二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第28話 《二刀流》と《大太刀》

74層の迷宮区を攻略し続け、時間はもうすぐ午後三時になるあたりだった。

 

かなり遅くなったがどこかで昼ご飯を取ろうと考えてると、《索敵》に二人のプレイヤーの反応があった。

 

もしかしたらと思ってそこに向かうと、案の定キリトさんとアスナさんがいた。

 

「キリトさん、どうしたんですか?」

 

「ああ、レイン。今日は良く会うな」

 

確かに。

 

「それより、これってボス部屋だよな?」

 

灰青色の巨大二枚扉を指差しながら聞かれる。

 

「絶対ボス部屋ですね」

 

「だよな」

 

「どすうる?ちょっとだけ覗いてみる?」

 

アスナさんが少し不安そうにキリトさんに聞く。

 

「ボスは守護する部屋から出てこない。だから、扉を開けるだけなら大丈夫なはず」

 

「一応転移結晶を準備しましょう」

 

俺の言葉に全員が転移結晶を準備する。

 

俺とキリトさんを先頭に扉を開ける。

 

扉の中は暗く、中が見えない。

 

暫くすると両側に青い炎が灯る。

 

そして、その炎が連続して灯り、部屋の中を明るくする。

 

そして、ボスモンスターの姿が現れた。

 

巨大な人間の体のような体に山羊の頭がくっ付いたモンスター。

 

所謂、悪魔系モンスターか。

 

そして、右手には巨大な斬馬刀。

 

いままで色んなMobと戦ってきたが悪魔系は始めてだ。

 

隣に居たシリカは恐怖で声が出ないのか、口をあわあわさせていた。

 

その瞬間、ボスモンスターは轟くような雄叫びを上げた。

 

「うわあああああああああ」「きゃあああああああああ」

 

キリトさんとアスナさんが絶叫を上げて逃げ出す。

 

それにつられて俺とシリカも逃げ出す。

 

「うおおおおおおおおおお」「ひゃあああああああああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達四人は一心不乱に走り、安全エリアを目指す。

 

途中、何度かモンスターにターゲットにされたが無視して走る。

 

飛び込むように安全エリアに入り、壁に寄りかかってへたり込む。

 

「ああ、ビビった」

 

「凄いボスだね」

 

「あはは、やー、逃げた逃げた!」

 

「こんなに走ったの凄い久しぶりだよ」

 

暫く笑った後、アスナさんは表情を引き締めた。

 

「あれは苦労しそうだね」

 

「そうですね。見た感じ武器はあの斬馬刀だけですけど、特殊攻撃がありますよ、きっと」

 

「前衛に固い人を集めてどんどんスイッチしていくしかなさそうですね」

 

「盾持ちが十人は欲しいな……まぁ、当分は少しずつちょっかい出して傾向と対策を練るしかなさそうだな」

 

「盾装備、ねぇ」

 

アスナさんが意味ありげにキリトさんを見る。

 

「キリト君、何か隠してるでしょ」

 

「え?」

 

「片手剣の最大のメリットって盾を持てることでしょ。でもキリト君が楯を持ってるとこ見たこと無い。私の場合、細剣のスピードが落ちるからだし、スタイル優先で持たない人もいるけど。キリト君の場合、どちらでもないよね」

 

何故キリトさんが盾を持ってないのか俺は知ってる。

 

だが、スキル情報は大事な生命線。

 

それに、あの技はキリトさんとその周囲の溝を深めてしまうかもしれない。

 

「アスナさん、スキルの詮索はマナー違反ですよ」

 

さりげなくフォローする。

 

「う~ん、それもそっか。ごめんね」

 

そう言ってアスナさんはキリトさんに謝る。

 

「わ、もう三時だ。遅くなっちゃったけどお昼にしましょう」

 

「私達もお昼にしようか」

 

折角なので四人で昼食を摂ることになった。

 

シリカの弁当もうまいがアスナさんの弁当もうまかった。

 

それにしても、マヨネーズと醤油をアスナさんが作っていたことに驚いた。

 

シリカも驚いたらしく、米の作り方と引き換えにアスナさんに調味料の作り方を教えてもらっていた。

 

途中、クラインさんと《風林火山》のメンバーがやって来てかなり騒がしくなった。

 

それが楽しいと思ってるとまた新たな一団が現れた。

 

黒鉄色の鎧に濃緑色の戦闘服。

 

前衛六人は片手剣に大型のシールド、後衛六人は戦斧を装備している。

 

あれは、《アインクラッド解放隊》通称《軍》だ。

 

「休め!」

 

先頭に居たリーダーと思われる人が号令をかけると全員がへたり込むように座る。

 

リーダーの人は前を向き俺達を見る。

 

「私は《アインクラッド解放軍》所属、コーバッツ中佐だ」

 

確か《軍》ってのは周りが揶揄的につけて呼称で正式名ではないはず。

 

まぁ、中佐とか階級までつけてるし、同じか。

 

「キリト、ソロだ」

 

「うむ、君たちはもうこの先まで攻略はしているのか?」

 

「ああ、ボス部屋までマッピングしてある」

 

「では、そのマップデータを提供してもらいたい」

 

「提供だと!?」

 

クラインさんが声を上げる。

 

「手前、マッピングする苦労が分かってんのか!?」

 

「我々は君ら一般プレイヤー解放のために戦っている!諸君が協力するのは当然の義務である!」

 

解放の為って、25層でのボス攻略戦以降まったく攻略に参加もしなかったくせに好き放題言いやがって。

 

「どうせ、街に戻ったら公開しようとしてたデータだ。構わない」

 

「おいおい、そりゃ人が良すぎるぜ、キリト!」

 

「マップデータで儲ける気は無い」

 

クラインさんを宥めてキリトさんはコーバッツさんにマップデータを渡した。

 

「協力感謝する」

 

「ボスに挑むならやめといた方がいい」

 

「それは私が判断する」

 

キリトさんお言葉に耳も貸さずにコーバッツさんは部下の人達を立ち上がらせ、先に進んだ。

 

「大丈夫なのかよ、あの連中」

 

「ぶっつけでボスに挑むことはないと思うけど」

 

普通なら挑まないだろうけど、コーバッツさんの様子を見ると挑みそうだな。

 

「一応様子だけでも見に行きませんか?」

 

俺の言葉にキリトさんは同意し、アスナさん、クラインさん、そして《風林火山》の人達も賛同してくれた。

 

途中何度がモンスターとバトルになり、ボス部屋付近に着くのは安全エリアを出てから30分後だった。

 

《軍》のパーティーと会うことが無くもしかしたら、帰ったのかと思っていると遠くから悲鳴が聞こえた。

 

まさか………………

 

キリトさんとアスナさんが素早く駆け出し、俺とシリカもそれに続く。

 

扉の手前で止まり、キリトさんが呼びかける。

 

「おい!大丈夫か!」

 

中ではコーバッツさんの部隊が闘っていた。

 

ボスである《グリームアイズ》は右手に握った斬馬刀を振り回し、《軍》を蹴散らす。

 

人数を確認すると先ほどより二人少ない。

 

まさか……

 

「何をしてる!早く転移結晶を使え!」

 

「だ、ダメだ!クリスタルが使えない!」

 

「な…!?」

 

結晶無効エリア!?

 

ということはいない二人は死んだってことか。

 

今までのボス部屋ではなかったのに!

 

「我々《解放軍》に撤退の二文字は有り得ない!戦え、戦うんだ!」

 

「バカ野郎!」

 

「おい、どうなってんだよ!」

 

クラインさんたちも遅れて辿り着いた。

 

状況をつたえるとクラインさんは顔を歪めた。

 

「どうにかできないのかよ!」

 

今ここで俺達が切り込めば退路は開ける。

 

だけど、下手すれば誰かが死ぬ。

 

「全員突撃!」

 

コーバッツさんがHPが限界まで低い二人を下がらせ、残りの八人で四人に列を作り突撃をする。

 

「やめろ!」

 

キリトさんが叫んだ。

 

あまりにも無謀な攻撃だからだ。

 

八人で一斉に飛びかかれば満足にソードスキルを発動することもできない。

 

一人ずつダメージを与え、スイッチして戦うべきなんだ。

 

《グリームアイズ》は息を吐いた。

 

行にもダメージ判定があるらしく、八人が怯む。

 

そこに、すかさず《グリームアイズ》の斬馬刀が突き立てられる。

 

そして、今度は斬馬刀を振り上げるように構える。

 

その餌食になりそうなのはコーバッツさんだった。

 

そう認識する前に俺は走り出し、背中に背負った《エクソロサイス》を抜き、剣を防いだ。

 

「早く、撤退を!」

 

「そ、そんなことが出来るか!我々は「HPが残り僅かなんですよ!このままじゃ死にます!早く!」

 

「………くっ!動ける者は動けぬ者を抱えろ!撤退だ!」

 

僅かに動けるプレイヤーが動けないプレイヤーを抱え動き出す。

 

だが、筋力値が低いのか中々うまく行かない。

 

まずい、もう、抑えきれない!

 

「せやああああ!」

 

急に《グリームアイズ》の斬馬刀が跳ね上げられる。

 

やったのはシリカだ。

 

「シリカ!」

 

「もう、勝手に飛び出して!行くならあたしも連れてってよね!」

 

「……サンキュー」

 

見るとキリトさん、アスナさん、クラインさん、《風林火山》の人達も着て

 

手伝ってくれていた。

 

だが、《グリームアイズ》はかなり強い。

 

このままじゃ、全員の撤退が間に合わない。

 

「アスナ、クライン、レイン、シリカ!頼む!十秒だけ持ちこたえてくれ!」

 

キリトさんが叫んだ。

 

アレを使うのか!

 

「わかった!」

 

「わかったよ!」

 

「わかりました!」

 

「了解です!」

 

クラインさん、アスナさん、シリカ、俺の順にスイッチを繰り返し、《グリームアイズ》の攻撃を防ぐ。

 

「いいぞ!」

 

キリトさんの言葉に俺は斬馬刀を上に弾き飛ばす。

 

「スイッチ!」

 

《グリームアイズ》はすぐに斬馬刀を振り下ろす。

 

キリトさんはその攻撃を右手に握った《エリュシデータ》で軌道をずらし、そして、背中に現れた別の剣を抜きざまに切り上げた。

 

クリーンヒットの為、《グリームアイズ》のHPが目に見えて減少する。

 

そして、キリトさんの左手には白い片手剣《ダークリパルサー》が握られてた。

 

本来、右手と左手に片手剣を握った状態だとイレギュラー装備状態となっってソードスキルは発動しなくなる。

 

普通なら。

 

だが、キリトさんは違う。

 

「スターバースト……………ストリーム!」

 

キリトさんが所有するエクストラスキル《二刀流》。

 

発動されたソードスキルから幾つもの斬撃が繰り出される。

 

星屑の様に飛び散るエフェクトフラッシュが空間を支配する。

 

そして、最後の一撃が《グリームアイズ》の胸の中央を貫いた。

 

だが、まだHPが残っていた。

 

万が一を考えて俺はキリトさんが飛び出した瞬間に武器スキルを変更していた。

 

そして、メニューウィンドウに《エクソロサイス》を仕舞い、《クイックチェンジ》を使って別の武器を装備した。

 

走り出し、キリトさんに振り下ろそうとされていた斬馬刀を塞ぎ横に払う。

 

《大太刀・白楼秋水-龍-》

 

俺の持つ最強の武器。

 

「うおおおおおお!」

 

そして、俺が持つエクストラスキル《大太刀》。

 

そしてその上位スキル《百鬼乱戦桜花》

 

∞を書くように斬り、この行為を五回繰り返して、最後に上から一直線に振り下ろす。

 

最後の一撃が決まりそして、《グリームアイズ》のHPは消し飛び、体はポリゴンの欠片になって消えた。

 

「………終わった……のか?」

 

そう後ろでキリトさん呟きが倒れた。

 




主人公のエクストラスキルもといユニークスキル《大太刀》。

これの説明は次回の話で説明します。

コーバッツは生きてます。
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