、結構大胆な渡し方したんだね…………」
「まぁね。あの時のレイン、顔真っ赤にして凄く可愛かったなぁ。しかも、15全部、同じ方法で渡したんだ」
「う、うわ~……うわ~……」
シリカの話に、ユウキは平静を装うが、顔は真っ赤にし、目も泳いでいる。
「まぁ、何を渡すかは後で考えようか。材料もたくさん集まったし、帰ろ」
「う、うん」
ダンジョンを出ようとしたその時だった。
シリカとユウキの索敵に一体のモンスターの反応があった。
二人はすぐに振り返り、武器を抜く。
現れたのは、巨大なスライムだった。
白いスライムで甘い匂いを放つソレは、異質。
モンスター名は《White Chocolate Slime》、ホワイトチョコのスライムだった。
「これって、かなりのレアモンスターかな?」
「恐らくね。期間限定モンスター一覧に名前がないし、未確認の奴だね」
「なら、材料にはピッタシだね!」
ユウキはそう言うや否や、駆け出し剣を振る。
だが、ユウキの剣はスライムに弾かれる。
「うわっ!とっと……もういっちょ!」
もう一度、渾身の刺突を放つも、やはり剣はスライムの体に弾かれる。
「ユウキ!このスライム、物理耐性がかなり強いよ!魔法攻撃じゃないと、歯が立たない!」
「だったら!」
上級ソードスキルを発動し、魔法属性の付与された一撃を放つ。
スライムはその攻撃により、HPが大幅に削られる。
(上級ソードスキルとは言え、たった一撃であそこまでHPが削られるの……?)
HPの減りに違和感を感じつつも、シリカも攻撃に参加する。
魔法属性が付与されつつ、クールタイムが短いソードスキルを使いつつ、ユウキのフォローをしつつ、スライムにダメージを与える。
「「てやあああああああ!!」」
最後は、二人同時にソードスキルを放ち、スライムのHPを0にする。
「やった!」
「レアアイテムゲッドだね!」
二人で喜んでいると、スライムがポリゴンとなって四散する………はずだった。
スライムは破裂するように散り散りになり、ホワイトチョコが、辺り一帯に飛び散る。
むろん、チョコはその場にいたシリカとユウキにもかかる。
二人は、白い、ベトベトとしたモノが体中に掛かり、唖然とする。
「こう言う散り方するんだ………」
「うえ~、ベトベトするぅ~………」
今までと違うモンスターの散り方に、驚きつつも、二人は力なく笑う。
「早く帰って、着替えようか」
「だね」
今度こそ帰ろうとした時、また索敵範囲にモンスター反応があった。
だが、さっきと違い、今度は三十体近いモンスターだった。
そのモンスターたちは、一斉にシリカたちに近寄ってきた。
「ど、どうしてモンスターたちが!?」
「まさか!?」
シリカはあることに気づいた。
自分たちの体に付いたホワイトチョコ、そこから放たれるとても強い、甘い匂い。
この匂いが一帯のモンスターたちを、誘き寄せているのだと。
「ユウキ、蹴散らして逃げるよ!」
「そ、それが!剣が鞘から抜けないんだ!」
「え!?」
シリカはまさかと思い、自身の短剣を抜こうとする。
だが、鞘から短剣は抜けなかった。
「そ、そんな!?」
どうやら、チョコが固まり、鞘から剣が抜けなくなってしまったらしい。
前と後ろ、左右からモンスターがやってくる。
シリカとユウキは覚悟を決め、体術スキルで乗り切ろうとする。
「はああああ!!」
次の瞬間、前から来ていたモンスターが吹き飛び、紅いコートを身にまとったケットシーが現れた。
手にした刀のような両手剣、大太刀を振るいモンスターたちを蹴散らす。
全てのモンスターを殲滅すると、大太刀を鞘に納めて二人に振り替える。
「二人とも、無事か?」
「「レイン!」」
二人を助けたのはレインだった。
「シリカの両親から、シリカがまだALOから帰って来ないって聞いて、まさかと思ってな。やっぱりここに居たか」
「……うわっ、もうこんな時間!」
時刻を確認すると、12:00を超え、日付が変わっていた。
「とにかく、ここから出るぞ。それに、二人も着替えないとな」
そう言って、レインはそっぽを向く。
今の二人は、ホワイトチョコ塗れで、体中ベトベト。
その姿は、どこか煽情的だった。
レインも男の子。
そう言った知識はそれとなく頭の中に入ってくる。
しかし、その姿はレインにとって刺激が強すぎたらしく、レインは顔が真っ赤だった。
そんなレインを見て、シリカの中で何かのスイッチが入った。
「ねぇ、レイン」
「な、なんだよ?」
「帰るのはいいんだけど、あたし、体がすごいベタベタなんだ。こんな格好で、外に出るのはちょっと抵抗があるんだけど………」
「………え?」
「ねぇ………」
シリカはにやっと笑い、レインの胸に擦りつくように抱き着く。
「チョコ、舐め取ってくれない?」
「ちょ、おま!?ここ、ダンジョン内だぞ!変なこと言うな!ユウキ、お前からもなんとか」
「そ、その……僕も、レインさえ良ければ舐めて……欲しいなって………」
ユウキは顔を真っ赤にしつつも、レインのコートの裾を掴んで、そう言ってくる。
「ゆ、ユウキまで!?」
「日付は変わってもう14日だよ」
「こ、これが、僕らからのバレンタインだから………」
「「受け取って」」
この作品、二人のビーストテイマーの改訂版を作ろうと考えています。
この作品はこの作品で残し、投稿しつつ、改訂版を作ります。
どちらも楽しんでいただけると嬉しいです。
改訂版どうかお楽しみに。
なお、改訂版ではユウキもヒロインに追加する予定です