二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第35話 ユイ

森の中で息を潜める。

 

聞こえるのは自分の呼吸音のみ。

 

汗が流れる。

 

敵が俺の前を通る。

 

ただ息を殺し通り過ぎるのを待つ。

 

相手の足音が聞こえてくる。

 

だんだんと近づき、そして遠ざかっていく。

 

その瞬間、草むらから飛び出し走り出す。

 

敵もそれに気づき後を追ってくる。

 

だが、俺の方が早い。

 

俺が目指すとこには捕まった仲間がいる。

 

仲間は俺を見ると嬉しそうにする。

 

そして俺は仲間を解放するための行動に出る。

 

「うおっりゃああああああああああああ!」

 

右足で思いっきり缶を蹴り飛ばす。

 

「よし、みんな逃げろ!」

 

「早く、散れ!」

 

「逃げろ逃げろ!」

 

「あ~、またやられた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《はじまりの街》に付くと俺達は真っ先に教会に向かった。

 

相変わらず《軍》の徴税はあるらしく住人は全員が宿に籠ってしまってる。

 

でも、最近では徴税してる《軍》のプレイヤーを取り締まる《軍》のプレイヤーも増えてきたらしく被害もそこそこ減ってきてるらしい。

 

教会に付くと俺達の訪問にみんなが喜び歓声を上げた。

 

サーシャさんも笑って迎え入れてくれた。

 

そして、俺は同い年と少し年下の男子数人と缶けりをしてる。

 

これが結構楽しい。

 

普段は《軍》のプレイヤーのことを恐れ、外にはあまり出ないらしいんだが、今日は俺とシリカが来て居り、攻略組二人も居れば安心だろうと言うことで外に出ることを許可してもらった。

 

もちろんサーシャさんも付いてきてる。

 

やはり攻略組でも子供だから心配だと言ってた。

 

ちなみにギンとケインも誘ったが今日はミナと三人で狩りに行く日なので断られた。

 

まぁ、アイツ等なら早く帰ってくるだろう。

 

そう思ってると一人の子供が走って来た。

 

「サーシャ先生!大変だ!」

 

「どうしたの?」

 

「ギン兄たちが、《軍》の奴等に捕まっちゃった!」

 

「場所は!?」

 

俺は声を上げ聞く。

 

「東五区の道具屋の裏の空き地。軍が十人ぐらいでブロックしてて」

 

そこまで聞くと俺は走り出した。

 

東六区の市街地に出て、裏通りを通り、NPCショップの店先や民家の庭を通り抜け東五区の道具屋の裏の空き地に出る。

 

するとギンが二人を庇うように前に出て立っていた。

 

「ギン、ケイン、ミナ!無事か!」

 

「この声……レイン!」

 

ギンの声を聴き安心する。

 

「ああん?なんだ、このガキ?」

 

「見たことねぇ面だな」

 

「ちょうどいい、テメェーも税金払ってもらおうか」

 

男はにやけながら言ってくる。

 

怒りに任せて剣を抜く。

 

が、今の俺は私服。

 

剣どころか防具すら装備していない。

 

「子供たちを返して!」

 

狼狽してるとサーシャさんとシリカも到着した。

 

「おお、保母さんの登場か」

 

《軍》の男がいやらしそうに言ってくるがサーシャさんはそれを無視する。

 

「三人共、お金なんていいから全部渡しなさい!」

 

「そ、それが、こいつら金だけじゃダメだって」

 

「あんたら随分税金を滞納してるそうだな。金だけじゃ足りないんだよ」

 

「装備に防具、何もかも全て渡してもらおうか」

 

こいつ、要するに着衣も渡せって言ってやがる。

 

「そこを……通して」

 

サーシャさんが声を震わせて腰の短剣に手を伸ばす。

 

するとその時後ろから誰かが走ってくる音が聞こえた。

 

そして、二つの影が見えた。

 

その影は《軍》のプレイヤー達を飛び越え、ギンたち側の方に移る。

 

あれは……キリトさんにアスナさん!?

 

てか、キリトさん、子供背負ってるけど誰?

 

「もう大丈夫だから、装備を戻して」

 

アスナさんはギンたちに優しく指示する。

 

「おいおい、何だお前たちは?」

 

「我々、《軍》の任務を妨害するつもりか!」

 

「まぁ、待て」

 

リーダー格らしい男が仲間を宥めて前に出る。

 

「お前ら、見ない顔だが《解放軍》に楯突くのがどういうことか分かってるのか?」

 

腰の剣を抜き、刀身をぺたぺたと手で叩く。

 

太陽の光に反射された刀身が光る。

 

見た感じ、一度も損傷も修理をしてない感じの輝き方だ。

 

「それとも何だ?圏外に行くか?」

 

その言葉に俺は怒りを感じた。

 

一度も死ぬ恐怖を感じたことのない奴のセリフ。

 

そんな奴が軽々しく圏外なんて口にするな!

 

アスナさんも同じなのかいつの間にか出した細剣を抜いていた。

 

「お……お…?」

 

男は状況が呑み込めないのか口を半開きにしてた。

 

その瞬間、アスナさんが細剣下位スキル《リニアー》を発動し、攻撃した。

 

《リニアー》は細剣の基礎中の基礎の技でそこまで強くない。

 

ましてや圏内ではありとあらゆるダメージは《犯罪防止コード》によってシステムの障壁で阻まれる。

 

だが、攻撃者のパラメーターとスキルが上昇するにつれて、システム作動時のシステムカラーの発光と衝撃音は大きくなり、ソードスキルの威力によっては多少のノックバックがある。

 

だが、ただの《リニアー》男はかなり吹っ飛んだ。

 

あそこまで吹っ飛ぶなんてアスナさん怖い。

 

吹っ飛ばされた男は驚いた顔をしてる。

 

「安心して、圏内だからHPは減らないわ。少しノックバックがあるくらい。でも、圏内戦闘は心に恐怖を刻み込む」

 

そう言ってもう一度《リニアー》を放つ。

 

男は吹っ飛ばされながらも声を上げる。

 

「お、お前ら!見てないでなんとかしろ!」

 

男の指示で次々と《軍》のプレイヤーは剣を抜く。

 

だが、アスナさんが剣を構え、一睨みすると、それにビビってしまい逃げ出す。

 

逃がすつもりはないので足を引っ掛けて一人転ばす。

 

転んだ奴につまずきまた一人転ぶ。

 

シリカも同じようにして一人転ばしていた。

 

残り数人が逃げ出そうと路地から出ようとする。

 

「そこまでだ!」

 

さが、一人の男によってそれは阻まれた。

 

見ると男の装備は《軍》の物だった。

 

しかし、来ている戦闘服や羽織っているマントは青色だ。

 

男の後ろには同じような装備のプレイヤーが五人いる。

 

「貴様ら、徴税部隊だな。悪いが、全員大人しくしてもらおう」

 

「くそ、シンカー派の連中だ!」

 

「突破しろ!」

 

男たちが一斉に走り出すが、現れた男たちの手によって全員が捕まった。

 

「教会に住んでいられる方ですね、私は《解放軍》シンカー派のグリーと言います。この度は、《軍》の者がご迷惑をおかけしました」

 

「い、いえ、…………あの、貴方たちは彼らとは違うんですが?」

 

「はい、彼らはキバオウ派の者たちです。今《軍》では二つの派閥が争っていまして、我々はこうしてキバオウ派による徴税から皆さんを守る為に活動しています」

 

どうやら、コーバッツさんはうまくやっているようだな。

 

これなら、近いうちに《軍》も元の姿になるかな。

 

そう思ってると後ろから悲鳴が聞こえた。

 

「うあ……あ…あああ!」

 

キリトさんが背負っていた少女が悲鳴を上げ、そして、気絶した。

 

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