二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第14話 再会

須郷を倒した後、キリトさんはアスナさんを吊るしていた鎖を斬り、アスナさんを助け出した。

 

アスナさんを抱き留めるとキリトさんは床に膝をつきアスナさんを抱きしめ泣いた。

 

「……信じてた。ううん、信じてる。これまでも、これからも、。君は私のヒーロー……いつでも、助けに来てくれるって……」

 

「…そうあれるよう、頑張るよ。さぁ、…帰ろう」

 

キリトさんはそう言い、アスナさんをログアウトさせる準備をする。

 

「現実世界はもう夜だ。でも、すぐに君に会いに行く」

 

「うん、待ってる。私も最初に会うのはキリト君がいいもの…………とうとう、終わるんだね。帰れるんだね………あの世界に」

 

「そうだ……色々変わっててビックリするぞ」

 

「いっぱい、色んな所に行って、色んな事、しようね」

 

「ああ。きっと」

 

キリトさんは頷くと、右手でボタンを押し、アスナさんをログアウトさせた。

 

「次はレインだな」

 

キリトさんは立ち上がりレインの方を向く。

 

「あ、少し待って下さい」

 

そう言うとレインはあたしの方を向く。

 

「シリカ……すまない。俺、多分、いや、絶対お前にも酷いことした」

 

「レイン………」

 

「……守るって決めてたお前を傷つけて………俺………何やってんだろうな」

 

悲しそうに俯き、涙を流すレイン。

 

あたしはレインに近寄り優しく抱きしめた。

 

「いいの。あたしは全然平気だった。…………でも、つらいなら、あたしも一緒に背負ってあげるから、ね?」

 

「シリカ…………ありがと」

 

そう言ってレインはあたしのことを抱きしめた。

 

「もういいか?」

 

キリトさん気まずそうに聞いて来る。

 

名残惜しかったが、時間も遅いので離れた。

 

「レイン、あたし、会いに行く。今からすぐに」

 

「別に明日でもいいんだが……待ってる」

 

「うん、また後でね」

 

「ああ」

 

その会話を最後に、キリトさんはレインをログアウトさせた。

 

すると、キリトさんは、暗闇に包まれた上空を見上げる。

 

「そこに居るんだろ、ヒースクリフ」

 

暫く静寂が続き、すると、何もない所から人が現れた。

 

『久しいな、キリト君。もっとも、私にとってはあの日のことも昨日のようだが』

 

「生きてたのか?」

 

『そうであるし、そうでないと言える。私は、茅場昌彦という意識のエコー、残像だ』

 

え?この人…………茅場昌彦!?

 

「相変わらず分かり難いことを言う人だな。どうせなら、もっと早く助けてくれてもいいんじゃないか?」

 

『それはすまなかった。システムに分散保存されたこのプログラムが結合・覚醒しのは丁度、君が須郷君に虐げられてる時だったのだが、少々やることがあってね』

 

「やること?」

 

『ああ………シリカ君』

 

「は、はい!」

 

行き成り名前を呼ばれたので驚き、声を上げる。

 

「彼女に、会って挙げたまえ」

 

「彼女?」

 

『……おいで』

 

茅場さんがそう言うと、茅場さんの後ろから誰かが走って来た。

 

そして………

 

「お姉ちゃ―――ん!」

 

「きゃっ!?」

 

あたしの腰に勢いよく誰かがぶつかり、あたしを抱きしめた。

 

「お姉ちゃん!会いたかった!」

 

「ゆ、ユウナちゃん!?」

 

黒い長髪で、人懐っこい笑みを浮かべたユウナちゃんがいた。

 

「ど、どうしてここに?」

 

「茅場のおじさんが助けてくれたの!」

 

ユウナちゃんは茅場さんを指差し言う。

 

『お、おじさん…………そこまで年を取っているつもりはないが』

 

茅場さんはショックを受けたらしく落ち込んでいる。

 

「あの、一体……」

 

『………まずは、彼女、ユウナ君がどうしてSAOの世界に来たか説明しよう。ユウナ君は《メディキュボイド》によってSAOの正式サービス開始の日にログインしなかったプレイヤーのアカウント情報を使いSAOの世界に来てしまった。これは偶然だろう。そして、ユウナ君は、須郷君の手により、カーディナルのプレイヤーデータから切り離された。目的は須郷君の記憶・感情の操作の研究のため。だが、無理矢理切り離したプレイヤーデータでは欠陥が生じ、彼はユウナ君のデータを処理した。それを私が偶然発見してね。シリカ君の心に呼び掛けるには彼女が最適だと思い、彼女のデータを結合させた。それと、シリカ君がログアウトすれば、自動的にユウナ君のデータは、シリカ君のナーヴギアのローカルメモリーに保存される』

 

やっぱり、あの時の声はユウナちゃんだったんだ。

 

「ま、何はともあれ、取りあえず礼は言っとくぞ」

 

『礼は不要だ。君と私は無償の善意など通用する仲ではなかろう。もちろん代償は必要だ、常に』

 

「何をしろというんだ?」

 

苦笑交じりにキリトさんが尋ねる。

 

すると、闇の中から卵の形をしたヒカル結晶が降りてきた

 

「これは?」

 

『世界の種子、《ザ・シード》だ。芽吹けば、どういうものか解かる。その後の判断は君に託そう。消去し、忘れるもよし………だが、もし君があの世界に憎しみ以外の感情を残しているのなら……………』

 

そこで言葉を区切り、暫く沈黙する。

 

『では、私は行くよ。いつかまた会おう』

 

そう告げると、茅場さんの姿は消え、暗闇も消えた。

 

そして、元の鳥籠に戻り、夕日が差していた。

 

「……キリトさん、あたし、先に失礼します」

 

「ああ、早くレインに会ってあげろ」

 

「はい」

 

キリトさんに挨拶をし、次にユウナちゃんと目線を合わせるようにしゃがむ。

 

「ユウナちゃん、ごめんね。お姉ちゃん、もう行かないと」

 

「うん!大丈夫だよ、早くお兄ちゃんに会ってあげて」

 

「ありがと。また、会いに来るから」

 

ユウナちゃんを思いっきし抱きしめ、あたしはログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開け、見慣れた天井が目に入る。

 

意識が覚醒した瞬間、あたしはナーヴギアを素早く外し、コートを手に家を飛び出した。

 

お母さんの声が聞こえたが気にせず自転車に飛び乗り、病院を目指す。

 

暫く走らせると、病院が見え、職員用の小さなゲートから入る。

 

駐輪場に自転車を止め、走る。

 

駐車場を通り抜け病院の入り口を目指す。

 

すると、車の陰から誰かが現れたので、ぶつからないように体をずらして脇を通り過ぎようとする。

 

その時、何かがあたしの腕を掠った。

 

そして、少し遅れて、鋭い痛みを感じた。

 

見るとダッフルコートの左腕の袖が切り裂かれ、そこから血が出ていた。

 

余りの痛さに傷口を押さえ、蹲ってしまう。

 

「やぁ、君はシリカちゃんだね?」

 

黒に近いスーツにコート着て、髪をオールバックにして眼鏡をかけた男の人がいた。

 

そして、手にはナイフが握られている。

 

「初めまして、須郷信之だ」

 

この人が………

 

見ると、左目の瞳孔が細かく震えているが、右目は小さく凝縮している。

 

おそらく、キリトさんの攻撃のせいだろう。

 

「酷いことするよね、キリト君は。まだ痛覚が消えないよ」

 

「須郷……さん、もう諦めてください。貴方のしたことは決して許されません。大人しく自首を……」

 

「自首?なんで?どうして僕がそんなことを?する必要なんてないね。僕を欲しいって企業は山ほどあるんだ。研究を完成させて、僕は本物の王に、この世界の神になれる」

 

この人……狂ってる。

 

「とりあえず、キリト君を殺すつもりだったけど、まだ来ないみたいだね。だから、君に僕の相手をして貰うよ」

 

ゆっくりとあたしに歩み寄ってくる。

 

「大体、君さえいなければ、レイン君は僕の忠実な僕としてキリト君を倒してくれた。そうだ、君さえいなければ、君さえいなければ!」

 

走り出し、ナイフを構える。

 

突き出されたナイフを躱す為、横に転がるようにして躱す。

 

すぐに立って逃げようとするが雪のせいでうまく立てない。

 

「さあ、これで終わりだ!」

 

須郷はあたしに馬乗りになり、ナイフを両手で逆手に持ち、振り下ろしてくる。

 

あたしは目を瞑り、死を覚悟した。

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シリカに手を出すなッ!」

 

ゴンッ!

 

聞きなれた声と、何かが殴られる音がした。

 

目を開けると、入院患者が着る服を着て松葉杖をついたレインがいた。

 

右手に握った松葉杖が持ち上がってるのを見ると、どうやらあれで須郷を殴ったみたいだ。

 

「こ、このガキィ!よくも……よくもこの僕を!」

 

須郷は眼鏡が割れ、その破片が頬や目の周りに突き刺さっている。

 

ナイフを振り上げレインに斬り掛かる。

 

レインは後ろに飛ぶような形で避ける。

 

だが、筋肉も無く、足場も悪い状況のため、後ろに倒れる。

 

「レイン!」

 

腕の痛みも忘れ、あたしは駆け寄る。

 

「シリカ……逃げろ」

 

「ヤダ!もう、離れるのは嫌!」

 

レインを抱きしめ叫ぶ。

 

「なら、二人仲良く、死ね!」

 

目を瞑り、レインをしっかり抱きしめる。

 

今度こそ本当に死を覚悟した。

 

だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間のピンチに勇者は現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおお!」

 

横から現れた誰かが須郷を突き飛ばす。

 

見るとそこには竹刀を持ったキリトさんがいた。

 

「キリトさん!」

 

「スグに言われて、竹刀を持ってきたのは正解だったな」

 

竹刀を片手で握り、SAOでよく見た構えを取っている。

 

「こ、このガキィ!そんなもので、強くなったつもりかよ!」

 

奇声を上げながら突っ込んでくる。

 

そしてキリトさんは慣れた動きで一つの技を使う。

 

カウンターで突きを須郷の鳩尾に入れた。

 

それにより、須郷は白目を剥き倒れる。

 

「うぉ……ウォーパルストライク………」

 

あの世界で何度も見てきた技だ。

 

「二人とも無事か?」

 

キリトさんが心配そうに竹刀を袋に仕舞いながら聞いて来る。

 

「はい、なんとか」

 

「そうか…………レイン」

 

「はい?」

 

「おかえり」

 

「……ただいまです」

 

レインとキリトさんは笑い合い拳をぶつけ合った。

 

レインに肩を貸し、小さなガラスドアから病院の中に入る。

 

キリトさんは慌てた様子でナースステーションに向かい、ナイフを持った男に襲われたと言った。

 

ちなみに、キリトさんは須郷の攻撃カウンターで避けた時、頬を切っている。

 

その様子を見た看護師さんは警備員と医師を呼びに何処かに行った。

 

看護師さんが言ったのを確認すると、キリトさんはカウンターを乗り出しゲスト用のパスを二枚掴む。

 

一枚渡され、キリトさんはアスナさんの所に、あたしはレインを病室に連れて行った。

 

病室に入り、レインをベットに座らせると、あたしはレインに問いかけた。

 

「なんで、あそこに居たの?」

 

「なんか嫌な予感がしてな。それで、松葉杖を拝借して降りて見たら、あの通りだった」

 

「無茶して」

 

そう呟き、あたしは抱き付いた。

 

鼓動が聞こえ、体温が感じられる。

 

生きてる。

 

そう感じられた。

 

「ごめんな、心配かけて」

 

「ううん、もう一度、こうして会えて良かった。嬉しいよ」

 

無意識のうちにあたしは涙を流していた。

 

レインも涙を流していた。

 

「レインの本当の名前、教えて?」

 

「ネームプレートがあったと思うが?」

 

「レインの口から聞きたいの」

 

レインは少し困ったように笑い言う。

 

「朝霧雫、年は14だな」

 

「雫……良い名前だね。あたしは綾野珪子。同じく14歳」

 

「同い年だったのか………お前も良い名前だ」

 

「ありがと」

 

もう一度笑い合い、見つめ合う。

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「あの時の約束、果たして」

 

「………ああ」

 

レインはあたしを抱き寄せ、頬に手を添える。

 

そして、唇が触れあった。

 

唇を離し、そして、再び見つめ合う。

 

「………ただいま、珪子」

 

「………おかえり、雫」

 




次回エピローグ。

エピローグだけレイン視点になります。
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