二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第13話 決着

意識がなくなったのは一瞬の出来事だった。

 

意識が戻ると、そこは白い壁しかない通路に居た。

 

「パパ、シリカさん、大丈夫ですか?」

 

ピクシーモードじゃないユイちゃんが目の前で心配そうにあたしたちを覗き込む。

 

「ああ、ここは?」

 

「……判りません。マップ情報が無いみたいで」

 

「アスナの居場所は分かるか?」

 

「はい、かなり―――かなり近いです。上の方……こっちです!」

 

そう言うとユイちゃんは走り出し、その後を追いかける。

 

暫く走ると、ユイちゃんが立ち止り、壁の方を見る。

 

「ここから上部へ移動できるようです」

 

その壁には四角い扉のようなものがあり、脇には三角形のボタンが二つあった。

 

まるで、エレベーターみたいだ。

 

キリトさんは一瞬考えながらも上向きの三角形のボタンを押す。

 

扉が開き、部屋の中にはボタンの並んだパネルがあった。

 

光っているところが現在位置ならアスナさんはここから二つ上のフロアにいるはず……

 

キリトさんもそう思ったのか一番上のボタンを押した。

 

エレベーターは動き、上昇してる感覚が体に来た。

 

エレベーターはすぐに停止し、扉を開ける。

 

再びユイちゃんは走り出し、いくつもの扉を素通りし、今度は何もない壁の前で立ち留まった。

 

「どうしたんだ?」

 

「この向うに………通路が……」

 

そう言うとユイちゃんは壁に手を触れる。

 

すると、壁は四角に取り除かれそこには同じような通路があった。

 

そして、その通路を進み、通路の終わりには四角い扉があった。

 

ユイちゃんはそのまま走り出し、左手を伸ばし勢いよくその扉を押し開いた。

 

そして、扉の外は世界樹の頂上だった。

 

さらに、そこには空中都市なんかは存在してなかった。

 

「無いじゃないか……空中都市なんて………」

 

「こんなの酷過ぎます……」

 

グランド・クエストなんて言ってたのにそれが全て嘘だった。

 

一年以上もALO全プレイヤーをだまし続けてきた、この世界の運営者にあたしは怒りが湧いた。

 

「パパ、シリカさん」

 

すると不安そうにユイちゃんがあたしたちを見ていた。

 

「そうだな、行こう」

 

「はい」

 

枝の中央に小さな小道があり、それに沿って走る。

 

暫く走ると何かが見えた。

 

それは鳥籠だ。

 

だが、大きさが異常過ぎる。

 

まるで、牢屋のような…………

 

その時、あたしはあることを思い出した。

 

エギルさんの店で見せられた写真。

 

あの鳥籠に似ている。

 

もしかするとあそこにアスナさんが………

 

キリトさんにそのことを伝えようと思い口を開くが、キリトさんは既に気づいていて、走り出していた。

 

徐々に鳥籠に近づき、中の様子が見える。

 

鳥籠の中に、一人の女性がいるのが分かった。

 

あの写真で見た通りだ。

 

少し違う所もあるがアスナさんにそっくりだった。

 

「ママ!」

 

ユイちゃんは鳥籠に近づき、女性に声を掛ける。

 

女性は顔を上げ、こちらを見る。

 

その顔はやっぱりアスナさんだった。

 

「ママ!」

 

ユイちゃんは右手を振り払い鳥籠の入口を取り払った。

 

「ママ!」

 

「ユイちゃん!」

 

ユイちゃんは走り出し、アスナさんに抱き付いた。

 

「アスナ……」

 

「キリト君……」

 

キリトさんもアスナさんに近づき、ユイちゃんと共に抱きしめた。

 

その様子を見てあたしは嬉しく思うと同時に、羨ましく思った。

 

「ごめん。遅くなった」

 

「ううん、信じてたきっと助けに来てくれるって。…………シリカちゃん………だよね。ごめんね、こんな所にまで付き合わせて」

 

「いいえ、大丈夫です」

 

あたしは笑い、アスナさんを見る。

 

「さあ、一緒に帰ろう」

 

「うん」

 

「ユイ、アスナをログアウトさせられるか?」

 

「ママのステータスは複雑なコードでロックされています。ログアウトさせるにはシステム・コンソールが必要です」

 

「それなら、私、ラボラトリーでそれらしいものを」

 

その時、あたしは嫌な気配を感じた。

 

SAOで感じた、犯罪者プレイヤーのような視線を………

 

腰の短剣に手を伸ばし抜く。

 

キリトさんも感じたらしく、背中の二本の剣に手をかける。

 

すると鳥籠の中に嫌な音が響き、次の瞬間、体に何かが圧し掛かるような感覚に襲われた。

 

立っていられなくなり、その場に崩れ落ちる。

 

そして、周りには深い闇のようなもので覆われた。

 

「パパ、ママ、シリカさん!気を付けて、何か………よくないものが……!」

 

言葉を言い終える前にユイちゃんの体を紫電の電光が這い回り、そして、消えた。

 

「ユイちゃん!」「ユイ」

 

アスナさんとキリトさんが同時に叫ぶ。

 

そして、あたしたちは暗い闇の中に三人だけが残った。

 

一体何が………

 

その時、誰かがあたしたちの前に降り立った。

 

それはレインだった。

 

「レイン!」

 

名前を読んでみるが、レインは反応しなかった。

 

「オベイロン様、侵入者を二名捕えました」

 

「ご苦労。いや~、驚いたよ。小鳥ちゃんの籠の中に、ゴキブリと仔猫が迷い込んでるんだからね」

 

嫌な声が聞こえ、顔を上げるとそこには緑色のトーガに身を包んだ、端正な顔立ちで笑ってる妖精がいた。

 

だが、その笑みはとても気味が悪かった。

 

「お前は、須郷!」

 

キリトさんはその人の事を知ってるのかその人のリアルでの名前を言う。

 

すると次の瞬間、レインはキリトさんの体を足で、蹴りあげた。

 

「がぁっ!」

 

「口を慎め。このお方は貴様らの王、オベイロン陛下様だ。そう呼ばないか!」

 

そう言い、もう一度キリトさんを蹴る。

 

「うっ!」

 

「キリト君!」

 

アスナさんの悲痛の叫びを上げる。

 

あたしはただ目の前の光景が信じられなかった。

 

あのレインがキリトさんの事を蹴った。

 

有り得なかった。

 

「もういいよ、レイル君。それよりもどうだい、桐ケ谷君?次回のアップデートで導入予定の重力魔法なんだけど、ちょっと強すぎるかな?」

 

須郷と呼ばれたプレイヤーはキリトさんの頭を踏み、キリトさんに聞く。

 

「やめなさい!卑怯者!」

 

アスナさんの言葉に須郷は耳を貸さずキリトさん問いかける。

 

「桐ケ谷君、いや、ここではキリト君と呼んだ方がいいかな。どうやってここまで登って来たんだい?」

 

須郷はキリトさんの背中の鞘から黒い片手剣を抜き、振り回す。

 

「飛んで来たのさ、この翅で」

 

「ふん、まぁいい。君の頭の中に直接訊けば解かることさ」

 

「何?」

 

「まさか僕が酔狂でこんな仕掛けを作ったと思ってるんじゃないだろうね?300人にも及ぶ元SAOプレイヤーの献身的な協力によって記憶・感情操作技術の基礎研究は八割方終了してる。かつて誰も為し得なかった、人の魂の直接制御という神の業を、僕はあと少しでものにできる!まったく、仮想世界様様だよ!フフフフフフフフフ、ハハハハハハハハハハ!」

 

「そんなこと……出来る訳……」

 

「できるんだよ。実際、ここにいい成功体がいる」

 

そういってレインを指差す。

 

「この少年、元の名前はレイン、今の名はレイル、僕の護衛部隊隊長ってことになってるんだけど、彼を使い記憶・感情の操作の実験をした結果、見事成功!彼からSAOの記憶処か、今までの記憶全てを奪い、別の記憶を与え、僕に対する尊敬の感情だけを残した。彼は僕の充実為る僕!下僕!奴隷!まさに、最高の気分だよ!ヒャハハハハハハハハハ!」

 

「須郷!あなたのしたことは許されないわ!絶対に!」

 

「誰が許さないのかな?残念ながらこの世界に神はいないよ。この僕以外はね!」

 

もう許せなかった。

 

なんとか短剣を握り、重い体を動かし、走る。

 

そして、短剣を須郷の背中に突き刺そうとする。

 

だが、目の前にレインが現れ、あたしを殴り飛ばす。

 

殴り飛ばされたあたしは床を滑るように倒れる。

 

「こんな状態でもまだ動けるなんて君は凄いね」

 

須郷はあたしの髪を気持ち悪い手つきで触る。

 

「須郷!シリカに触るな!」

 

「シリカちゃん………どこかで聞いたな…………そうだ!レイン君の記憶の中にあった子か!いや、最高だったよ。彼から君の記憶を奪い取るときの彼の表情!彼にとって君はとっても大切な人らしいね~。そして、記憶を見る限り、君にとってもレイン君は大切らしい。なら、そんな彼に甚振られたら、君の心はどうなるかな?」

 

「おい………何する気だ!」

 

「決まってるだろ。こうするのさ!」

 

須郷は手を上げ、叫ぶ。

 

「レイル君!この女をたっぷり痛めつけろ!」

 

「はい」

 

レインはゆっくり歩み寄り、あたしの前に立つ。

 

そして、乱暴に髪を掴み持ち上げた。

 

そして、拳を握り、あたしを殴りつけた。

 

「あがっ!」

 

そして、何度も何度も腹部や顔を殴りつけてくる。

 

「よせ!やめろ、レイン!」

 

「レイン君!シリカちゃんを離してあげて!」

 

「無理無理!彼に君たちの記憶は無いし、感情だって無い!どんなに叫ぼうと喚こうと、君たちの声は彼に届かない!散々彼に甚振られ、心がボロボロになったら、その後で僕が可愛がってやるよ。まぁ、そのアバターも現実と同じで貧相だけど、楽しめるぐらいは出来るだろう」

 

「須郷!貴様、絶対に殺す!」

 

「何とでも言いなよ。どうせ、できないんだ。さて、君たちの魂を改竄する前に楽しいパーティーと行こうか!」

 

レインに殴られ、薄れて逝く意識の中、あたしは朧気にその状況を見ていた。

 

須郷はアスナさんが鎖で吊り上げられ、散々アスナさんの体を障り、キリトさんを背中からキリトさんの剣で突き刺した。

 

そして、刺した瞬間、須郷は手を振り上げ叫んだ。

 

「システムコマンド!ペインアブソーバ、レベル10から8に変更!」

 

すると、キリトさんは苦しみだした。

 

そして、あたしの体にも痛みが襲った。

 

「くくく、痛いだろ。段階的に強くしてやるから楽しみにしていたまえ。もっともレベル3以下にすると現実の肉体にも影響が出る様だが………レイル君、もう拳はいい。次はそこの短剣を拾ってやりたまえ!」

 

「はい」

 

レインは短剣を拾い、そして、あたしの体を突き刺した。

 

刺された痛みが体を駆け巡り、痛みで気を失いそうになる。

 

気を失いそうになるとレインはあたしを殴り、気絶しないようにする。

 

「れ……いん」

 

あたしは、ボロボロになりながらレインに呼び掛ける。

 

だが、レインはそれを無視し、あたしを殴り、突き刺す。

 

痛みも徐々に感じなくなり、あたしはもう心が崩壊し始めていた。

 

もう、どうにでもなればいいや…………

 

あたしにはレインを救うことなんてできないんだ………………

 

そこで、レインは背中の両手剣を抜き、あたしの体を深々と突き刺した。

 

ごめんね………レイン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『諦めないで』

 

誰?

 

あたしに声を掛けるのは?

 

『お姉ちゃんが諦めたら誰がお兄ちゃんを助けるの?』

 

だって、無理だよ。

 

あたしにはレインを救う力が無い。

 

『そんなこと無いよ。私は知ってるもん。お姉ちゃんは誰よりもお兄ちゃんのことが好きで、それで、お姉ちゃんにしか、お兄ちゃんは助けられない!お兄ちゃんは今、とても苦しんでる。お姉ちゃんを傷つけてることに、とっても苦しんでる。だから』

 

貴女は………………

 

『お兄ちゃんを助けてあげて!お姉ちゃん!』

 

その瞬間、あたしはレインを見た。

 

レインの目にはあたしが写ってた。

 

そして、その目がとても辛く、苦しんでる目だった。

 

そうか…………レインは………こんなにも苦しんでるんだ。

 

あたしは手を伸ばし、レインの頬に触る。

 

「大丈夫だよ。こんなの全然痛く無いから。だから、苦しまないで。あたしは平気」

 

「………うっ!」

 

すると、レインは急に頭を押さえ呻く。

 

「負けないで。システムなんかに、あんな奴の作った技術に負けないで」

 

「う………あっ!」

 

「あたしも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に戦うから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ、ぐあああああああああ!?――――――ッ!うわああああああああああ!」

 

レインは頭を押さえ苦しみ、暴れる。

 

その拍子にあたしを貫いてた両手剣が抜ける。

 

「う、うああああああああああああ!?」

 

レインの身体から紫電が出て、そして、レインは倒れる。

 

あたしはレインを受け止める。

 

「おい、これは何だ?」

 

須郷が驚いたようにこっちを見てくる。

 

「研究は未完成とは言え八割は完成していた!それなのに、どうして、勝手にシステムから切り離されるんだよ!」

 

「それは、お前が知らないからだよ」

 

「何!?」

 

キリトさんは立ち上がり、須郷を見ていた。

 

立ち上がった拍子に背中に刺さってた剣は抜け落ちた

 

「システムを上回る、人間の意志の力。お前はそれを知らないんだ!」

 

「だから?そんなの有り得ないよ。どうせ、ただのバグに決まってるさ!」

 

須郷は右腕を振りかぶりキリトさんを殴ろうとする。

 

だが、キリトさんはそれを掴みとった。

 

「お…?」

 

「システムログイン、ID《ヒースクリフ》」

 

キリトさんが口にしたIDにあたしは驚いた。

 

その名前は…………

 

「な、何!?なんだそのIDは!?」

 

「システムコマンド、管理者権限変更。ID《オベイロン》をレベル1に」

 

「ぼ…僕より高位のIDだと!有り得ない……僕は支配者、創造者だぞ!この世界の王、神!」

 

「そうじゃないだろ。お前は盗んだんだ。世界を、そこの住人を。盗んだ玉座の上で、独り踊ってる泥棒の王だ!」

 

「こ、このガキ!………僕に、この僕にそんな口を…………!システムコマンド!オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!」

 

だが須郷が叫んでもシステムは応えなかった。

 

「言う事聞けポンコツが!神の……神の命令だぞ!」

 

騒ぎ立てるオベイロンを無視し、キリトさんはアスナさんを見つめ、笑った。

 

「システムコマンド!オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!」

 

キリトさんがそう叫ぶと空中から金色の刀身に、華麗な装飾が施された剣が現れ、キリトさんの手に収まる。

 

「コマンド一つで伝説の武器を召喚か」

 

そう言うと、キリトさんはエクスキャリバーをオベイロンに放り投げた。

 

オベイロンはそれを危うい手つきで受け止めた。

 

キリトさんは地面に転がってる黒い刃の剣の柄頭を踏んで跳ね上げ、回転して落ちてくる剣を受け止める。

 

そして、背中から薄青い刃の剣を鞘から力強く抜き放つ。

 

「決着をつける時だ。泥棒の王と、鍍金の勇者の…………システムコマンド、ペイン・アブソーバをレベルゼロに」

 

「な、何!?」

 

キリトさんのしたことに須郷は後ろに一歩下がる。

 

「逃げるなよ。あの男はどんな場面でも臆したことはなかったぞ。あの、茅場昌彦は!」

 

「か、かや…………茅場!……そうか、あのIDは………なんで、なんで死んでまで僕の邪魔をするんだよ!アンタはいつもそうだ!何もかも悟ったような顔しやがって!僕の欲しい者端から攫って!」

 

「須郷。お前の気持分からなくもない。俺も負けてアイツの家来になったからなでも、俺はアイツになりたいとは思ったこと無いぜ。お前と違ってな」

 

「こ、この…………ガキがぁぁぁぁぁ!」

 

須郷は出鱈目に剣を振り回しキリトさんに斬り掛かる。

 

だけど、キリトさんはその攻撃を全て一本の剣で防ぎきる。

 

そして、須郷が突きを放った瞬間、キリトさんはすれ違いざまに須郷の頬を斬りつけた。

 

「アツッ!痛い!」

 

「痛い?お前がアスナやレインに与えた苦しみは…………こんなものじゃない!」

 

黒い片手剣を振り下ろし、須郷の右腕を斬りおとす。

 

右腕は地面に落ち、跳ねるとポリゴンになって砕けた。

 

「アアアアアアアァァァァァ!!僕の手があああああああぁぁぁぁぁぁ!」

 

右腕を押さえ、須郷は泣き叫ぶ。

 

キリトさんは両手の剣を構え、須郷を睨む。

 

「これは、今までALO全プレイヤーを欺き、騙した罪!」

 

右手の剣で須郷の左腕を斬る。

 

「これは茅場の世界を盗んだ罪!」

 

次に左の剣で右足を斬る。

 

「これは、レインの心を弄り、苦しめた罪!」

 

右の剣で左足を斬る。

 

「これは、レインを利用し、シリカを苦しめた罪!」

 

左の剣を振り下ろし、須郷の右肩を深く斬りつける。

 

「そして!」

 

右の剣を横薙ぎに振るように構える。

 

「アスナを、苦しめ続けた罪だ!」

 

横薙ぎに振るわれた剣は、須郷の体を二つに切り裂き、上半身と下半身を分ける。

 

下半身は、砕け散り、上半身はその場に落ちる。

 

そして、止めを刺そうと、剣を振り下ろそうとする。

 

「ま、待て!」

 

すると、須郷は声を上げる。

 

「命乞いか?見っとも無いぞ」

 

「違う!今ここで僕を倒しても何も変わらないってことさ!」

 

「なんだと?管理者権限は今は俺の物だ。SAO全プレイヤーをログアウトさせることは可能だ。それにアスナもレインも」

 

「そのレイン君だよ」

 

その言葉に空気が固まる。

 

「レイン君はね。僕にとって重要な研究結果だからね。彼の記憶・感情には特別な仕掛けがあるのさ。それは、僕が持つ特殊なID以外で彼がログアウトすると、ALOで彼がしてきた全ての記憶が彼に蓄積されるのさ。現実に戻った彼は、自分御愛する人を散々痛めつけたと知ったらどうなるだろうね。きっと精神が崩壊するかもよ!」

 

その瞬間、あたしは走り出し、須郷の胸倉を掴んだ。

 

「消しなさい!レインがALOでしてきた記憶とあたしを痛めつけた記憶を消して!」

 

「ひ、ヒヒヒ、やなこった……ヒヒ、ヒャハハハハハハハ!」

 

ここまで、ここまで来たのに………………

 

「そうか………システムコマンド ID《オベイロン》のアバターデータの座標固定、並びに、アバター修復機能停止及びログアウト不可」

 

「な、何を!」

 

「今からお前の記憶を引きずり出し、お前のトラウマだけをリプレイさせる。何度もな」

 

その瞬間、オベイロンの体が一瞬だけ光る。

 

そして

 

「ひ!?や、やめろ!?嫌だ!助けて!?」

 

オベイロンは顔を歪ませ、怯えきった表情になった。

 

「これで、済むと思うか?今度はSAOのプレイヤー達が経験した死への恐怖を与えてやる」

 

「うがああああああああ!?嫌だ!死にたくない!」

 

今度は言葉に表せれない程醜い顔をしながら白目を剥き、上半身だけでのた打ち回る。

 

「た…………助けて……このままじゃ、僕の心が………」

 

「なら、レインのALOでの記憶を全て消すか?」

 

「分かった……消す………だから、やめてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

須郷を苦しみから解放し、レインの記憶を消させる作業をさせた。

 

暫くするとレインがうめき声を上げた。

 

「う……うう」

 

「レイン!」

 

「………シリカ……なのか?………ここは?………俺は……何を?」

 

どうやら、記憶は消えてるようだ。

 

あたしは嬉しくなり、レインに抱き付いた。

 

「え!?ちょ、ちょっと!?」

 

「よかった……よかった」

 

あたしは涙を流し、レインを抱きしめた。

 

「さて、それじゃあ、須郷、止めを刺すぞ」

 

「そ、そんな!約束通り、レイン君の記憶は消したぞ!」

 

「だからどうした?レインの記憶を消したら助けるとは言ってないぞ」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

キリトさんは須郷の頭を掴み、首を斬る。

 

「ぐぼぼぼぼぼぼおおおおおおおお!?」

 

そして、頭を上に放り投げ、頭に剣を突き刺す。

 

剣は右目を突き刺し、後頭部を突き抜けた。

 

そして、須郷は剣が突き刺さった右目から白い炎を出し、砕け散った。

 




終わりました。

下種郷へのお仕置きはいかがでしたか?

自分が考える中で酷いお仕置きだと思います。

それでは、残り最終話とエピローグでフェアリィ・ダンス編は終了です。

では、また次回!
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