二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第30話 忍び寄る殺意

75層 コリニア

 

俺は古代ローマの円形闘技場のようなところの控室に居る。

 

キリトさんが勝手に俺とヒースクリフさんの試合を許可したからだ。

 

「はぁ~~~~」

 

「もぉ~、溜息ついてもしょうがないでしょ」

 

「だってさぁ~」

 

いくら同じユニークスキルと言っても向うの防御力と攻撃力は凄い。

 

そして、こっちは攻撃力なら申し分ないが機動力と防御力に欠ける。

 

「ほら、覚悟決めてシャンとしなさい」

 

背中を叩き俺に喝を入れてくるシリカ。

 

「わかったよ」

 

そして、控室からキリトさんとヒースクリフさんの試合を観戦する。

 

最初は互角のように思えたが、徐々にキリトさんのスピードが上がり、ヒースクリフさんは焦り始めていた。

 

そして、キリトさんは《グリームアイズ》に使った十六連撃技《スターバースト・ストリーム》を発動した。

 

ヒースクリフさんは持っている十字盾でガードをする。

 

キリトさんは構わず上下左右から攻撃を浴びせ続ける。

 

そして、十五連撃目がヒースクリフさんの十字盾を大きく右に弾き、最後の十六連撃目がヒースクリフさんを襲う。

 

キリトさんの勝ちだ。

 

そう思った。

 

だが、その瞬間、俺は自分の目を疑った。

 

なんせ、ヒースクリフさんが有り得ないぐらいのスピードで盾を引き戻し、キリトさんの最後の攻撃を防いだのだ。

 

何だ、今のスピードは………

 

キリトさんは大技を出してしまい硬直に入ってしまった。

 

ヒースクリフさんはその隙に十字剣でキリトさんを突き、キリトさんのHPは半分以下に落ちる。

 

デュエルが終わり、あたりは大きな歓声に包まれた。

 

そして、キリトさんはゆくりと立ち上がり、控室に戻って来た。

 

「キリトさん」

 

「……レイン、気を付けろ」

 

「……はい」

 

気を引き締めて闘技場に向かう。

 

ちなみにフィーはシリカに預けてる。

 

今回はフィーの力を使わないで戦うことにしたからだ。

 

闘技場に出るとあっちこっちから「殺せー」や「斬れー」などと物騒な言葉が聞こえる。

 

それとさっき「がんばれ、チビー」と聞こえた。

 

誰がチビだ!

 

「おや?君はビーストテイマーのはず。使い魔はいいのかね?」

 

「ヒースクリフさんこそ、連戦ですけど大丈夫ですか?」

 

「ははは、大丈夫だ、問題無い。早速始めよう」

 

そう言ってヒースクリフさんは俺にデュエルを申し込む。

 

《初撃決着モード》を選び、背中から《大太刀・白楼秋水-龍-》を抜き、構える。

 

ヒースクリフさんも十字盾に収めた十字剣を抜き構える。

 

そして、カウントが減り、前の前に【DUEL】の文字が現れた瞬間、俺は駆け出した。

 

駆けだすと同時に《アバランシュ》を発動し、一気に距離を詰める。

 

ヒースクリフさんは右に飛び攻撃を躱す。

 

だが、《アバランシュ》は避けられてもそのまま進むので相手との距離を取ることは可能だ。

 

硬直が解けた瞬間、すぐさま後ろを向き、剣を右下に構え走る。

 

ヒースクリフさんは十字剣で斬りかかってくるが、体勢を低くし、躱す。

 

そして《空閃一刀》を放ち、一気に斬り込む。

 

その一撃を十字盾で防ぎ、突きを放ってくる。

 

右足を上げ、ブーツに仕込んである鉄板で突きの軌道をずらしそのまま勢いを殺さず、後ろに宙返りするように着地する。

 

「子供と思って少々侮っていた。訂正しよう。君は強い」

 

「トッププレイヤーにそう言われてこちらも光栄です」

 

お互いの腹を探り合いながらにらみ合う。

 

勝てるなんて思ってない。

 

だけど、今、俺はとても楽しいと感じてる。

 

こんなに気分が高揚するのは久々だ。

 

ヒースクリフさんは十字盾を前に構え走り出す。

 

体が盾に隠れている。

 

だが、剣先が僅かにはみ出てる。

 

俺は剣先から視線をずらさずに構える。

 

徐々に距離が詰められる。

 

だが、剣先から視線を外さなければどこから攻撃が来るかある程度は予想できる。

 

そして、俺の体は飛ばされた。

 

ヒースクリフさんは剣ではなく十字盾で俺の体を攻撃してきた。

 

予想外の攻撃に俺はなすすべもなく飛ばされる。

 

なんとか体制を持ち直し、前を見ると既にヒースクリフさんの剣が眼前に迫っていた。

 

そして、俺は、あっさりと斬られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリトさん…………俺はあんたを一生許さない」

 

「まぁ、いいじゃないか」

 

よくねぇーよ!

 

キリトさんが勝手に俺とヒースクリフさんのデュエルを承認して、おまけに俺が負けたら《血盟騎士団》に入団って何だよ!?

 

聞いてねーよ!

 

「それに関しては悪い。でも、その条件じゃないと俺との条件も飲んでくれなかったんだよ」

 

「その条件って何ですか?」

 

「俺が勝ったらアスナの一時脱退を認める」

 

俺は、この人の欲望のために売られたのか!

 

「キリトさん、これから貴方の事を「キリットさん」って呼びます」

 

「なんでだよ!?」

 

せめて最悪の渾名を付けてやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺はいつもの蒼いコートではなく、純白のコートを着て《血盟騎士団》本部に向かった。

 

ちなみに、俺の勤務時間は10時~17時まで、それと筋が通った理由ならギルドを止めてもいいという条件が付いてる。

 

筋が通った理由って何だよ?

 

《血盟騎士団》では基本、五人一組のパーティーを組むのだが、アスナさんの計らいで俺はアスナさんとキリトさんの三人で組むことになった。

 

正直、有難い。

 

不満そうなシリカを宥め、ギルド本部に向かうと、いきなり驚きの言葉を言われた。

 

「訓練?」

 

「そうだ、私を含む四人パーティーでここ55層の迷宮区を突破し、56層の主街区まで到達してもらう」

 

「ちょ、ちょっとゴドフリー!キリト君は私が」

 

アレ?俺は?

 

「副団長と言えども規律をないがしろにされては困りますな。それに、入団する以上、一度はフォワードの指揮を預かるこの私に実力を見せて貰わねば」

 

「あ、アンタなんか問題にならないぐらいキリト君は強いわよ!」

 

アスナさんがキレながら起こるが、ゴドフリーさんはそれを気にせず、街の西門に三十分後に集合と言って笑いながら出て行った。

 

何というか豪快な人だ。

 

ところで、俺の事忘れてない?

 

「はぁ~、折角キリト君といられると思ったのに………」

 

アスナさん、俺もいるんですけど…………

 

そんな俺を余所にキリトさんはアスナさんの頭に手を置いた。

 

「すぐ帰ってくるさ。ここで待っててくれ」

 

「うん………気を付けてね」

 

この二人、俺の事忘れてる…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不貞腐れながらキリトさんと町の西門に向かうとゴドフリーさん以外にも後一人いた。

 

あれは……クラディールさん。

 

「どういうことだ?」

 

「君たちの事は聞いている。だが、これからは同じギルドの仲間。過去の事は水に流してはどうだと思ってね」

 

ガハハハと笑うゴドフリーさんを余所にクラディールさんはゆっくりと歩きキリトさんの前に立ち頭を下げた。

 

「先日は、ご迷惑をおかけしました。二度と無礼な真似はしませんので…許して頂きたい」

 

「あ…ああ」

 

「うむ、これで一件落着!」

 

素直に謝って来たクラディールさんだったが、キリトさんは何か腑に落ちない表情をしていた。

 

「では、今日の訓練は危機対処能力も見たいので諸君らの結晶アイテムは全て預からせていただく」

 

「え?転移結晶もですか?」

 

「うむ」

 

転移結晶だけで無く、結晶アイテムはこのデスゲームでは生命線も同じだ。

 

俺は、結晶アイテムを切らしたことは一度たりともない。

 

まれに、結晶無効エリアもあるのでポーション系のアイテムを所持してる。

 

結晶アイテムを渡すのを拒否したかったが、クラディールさんは素直に渡したので、俺も素直に渡す。

 

それを見てキリトさんも渡した。

 

「よし、では出発!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

55層の迷宮区は荒野のフィールドだ。

 

キリトさんはイラついてるのか遭遇するモンスター全てを一刀のもと斬り倒してる。

 

暫く進むとゴドフリーさんが休憩をすると指示を出した。

 

手近の岩に座り込むとゴドフリーさんが食料が入った袋を投げ渡してきた。

 

中身は水とパンだった。

 

取りあえず喉が渇いたので水を飲むことにした。

 

見るとキリトさん、ゴドフリーさんも飲んでいた。

 

だが、クラディールさんは飲まずに、パンをかじっていた。

 

すると、急にキリトさんが水の瓶を投げ捨て水を吐きだそうとしていた。

 

俺は訳が分からなかった。

 

すると、急に体の力が抜けその場に倒れ込んだ。

 

目線をHPバーに移動させるとそのバーがグリーンに点滅していた。

 

マヒ毒………

 

見るとキリトさん、ゴドフリーさんもマヒ毒になっているみたいだ。

 

「お、おい、一体どうしたんだ?」

 

唯一クラディールさんだけ訳が分からないという顔をしていた。

 

「こ、この水を用意したのは………クラディール………」

 

「待ってくれ。瓶の中身はただの水のはず………」

 

クラディールさんが頭に疑問符を浮かべていると、急に何者かが現れてクラディールさんを斬りつけた。

 

「がはっ!?」

 

そして、クラディールさんも倒れる。

 

「おいおい、ダメだろ、クラディールよぉ~。ちゃんと瓶の中身は確認だろ?でないとすり替えられたことも分からないぜ」

 

そして、現れたのはいつもの柔和の笑みではなく、冷ややかで狂喜に狂ったような笑顔を浮かべた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、お前がバカ正直に信じてくれたおかげで殺すのが楽になるな。あ、お前が水を飲まなかったのは計算外だったわ」

 

《剣聖》スバルさんだった。

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