気が付くと、俺は分厚い水晶の板の上にいた。
ここは一体?
「レイン君?」
誰かに呼ばれ、振り返るとアスナさんがいた。
「アスナさん。ここは」
「……死んじゃったの?」
「……はい」
「……そっか」
会話が終わる。
息が詰まるので右手を振り、ウィンドウを出す。
【最終フェイズ実行中 現在34%完了】
最終フェイズ?
ああ、ナーヴギアが脳破壊のシークエンスを実行してるのか………
ウィンドウを消去すると誰かが後ろに居るのに気づいた。
「キリト君」
え!?キリトさん!
慌てて後ろを振り向くとキリトさんが気まずそうにいた。
「ごめん。俺も死んじゃった。でも、茅場は倒した」
「………ばか」
アスナさんが泣きながらキリトさんに抱き付き、キスをした。
俺いるんですが………
「ここ、何処だろう?」
「キリト君、レイン君、あれ」
アスナさんが指さす方向を見ると《アインクラッド》が崩壊していく姿があった。
「中々に絶景だな」
いつの間にか隣に一人の男性がいた。
それは茅場昌彦だった。
ヒースクリフの姿ではなく、SAO開発者としての姿だ。
「現在、アーガス本社地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置でデータの完全消去を行っている、あと十分でこの世界は消滅するだろう」
「あそこに居た人たちはどうなったの?」
「心配には及ばない。先程…」
茅場さんは右手を動かし、ウィンドウを眺める。
「生き残った6147人のログアウトが完了した」
そうか、なら、きっとシリカも無事にログアウト出来たんだろう。
「死んだ連中は?死んだ4000人はどうなった?」
「彼らの意識は帰って来ない。死者が消え去るのは何処の世界でも一緒さ。君達とは最後に話をしたくてこの時間を作らせてもらった」
「どうして、こんなことを?」
俺は二年間ずっと疑問に思ってたことを聞いた。
この世界自体が茅場さん自身の目的だといってた。
「なぜ、か。私も忘れたよ。なぜだろうな。フルダイブ環境システムの開発を知った時、いや、その遥か昔から私はあの城を、現実世界のありとあらゆる枠や法則をも超越した世界を創ることだけを欲してきた。そして、私は……私の世界の法則をも超える世界を見ることができた。空に浮かぶ鉄の城の空想に私が取りつかれたのは何歳の頃だったかな……。その情景だけは、いつまで経っても私の中から去ろうとしなかった。この地上から飛び立って、あの城に行きたい……長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。私は、まだ信じているのだよ……どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと……」
「………ああ………そうだといいな」
キリトさんがそう呟いた。
そして、アスナさんと俺も頷いた。
「言い忘れていたな。ゲームクリアおめでとう。キリト君、アスナ君、レイン君」
ぽつりと発せられた言葉、
茅場さん御表情はとても穏やかだった。
「さて、私はそろそろ行くよ」
風が吹き、そして、茅場さんは消えていた。
「俺も、行きますね」
「レイン……」
「どうして?最後まで一緒に」
「お二人の最後を邪魔なんてできませんよ。それに、二人を見てると、俺、悲しくなってくるんです。だから、行きます」
俺は頭を下げて、二人から離れる。
「レイン!」
キリトさんが叫んだ。
「俺、お前と出会えて、友達になれて良かった!今までありがとな!」
「レイン君!私も、君と知り合えて本当によかった!」
「…………俺も!」
俺は最後にありったけの声を絞り叫ぶ。
「キリトさんとアスナさんに出会えてよかったです!共に戦えたこと、誇りに思います!」
そう叫び、俺は二人から離れる。
この水晶の板はどこまで続くんだ?
かなり歩いたな………
ウィンドウを開く。
【最終フェイズ実行中 現在97%完了】
結構進んだな。
「…………シリカ」
シリカの名前を呟くと、悲しみが込み上げてきた。
目から涙が溢れてくる。
「さよなら、シリカ」
【最終フェイズ実行中 現在99%完了】
【最終フェイズ実行中 現在100%完了】
【実行終了】
そして、俺という存在は消えた。
目を開けると、そこには何も無かった。
ここは、どこだ?
暗い………
なにもない。
ここは死後の世界か?
死後の世界って、真っ暗なんだな。
光がなければ、音もない。
てか、俺は地面に立っているのか?
それとも宙に浮いてるのか?
どっちが上で、どっちが下かも分からない。
「気かづいたかい?」
誰だ?
「意識が朦朧としてるね。ま、こっちの方が都合は良いな」
何者かが、ウィンドウを操作する音が聞こえた。
そして、俺の頭に激痛が走った。
「ぐあああああああああ!?――――――ッ!うわああああああああああ!」
頭が割れる!
脳を直に掴まれシェイクされてる感じだ。
そして、俺の脳裏に、人の顔が浮かんでいく。
キリトさん、アスナさん、アヤメさん、アルブス、サーシャさん、エギルさん、クラインさん、あの世界で出会った全ての人、そして、シリカ。
全員が消えていく。
俺の記憶が、全て、消えていく。
シリカの顔が浮かび、そして、消えた。
そこで、俺の意識は無くなった。
レインSIDE END
「さてと、実験の結果はどうかな?今から僕の質問に答えろ」
男はしゃがみ、嫌らしい笑みを浮かべ、レインに問う。
「君の主は誰だい?」
「……貴方様、です」
「よろしい。では、侵入者はどうする?」
「……完全に、排除」
「うん、上出来だ」
男は自分の満足いく結果ににやにやと笑う。
「まだ、ムラがあるが、未完成ならこんなものかな」
勝手に納得し、男は立ち上がる。
「レインという名は捨てろ。これからは新しい名を名乗れ。今日から君の名と肩書きは」
「妖精王護衛部隊隊長 レイルだ。いいね、レイル君?」
「……はい、オベイロン様」
次回、ALO編に突入!