ユージーンさんを倒すと、沈黙が流れた。
誰も話さない。
そんな中、沈黙を破ったのは
「見事、見事!」
「凄い、ナイスファイトだよ!」
二人の領主さんだった。
そして、他のシルフとケットシーの人たちも歓声を上げる。
驚いたことに、サラマンダーの人たちからも、先程の戦闘を称賛する声が上がった。
あたしはピナを呼び戻し、背中に跨り、みんなの下に降りる。
地面に着くと同時にピナに掛けた魔法が解け、元の大きさになる。
「やったな。シリカ」
「凄かったぜ!」
「まさか、ピナがでっかくなるとはな」
「流石は《竜使い》だな」
「まさか、あんな隠し玉が有ったなんてね」
みんなで勝利を喜んだあと、サクヤさん(シルフの領主さん)がユージーンさんのリメンライトに蘇生魔法を掛け、復活させた。
「まさか、ケットシーにこんな強者がいるとは、ケットシーも侮れんな」
「あたしなんてまだまだです。キリトさんの方がもっと強いですよ」
「そうか、それは是非、一度対戦したいものだな」
「勘弁してくれ」
ユージーンさんの好戦的な目にキリトさんはたじろぐ。
「それで、約束は守ってくれますよね」
「言っただろ?俺は武人だ。一度剣に誓えば、何があろうと反故する気は無い。それに、貴様のようなケットシーがいるとなれば、退く理由には十分だ」
「ありがとうございます」
そう言うとユージーンさんはサラマンダーの大部隊を率いて帰って行った。
結構いい人だったな。
「すまんが……状況を説明してもらえると助かる」
サクヤさんが状況の説明を求めて入って来た。
ここまでに至った経緯を話すとサクヤさんはアリシャさん(ケットシーの領主さん)に《月光鏡》という魔法を使ってもらい、シルフ領に居るシグルドをシルフ領から追放した。
「それにしても、君、凄い強いね。でも、私、君みたいな子初めて見るんだけどな~。初心者にしては戦いなれてるし、でも、それだけの実力なら、私の耳にはさんでもいいぐらいなのにな~」
うっ、来たか………
闘ったら来るかと思ってたけど………何て言って誤魔化そうか………
「ちょっと、領主館まで来て、話聞かせてもらうよ」
え!?そ、それはマズイ!
一刻も早く世界樹に行かないといけないのに!
「あ、あの、あたしどうしても世界樹に行かないといけないんです!今すぐに!」
「世界樹?どうして?」
「………探してる人がいるんです。だから、あたし世界樹に行かないといけないんです!説明なら帰って来てからいくらでもします。だから、今だけは許してください!」
あたしは頭を下げて、お願いする。
「俺からも頼む。俺達はどうしても行かないといけないんだ」
「あたしからもお願い!今だけは見逃して!」
キリトさんとリーファさんもアリシャさんに抗議してくれる。
「う~ん、でもな~」
「アリシャ、彼女たちに助けてもらい、そのおかげで同盟も無事に済んだ。なら、少しぐらい我儘を聞いてやってもいいだろ?」
「………分かったよ。サクヤちゃんもそこまで言うなら、もう聞かない。ごめんね、無理強いするようなこと言って」
「あ、ありがとうございます!」
あたしがお礼を言うと、リーファさんが口を開く。
「ねぇ、サクヤ、アリシャさん、今回の同盟って世界樹攻略のためなんでしょ?」
「まぁ、究極的にはな」
「その攻略に、あたしたちも参加させて欲しいの。それも、できるだけ、早く」
「それは構わない。というより、こちらから頼みたいぐらいだ。だが」
「攻略メンバー全員の装備を整えるのに暫くかかると思うんだヨ。とても一日二日じゃ……」
「いや、いいさ。取りあえず樹の根元まで行くのが目的だし……あとはなんとかするよ。あ、そうだ」
そう言うとキリトさんは全財産が入った革袋を取り出した。
「これ。攻略資金の足しに使ってくれ」
「え!?こ、こんな大金を!?」
「ああ、俺にはもう必要ないからな」
キリトさん。豪快だな~。
でも、後の事考えてないよね?
「これだけあれば、かなり目標金額に近づくよ」
「すぐに装備を整えて、準備が出来たら連絡させてもらうよ」
「その時はよろしく頼む」
「おい」
急にアルブスさんが口を開いた。
「装備を整えるならコイツを連れてけ」
そう言ってリズさんを前に出す。
「コイツ、見ての通りレプラコーンだ。鍛冶スキルも中々なもんでな、此奴に全員分の装備を作らせればかなりの戦力になると思うぞ」
「そうか、しかし、そうは言っても、私達は彼女の鍛冶スキルを知らない。できれば、彼女の作ったものを見せて貰えるか?」
「なら、この刀だ」
そう言って腰の刀を渡す。
「え~と…………うわ!この刀凄い!古代武装級の性能だヨ!」
「こ、これは凄い……」
「どうだ?」
「是非ともお願いしたい!」
「だとよ」
アルブスさんはリズさんを見る。
「…………分かった。貴女達さえよければ、防具と武器、作らせてもらうわ」
「ありがとう」
そして、サクヤさんとアリシャさんの合図で全員が帰る準備に入った。
「何から何まで世話になったな。君たちの希望に極力添えるように努力することを約束するよ」
「アリガト!また会おうネ!」
「アンタ達、気を付けなさいよ!それと、アルブス、死んだりしないようにね!」
そう言ってサクヤさんとアリシャさん、リズさん、シルフとケットシーの人たちはケットシー領に向かって行った。
「行ったな」
「ああ」
「アルブス、良かったのか?」
「は?」
「愛しのリズと離ればなれでよ~」
「な!?何言ってやがる!俺とリズはまだ!」
「まだ?てことは、何時かはそうなるつもりか?」
「いや~、妬けますな~」
「て、テメーら!打った斬ってやる!」
「「うお!逃げろ!」」
アルブスさんをからかいアヤメさんとクラインさんが逃げ出す。
その後を顔を赤くしたアルブスさんが追いかける。
「おい!待てよ!」
「あ、ちょと!……もう!」
その後をキリトさんとリーファさんが追いかける。
「…………レイン。待っててね」
あたしは拳を握り空を仰ぎ、呟いた。
世界樹に居るかもしれないレインに、言うように。