シノンと別れ、俺は今回のBoBの優勝候補の《闇風》を追っていた。
ザザとの戦闘中にもし介入でもされたら厄介だし、何より、意外と近い場所に居た。
おそらく、向うも俺の存在には気づいているからこっちに向かってきている。
すると、俺の考えはあっていたらしく、闇風は全力ダッシュをしながら俺に向かってきている。
SOCOM Mk23を抜き、牽制射撃をする。
闇風はそれを無駄の無い動きですべて躱し、M900Aを撃ってくる。
銃剣で弾丸を弾き、俺は闇風と距離を縮める。
懐に手を伸ばし、予備の銃剣を出し、闇風の顔を目掛けて投げる。
闇風も残り三メートルほどの距離で銃剣を投げてくるとは思わなかったらしく、驚く。
しかし、そこはAGI型で第二回BoB準優勝者であるだけに、冷静に回避していた。
だが、それはいけない。
回避した直後、闇風を一発の弾丸が貫き、胸に風穴を開けた。
流石はシノンだ。
俺はシノンのいる方向に向かって、親指を立てる。
それと同時に、俺の顔の真横を一発の弾が通る。
ザザか!!
続いて第二射が来たが、弾頭予測線は見えているので全て弾く。
銃剣の耐久値は、まだ大丈夫だ。
シノンがザザを見付けてくれるまで根競べだ。
作戦通り、アヤメが死銃の弾丸を防ぎつつ、私が死銃の居場所を探り狙撃。
スコープの倍率を最大まで上げ、奴の発射位置を捉える。
そして見つけた。
大きなサボテンの下で、ボロマントの中から、L115Aを突き出して狙撃してる。
私の弾道予測線に気付いたと思われる奴は、同じくL115をこちらに向けてきた。
条件は同じ。
それでも、私には勝つ自身があった。
私には、へカートとアヤメが付いていてくれる。
お前なんかに、負けるもんか!!
「勝負!!」
予測円の収束を待たずにその言葉と共に私はトリガーを引き、死銃もほぼ同時に引いた。
奴の放った弾丸は真っ直ぐとヘカートの大型スコープを破壊しながら、
私の肩を掠めて上空へと消えていった。
右目をスコープにくっつけてたら即死だった。
一方、私とヘカートが放った弾丸の50BMG弾は死銃の持つL115の機関部に被弾、『サイレント・アサシン』の名を持つ狙撃銃は完全に破壊された。
「ごめんね」
非常に能力の高い名銃と呼ばれる銃の破壊を成して、少しだけ心に痛みが奔った。
私もヘカートのスコープを破壊されたのでこれ以上の遠距離狙撃は不可能である。
「ごめん、アヤメ。仕留められなかった。でも、後は任せたよ」
仕留められなかったか。
だが、ザザの銃を破壊しただけでも十分だ。
これでアイツの武器は黒星のみ。
やれる!
ザザを補足し、一気に走り出す。
ドラグノフを突き出し、銃剣をザザに向ける。
狙うは心臓!
俺の攻撃にザザはまったくひるまず、銃の残骸から何かを取り出した。
それは細い金属棒だ。
クリーニング・ロットか。
あれで戦う気か?
あんなもんで叩いてもHPは一ドットも減らない。
何を考えてる。
俺は迷うことなく突きを放つ。
だが、次の瞬間、俺の銃剣は折れ、奴の手にはクリーニング・ロットではなく銃剣があった。
それも、かなり細く前端は針みたいになってる。
「エストックか?この世界にも存在してたんだな」
「相変わらず、不勉強だな。《ナイフ作製》スキルの、上位派生《銃剣制作》で、作れる。長さや、重さは、このへんが、限界だが」
「そこまでして自分の得意分野にしがみつくか。哀れだぞ」
「ライフルに、銃剣を付け、槍みたく、使う貴様の方が、哀れだと、思うぞ」
「ま、どっちにしろ互いに剣と剣なんだ。決着を付けよう。俺たちの因縁にな」
銃剣はこれが最後か。
耐久値がもうそれ程残ってない銃剣を取り付け、ザザに声を掛ける。
「望む、ところだ」
「アヤメ!」
私は声を上げた。
アヤメが押され始めた。
狙撃手になる為、私はいくつかスキルを取得してる。
その中に、視力を上げるスキルがある。
アヤメは耐久値が残り僅かな銃剣で戦かってる。
銃剣の耐久値がなくなったらそこで終わりだ。
アヤメは銃の腕が酷い。
五メートル先の西瓜ですら撃ち抜けない程に酷い。
あの時、死銃に一発当たっただけでも奇跡だ。
そんなアヤメに銃での戦闘は無理だ。
援護したいが、ライフルのスコープを破壊されてしまった。
スコープ無しでの狙撃は危険すぎる。
もし、アヤメに当たったら…………
私はただ念じるしかできなかった。
戦うって決めたのに!
これじゃあ、何も変わらない。
あの時と変わってない。
戦いたい。
でも、戦えない。
私にはもう手段が…………………いや、ある。
一つだけ。
私はへカートを握り締め、もう一度戦場に目をやった。
そろそろ銃剣の耐久値が本気でヤバイな。
銃剣がなくなったら、後は接近して至近距離での発砲か。
特攻みたいに華やかに散れってか?
そんなことできるか。
ザザは銃剣をエストックの様に使い、俺に攻撃をしてくる。
俺は銃剣ではなく、ドラグノフの銃身やストックで防ぎながら戦う。
せめた、一瞬でいいからこいつの動きが止まってくれたら…………
そう思った瞬間、一本の赤いラインがザザのコートを貫く。
弾頭予測線だ。
ザザは慌てて回避しようと大きく後方に跳んだ。
だが、弾は飛んで来なかった。
なるほど、弾頭予測線による狙撃。
幻影の一弾(ファントム・バレット)か。
「くっ、あの女」
ザザは悔しそうにシノンの方向を睨む。
今がチャンスだ!
俺は銃剣を構え突っ込む。
ザザはメタマテリアル光歪曲迷彩で隠れようとする。
させるか!
奴が消えるより早く俺は槍による連続突きを放つ。
攻撃が消えかかってたザザに当たると、スパークを撒き散らし姿を現させた。
次に体を反転させて突き、 最後に飛び上がって落下しながら下に突き刺すように攻撃繰り出した。
槍奥義剣技《ディメンション・スタンピード》
俺の必殺技をくらいザザは体に穴を開けて倒れた。
黒星は粉々になっていた。
「まだ、終わらない。終わらせ……ない……。……あの人が……お前たちを」
最後の言葉を言い終わらないうちにザザの身体に【DEAD】のタグが浮かぶ。
「いや、終わったさ。仮に終わってなくても、俺たちが終わらせる」
そう呟き、後ろを振り返ると、シノンがへカートを手にやって来た。
そして、俺に微笑み一言言った。
「お疲れさま」
「ああ、お前もな」