二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第24話 ユウナの真実

「お……お別れ?」

 

「もしかして、親が見つかったのか?」

 

俺の問いにユウナは首を横に振る。

 

「お兄さんか、お姉さんでも見つかったの?」

 

シリカの問いにもユウナは首を横に振る。

 

「お兄ちゃんたちは《メディキュボイド》って知ってる?」

 

《メディキュボイド》、その言葉に聞覚えは無く俺とシリカは首を横に振った。

 

「そっか…………私もよくわかんないんだけど、簡単に言うとナーヴギアを医療用に使ったものなんだ」

 

「医療用だって?」

 

「うん、私はね、生まれた時から体が弱かったの。何度も入院と退院を繰り返して…………そして、とうとう終わりが来た」

 

ユウナの言葉に俺とシリカは冷水を掛けられた感覚に襲われた。

 

「末期の白血病。少なくとも半年までが限界だって言われちゃった」

 

「そんな…………」

 

シリカは行きなりの出来事に頭が追いつけず、その場に崩れ落ちた。

 

「そんな時、どこかの会社が《メディキュボイド》を持ってきたの。試験的に運用して欲しいって。私の担当の倉橋先生がせめて私に苦しまずに逝ってほしいって言ってね。私も被験者の一人として選ばれたの」

 

「親は、親御さんはどうだったんだ?何かそれについて言ってたんじゃ」

 

「私はね、捨て子なの。もともと裕福じゃない家庭だったらしくて、私の体が弱いって知るとすぐに捨てられた」

 

そんな…………体が弱いからって、子供を捨てるなんて…………

 

「でも、寂しくなかった。私が入った施設は良い所だったし、友達もいたし、それに………………………………この世界でお兄ちゃんとお姉ちゃんに出会えた」

 

「え?」

 

その言葉に俺は頭に?を浮かべた。

 

「私は本当のお父さんもお母さんも知らない。兄弟がいるのかも分からない。でも、私にとってお兄ちゃんとお姉ちゃんは本当のお兄ちゃんとお姉ちゃんなんだ。だがら、会えてよかった」

 

そう言うとユウナは目から涙を流した。

 

「お兄……ちゃん、お姉……ちゃん、ユウナのこと………忘れないでいてくれる?」

 

シリカはユウナを抱き寄せ強く腕の中で抱きしめた。

 

「忘れない………絶対に忘れない!ユウナちゃんのこと、ユウナちゃんとの思いで全部忘れない!」

 

俺もしゃがみ、ユウナの頭に手を置いた。

 

「当たり前だろ。絶対に忘れるわけがない。だって…………ユウナは俺達の大事な妹なんだ。なにがあっても忘れない」

 

下を向きユウナの頭を撫でる。

 

今、ユウナの顔を見たら泣き出してしまいそうだ。

 

「あ、あはは、お兄ちゃん、泣いちゃってるよ」

 

残念ながら涙は既に出ていたみたいだ。

 

「最後までユウナにとってかっこいいお兄ちゃんでいてよ」

 

俺は服の袖で顔を拭きユウナを見る。

 

「これで、いいか?」

 

「うん、いつものかっこいいお兄ちゃんだ」

 

涙で頬を濡らした顔でユウナは微笑む。

 

今度はシリカの方を向く。

 

「お姉ちゃん、泣かないでよ。私は、笑ってるお姉ちゃんの顔が好きだよ。だがら、笑って」

 

「……うん、ごめんね。笑うから」

 

そう言ってシリカは無理やり笑顔を浮かべる。

 

「うん、ありがと」

 

ユウナは小さな背を背伸びし、俺とシリカの首に腕をまわしてくる。

 

「ありがと………大好きだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイバイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ユウナの体は動かなくなった。

 

時間が経てば、体も消えるだろう。

 

動かなくなったユウナの体をおぶる。

 

「……行こう」

 

「……うん」

 

俺の後にシリカが続く。

 

そのまま無言で歩きだす。

 

ユウナって、こんなに軽かったんだな。

 

何度もおんぶやだっこ、肩車をしてやったけど改めて考えるとユウナってこんなにも軽かったんだな。

 

そう思い歩き続けると、急に体が軽くなった。

 

背中から感触も消えた。

 

軽くなる直前背後からガラスが砕け散る音が聞こえた。

 

信じたくなかった。

 

だが、現実だ。

 

ユウナは、消えた。

 

俺は涙が出るのを堪えて歩く。

 

家に着き、扉を開ける。

 

「……ただいま」

 

「……ただいま」

 

『おかえり!お兄ちゃん!お姉ちゃん!』

 

「「!?」」

 

ユウナの声が聞こえた気がした。

 

居間に続く扉を開ける。

 

『遅いよ、お兄ちゃん!もうご飯だよ』

 

『今日はお姉ちゃんと寝る!』

 

『ねえねえ、明日、一緒に遊んで!』

 

『ピナ、フィー。ご飯だよ』

 

もういないユウナの面影が見えた。

 

そして、ユウナの声と姿が、消えていった。

 

「………この家、こんなに広かったんだな」

 

「………そうだね。とても広く感じるよ」

 

ゆっくりとした動作で装備を解除し服を着替える。

 

そして、そのまま飯も摂らずに寝室に向かう。

 

扉を開け、ベッドに座る。

 

シリカも隣のベッドではなく俺の隣に腰を落とす。

 

「……シリカ」

 

「……何?」

 

「………俺……ちゃんと兄貴できてたかな?」

 

「………それ言うなら私だってちゃんとお姉ちゃんできてたかな?」

 

「どうだろうな」

 

会話が途切れる。

 

しばらく無言が続く。

 

「……情けないよな。ユウナの命が残り少ないって言うのに、俺はユウナを放って置いて命が危ないことしてたんだから」

 

「……レイン」

 

「……俺、兄貴失格だ」

 

また涙が出てきた。

 

涙と一緒に色んな感情も流れ出てきた。

 

もっとユウナと遊んでやればよかった。

 

もっとユウナと出かければよかった。

 

もっとユウナと一緒に居ればよかった。

 

後の祭りの様にどんどんと後悔があふれ出す。

 

涙を流す俺の手が包まれた。

 

シリカの手だ。

 

「私だって、もっとユウナちゃんといてあげればよかったのに、それなのに、そんなこともしてあげなかった。私だってお姉ちゃん失格だよ」

 

シリカは涙を流して言う。

 

「……シリカ」

 

俺はシリカの手を優しく包み返した。

 

「……シリカ、絶対に生きて帰ろう。そして、ユウナに会いに行こう」

 

「……うん」

 

「……明日からまた攻略組に戻る。だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今は泣こう」

 

その日の夜、俺たちの家からはずっとすすり泣く音と声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~現実世界 ユウナが死ぬ少し前~

 

横浜港北総合病院の第四特殊計器室に一人の男が居た。

 

歳は若く、見た感じ好青年の印象がある。

 

男はその部屋に置いてある《メディキュボイド》に多くのコードを繫げ、備え付けの大型パソコンを弄っている。

 

「うん、これでいいだろ」

 

眼鏡のブリッジを人差指で押し上げ、大型のパソコンの使用記録を消し、《メディキュボイド》から不要なコードを外す。

 

「君には悪いが、どうせもう死ぬんだ。なんなら、その命、別の方に役立ててもいいだろう。安心したまえ。君が死んでも、悲しむ奴なんて精々あの医者ぐらいだよ」

 

男は嫌らしい笑みを浮かべ部屋を出る。

 

《メディキュボイド》の中に横たわる少女は動かない。

 

既に息は絶えている。

 

そして、《メディキュボイド》には一つのネームプレートが差し込まれていた。

 

《メディキュボイド試作二号機 第二被験者:佐良優奈》

 




最後に出てきた男、その名は……………まぁ、分かりますね。

次回はアルブスをメインにした話を書きます。

次回もお楽しみに
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