SAOがデスゲーム化してから1ヵ月がたった。
その間2000人が命を落とした。
「そりゃ!!」
俺は亡霊からドロップした両手剣≪デスブリンガー≫を振りまわし
≪ルインコボルド・トルーパー≫を切り裂いた。
「シリカ!!」
「スイッチ!!」
その一言でシリカが前に出てトルーパーの喉にソードスキル≪スレイス≫を当てた。
それによりトルーパーは倒れた。
「ナイススイッチ。腕を上げたな」
「ありがと」
シリカは短剣を鞘に納め軽く体を伸ばした。
「それにしてももう1ヶ月経つんだね」
1ヶ月経ち、いまだに第1層は攻略はされていない。
マッピングがどこまで進んでいるのかもわからない。
本気で攻略を考えているプレイヤーもどれだけいるのやら。
「この調子だと100層攻略はいつになるやら」
「≪トールバーナ≫の噴水広場で第1層ボス攻略会議があるらしいぞ」
「そうなんですか?どうする、レイン。参加する?」
「そうだな。一応参加しとくか」
……ちょっと待て。
「「あんた誰!?」」
ナチュラルに会話に入り込んできたコイツ誰だよ。
「俺はアヤメ。よろしく」
会話に入り込んできたコイツはアヤメという槍使いだ。
なんでも、子供(俺たち)が迷宮区に入ってくのを見て追いかけてきたらしい。
「レインです」
「シリカです」
見た感じ年上っぽいので敬語を使う。
「見たところお前らまだガキだよな?何してんだ?
てか、迷宮区に入る理由なんてきまってるか」
なら聞くなよ。
「お前ら、ゲーム攻略するなら攻略会議に参加した方がいいぞ。
なんせ、とうとうボス部屋を発見したからな」
マジかよ!?
1ヶ月でとうとうボス部屋までのマッピングが完了していたのか。
となると、今回の攻略会議はボス戦の会議か。
感心半分と驚き半分でそんなことを考えていた。
「まぁ、ボス戦に参加するなら攻略会議に参加することをおすすめする。
もっとも、戦う覚悟があるならの話だが」
アヤメさんは俺たちに背を向け手を振りながら出口に向かった。
「とうとうボス戦か」
1ヶ月。
長かった。
でも、やっとここまで来た。
何が何でもクリアしてやる。
「ねぇ」
シリカが俺を見上げてあることを聞いてきた。
「何で、アヤメさんは攻略会議がボス戦の話だってしてたのかな?」
そう言えば、何でだろう。
≪トールバーナ≫に着くと真っ先に噴水広場に向かった。
広場にはそれなりにプレイヤーが集まっていた。
「うわ~。沢山いるね」
「いや、これでも少ない方だよ」
見た感じ人数は40人ぐらい。
パーティーは6人まで組め、レイドパーティーは6人パーティーを8つまで束ねられる。
ボス戦を死者0でいくならレイドパーティー2つは必要だ。
これじゃあ、レイドパーティー1つの上限すら満たせてない。
「まったくだな」
聞き覚えのある声が聞こえ後ろを振り返ると見慣れた顔がいた。
「よ、レイン」
「キリトさん!!無事だったんですね!!」
キリトさん。
本名は桐ケ谷和人。
SAOのβテストの時の知り合いで、現実世界でも何度か会ったことがある。
「ゲーム初日の日に会う約束しときながら待ち合わせ場所に来なかったし、
無事だったのか?はこっちのセリフだよ」
キリトさんとの再会を喜んでいると横からシリカが割って入ってきた。
「ちょっと、レイン。誰?この人?」
「あぁ、すまん。紹介する。この人はキリトさん。俺と同じ元βテスターで
現実での知り合いでもある人だ。
キリトさん。こいつはシリカ。今、コンビを組んでいます」
「シリカです。よろしくお願いします」
「キリトだ。よろしく。ところで……シリカはβテスターのこと恨んでたりは……」
「?」
「いや、なんでもない。ここに居るってことはお前たちも攻略に参加するのか?」
シリカに変なことを聞いたと思ったら急に当たり前なことを聞いてきた。
「えぇ、もちろんです。俺もシリカも参加するつもりですよ」
「そうか」
広場で待っていると青い髪にブロンズ系の防具、大振りの片手直剣にカイトシールドを
装備した青年が登場した。
それに続いて茶色のマントを纏い背中に槍をもった黒い髪をポニーテールにした男性も現れた。
「あれ、アヤメさん?」
「ホント。」
俺とシリカは驚いた。
先ほど迷宮区で知り合った人か攻略会議の司会的立場に立っているのだ。
そうか、だから攻略会議の内容がボス戦だとしっていたのか。
「それじゃあ、そろそろ始めさせてもらいます。
今日は俺の呼びかけに応えてくれてありがとう。
俺はディアベル。職業はナイトやってます」
SAOでは生産系スキルを所有している人のことを
≪料理人≫≪鍛冶屋≫などと呼ばれるが、
≪勇者≫や≪騎士≫などというジョブシステムは無い。
周りから笑い声やヤジを飛ばす声が聞こえるがピリピリした空気が少しばかり和んだ。
次に、アヤメさんが前に出た。
「俺はアヤメ。ポジションは参謀かな。とりあえずよろしく」
周りから拍手が上がりディアベルさんが手を挙げ制した。
「今日、俺たちのパーティーがボスの部屋を発見した。
俺たちはボスを倒し、第2層に進む。
そして、≪はじまりの町≫で待ってる皆にこのゲームがクリアできるってことを伝えるべきなんだそれが、ここにいる俺たちの義務だ。そうは思わないか?」
ディアベルさんの言葉に皆賛同するかのようにまた拍手が起こった。
「ありがと。それじゃあ、これから攻略会議を始める。
まず6人のパーティーを「ちょお待ってんか!!」
後ろから大きな声が聞こえて来た。
その声の主はジャンプするような形でディアベルさんとアヤメさんの前に立った。
「わいは、キバオウや。
攻略会議を始める前に言いたいことがある。
こん中に何人がわび入れんとアカン奴がおるはずや」
キバオウにアヤメさんが声をかけた。
「アー、キバオウだっけ?お前が言いたいことはもしかして、
『2000人が死んだ理由は元βテスターが見捨てた性だから謝れ』っていいたいんじゃないのか?」
「その通りや」
「やっぱりな。アンタみたいな奴何人か見かけてきたから何となく分かった。で?
あんたはどうして欲しいんだ?」
アヤメさんが聞くとキバオウは
「決まっとる。元β上がりに謝罪と賠償の請求や。
あいつらは自分らだけ、うまい狩り場やボロいクエストでかっぼり儲けとる。
そんでもって、9000人の人間は知らんぷりや。
あいつらがはなから情報やアイテム、金を分けとってたら2000人は死なんかったし
今頃、2層、3層、突破できとったはずや。
せやから、ため込んだ金とアイテムを出してもらわんと命を預けられんし預かれん」
キバオウの言い分は納得できるし、納得もできない。
確かに元βテスターは9000人を見捨てって≪はじまりの町≫を出た。
俺も殆ど見捨ててシリカだけを助けたしな。
でも、中には見捨てようとしなかった人もいる。
例えば情報屋のアルゴさん。
彼女も元βテスターで、βテストの時の情報をガイドブックにして道具屋で無料配布している。
「発言いいか?」
考えごとをしているとチョコレート色をした肌で
スキンヘッドに両手用戦斧を持った身長が190はあるだろう人が経ちあがった。
日本人じゃないだろう。
「おれはエギル。キバオウさん、金やアイテムはともかく情報はあったぞ。
コイツだ。このガイドブックは道具屋で無料配布されていたやつだ。
新しい村や町に行くと必ず置いてあった。情報が早すぎるとは思わないか?」
「だ、だからなんや!!」
エギルさんの言葉にアヤメさんはピンときたらしい。
「要するにそのガイドブックを作って無料配布したのは元βテスターってことだな」
「その通りだ」
アヤメさんとエギルさんの発言にキバオウは驚いている。
「だ、だけど、死んだ2000人の中には他のMMOじゃトップ張っとるベテランやったんだぞ!
それは、どう説明するんや!」
「ベテランだったからこそ死んだんだろう。SAOを他のMMOと同じように計り
引き際を誤った。だが、今はそのことを追及する暇は無いと俺は思うんだが?」
エギルさんの言い分が正しいためキバオウは大人しく引き下がった。
「なぁ、レイン」
急にキリトさんが話しかけてきた。
「はい?」
「お前もガイドブックを無料配布でゲットしたのか?」
「はい。そうですよ」
なんか落ち込みだした。
アルゴさんに買わされたのかな?
「とりあえず、この話はこれで終了。それじゃあ、攻略会議を再開する。
まず、6人のパーティーを組んでくれ」
俺はシリカと始めから組んでるし、後はキリトさんを入れるとして残り3人か。
横を見るとキリトさんは青ざめた顔をしていた。
「キリトさん。俺たちと組みましょう」
「あ、ありがとな」
その後、キリトさんが隅に座っていたプレイヤーを連れてきて4人になった。
できたパーティーは6人パーティーが7個と4人パーティーが1個できた。
重装甲の壁部隊が2つ、高機動高火力の攻撃部隊が3つ
長モノ装備の支援部隊2つできた。
ボスの名は≪イルファング・ザ・コボルドロード≫で武器は骨斧と革盾で
HPバーが4つあり最後の1つになると腰の曲刀に変え、使ってくるスキルも変わる。
後、取り巻きの≪ルインコボルド・センチネル≫は3匹現れ
HPバーが1つ減るたびにポップされる。
壁部隊2つがボスを交互に受け持ち、攻撃部隊の2つがボスに、1つが取り巻きに
支援部隊はディレイスキルをメインに使いボスと取り巻きの攻撃を阻害する。
俺たち4人パーティーは取り巻きを相手にする攻撃部隊がのサポート。
おまけ扱いだな。
夜になり俺とシリカは晩飯を食べることにした。
「ほらよ」
シリカに黒パンとミルクを渡し、二人で近くのベンチに座り食べ始めた。
「毎日黒パンだと飽きるよね」
「なら、これを使うか」
アイテムから小壺をオブジェクト化し、シリカに渡した。
「何これ?」
「使ってみろよ」
おそるおそる手を伸ばして小壺をタップすると指先が淡い光に包まれた。
「パンにこう塗れよ」
俺もタップし、黒パンに塗る。
シリカも同じようにするとこってりとした白い物が付いた。
「これ、クリーム?」
「この前『逆襲の雌牛』ってクエストしただろ。その時の報酬だよ」
会話をやめて、後はパンに二人して食らいついた。
シリカの喜びよう半端なかった。
「おいしかった」
「そうだな」
食事を終えると俺たちの間に気まずい空気が漂った。
どうしよう。
言葉を探しているとシリカが急にこんなことを聞いてきた。
「……ボス倒せるかな?」
「……不安なのか?」
「少し」
シリカの悲しんだ顔を見ていると何故か俺も悲しくなってきた。
シリカには笑っていて欲しい。
何故かそう思った。
「シリカさ。好きな食べ物ってなんだ?」
「え?ん~~~チーズケーキかな」
「なら、現実に戻ったらさ食いに行こうぜ。
うまいケーキ屋知ってるんだ。俺が奢る」
そう言うとシリカは一瞬ポカーンとした後すぐに笑い出した。
「じゃあ、その時は財布が空になるまで奢らせるから」
「覚悟しとくよ」
明日はいよいよボス戦だ。
絶対に勝ってやる。
かなり疲れた。
頑張りました。
ゆっくり読んでください。