二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第12話 BoB本戦前

晴れた日曜日、昼食を摂った後、珪子が突然家に遊びに来た。

 

母さんと父さんは仕事、雹はパソコンのジャンクパーツを買いに行くと出かけ、つららは友達の家に遊びに出かけたので家には俺と珪子しかいない。

 

珪子は俺のベッドに横になって雑誌を読み、俺はベッドに寄りかかりながら、銃について書かれたレポートみたいなのをタブレットPCで読んでいる。

 

「ねぇ、何読んでるの?」

 

珪子が雑誌を読み終え、後ろから乗り出すように、俺の手元を覗き込む。

 

「銃?」

 

「ああ、ちょっとな」

 

やっぱりGGOの事は言えないので、はぐらかすように言う。

 

「ふ~ん。………そう言えばさ、面白い物見つけたんだけど」

 

そう言って、珪子はミニスカートのポッケから四つに折られたA4の紙を取り出した。

 

それは《MMOトゥモロー》、通称Mトモのニュースコーナーのハードコピーだった。

 

見出しは、【ガンゲイル・オンラインの最強者決定バトルロイヤル、第三回《バレット・オブ・バレッツ》本大会出場プレイヤー三十名決まる】だ。

 

「ここなんだけど」

 

珪子の指差すところには【Eブロック一位:Rain(初)】とあった。

 

「似た名前だな」

 

「本気で言ってる?」

 

そう言って珪子は微笑む。

 

黒いオーラを出しながら。

 

まずいな。

 

珪子もGGOでの事件の話は知ってる。

 

だから、俺がキリトさんとGGOにいるのは知られてくない。

 

「いや、レイン何て名前、MMOではよくあるって」

 

「へぇ~、じゃあこの名前は何?」

 

そして次に指差したのは【Fブロック一位:Kirito(初)】だ。

 

「あたしが知ってる名前が二つもあるんだけど」

 

「…………」

 

「そう言えば、キリトさんもALOからコンバートしたって聞いたんだけど、これって偶然?」

 

駄目だ。

 

これは隠し通せない。

 

「悪い。実はそれのレインは俺だ。キリトもキリトさんの事だ」

 

「やっぱり」

 

そう言って紙を折り畳み、珪子はポッケに仕舞う。

 

「ねぇ、本当に危なくはないんだよね?」

 

珪子は不安そうに俺の肩に手を置く。

 

明らかに不安な表情をしていた。

 

その表情はSAOで俺がヒースクリフに挑んだ時に俺に見せた表情と同じだった。

 

俺は手を伸ばし、珪子の手を握り締めた。

 

「ああ、大丈夫だ。なんの危険もない」

 

「そっか」

 

そう言うと、珪子はベッドから降りて俺の肩に寄りかかるように座る。

 

「絶対に戻ってきてよ。一人はもう嫌」

 

「約束だ」

 

手を頭に置き、優しくなでる。

 

依頼の内容を詳しく話せなかったのは正直心苦しい。

 

VRMMO内で現実の人を殺せるとは思ってない。

 

でも、もしかしたらの可能性もある。

 

だから、巻き込みたくない。

 

珪子ならそんなの関係ないと言うだろうけど、やっぱり不安だ。

 

俺の勝手な都合だって分かってる。

 

それでも、俺は巻き込みたくない。

 

無意識に俺は珪子を抱き寄せていた。

 

珪子は不思議そうにしながらも目を細めてされるがままだった。

 

 

レインSIDE END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アヤメSIDE

 

「むっかつく!あの男!」

 

ガツンッ!とブランコの鉄柱を蹴り飛ばし朝田が怒りの声を上げる。

 

その様子を俺と新川は苦笑いしながら眺める。

 

「朝田さんがそこまで怒るのって珍しいね」

 

「だって、図々しくて、セクハラやろーで、かっこつけで……なにも、GGOで剣で闘わなくてもいいじゃない!」

 

ぶつぶつとキリトに対して怒りを口にし、朝田は足元の小石を蹴る。

 

「まぁ、彼奴はそういう奴だからな」

 

俺はそう言い、缶コーヒーを飲む。

 

「それにしても、初めてだよね。朝田さんが他人の事を色々言うの」

 

「そう?」

 

「うん。普段は他人に興味が無いって感じだし」

 

「………私、怒りっぽいのよ、これでも」

 

「そうなんだ」

 

新川は朝田を暫く見つめると、ブランコから身を乗り出した。

 

「じゃあさ、どっかのフィールドで待ち伏せて狩る?狙撃するなら、囮になるし、正面から戦うなら、協力するよ。腕のいいマシンガンナーなら二、三人呼べるし。ビームスタナー使ってMPKもいいかも」

 

嬉々とキリトの殺し方を模索新川に俺と朝田は呆気にとられた。

 

「あ、そう言うんじゃないの。確かにムカつく奴だけど、戦い方だけはバカ正直な奴だから、私もフェアな条件で闘いたいのよ。昨日は負けたけど、あれでアイツの戦法も分かったし、幸いリベンジのチャンスはある。今度こそ、あの紛らわしいアバターを吹き飛ばしてやる」

 

そう言って朝田は右手の人差指をまっすぐ伸ばし、空に向ける。

 

「覚えてなさいよ。この借りは必ず倍にして返してやるんだから」

 

その時、俺はあることに気付いた。

 

「朝田、それ大丈夫なのか?」

 

「え?」

 

俺に言われて朝田は、自分の右手を見る。

 

右手は握り拳作り、親指と人差し指が伸びて銃の形を模してた。

 

聞いた話だが、朝田は銃にトラウマがあるらしく、銃の写真を見ただけでも、発作を起こすらしい。

 

GGOをやっているのはトラウマを克服するためらしい。

 

「怒ってるから平気みたい」

 

「……なんだか、心配だよ」

 

急に新川が呟いた。

 

「なんか、いつもの朝田さんらしくない。いつもの朝田さんはクールで、超然としててさ、僕みたいに学校から逃げ出さないで………強いんだよ。朝田さんは僕の理想なんだ。僕に出来ることなら何でもするよ。本大会では、モニタ越しに応援しかできないから」

 

朝田に迫るような勢いだが、俺が居る為がためらっている。

 

「でも、強くないよ。現に今でも銃の写真を見ると発作が」

 

「シノンは違うじゃない。僕はシノンこそが本当の朝田さんだと思う。だから、いつか現実の朝田さんもシノンの様になれるよ。だから、心配なんだ。あんな男の事で、怒ったり、動揺してる朝田さんを見ると、だから、僕が、僕が力になるから」

 

そう言って、新川は朝田の事を鉄柱ごと抱きしめていた。

 

行き成りの事で体が動かなかった。

 

慌てて動こうとしたら、それより早く朝田が新川を突き放していた。

 

「ごめん。そう言ってくれるのは嬉しい。でも、今はまだそういう気持ちにはなれないの。私の問題は、私が闘わないといけない問題だから」

 

そう言えば、新川は朝田のトラウマの原因を知ってるんだったよな。

 

そう思うと嫌でも俺と新川の差が思い知らされてしまう。

 

「だから……それまで、待ってて」

 

その言葉に俺は衝撃を受けた。

 

……………そっか、朝田は、新川のことが……………

 

GGOでずっとパートナーでいたのに、結局は俺の自惚れだったか。

 

考えてみればそうだな。

 

俺は朝田の過去を知らない。

 

でも、新川は知ってる。

 

知ったうえで朝田と仲良くしてる。

 

朝田が思いよせても仕方がないな。

 

俺は無言でその場を離れ、家に戻る。

 

少し早目の晩飯を摂り、時間まで眠ることにした。

 

このイライラはBoBで発散しよう。

 

取りあえず、《死銃》と《死剣》にぶつけよう。

 

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