二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第16話 ALO内での様子

ALO 空中都市《イグドラル・シティ》の一画にある部屋にあたしは居る。

 

あたし以外には、この部屋を借りてるアスナさん、そして、リズさん、アルブスさん、クラインさん、リーファさん、レコンさん、ピクシーモードのユウナちゃんとユイちゃんの八人

がいる。

 

今日ここに集まったのは《MMOストリーム》が生中継してるGGOの最強者決定バトルロイヤル《第三回バレット・オブ・バレッツ》を見るためだ。

 

残念ながらエギルさんは自身が経営する喫茶店兼酒場がちょうど賑わう時間だからこれてない。

 

ちなみにあたしとアスナさんは今エギルさんのお店の二階からダイブさせてもらってる。

 

大会が終わったら即行でレインとキリトさんを捕まえてあれこれ言う為だ。

 

「それにしてもキリトとレインはなんでまた、ALOからコンバートしてまでこの大会に出ようって思ったのかしら?」

 

エメラルド色の液体で満たされたワイングラス片手にリズさんが首を傾げる。

 

レインとキリトさんの二人が菊岡さんの依頼でGGOに行ったことを知ってるのはあたしとアスナさん、リーファさん、ユイちゃんとユウナちゃんのみだ。

 

「それがね、なんだがおかしなバイトを引き受けたみたいなの。VRMMOの、っていうか《ザ・シード連結体》の現状をリサーチする、みたいな」

 

「GGOは唯一《通貨還元システム》があるゲームだからって理由で選ばれたって言ってましたよ」

 

レインに聞かされた通りの説明をしたが、それが本当の理由じゃないってことは分かってる。

 

嘘をついてるとは思わないが、きっと言ってないことがあるはずだ。

 

言わなかったのにはきっと理由があるはずだ。

 

それに約束もした。

 

必ず戻ってくるって。

 

だから、私はレインを信じて見送った。

 

でも、何か不安を感じる。

 

昔、アインクラッドの迷宮区攻略中に、索敵範囲外からモンスターに取り囲まれるような、形の無い不安が………

 

「ま、どんなゲームでもすぐにコツを掴めるレインたちならこのバイトは適任かもな」

 

刀を抱えるようにして、ソファーに座ってるアルブスさんが言う。

 

「でも、リサーチなら大会にでなくてもいいんじゃないかな?リサーチだから、プレイヤーに話を聞くとか」

 

レコンさんがいった言葉に全員が首を傾げる。

 

「もしかして、大会で優勝して、大金でも得ようとしてるのかもしれませんね。確か、還元できる最低金額が高いって聞いたことありますから」

 

私の発言で、ユウナちゃんとユイちゃんが補足説明してくれた。

 

「公式サイトにレートの記載はありませんが、ネット上では還元最低金額はGGO内の通貨で十万クレジット、対JPYのレートは百分の一なので千円からとなります」

 

「プレイヤーの登録メールアドレスから電子マネーのチャージ済みコードが送信される形で、優勝賞金は三百万クレジットだから、還元すると三万円だよ」

 

わざわざ調べてくれた二人に感謝をし、再び考える。

 

「還元システムは複雑じゃないみたいね」

 

「電子マネーをコード化してメールで受け渡しとか、俺たちも良くするしな」

 

「なら、キリトさんとレイン君が実地で確かめるまでもないですよね」

 

リズさん、アルブスさん、レコンさんの順番に各々の考えを言う。

 

「賞金の三万にくらっときたっつうセンはあっけどな!」

 

クラインさんのセリフにリズさんとアルブスさんが「あんたじゃあるまいし」「お前とアイツらを一緒にするな」と突っ込まれる。

 

「それにしても、あのキリトとレインがここまで動かないとはな」

 

「バトルロワイヤル形式のPvP対決なら普通、隠れたまま上位入賞って手が通用しませんからね」

 

「それに、お兄ちゃんの性格からして、戦闘サウンドを聞いてじっと我慢してられるとは思えません」

 

流石はリーファさん、長年暮らしてるだけあってキリトさんのこと理解してる。

 

それを言ったらレインもそうだ。

 

レインはキリトさんほど戦闘狂じゃないけど、隠れたまま過ごすなんて卑怯な手を使うはずがない。

 

十六分割されたスクリーンにはレインとキリトさんの名前は無い。

 

戦闘中以外の人を移してもおもしろくないのは分かるけど、三十分経っていまだにレインとキリトさんの名前が出ない。

 

もしかしたらすでに死んでしまったのではと思うが、スクリーン音右端にある出場者一覧ではまたレインもキリトさんも【ALIVE】だ。

 

もしかして、戦うこと以上に、大事な目的がある?

 

そう思った瞬間、十六分割された画面の中央の戦闘が佳境を迎えた。

 

ダインという人がマシンガンを構え連射するが、対戦相手の人は猫妖精のような動きで橋の上尾を縦横に跳び、一気に接近。

 

そして、ショットガンとやバレル銃を立て続けに発砲した。

 

「あの人強いね。こうしてみるとGGOも面白うそうだなぁ。銃って造れるのかな?」

 

工匠妖精族のリズさんが鍛冶師としての血が騒ぐのか、リズさんらしいコメントをした。

 

「おい、リズまでGGOにコンバートするとか言うんじゃないだろうな?」

 

「そうですよ。もうすぐ二十層開放のアップデートがあるんですから」

 

あたしとアルブスさんに突っ込まれ、リズさんは両手を上げる。

 

「わかってる、わかってる。どんなゲームにも強い人はいるんだなーって思っただけよ。きっとこの人が今回の優勝候補……」

 

リズさんがそう言った瞬間、その人はばったりと倒れた。

 

急に画面が変わり、その倒れた人の画面になった。

 

下部に《ペイルライダー》と名前が表示された。

 

死んだわけではなく、右肩のダメージ痕を中心に細かいスパークが這い回っている。

 

「風魔法の《封雷網》みたい」

 

「俺、あれ苦手なんだよなぁ。ホーミング性能良すぎるだろ」

 

「お前は弱体化魔法全部が苦手だろ!少しは魔法抵抗スキル上げろ」

 

「へん、やなこった。侍たるもの魔の文字が付くスキルは取れねぇ、取っちゃならねぇ!」

 

「あのねぇ、大昔から、RPGの侍は戦士プラス黒魔法なクラスなの!」

 

クラインさんとアルブスさん、リズさんの掛け合いに苦笑しながらアスナさんは問題の画面をフォーカスし、二本の指で開いた。

 

今だに倒れているペイルライダーが拡大され他の中継を隅に押しやる。

 

倒れてから十秒以上経つ。

 

すると、ばさっと言うサウンドが響き全員がぴくりと体を動かす。

 

画面の左側から黒い布が現れ、カメラが徐々に引き、その正体を映す。

 

「………ゴースト………?」

 

誰が呟いたが分からないが、その姿はアインクラッドで闘った幽霊系モンスターに似ている。

 

だが、足があるからプレイヤーだ。

 

ぼろぼろのマントを着たプレイヤーは肩に大きな黒いライフル銃を掛けてる。

 

おそらくこの人がペイルライダーを撃ったんだろう。

 

遠距離から麻痺らせて近距離で止めを刺す。

 

ALOでもポピュラーな戦い方だ。

 

ボロマントのプレイヤーは懐に手を入れ、一丁の黒い銃を取り出す。

 

あれが主ダメージソース?

 

それにしては

 

「……しょぼくねぇ?」

 

クラインさんの言葉に全員が頷く。

 

「どうみても肩のでけぇライフルの方がATK上っぺよな。あっちで撃ちゃいいのに」

 

「弾代が高いとかじゃないですか?ALOでも大魔法は高い触媒を使いますし」

 

レコンさんのセリフに一同うむむと考える。

 

ボロマントは十字を切り、黒い銃でペイルライダーを撃とうとした瞬間、行き成り大きく仰け反り、先程まで心臓があった位置をオレンジ色の光弾が貫く。

 

誰かが遠くから狙撃したんだ。

 

でも、左後背からきた弾丸を、しかもあの速度の弾丸を躱すなんてこの人凄い。

 

そう思ってると今度は蒼の服を着たプレイヤーが現れた。

 

手には明らかに大きすぎる銃が握られている。

 

それをボロマントに向け撃つ。

 

これは流石に当たると思ったが、また黒いフード付きマントを羽織った別のプレイヤーが現れ手に持ってた武器で弾丸を防ぐ。

 

その武器は昔、あるゲームで見たことがある。

 

確か、ガンブレードだったはず。

 

ガンブレードで斬り掛かろうとすると蒼の人は背中から大振りの湾曲したナイフを取り出した。

 

今度は頭陀袋のようなものを被り、黒い服を着た男が現れ、蒼の人にナイフを突き立てた。

 

すると、蒼の人はその場に倒れ込む。

 

そこで、最初のプレイヤーが黒い銃でペイルライダーを撃つ。

 

放たれた弾丸は胸の中央に当たるがHPじはまだ九割残ってる。

 

そこで、麻痺が解けペイルライダーはバネの様に起き上がる。

 

そして、持ってたショットガンをボロマントに突きつける形で引き金を引こうとする。

 

「うわ、大逆転」

 

リズさんがそう口走ったが、轟音も、閃光も起きなかった。

 

ペイルライダーは、両ひざが崩れ落ち、体を右に傾け倒れた。

 

弱々しい動作で左手で胸を掴む。

 

その時、ヘルメット越しに見えたかの表情は死に逝く者達が感じる死への恐怖そのものだった。

 

そして、体がノイズを思わせる不規則な光に包まれ消滅し、【DISCONNECTION】が浮かび上がり、消えた。

 

『俺と、この銃の名は死銃……デス・ガン』

 

『俺と、この剣の名は死剣……デス・ソード』

 

『俺らはいつか、テメェーらの前に現れる!』

 

『そして、この銃と』

 

『この剣で、本物の死をもたらす』

 

『俺らにゃ、それだけの力がある!』

 

『忘れるな』

 

『まだ、終わってない』

 

『何も、終わってねぇ!』

 

『『『 I t ` s    s h o w    t i m e ! 』』』

 

三人が最後に行ったたどたどしい英語に私は最大の衝撃を受けた。

 

私だけじゃない。

 

アスナさん、アルブスさん、クラインさんが戦慄した。

 

あたしたちはこの人たちを知ってる。

 

「う……嘘だろ……あいつ……まさか……」

 

「クラインさん、知ってるの!?あいつが誰なのか!?」

 

クラインさんの嗄れ声にアスナさんが叫ぶ。

 

「いや、名前までは……。でも、これだけは断言できる」

 

「ああ、間違いない。奴らはラフコフのメンバーだ」

 

アルブスさんが声を震わせ話す。

 

「あの、ラフコフって?」

 

「えっとね………」

 

ラフィン・コフィンのことを知らないリーファさんとレコンさんにリズさんがラフィン・コフィンの猛威と消滅について簡略に説明する。

 

その時、画面に変化が現れた。

 

死剣がガンブレードを掲げ、蒼の人を斬ろうとした。

 

あたしはそのプレイヤーが、何故かレインの姿を被って見えた

 

「駄目!」

 

思わず声を上げる。

 

だが、その攻撃は横からライフルに銃剣を取り付けたプレイヤーの一撃で阻まれる。

 

すると頭陀袋の男がナイフを振りかざすが、またしても横から女性?プレイヤーの突進攻撃で仰け反るように下がる。

 

でも、今の動き…………

 

「ウォーパル・ストライクだ。てことは、あのアバターはキリトか?」

 

おそらくキリトさんだ。

 

「それにあのライフルの使い方、まるで槍のように使ってやがる。まさかアヤメか?」

 

そういえば出場者一覧にアヤメとあった。

 

なら、可能性はあるはず。

 

「もしかして、蒼の人は…………レイン?」

 

いや、きっとそうだ。

 

だから、姿が一瞬被って見えたんだ。

 

キリトさんとアヤメさんが三人と会話をすると、死剣が何かを言い、三人は撤退した。

 

そこであたしは安堵の息を吐いた。

 

「それにしても、あいつらは一体………」

 

「彼奴らが誰か分かる」

 

「誰なの!?」

 

「………死銃はザザだ。そして、頭陀袋はジョニー・ブラック」

 

ラフィン・コフィンでもかなりの上級プレイヤーの名前にあたしは驚く。

 

あたしだけでなく、アスナさんたちも息を呑んだ。

 

「最後の、一人は?」

 

「……………スバルだ」

 

「!?……う、嘘です!!」

 

その名前に私は思わず声を挙げた。

 

「だって、スバルさんは……あの時、レインが………」

 

「それは知ってる。だが、彼奴は間違いなくスバルなんだ」

 

「あの、どうしてそこまで断言が出来るんですか?」

 

レコンさんがおずおずと尋ねる。

 

「分かるさ。俺も…………かつてはラフコフのメンバーだったからな」

 

「「え!?」」

 

予想外の言葉にリーファさんとレコンさんが驚く。

 

その隣で、リズさんが慌ててアルブスさんを庇う。

 

あたしも何故アルブスさんがラフィン・コフィンに居たのかを説明した。

 

リーファさんとレコンさんはアヤメさんの事をよく知ってるので、すぐに理解してくれた。

 

「まさか、キリトとレインの奴、昔の因縁に決着を付けようとGGOに………」

 

「でも、それだとバイトの話はどうなるんですか?キリトさんとレイン君は、誰かに依頼されてGGOに行ったんですよね」

 

その通りだ。

 

確か今回の件を依頼したのは菊岡さんのはず。

 

二人のコンバートとボロマントの存在の一致。

 

偶然とは思えない。

 

「私、一度落ちて二人の依頼主と連絡取って見る」

 

「え!?アスナ知ってるの!?」

 

「うん、本当はみんなも知ってる人なの。ここに呼び出して問い詰めるわ。ユイちゃん、ユウナちゃん、私がログアウトしてる間にGGO関係のことを調べ解いて。特に死銃と死剣について」

 

「「了解しました」」

 

ユウナちゃんとユイちゃんが同時に声を上げ、ネットから情報を拾う作業を行う。

 

「じゃあ、みんなちょっとだけ待ってて!」

 

そう言ってアスナさんは水色のロングヘアを揺らしてメニューウィンドウを出し、ログアウトした。

 

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