「せい!」
ドラグノフ銃剣付を振るい夏候惇を切り刻む。
「シノン、やれ!」
俺の合図で、シノンのへカートが火を噴き、夏候惇を吹き飛ばす。
夏候惇を倒すと、シノンは息を吐き、残り少なくなったへカートの弾倉を交換する。
「シノン、死銃は狙撃手だ。狙撃手ならどこに向かう?」
「そうね。遮蔽物の少ないオープン・スペースは苦手だと思うから島の中央の都市廃墟を選ぶ可能性は高いわ」
「よし、俺たちも廃墟を目指そう」
廃墟に向かいつつ、俺は眼下の川に目をやる。
もしザザの奴が川を潜って移動してるとしたらどこかで水上に出るはずだ。
だが、川には何も変化は無く、ザザと会うことは無かった。
「合わなかったわね。もしかして、追い越しちゃったとか」
「いや、走りながら川に注目してたから、それはない」
「なら、もうこの街のどこかに潜伏してるはずね」
「ああ、次のサテライトスキャンで、死銃を特定したら奴が誰かを攻撃する前に強襲。俺が突っ込んで、シノンが援護。いいな?」
「いいけど、死銃が本名じゃないって分かってる?キャラネームが分からないと位置を突き止められないわよ」
そう言えばそうだった。
確か、初参加は《ペイルライダー》、《銃士X》、《ステルベン》、《J・B》、《プレアデス》か。
「J・Bはキリトが追ってるから死銃じゃない」
「どうして?」
「J・Bは、昔戦った奴の名前の頭文字なんだよ。そして、そいつは死銃じゃないのは確定してる」
「なら、《ペイルライダー》殺されたから、死銃の可能性があるのは《銃士X》と《ステルベン》と《プレアデス》の三人で、スキャンで廃墟に居た方が死銃ってわけね」
「ああ、だがもし三人共、あるいは三人の内二人が居た場合のことも考えよう」
「銃士Xの銃士を逆にして死銃。Xはクロスで十字…………っての安易すぎかしら」
「いや、その可能性も無くはない。名前なんて安易なものだろ。それより、俺はステルベンが気になる。レインの話だと死を意味する名前らしいからな」
「なら、第一候補をステルベン、第二候補を銃士X、第三候補をプレアデスにしましょう」
死銃候補を決めて、三人もしくは二人いたら候補が高い順に狙うことにした。
四回目のスキャンが行われ、俺とシノンはすぐにマップを操作し、探す。
そして、「「いた!」」
俺とシノンは同時に声を上げた。
「今、この街に居るのは《銃士X》だけ!」
「そいつが死銃だ!」
「そして、狙われてるのはおそらく《リココ》」
「中央スタジアムからやや西に離れたビルか」
シノンと走り出し、銃士Xに向かう。
朽ち果てたスタジアムにつくと、朽ちかけたコンクリートの縁、銃眼の様な三角のひび割れの奥にライフルの銃口が見えた。
「いた、あそこ」
「よし、今の内に後ろからアタックする。シノンは万が一に備えて援護を」
「分かった。気を付けて」
アヤメと別れて、いつでも狙撃できるようにスタジアムから南西にあるビルに向かう。
アヤメの事が心配だが、私は私が出来ることをしないといけない。
ビル壁面の崩壊部を潜り、中に入ろうとした時、いきなり私は倒れ込んだ。
視界の左端で何かが光、反射的に左手を持ち上げた。
その直後、左腕に激しい衝撃を感じ、撃たれたと分かった。
だが、逃げる前に足が動かなくなり、路面い棒倒しになった。
両眼を投げ出された左腕を見下ろすと、腕に何やら銀色の針のようなものが刺さっていた。
そしてそこから青白く糸のようなスパークが起きていた。
電磁スタン弾だ。
これを使う奴はあの死銃以外に居ない
発射音も聞こえなかった。
でも、おかしい。
弾が飛んできた方向は南側。
あいつは北側に居たはずだ。
そう思った時、南に役二十メートル離れた空間に何者かが突然現れた。
メタマテリアル光歪曲迷彩!
装甲表面で光をすべらせて、自信を不可視化する究極の迷彩能力だ。
だがあれは一部の高レベルネームドMobだげが持つ技だ。
フィールドにモンスターが導入されるとは聞いてない。
だが、現れたのはモンスターではなかった。
現れたのはボロマントを着た死銃だった。
もしかして、あのマントには光歪曲迷彩能力が備わってる?
それだったら、スキャンも回避できるし、ライフル全体も覆えば不可視の狙撃もできる。
死銃はゆっくりと近づき私の二メートル前で停止した。
死銃は懐に手を入れ、ペイルライダーを死に追いやった銃を取り出そうとする。
電磁スタン弾はまだ盛んにスパークを生み出しているが、頑張れば動かせそうだ。
右腕に命令を送り、なんとか動かす。
そして、右手の掌にMP7の感触を掴んだ。
それと同時に、死銃も十字を切り終わり、銃を取り出した。
こいつが銃のハンマーをコッキングする時の隙を逃さず撃つ。
だが、死銃が抜いた銃を見て私は固まった。
銃のクリップに円が刻まれ、その中にある黒い星。
黒星、五十四式。
五年前、私が強盗犯から奪い取り、その強盗犯を撃ち殺した拳銃だ。
そのフードの下からその男の眼が見えた。
見えてしまった。
粘液の如く揺れ、どろっと滴る二つの眼。
私が撃ち殺した強盗と同じ眼。
いたんだ、この世界に私を殺すために、復讐するために潜んでいたんだ。
右手からMP7が滑り落ち、全身から力が抜け落ちる。
きっとこれは運命だ。
逃れることは出来ない。
きっとGGOをやっていなくても現実でももう一度この男に追いつかれていただろう。
諦めて目を瞑る。
だが、そんな時、一人の顔が浮かんだ。
ライフルを槍みたいな使い方をし、優しい笑みを浮かべている私の最高の相棒が。
死にたくない。
私はまだ生きていたい。
生きて、彼奴の傍で、アヤメの傍に居て一緒に生きたい。
殺人者である私が、こんなこと願うのは厚かましいかもしれない。
それでも、私はアヤメの傍に居たい。
お願い、アヤメ、助けて!
そして、私の願いは、聞き受けられた。
ダァン!
聞きなれた銃声。
アヤメが使ってるSOCOM Mk23の音だ。
ダァン!ダァン!ダァン!ダァン!
四発の弾丸が発砲され、その内一発が死銃の右肩に当たる。
死銃は身を隠し、黒星を仕舞うと、L115を構え、弾倉を電磁スタン弾から338ラプア弾に変え、発砲音がした方句に向けて撃つ。
しゅこっ、と減音された音が響く。
それと同時に私と死銃との間に灰色の缶ジュースのような筒が転がった。
グレネードだ。
半秒後、グレネードは爆発し、煙を撒き散らした。
視界が真っ白な煙で覆われる。
そして何者かが私の左腕を掴み、右肩のへカートごと私を抱き、丁寧に私の落としたMP7も拾う。
私は御姫様抱っこをされると同時に、体が潰れそうなほどの加速感を感じた。
スモークが薄れ、視界が回復すると、私の目の前には、私が望み、助けを求めた人物がいた。
長髪の黒髪を束ねたポニーテールの男。
そう、アヤメだ。