2024年11月5日
今日もシリカ、ピナ、フィーを連れて75層の迷宮区を攻略していた。
順調にマッピングしていき、殆どのエリアを埋めた所で、一つの扉の前に辿り着いた。
「…ボス部屋か」
「だね」
ここに、75層のフロアボスが………
「町に戻って、ヒースクリフさんに報告しよう」
「そうだね」
転移結晶を使い、俺とシリカは《血盟騎士団》本部に向かった。
《血盟騎士団》本部に着くと、俺達はヒースクリフさんと他の幹部の人たちの前でボス部屋の事を話した。
「ふむ、ならば早速、偵察隊を送ろう。今回のボス戦は苦戦を強いられると想定できる。そのため、五ギルド合同で偵察隊を編制、レイン君とシリカ君には偵察隊の隊長として偵察に当たってもらいたい」
「俺達みたいな子供が隊長だなって不満が出るんじゃないんですか?」
「子供であっても君たちの実力は攻略組でもトップクラス。更にビーストテイマーで、レイン君は《ユニークスキル》持ちでもある。不満がでるはずもない。頼めるかな?」
ヒースクリフさんの目が語っていた。
俺に拒否権なんか無い。
「分かりました。その件、引き受けます」
翌日、五ギルド合同によって編成された偵察隊による75層ボス偵察戦が始まった。
意外にも不満は無く、全員俺の指示に従ってくれた。
ボス部屋の前に尽き、俺は皆の方を向く。
「今から、偵察戦を始めます。まず、最初に敏捷値が高いプレイヤーが簡単な偵察を行います。ボスの攻撃パターンが理解出来たら即時撤退。その後、簡単な作戦を立てて再び偵察を行います。それと、少しでも無理と判断したらすぐに転移結晶で脱出してください」
指示が出し終わると、敏捷値が高いプレイヤー十人を連れて俺は扉の前に立つ。
敏捷値なら俺よりシリカが高いが、最初の偵察は危険が伴う。
攻撃方法、パターンが分からないままだと死ぬ確率が上がる。
「行きます」
「待ちな」
扉を開けようとすると、誰かに止められた。
止めたのは偵察隊の人だった。
「一番危険な初戦の偵察に子供が行くのは感心しないな」
「そうだぜ、危険な仕事は大人の役目だ」
「君たちはここで待っててくれ」
大人としてのプライドって所か…
「分かりました。なら、皆さんに任せます。先程言った通り、無理そうなら転移結晶での脱出を」
「分かってる」
片手剣を構えた人が先頭になって扉を開ける。
十人が武器を構え警戒しながらボス部屋の中央に進む。
すると、いきなり扉が閉まった。
「扉が!?」
「早く開けるぞ!」
腕に力を籠め、扉を押す。
だが、うんともすんとも動かない。
「くっ、手伝ってください!」
俺の言葉に、他の筋力値が高いプレイヤーが扉を押す。
だが、一向に扉は動かない。
どうしてだ………
試しにソードスキルを扉に当てるが《Immortal object》のシステムタグが出るだけだった。
五分ほど時間が経つと扉が開いた。
中にはボスどころか、プレイヤーが一人もいなかった。
「い、一体アイツらは……」
「入らないでください!」
部屋に入ろうとしていたプレイヤーを俺は止める。
「レイン……まさか」
「まさかとは思うが……そうでないことを祈ろう。このまま《はじまりの街》の黒鉄宮の生命の碑まで向かいましょう」
「まさか、アイツらが死んだっていうのか?」
「あくまで可能性の話です」
全員で転移結晶を使い、《はじまりの街》に向かう。
そして、俺の予想は当たってしまった。
偵察に向かった十人のプレイヤーの名前には横線が引かれていた。
「………《血盟騎士団》に向かって報告しましょう」
俺の指示に全員が力無く頷く。
昨日と同じように俺は、ヒースクリフさんと《血盟騎士団》の幹部の人たちの前で偵察の事を話した。
「そうか……クォーター・ポイントだから、ある程度の苦戦は想定していたが、まさか十人の攻略組プレイヤーを五分で壊滅させるとは」
「俺から言わせてもらいますと、今のまま戦うのは正直危険過ぎます。偵察もできないんじゃ、攻略どころじゃありません。せめて、攻略組プレイヤーの平均レベルが90レベル以上になるまでは戦闘は避けるべきです」
「それは、こちらで決めることだ。………ふむ、彼らを呼び戻すか」
まさか、キリトさんたちを呼び戻すのか……
「キリトさんたちは休暇中です。呼び出すのは」
「しかし、そうも言ってられないだろう。そのボスにまともに対抗できるのは私と君、そして、キリト君の三人しかいないだろう。キリト君一人欠けるだけでもボス攻略にはかなりの支障がでる。下手すれば、君と私以外生き残れないかもしれない」
ヒースクリフさんの言うことはもっともだ。
反論できない。
「沈黙は肯定と取っておこう」
ヒースクリフさんはウィンドウを操作し、キリトさんにメッセージを送った。
「ボス戦は明日決行。攻略組の中でもハイレベルのプレイヤーでのパーティーで戦闘する。君たちもご苦労。今日はゆっくり休みたまえ」
俺はシリカを連れて《血盟騎士団》を後にする。
その夜、俺はあることを考えていた。
「シリカ、ちょっといいか?」
「うん、何?」
「……明日のボス戦なんだけど」
「参加するなって話ならお断りだよ」
やっぱり読まれてたか……
「でも、相手は十人のプレイヤーを五分で倒すほどの相手だ。できることなら、俺はシリカに参加してほしくない」
「前にも言ったでしょ。待ってるのはかなり堪えるって。レインの帰りをドキドキしながら待つぐらいなら、一緒に居た方がいい。そっちの方が安心できるから」
「シリカ……」
「レイン」
そこでシリカが俺に抱き付いてきた。
「絶対一緒に帰ろう。死ぬなら、一緒に死のう」
「……バカ言うなよ。お前は死なない。俺が守る」
「うん。私も、レインを守るよ」
俺はシリカを優しく撫でる。
「ねぇ」
「なんだ?」
「……キスして」
シリカの御願いに俺は顔を赤くする。
シリカは目を瞑り、待ちの体勢になってる。
俺は、覚悟を決め、シリカの頬に手を添え
額にキスした。
「………はぁ」
「な、なんだよ?」
「意気地なし」
「うっ………仕方がないだろ。恥かしいんだから」
今日まで何回がキスしてきたが、唇にしたのはあの時だけだ。
それ以外は頬とか額にしかしてない。
「普通、ここは唇にするもんじゃない」
「今回のボス戦が終わって、無事に帰ってきたら唇にしてやるよ」
「そっか、なら余計に死ねない理由が出来たよ」
そう言うとシリカが俺をベットに押し倒してくる。
「し、シリカ!?」
「今日はこのまま寝させて」
シリカはしっかりと抱き付いて俺をホールドする。
「わかったよ。おやすみ」
「うん、おやすみ」
そして、俺達は眠りについた。
翌朝、目を覚ますと朝食を摂り、装備の点検、アイテムの確認をしてると集合時間になった。
今日だけは手を繫ぎ、移動した。
75層、コリニアの転移門広場にはすでに多くのプレイヤーが居た。
「よぉ、レイン」
「アルブス」
アルブスが俺に声を掛けてきた。
「やっぱ、お前も参加するのか」
「ああ」
「そうか………死ぬんじゃねぇぞ」
「お前もな」
拳をぶつけ合い、俺達は分かれた。
その後、キリトさん、アスナさん、アヤメさん、クラインさん、エギルさんなどの人たちとも会い、話をした。
攻略組の中にギルド《月夜の黒猫団》も居て、キリトさんが驚いていたが、互いに拳をぶつけ合うなどをして笑っていた。
その後、ヒースクリフさんと《血盟騎士団》のプレイヤーたちが現れ、広場が緊張の包まれる。
「欠員はないようだな。よく集まってくれた」
そう言うと、ヒースクリフさんは腰のバックから《回廊結晶》を取り出した。
「コリドー・オープン」
その言葉と共に《回廊結晶》は砕け散り、ゲートを展開した。
「さぁ、行こうか」
ヒースクリフさんと《血盟騎士団》が入り、続々と他のプレイヤーも入っていく。
俺はシリカの手を握り締め、ゲートをくぐった。
ボス部屋の前で全員が最終チェックを終え、戦闘態勢に入る。
「基本的には我々《血盟騎士団》が前衛で攻撃を食い止める。その間に、可能な限り攻撃パターンを見切り、攻撃して欲しい。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。解放の日のために!!」
ヒースクリフさんの言葉に全員が声を上げる。
そんな中、キリトさんは冷酷にヒースクリフさんの事を見ていた。
いや、見ていたというより、睨みつけてるようだった………
ヒースクリフさんが扉を押すと、扉はゆっくりと開く。
俺は、大太刀を抜き構える。
シリカも短剣を抜き、真剣になっていた。
「死ぬなよ」
キリトさんがそう言ってくる。
「へぇ、お前こそ!」
「今日の儲けで一稼ぎするまで死ねるかよ!」
「死ぬと、誰かが後追って死ぬから死にませんよ」
会話を終えると同時に、扉が完全に開く。
「戦闘開始!」
合図と共に、全員が突撃をする。
全員が突撃し、部屋の中央に固まる。
扉が閉まる音がした。
だが、辺りは静寂に包まれていた。
静かすぎる。
「おい」
誰かが声を発した。
すると
「上よ!」
アスナさんが声を上げた。
慌てて上を見上げると、其処にボスはいた。
ムカデのような骸骨。
一対の巨大な鎌。
名前は《スカルリーパー》
スカルリーパーは俺達を確認すると、一気に急降下してきた。
「固まるな!距離を取れ!」
ヒースクリフさんの言葉でプレイヤーが動き出す。
だが、恐怖で動けないプレイヤーが何人かいる。
「早く!こっちだ!」
キリトさんの声で、慌てて二人のプレイヤーがこっちに向かって走ってくる。
だが、間に合わず、鎌の餌食になり宙を舞った。
キリトさんとアスナさんが受け止めようと手を伸ばすが、その手はプレイヤーを掴むことなく、空を切った。
プレイヤーが受け止められる寸前で体が無数のポリゴンになって散ったからだ。
有り得ない。
ここに居るプレイヤーは攻略組でもハイレベルのプレイヤーたちだ。
それをたった一撃で…………
スカルリーパーは新たな獲物を見つけ襲い掛かってくる。
一人のプレイヤーが狙われた。
だが、ヒースクリフさんは素早く動き、十字盾で鎌を防ぎ、プレイヤーを守った。
凄い。
皆、恐怖で動けないのに、そんな中、普段通りに動けるなんて。
今度は別のプレイヤーを狙う。
今度はキリトさんが剣を交差させ受け止める。
だが、重すぎるのか鎌はキリトさんの肩に深く斬り込む。
横からもう一つの鎌がキリトさんを狙う。
その鎌をヒースクリフさんが受け止め、キリトさんが受け止めてる鎌をアスナさんが弾いた。
「二人同時になら受け止められる」
「よし、鎌は俺達が食い止める!皆は側面から攻撃をしてくれ!」
キリトさんの言葉に俺は剣を握り締め、走り出す。
横ではシリカも同じように走り出してた。
「いくぞ!シリカ!」
「うん!」
それから、俺はひたすらシリカと互いにカバーし合いながら攻撃を与え続けた。
近くで、他のプレイヤーの悲鳴、絶叫が聞こえ、それと同時にガラスが砕け散る様な音も聞こえた。
それでも、俺はシリカだけを守り続けた。
そして、とうとうスカルリーパーが地面に倒れ込んだ。
「全員、突撃!」
合図と共に一気に斬り込む。
キリトさんの《二刀流》での連撃、アスナさんの目にも止まらぬ刺突、アルブスの鋭い斬撃、アヤメさんの高速の突きのラッシュ、エギルさんの力強い一撃、クラインさんの素早い的確な斬り込み、シリカの見事なピナとの連携、俺とフィーによる火力重点の攻撃。
様々なライトエフェクトを撒き散らし、スカルリーパーにダメージを与えていく。
そして、スカルリーパーは絶叫を上げ、消滅した。
次回、いよいよ最終決戦
そして、エピローグでSAO編は終了。
そして、ALO編に進みます。