二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第8話 ルグルー回廊

ルグルー回廊に着くと、中はとても暗くよく見えなかった。

 

リーファさんが言うには洞窟はスプリガンの得意分野だと言って、キリトさんに灯りの呪文を頼んだ。

 

キリトさんはユイちゃんが教えてくれるスペルをたどたどしく言い、魔法を使う。

 

ほの白い光の波動が広がり、俺たちの体を筒む。

 

すると、視界が急に明るくなった。

 

「暗視能力付加魔法か。スプリガンの魔法も捨てたもんじゃないわね」

 

「うわ、その言い方、なんか傷付く」

 

「でも、使える魔法は暗記しといた方がいいわよ。スプリガンのしょぼい魔法でも、それが生死を分ける状況だってひょっとするとないとも限らないし」

 

「うわ~、更に傷つく………」

 

「ドンマイです、キリトさん」

 

「レインの優しさが余計に俺を傷つける」

 

洞窟の中を進みながらキリトさんはたどたどしく、魔法のスペルを言い続ける。

 

「そんなつっかえたらちゃんと発動できないよ。機械的に暗記しようとするんじゃなくて言葉の意味を覚えて、魔法の効果と関連付けるようにして記憶するの」

 

「まさか、ゲームの中で英熟語の勉強みたいな真似ごとするとは…………」

 

「言っとくけど、上級魔法は二十ワードはあるわよ」

 

「うへぇ……俺ピュアファイターでいいよ」

 

「泣き言わない!って、メッセージだ。ごめん、ちょっと待って」

 

一端立ち止まり、リーファさんはメッセージを開く。

 

「………なんだこりゃ?」

 

疑問の声を上げた。

 

「エス……さ…し…す……う~ん」

 

「ふぃー!」

 

リーファさんが考えていると、肩に乗ってるフィーが声を上げた。

 

フィーのこの反応からして……

 

「キリトさん、何かが接近してきます。それもかなりの数です」

 

「モンスターか?」

 

「パパ、違います。プレイヤーです。十二人います」

 

「じゅうに!?…………嫌な予感がするわ。隠れてやり過ごそう」

 

「でもどこに?」

 

「そこはお任せを」

 

そう言うとリーファさんは俺たちを連れて壁の窪みに入る。

 

そして、魔法を使い、俺たちの目の前に薄いベールみたいなのを張った。

 

「喋るときは最低のボリュームで。魔法が解けちゃうから」

 

リーファさんの指示に俺たちは頷く。

 

「もうすぐ視界に入ります」

 

ユイちゃんの言葉に固唾をのんで待つ。

 

「あれ、何かな?」

 

「え?まだ何も見えてないけど?」

 

「プレイヤーじゃない、赤くて小っちゃい蝙蝠みたいな……」

 

よく見ると、キリトさんの言う通り、小っちゃい蝙蝠みたいなのが飛んでいた。

 

すると、リーファさんは行き成り通路に飛び出した。

 

「お、おい、どういした?」

 

「あれは高位魔法のトレーシング・サーチャーよ!潰さないと!」

 

魔法を使い、リーファさんは蝙蝠を倒す。

 

「走るよ!」

 

「また隠れるのは駄目なのか?」

 

「トレーサーを潰したのはもう向うにもバレてる。それに、あれは火属性の使い魔。てことは」

 

「サラマンダーか!」

 

わき目もふらず必死に走り、とうとう、湖に囲まれた中立の鉱山都市へ繋がる橋を渡る。

 

「どうやら逃げ切れそうだな」

 

「油断して落こっちないでよ」

 

その時、後ろから飛んで来た光線が都市の城門の前に落ち、巨大な壁を生み出した。

 

それを見て俺とキリトさんが武器を抜き、斬り掛かる。

 

だけど、攻撃は軽々と弾かれる。

 

「ムダよ。これは土魔法の障壁だから物理攻撃じゃ破れないわ」

 

「もっと早く言ってくれよ………」

 

「壊せないんですか?」

 

「攻撃魔法を沢山打ち込めば壊せるけど……」

 

「そんな時間くれる気は無いみたいだぜ」

 

すでに後ろからガチャガチャと金属音が鳴っている。

 

近つくたびにフィーが低いうなり声を上げる。

 

「湖に飛び込むのはありか?」

 

「無理よ。ここには超高レベルの水竜型モンスターがいるの。ウンディーネの援護なしに飛び込めば自殺行為よ」

 

「なら、戦うしかないな」

 

「ええ、でも、これだけ高レベルの土魔法をサラマンダーが使えるってことは、よっぽど手練れのメイジが混ざってるわ」

 

全員武器を構えると、とうとうサラマンダーの姿が見えた。

 

最初の三人が分厚い鎧やタワーシールドで固めた重戦士、残りは全員ローブを着たメイジだ。

 

「二人共、ここは俺のサポートに回ってもらえるか?俺の後ろで回復役に徹してもらいたい。その方が俺も思いっきり戦える」

 

キリトさんの指示に従い、俺たちは後ろに下がる。

 

キリトさんは走り出し剣を振りかぶり、攻撃をする。

 

サラマンダーはキリトさんに攻撃をしようとせず、三人が横並びになり、シールドを構える。

 

キリトさんの一撃にサラマンダーはHPが一割減る。

 

だが、後ろにいる、メイジがすぐに回復魔法で回復させる。

 

そして、さらにその後ろに居るメイジが火炎魔法でキリトさんを攻撃する。

 

「ぐあっ!」

 

爆発にキリトさんは吹き飛ばされHPがイエローにまで減る。

 

そして、リーファさんの回復魔法でHPを完全回復させる。

 

HPが回復すると、キリトさんは再び走り出し、今度は下から斬り上げるように斬る。

 

それにより、サラマンダーはHPが半分減るがすぐに回復させられ、またキリトさんに攻撃魔法が襲い掛かる。

 

斬り上げた時、ジャンプしたので今は空中に居る。

 

そのため、キリトさんは防御もできずに攻撃をモロに食らう。

 

リーファさんの回復魔法でまたキリトさんのHPを回復させる。

 

でもこのままじゃ、キリトさんが持たない。

 

「もういいよ、キリト君!またスイルベーンから何時間か飛べば済むことじゃない!奪られたアイテムだってまた買えばいいよ、もう諦めようよ……!」

 

「嫌だ!」

 

キリトさんが大声を上げた。

 

「俺が生きてる間は、パーティーメンバーを死なせやしない。絶対にだ!」

 

そうだった。

 

俺はここはSAOとは違うと思いこんでいた。

 

だから、こんな危機的状況でも安心していたんだ。

 

例えゲームでも、俺達にとってVRMMOはもう一つの現実だ!

 

そう考えた瞬間、背中の両手剣を抜き、走り出す。

 

「うおおおおおおお!」

 

遠心力を使い、全力で体ごと剣を振る。

 

相手の盾の陣形を崩すと、そのまま剣を振り下ろし、一人の頭に叩き込む。

 

「な、なんだこのケットシー!?」

 

「あの噂は本当だったのか!両手剣を使うケットシーってのは!」

 

「くそっ!爆裂魔法で吹き飛ばせ!」

 

後衛部隊のメイジたちが杖を構え呪文を唱える。

 

「レイン、下がれ!」

 

キリトさんの指示に従い後ろに下がる。

 

俺が下がると同時に、呪文が唱え終わり俺とキリトさんに向かう。

 

だが、爆裂魔法が俺とキリトさんを襲う直前、蝶の様なものが俺とキリトさんを包み、爆発から守ってくれた。

 

「今です、パパ!レインさん!」

 

ユイちゃんにそう言われた瞬間、キリトさんは剣を掲げ、俺は両手剣を地面に刺し、柄頭の上に両手を重ね、呪文を唱える。

 

先程見た呪文のテキストの中で今一番使えそうな術を思い出し、呪文を唱える。

 

炎が渦を作り、上へと消えると同時に、その炎の渦の中心から黒い山羊の様な悪魔と、あおの悪魔と同じぐらいの大きさの九尾の妖狐がいた。

 

悪魔は幻影魔法で変身したキリトさんで、妖狐は変異魔法で変異したフィーだ。

 

現れた悪魔と妖狐にサラマンダーたちは狼狽え、陣形を乱す。

 

悪魔と妖狐は敵を爪で切り裂き、牙で食い殺し、徐々にサラマンダーたちを葬って行く。

 

リーダー格だったサラマンダーは逃げようと湖に飛び込み、水竜型モンスターの餌食になった。

 

最後の一人のサラマンダー掴み、悪魔がその頭を指でねじ切ろうとする。

 

「あ、キリト君!そいつ生かしといて!」

 

悪魔になったキリトさんはそのサラマンダーのメイジを離し、地面に落す。

 

リーファさんは剣を抜き、切っ先をそのメイジに向ける。

 

「さあ、誰の命令とかあれこれ吐いてもらうわよ!!」

 

「こ、殺すなら殺しやがれ!」

 

「この……」

 

「いや~、危なかったな」

 

ピリピリした空気を変身を解いたキリトさんが壊した。

 

「よう、ナイスファイト!良い作戦だったな。俺一人だったらやられてたぜ」

 

「は?」

 

「ちょ、ちょっと、キリト君?」

 

「まぁ、見てな。それで、ものは相談なんだけど、これ、今の戦闘で俺がゲットしたアイテムとユルドなんだけど、俺たちの質問に答えてくれたらコレ全部上げようかな~なんて」

 

「え?…………まじ?」

 

「まじまじ」

 

そこで、メイジのサラマンダーとキリトさんはにやっと笑った。

 

賄賂は大切だな。

 

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