本編より、最後のおまけの様な部分が本編みたいな感じになってしまいつつあります。
ユージーンさんを倒すと、沈黙が流れた。
誰も話さない。
そんな中、沈黙を破ったのは
「見事、見事!」
「凄い、ナイスファイトだよ!」
二人の領主さんだった。
そして、他のシルフとケットシーの人たちも歓声を上げる。
驚いたことに、サラマンダーの人たちからも、先程の戦闘を称賛する声が上がった。
俺は一息入れると、そのままゆっくりと下へと降りる。
「やったな。レイン」
「正直、かなりギリギリでしたけどね」
みんなで勝利を喜んだあと、サクヤさん(シルフの領主さん)がユージーンさんのリメンライトに蘇生魔法を掛け、復活させた。
「まさか、ケットシーにこんな強者がいるとは、ケットシーも侮れんな」
「これでも両手剣使いですから。両手剣の勝負で負ける気はないですよ」
「そうか。だが、次こそは俺が勝つ」
「いいですよ。次も俺が勝ちますから」
俺とユージーンさんはにやっと笑い、握手をした。
「それで、約束は守ってくれますよね」
「言っただろ?俺は武人だ。一度剣に誓えば、何があろうと反故する気は無い。それに、貴様のようなケットシーがいるとなれば、退く理由には十分だ」
「ありがとうございます」
そう言うとユージーンさんはサラマンダーの大部隊を率いて帰って行った。
結構いい人だったな。
「すまんが……状況を説明してもらえると助かる」
サクヤさんが状況の説明を求めて入って来た。
ここまでに至った経緯を話すとサクヤさんはアリシャさん(ケットシーの領主さん)に《月光鏡》という魔法を使ってもらい、シルフ領に居るシグルドをシルフ領から追放した。
「それにしても、君、凄い強いね。でも、私、君みたいな子初めて見るんだけどな~。初心者にしては戦いなれてるし、でも、それだけの実力で両手剣も使うとなれば、私の耳にはさんでもいいぐらいなのにな~」
うっ、来たか………
闘ったら来るかと思ってたけど………何て言って誤魔化そうか………
「ちょっと、領主館まで来て、話聞かせてもらうよ」
え!?そ、それはマズイ!
一刻も早く世界樹に行かないといけないのに!
「あ、あの、俺たちどうしても世界樹に行かないといけないんです!今すぐに!」
「世界樹?どうして?」
「………探してる人がいるんです。だから、世界樹に行かないといけないんです!説明なら帰って来てからいくらでもします。だから、今だけは許してください!」
頭を下げて、お願いする。
「俺からも頼む。俺達はどうしても行かないといけないんだ」
「あたしからもお願い!今だけは見逃して!」
キリトさんとリーファさんもアリシャさんに抗議してくれる。
「う~ん、でもな~」
「アリシャ、彼らに助けてもらい、そのおかげで同盟も無事に済んだ。なら、少しぐらい我儘を聞いてやってもいいだろ?」
「………分かったよ。サクヤちゃんもそこまで言うなら、もう聞かない。ごめんね、無理強いするようなこと言って」
「あ、ありがとうございます!」
お礼を言うと、リーファさんが口を開く。
「ねぇ、サクヤ、アリシャさん、今回の同盟って世界樹攻略のためなんでしょ?」
「まぁ、究極的にはな」
「その攻略に、あたしたちも参加させて欲しいの。それも、できるだけ、早く」
「それは構わない。というより、こちらから頼みたいぐらいだ。だが」
「攻略メンバー全員の装備を整えるのに暫くかかると思うんだヨ。とても一日二日じゃ……」
「いや、いいさ。取りあえず樹の根元まで行くのが目的だし……あとはなんとかするよ。あ、そうだ」
そう言うとキリトさんは全財産が入った革袋を取り出した。
「これ。攻略資金の足しに使ってくれ」
「え!?こ、こんな大金を!?」
「ああ、俺にはもう必要ないからな」
キリトさん。豪快だな~。
でも、後の事考えてないよな、きっと……
「これだけあれば、かなり目標金額に近づくよ」
「すぐに装備を整えて、準備が出来たら連絡させてもらうよ」
「その時はよろしく頼む」
そして、サクヤさんとアリシャさんの合図で全員が帰る準備に入った。
「何から何まで世話になったな。君たちの希望に極力添えるように努力することを約束するよ」
「アリガト!また会おうネ!」
そう言ってサクヤさんとアリシャさん、シルフとケットシーの人たちはケットシー領に向かって行った。
「さて、俺たちも行こうぜ」
「そうね」
「はい」
キリトさんを合図に、りーファさんが飛び、俺も飛ぶ。
その時、俺の視界に世界樹が見える。
「………あそこまでいけば、きっとシリカも」
シリカの顔を思い浮かべ、俺は拳を握る。
「待っててくれ」
翅を震わせ、キリトさんたちの後を追うように、俺も空を飛ぶ。
早くシリカに会いたい。
それだけを胸に秘め、俺は空を飛んだ。
何かの操作室らしい所である仕掛けをした後、あたしはすぐにその部屋を出た。
いつまでも同じ部屋にいるのは危ないし、出口を見つけないといけない。
「それにしても、全然出口が見当たらない。それに、似たような場所で、なんか同じ所をずっと回ってるような気がするなぁ……」
そう言えば、こんな感じの迷宮区がアインクラッドにもあったっけ。
「あの時、転移結晶もなくて、レインがすごい慌ててたっけな~」
それを思い出したら自然と笑いが込み上げてきて、思わず笑ってしまった。
そして、同時に悲しくもなってきた。
「早く……会いたいな………」
いつの間にか涙が出てきて、床を濡らす。
「泣いてちゃダメだ……!早くここを抜け出さないと!」
涙を拭き、気合を入れなおして歩き出す。
「シリカちゃん!?」
「誰!?」
名前を呼ばれ、振り返る。
そこにはあたしの知ってる人がいた。
「アスナさん!?」
アインクラッドで共に二年間を生き抜いた人、アスナさんだった。
次回からオリジナル展開になります。
シリカが施した仕掛けが何なのかお楽しみに。