二人のビーストテイマー   作:ほにゃー

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第29話 アヤメ/危とシノン/詩乃

強制ログアウトによって自室に戻って来た私は、自分の近くに誰かいないかを寝ながらチェックする。

 

いないことを確認して立ち上がろうと手を動かすが立ち上がれなかった。

 

見ると、私の腕は縄で縛られていた。

 

「え………?何これ?」

 

「あ、戻って来たんだ」

 

声がした方を向くと、ベットの死角になる部分から新川君が現れた。

 

「し、新川君」

 

「うん、そうだよ。朝田さん、BoB優勝おめでとう。これでシノンはGGお最強のガンナーだね」

 

まるで世間話をするかのように新川君が言う。

 

「………これをやったのは、新川君なの?」

 

「うん。そうだよ」

 

「!……なら、貴方が死銃と死剣の共犯者」

 

「うん、でもまだ誰も殺してない。死銃のアバターで、ゼクシードと薄塩たらこを撃ったのは僕。ただ今回は役割を変わってもらったのさ。昌一兄さんにね」

 

まさか、自分の大切な友人が死銃で、自分の命を狙ってたなんて…………

 

「言っとくけど、水無月の助けを期待しても無駄だよ。死んでは無いよ、殺すなら最初は朝田さんがいいからね。彼も朝田さんと同じように縄で両手両足を縛られてるからね。チェーンも掛かってたけど、それは壊さして貰ったよ」

 

水無月の助けは期待できない。

 

なら、自分で逃げないと。

 

せめて、キリトとレインが読んだ警察が来るまでは逃げないと。

 

幸い、足は縛られてない。

 

走ることはできる。

 

玄関の鍵も手が縛られてるけど開けることはできる。

 

早く、逃げないと。

 

「逃げちゃダメだよ」

 

新川君はジャケットから何かを取り出し、私の首に押し付ける。

 

「………無針高圧……注射器」

 

「よく知ってるね。中身はサクシニルコリンっていう薬品でこれを打たれると筋弛緩を起こして心臓と肺の動きを止めるんだ」

 

そう言いながら新川君は私の服に手を掛ける。

 

「!や、止め……!?」

 

「動かないで」

 

「!?」

 

首に強く注射器を押し付けられて、体が固まる。

 

「これで、朝田さんは、僕の物だ。誰にも渡さない。僕だけの、僕だけの物だ!」

 

その言葉を合図に、私が着ていた学校指定のワイシャツを強く引っ張る。

 

ボタンが飛び、下着に包まれてない慎ましい胸が露わになる。

 

「さぁ、朝田さん。僕と、一つになろう」

 

私はただ目を固く閉じ、この先起こるであろうことを想像し恐怖する。

 

新川君の手が私の胸に触れる。

 

あとちょっとで触れそうになろうとした瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガ ッ シ ャ ―――――――――― ン ! ! !

 

 

 

 

 

 

 

部屋の窓ガラスが勢いよく割れる。

 

新川君は驚き窓の方を見る。

 

私も窓の方を見る。

 

そこには、人がいた。

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

その人は絶叫を上げ、新川君に体当たりをする。

 

体当たりを食らった新川君は飛ばされ、部屋の壁にぶつかる。

 

体当たりしたのは水無月だった。

 

「アヤメ!」

 

「大丈夫か!?シノン!」

 

そう言う水無月の両腕は後ろに縛られ、両足は血が滲んでおり、額からは血を流していた。

 

「………水無月!」

 

立ち上がった新川君は親の仇を見るかのように水無月を睨みつける。

 

「お前さえ、お前さえいなければ、シノンは僕の物だったのに!お前さえいなければ!僕がシノンを守れたんだ!」

 

新川君の様子は常軌を逸しており、私は思わず後ろに後ずさりした。

 

水無月は私を守るように前に立つ。

 

「新川、お前が朝田に、好意を抱いてたのは知ってた。だが、今のお前は常軌を逸してる。どうして朝田を殺そうとする?何でだ?」

 

「水無月は知らないだろ。朝田さんは、本物の銃を撃ったことがあるんだ。しかもそれで人を殺したこともあるんだ。そんな女の子、日本中どこにもいないよ!」

 

まさか………そんな理由で私に近づいてきたの…………

 

「朝田さん、僕は君が好きだ。愛してる。こんな奴より遥かにさ。そうだ、山にでも行こうか。誰もいない、誰も来ない深い山の奥。そこで、一緒に旅立とうよ。新しい世界に」

 

「ふざけるな!」

 

水無月はいつも以上に大声を開ける。

 

「お前は、現実から目を背けて、仮想世界に逃げようとしただけだ!そして、その仮想世界からもお前は逃げ、今度はこの世界からも逃げようとした!そんな簡単に自分の命を粗末にする奴に朝田を……詩乃は渡さない!」

 

「うるさい!」

 

新川君が注射器片手にアヤメに襲い掛かる。

 

「………いい加減現実を見ろ!」

 

水無月は注射器を躱し、頭突きを新川君の顔面に当てる。

 

「……あぐっ」

 

新川君は鼻から鼻血を出し、そして、後ろ向きに倒れる。

 

「詩乃、大丈夫か!?」

 

「う、うん。それより、怪我が」

 

「これぐらい平気だ」

 

水無月が微笑むと同時に、部屋の扉が開いた。

 

「シノン、無事か!?」

 

「シノンさん、大丈夫ですか!?」

 

やや長めの黒い髪に黒いライダージャケットを着た少年と、白い髪に赤い目で灰色のダッフルコートを着た少年が入って来た。

 

「アヤメ!お前怪我してるぞ!」

 

「額を少し斬っただけだ。見た目以上に大したことない」

 

「今縄を斬ります!」

 

白髪の少年が、カッターナイフで水無月の縄を切り、次に私の縄を切る。

 

「ありがとう」

 

「いえ、それよりこれ着てください」

 

私にダッフルコートを背中にかけてくれた。

 

そういば、今の私の恰好、殆ど裸に近いわね。

 

少年は少し、頬を赤くしていた。

 

「えっと、君は?」

 

「あ、俺はレインです。本名は朝霧雫っていいます」

 

「君がレインだったんだ」

 

アバターが大人みたいだから、年上だと思ってた。

 

「やぁ、初めましてだな。俺がキリトだ。本名は桐ケ谷和人」

 

黒髪の少年も挨拶をする。

 

こいつがキリト………

 

「朝田」

 

額をハンカチで押さえながら、水無月がやってくる。

 

そして、私を抱きしめた。

 

「ごめん。もっと早く来れたら良かったんだが。足の縄を引き千切るのに時間がかかった」

 

そっか、足の怪我はそのためのものだったんだ。

 

「無事でよかった」

 

その言葉と同時に、涙が溢れはじめた。

 

水無月はただ黙ったまま私を抱きしめていてくれた。

 

遠くからパトカーのサイレンが聞こえるが、私は泣くのを止めなかった。

 

今まで溜めてきたものが溢れてるかのように私は泣き続けた。

 




はい、詩乃の服装ですが原作ではトレーナーでしたが、ここではワイシャツになってます。

理由は、無抵抗な女子のワイシャツを引き千切る男ってかなり畜生な感じがするからです。

今回の話、R18にふれないといいです。

結構きわどい部分があったので。

R15でも付け加えるべきでしょうか?

次回はエピローグ。

では、お楽しみに。
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