樹海を通り過ぎ、とうとうシルフ領の《スイルベーン》が見えた。
「お、見えてきたな」
「真ん中の塔の根元に着陸するわよ………そういえば、二人とも」
急に何かを思い出したのかリーファさんが声を掛けてくる。
「ランディングのやり方って分かる?」
確か、着陸の仕方だっけ?
その瞬間、キリトさんは顔を強張らせた。
「………解かりません」
まぁ、そうだよな。
俺はななとなく分かるけど………
「えーと………」
既に、塔が目の前に迫ってきている。
「ゴメン、もう遅いや」
リーファさんが申し訳なさそうに笑い、急減速始める。
それと同時に俺も急減速をする。
「そ、そんなバカなあああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――」
キリトさんの絶叫が響き、そして、塔にぶつかった。
「レイン………お前どうして、着陸できるんだよ?」
「二年近く空飛ぶ使い魔が近くに居ましたから」
「そうかよ。くっそ~、リーファも酷いぜ」
「ごめん、ごめん、回復してあげるから」
そう言うと、リーファさんは右手を上げ、呪文らしきものを唱える。
すると、キリトさんに青い雫の様な物が降り注ぎ、減ったHPを回復させる。
「おお、凄い、これが魔法か………」
初めての魔法にキリトさんは興味津々になる。
「高位の回復魔法はウンディーネにしか使えないけど、必須スペルだから、二人も覚えた方がいいよ」
「種族によって魔法の得手不得手があるのか。スプリガンは何が得意なんだ?」
「得意なのはトレジャーハント関連と幻惑魔法かな、どっちも戦闘不向きで不人気種族ナンバーワンなんだよね」
「うへ、やっぱり下調べは大事だな」
そう言ってキリトさんは立ち上がり、大きく伸びをする。
「それにしても、綺麗な街ですね」
「でしょ!」
俺の感想にリーファさんは嬉しそうに言う。
「リーファちゃーん!」
その時、後ろから誰かがリーファさんに声を掛けた。
「ああ、レコン」
どうやら知り合いらしい。
「無事だったんだ。流石はリーファちゃん………って、スプリガン!?」
キリトさんを見ると、レコンさんは警戒し、腰の短剣を握る。
「ああ、大丈夫よ。この人たちが助けてくれたの」
「へっ?」
唖然とするレコンさんを余所にリーファさんはレコンさんを指差す。
「こいつはレコン。私のフレンドなんだ」
「よろしく、俺はキリトだ」
「レインです、よろしくお願いします」
「あ、どうも」
俺達に握手をし、頭をぺこぺこ下げてくる。
「って、いや、そうじゃなくて!大丈夫なの?ケットシーの子はともかく、このスプリガン、スパイとかじゃ」
「大丈夫よ。スパイにしては、天然ボケ過ぎるし」
「うわ、ひでぇえ……」
さり気なくキリトさんは落ち込んでいた。
レコンさんはまだ、疑わしそうに見ている。
「シグルドたちはいつもの酒場で席取ってるよ」
「あ、そっか……ん~、あたし今日はいいわ」
「え!こないの?」
「お礼とお詫びにこの二人に一杯奢る約束してるんだ。じゃ、お疲れ」
そう言うと、リーファさんはキリトさんを引っ張り、先に行ってしまう。
レコンさんに一礼してから後を追った。
リーファさんの後を追い、《すずらん亭》という店に着き、リーファさんの奢りでそれぞれ注文した。
「さっきのはリーファの彼氏?」
「コイビトさんなのですか?」
「はぁ!?違うわよ!パーティーメンバーよ!」
キリトさんとユイちゃんの質問にリーファさんは慌てて否定する。
「でも、その割には仲良さそうでしたよ?」
「リアルでも知り合いっていうか、学校の同級生なの。…………それじゃあ、改めて、助けてくれてありがとう。それと、迷惑かけてごめん」
互いにグラスをぶつけ合い、一口飲む。
「それにしても、えらく好戦的な連中だったな。ああいう集団PKはよくあるのか?」
「元々、サラマンダーとシルフは仲悪いのよ。でも、ああいう集団PKは最近からね。きっと………近いうちに世界樹攻略を狙ってるんじゃないかな」
「それだ。その世界樹について教えてほしいんだ」
「そう言えば、そんな事言ってたね。でも、なんで?」
「世界樹の上に行きたいんだ」
「……それは、全プレイヤーがそう思ってるよ。っていうか、それがALOのグランド•クエストなのよ」
「と言うと?」
「滞空制限があるのは知ってるでしょ?どんあ種族も連続で飛べるのは十分が限界なの。でも、世界樹の上にある空中都市に最初に到達して、《妖精王オベイロン》に謁見した種族は全員、《アルフ》っていう高位種族に生まれ変われるの。そうなれば、滞空制限はなくなっていつまでも、自由に空を飛ぶことが出来るの」
「なるほどな」
注文したタルトを齧りながら、キリトさんは納得する。
「世界樹の上に行く方法は?」
「世界樹の根元がドームになっていて、そこが空中都市の入口になってるの。でも、そのドームを守ってるNPCのガーディアン軍団が凄い強さなの」
「そんなに……」
「オープンして一年経つのに、まだクリアできないクエストなんてアリだと思う?」
「何か、キークエストとか見落としてるとか、単一の種族じゃ攻略できないとかなんじゃありませんか?」
「いいカンしてるわ。クエスト見落としはいま躍起になって検証してるわ。でも、後者は絶対に無理ね」
「どうしてですか?」
「だって矛盾してるもの。『最初に到達した種族しかクリアできない』クエストを他の種族と協力して攻略しようだなんて」
確かに…………
「じゃあ、世界樹を攻略するのは、無理ってことかよ?」
「あたしはそう思う。でも、諦めきれないよね。いったん飛ぶことの楽しさをしっちゃうとね。例え、何年かかっても、きっと」
「それじゃ遅すぎるんだ!」
キリトさんはアスナさん助けたい。
早く助けたい。
だから、今焦っている。
「パパ」
「キリトさん」
ユイちゃんと俺は宥めるように、声をかける。
「……すみません」
「……ごめん、でも、俺たち、どうしても世界樹の上に行きたいんだ」
「……なんで、そこまで?」
「人を……探してるんだ」
「ど、どういうこと?」
「……簡単には説明できない」
キリトさんは悲しそうな顔をして言う。
「ありがとう、リーファ。色々教えてもらって助かったよ。御馳走様、ここで最初に会ったのが君でよかった」
「ちょ、ちょっと待ってよ。世界樹に……行く気なの?」
立ち上がろうとしたキリトさんの腕をリーファさんは掴む。
「ああ。この眼で確かめないと」
「無茶だよ、そんな……。ものすごく遠いし、途中で強いモンスターもいっぱい出るし、そりゃ君も強いけど……………じゃあ、あたしが連れていってあげる」
「「「え……」」」
リーファさんの行き成りの言葉に驚く。
「いや、でも、会ったばかりの人にそこまで世話になる訳には……」
「いいの、もう決めたの!!」
そう言う、リーファさんの頬は赤かった。
「あの、明日も入れる?」
「あ、う、うん」
「俺も入れます」
「じゃあ午後三時にここでね。あたし、もう落ちなきゃいけないから。ログアウトには上の宿屋を使ってね。じゃあ、また明日ね!」
リーファさんはそう言うと、左手を動かし、ログアウトをしようとする。
「リーファ!」
キリトさんが急に声を上げてリーファさんを呼び止める。
「ありがとう」
キリトさんがお礼を言うと、リーファさんは笑みを浮かべ。ログアウトした。
「どうしたんだろう彼女」
リーファさんが消えてしばらく、リーファさんが座っていた椅子を見ていたキリトさんがそう呟いた
「さあ……。今のわたしにはメンタルモニター機能はありませんから……」
「でも、道案内してくれるってのはありがたいですね」
「マップならわたしにもわかりますけど、確かに戦力は多いほうがいいですね。それにしても……」
ユイちゃんは飛び、キリトさんに近づく。
「浮気はしちゃダメですよ」
「しない、しないよ!」
そんな、キリトさんとユイちゃんの言い合いを聞きながら全員で二階の宿屋に上がった。