二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第4話 スイルベーン

樹海を通り過ぎ、とうとうシルフ領の《スイルベーン》が見えた。

 

「お、見えてきたな」

 

「真ん中の塔の根元に着陸するわよ」

 

「あ、そういや、キリト、シリカちゃん」

 

急に何かを思い出したのかクラインさんが声を掛けてくる。

 

「ランディングのやり方って分かるか?」

 

確か、着陸の仕方だっけ?

 

その瞬間、あたしとキリトさんは顔を強張らせた。

 

「「………解かりません」」

 

「えーと………」

 

既に、塔が目の前に迫ってきている。

 

「ゴメン、もう遅いや」

 

「幸運祈ってるぜ」

 

クラインさんとリーファさんが申し訳なさそうに笑い、急減速始める。

 

「そ、そんなバカなあああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――」

 

「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――」

 

あたしとキリトさんの絶叫が響き、そして、塔にぶつかった。

 

 

 

 

 

 

「うっ、うっ、酷いよリーファ」

 

「目が回りました~」

 

「飛行恐怖症になるかも…………」

 

「ごめん、ごめん、回復してあげるから」

 

そう言うと、リーファさんは右手を上げ、呪文らしきものを唱える。

 

すると、あたしとキリトさんに青い雫の様な物が降り注ぎ、減ったHPを回復させる。

 

「おお、凄い、これが魔法か………」

 

初めての魔法にキリトさんは興味津々になる。

 

「高位の回復魔法はウンディーネにしか使えないけど、必須スペルだから、二人も覚えた方がいいよ」

 

「種族によって魔法の得手不得手があるのか。スプリガンは何が得意なんだ?」

 

「得意なのはトレジャーハント関連と幻惑魔法かな、どっちも戦闘不向きで不人気種族ナンバーワンなんだよね」

 

「うへ、やっぱり下調べは大事だな」

 

そう言ってキリトさんは立ち上がり、大きく伸びをする。

 

「それにしても、綺麗な街ですね」

 

「でしょ!」

 

あたしの感想にリーファさんは嬉しそうに言う。

 

「リーファちゃーん!」

 

その時、後ろから誰かがリーファさんに声を掛けた。

 

「ああ、レコン」

 

どうやら知り合いらしい。

 

「無事だったんだ。流石はリーファちゃん………って、スプリガンにサラマンダー!?」

 

キリトさんとクラインさんを見ると、レコンさんは警戒し、腰の短剣を握る。

 

「ああ、大丈夫よ。この人たちが助けてくれたの」

 

「へっ?」

 

唖然とするレコンさんを余所にリーファさんはレコンさんを指差す。

 

「こいつはレコン。私のフレンドなんだ」

 

「よろしく、俺はキリトだ」

 

「俺はクラインだ。サラマンダーだけど、もうアイツ等とは縁は切ってある」

 

「シリカです」

 

「あ、どうも」

 

あたしたち三人に握手をし、頭をぺこぺこ下げてくる。

 

「って、いや、そうじゃなくて!大丈夫なの?ケットシーの子はともかく、この二人、スパイとかじゃ」

 

「大丈夫よ。スパイにしてはこの二人、天然ボケと間抜け過ぎるし」

 

「うわ、ひでぇえ……」

 

「俺が間抜けなのかよ」

 

さり気なく二人は落ち込んでいた。

 

レコンさんはまだ、疑わしそうに見ている。

 

「シグルドたちはいつもの酒場で席取ってるよ」

 

「あ、そっか……ん~、あたし今日はいいわ」

 

「え!こないの?」

 

「お礼にとお詫びにこの三人に一杯奢る約束してるんだ。じゃ、お疲れ」

 

そう言うと、リーファさんはキリトさんを引っ張り、先に行ってしまう。

 

その後を慌ててクラインさんが追いかけ、あたしはレコンさんに一礼してから後を追った。

 

リーファさんの後を追い、《すずらん亭》という店に着き、リーファさんの奢りでそれぞれ注文した。

 

「さっきのはリーファの彼氏?」

 

「コイビトさんなのですか?」

 

「はぁ!?違うわよ!パーティーメンバーよ!」

 

キリトさんとユイちゃんの質問にリーファさんは慌てて否定する。

 

「でも、その割には仲良さそうでしたよ?」

 

「リアルでも知り合いっていうか、学校の同級生なの。…………それじゃあ、改めて、助けてくれてありがとう。それと、迷惑かけてごめん」

 

互いにグラスをぶつけ合い、一口飲む。

 

「それにしても、えらく好戦的な連中だったな。ああいう集団PKはよくあるのか?」

 

「元々、サラマンダーとシルフは仲悪いからな。でも、ああいう集団PKは最近らしいぜ。最も、俺も聞いた話だが」

 

キリトさんの質問にクラインさんが答える。

 

「きっと………近いうちに世界樹攻略を狙ってるんじゃないかな」

 

「それだ。その世界樹について教えてほしいんだ」

 

「そう言えば、そんな事言ってたね。でも、なんで?」

 

「世界樹の上に行きたいんだ」

 

「……それは、全プレイヤーがそう思ってるよ。っていうか、それがALOのグランド•クエストなのよ」

 

「と言うと?」

 

「滞空制限があるのは知ってるでしょ?どんあ種族も連続で飛べるのは十分が限界なの。でも、世界樹の上にある空中都市に最初に到達して、《妖精王オベイロン》に謁見した種族は全員、《アルフ》っていう高位種族に生まれ変われるの。そうなれば、滞空制限はなくなっていつまでも、自由に空を飛ぶことが出来るの」

 

「なるほどな」

 

注文したタルトを齧りながら、キリトさんは納得する。

 

「世界樹の上に行く方法は?」

 

「世界樹の根元がドームになっていて、そこが空中都市の入口になってるの。でも、そのドームを守ってるNPCのガーディアン軍団が凄い強さなの」

 

「そんなに……」

 

「オープンして一年経つのに、まだクリアできないクエストなんてアリだと思う?」

 

「何か、キークエストとか見落としてるとか、単一の種族じゃ攻略できないとかなんじゃありませんか?」

 

「いいカンしてるわ。クエスト見落としはいま躍起になって検証してるわ。でも、後者は絶対に無理ね」

 

「どうしてですか?」

 

「だって矛盾してるもの。『最初に到達した種族しかクリアできない』クエストを他の種族と協力して攻略しようだなんて」

 

確かに…………

 

「それに、問題はNPCのガーディアンだけじゃない。アイツ、妖精王護衛部隊隊長 レイル。アイツが一番の問題ね。白いコートに白い髪、そして、自身の身長よりも大きい両手剣を巧みに扱う剣士」

 

それって!

 

「(やっぱり、レインは敵として配置されてたのか………)じゃあ、世界樹を攻略するのは、無理ってことかよ?」

 

「あたしはそう思う。でも、諦めきれないよね。いったん飛ぶことの楽しさをしっちゃうとね。例え、何年かかっても、きっと」

 

「「それじゃ遅すぎるんだ(です)!」」

 

あたしとキリトさんは叫んだ。

 

キリトさんはアスナさん、あたしはレイン。

 

互いに助けたい人がいる。

 

早く助けたい。

 

だから、アタシたちは今焦っている。

 

「パパ、シリカさん」

 

「キリト、シリカちゃん」

 

ユイちゃんとクラインさんがあたしたちを宥めるように、声をかける。

 

「……すみません」

 

「……ごめん、でも、俺たち、どうしても世界樹の上に行きたいんだ」

 

「……なんで、そこまで?」

 

「人を……探してるんだ」

 

「ど、どういうこと?」

 

「……簡単には説明できない」

 

キリトさんは悲しそうな顔をして言う。

 

「ありがとう、リーファ。色々教えてもらって助かったよ。御馳走様、ここで最初に会ったのが君でよかった」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。世界樹に……行く気なの?」

 

立ち上がろうとしたキリトさんの腕をリーファさんは掴む。

 

「ああ。この眼で確かめないと」

 

「無茶だよ、そんな……。ものすごく遠いし、途中で強いモンスターもいっぱい出るし、そりゃ君も強いけど……………じゃあ、あたしが連れていってあげる」

 

「「「え……」」」

 

リーファさんの行き成りの言葉に驚く。

 

「いや、でも、会ったばかりの人にそこまで世話になる訳には……」

 

「いいの、もう決めたの!!」

 

そう言う、リーファさんの頬は赤かった。

 

「あの、明日も入れる?」

 

「あ、う、うん」

 

「私も入れます」

 

「俺も問題ない」

 

「じゃあ午後三時にここでね。あたし、もう落ちなきゃいけないから。ログアウトには上の宿屋を使ってね。じゃあ、また明日ね!」

 

リーファさんはそう言うと、左手を動かし、ログアウトをしようとする。

 

「リーファ!」

 

キリトさんが急に声を上げてリーファさんを呼び止める。

 

「ありがとう」

 

キリトさんがお礼を言うと、リーファさんは笑みを浮かべ。ログアウトした。

 

「どうしたんだろう彼女」

 

リーファさんが消えてしばらく、リーファさんが座っていた椅子を見ていたキリトさんがそう呟いた

 

「さあ……。今のわたしにはメンタルモニター機能はありませんから……」

 

「でも、まあ、道案内してくれるってのは有り難いな」

 

「マップならわたしにもわかりますけど、確かに戦力は多いほうがいいですね。それにしても……」

 

ユイちゃんは飛び、キリトさんに近づく。

 

「浮気はしちゃダメですよ」

 

「しない、しないよ!」

 

そんな、キリトさんとユイちゃんの言い合いを聞きながら全員で二階の宿屋に上がった。

 

「シリカちゃん!」

 

部屋に入ろうとしたところで、クラインさんが声を掛けてきた。

 

「はい?」

 

「えっとさ、シリカちゃんは、このこと、ナーヴギアを被ってることは親御さんには伝えた?」

 

「………伝えてません。言えば、心配かけますし、プレイ自体止められるかもしれませんし」

 

「………そうか」

 

クラインさんは優しい笑みを浮かべる。

 

「確かに、二年間も心配かけて、これ以上心配かけたくないって気持ちも分かる。でもな」

 

そう言ってクラインさんはあたしの頭に手を置く。

 

「自分の知らない所で、娘がまたナーヴギアを被ってるなんて知ったら、親御さん、悲しむぞ」

 

その言葉に、あたしは、はっとした。

 

クラインさんの言う通りだ。

 

「心配かけないことも大事かもしれんけど、今、俺達はまた命が危ないかもしれないことをしてるんだ。だから、せめて、親御さんにはこのことを言うんだ。悲しませないためにも、心配させないためにも」

 

「………はい」

 

「よし!じゃあ、おやすみ。また、明日な」

 

「はい、おやすみなさい」

 

部屋に入り、あたしはログアウトした。

 

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