電車に揺られて移動すること三十分。
最近できた遊園地に着いた。
「遊園地なんて久々だな」
「そうね。私も最後に来た時いつだったか覚えてないわ」
調べた所、個々の遊園地は最近建設された物だが、今では誰もが知る人気テーマパークとのことらしい。
「早く入りましょう」
詩乃は笑顔で俺の手を引っ張り入場券売り場へと向かう。
「くっそ~!手なんか繫ぎやがって!」
「手繫いだぐらいでキレるな」
「うるせぇ!俺は生まれてから一度もお袋以外の異性と触れ合ったことなんて皆無なんだよ!年齢=彼女いない歴だよ!」
「大丈夫だ、クライン。いつかお前を理解してくれる人が現れてくれるって」
「キリト、お前だけだ!俺を慰めてくれるのは!」
男のくせに号泣するクラインとそれを慰めるキリト。
そっち系の女子が見たら、涎垂らしながら本を描くんだろうな。
「入場券買ってきました」
レインが人数分の入場券を握り寄ってくる。
「おお、サンキュー。………なんか、晴れ晴れとしてないか?」
「どうせ怒られるなら、今を楽しんだ方がいいと思ったんだよ」
なんか………諦めてやがる。
「最初は何から乗るか……」
「じゃあ、あれ乗りましょう」
そう言って詩乃が指差したのはジェットコースターだった。
「ジェットコースターか。よし、行くか」
列に並び、暫く待つこと20分。
俺たちの番になり、俺と詩乃は席に着いて安全バーを下ろす。
『では、楽しいひと時を!』
アナウンスと共に俺たちを乗せたジェットコースターは発進した。
「ジェットコースター。それは、彼女を遭えて弱らせ、そこに付け込み優しくすることで一気に距離を縮める。悪魔のアトラクション」
「お前、ジェットコースターに恨みでもあるのか?」
もしくは遊園地そのものか。
「アヤメの奴、最初からそのつもりでジェットコースターを選びやがったな。最低だな」
「むしろ、そう言う考えのお前が最低だよ」
俺の厳しいツッコミを無視しながらクラインはジェットコースターに乗り込む。
俺は溜息を吐いてクラインの隣に座る。
「ここの遊園地のジェットコースターって凄いんだぜ」
「キリトさん、知ってるんですか?」
「ああ、この前アスナと来たんだ」
「へぇ~。今度俺もシリカと来ようかな」
後ろの席ではレインとキリトの話し声が聞こえる。
「なぁ、キリト。どんな風に凄いんだ?ってクライン!大人しくしてろ!」
横で今にも乗り出しそうなクラインを抑える。
「ああ、それなんだが……その前にクライン、大人しく座ってろ。アルブスも安全バーから手を離すなよ。このジェットコースター」
ガチャンッ!
嫌な音がして目線を下に下げると、クラインの安全バーのストッパーが外れていた。
クラインが暴れすぎたせいか。
安全バーはもはや安全バーと言えないぐらいにゆるゆるになってる。
「スタートから僅か二秒で180Km/hを超えるんだよ」
「「え?」」
『では、楽しいひと時を!』
その瞬間、クラインは風になった。
「いや~、凄いスピードだったな」
「本当。びっくりしたわ」
予想よりスピードが速かったので俺と詩乃は驚いていた。
後ろに乗っていた乗客の中には泣いてる人もいる。
『大変だ!……が、泡吹いて気絶してる』
『おお、蟹みたいだな』
『のんきに言ってる場合か!』
『取りあえず運ぼう』
後ろでは泡吹いて気絶したっ人もいるみたいだ。
でも、今の声…………どっかで聞いたことがあるような。
「う~~~~~~ん…………はっ!俺はブラッ○・ピットか!?」
「どうやら頭は正常だな」
目が覚めたクラインは訳の分からない事を言ってるが、コイツはこれで正常だ。
「そういや、俺、ジェットコースターで気絶して、それから………危のデートはどうなった!?」
「今はもう夕方五時だ」
「そうか、結構気絶してたんだな」
「ちなみに、危と詩乃ならあそこでアイス食ってるぞ」
俺が指さす方向には、ソフトクリームをおいしそうに食べてる二人が居た。
「あのよ、クライン。お前が嫉妬したくなるのも分かるが、ここは受け入れてやるべきじゃないのか?お前は俺たちの中でエギルに次ぐ年長者だ。高校生のデートぐらい笑って見てやれよ」
俺の言葉にクラインは何かを考え始め、唸り出す。
「……そうかもな。確かに俺は大人気なかった」
「クライン」
「ここは大人らしく、あの二人を祝福するか!」
クラインは口を開けて笑う。
ともあれ、これで一見落着か。
「クラインさん」
そこでレインが声を掛けてきた。
「危さんと詩乃さんが観覧車に向かいました」
「観覧車だとぉ!?」
観覧車という単語を聞くとクラインは目をひん剥き、大声を上げる。
「ど、どうした?」
「観覧車……間違いねぇ!キスするつもりだ!」
「き、キス?」
「ああ!知らねぇのか!観覧車はよぉ、キスするために作られたんだぞ!キスなんか、ゆるせるか!」
そう言うと、クラインは走り出す。
さっきの言葉全否定かよ。
「面白そうだし、行ってみるか!」
キリトは面白半分、興味半分といった感じでクラインを追いかける。
「どうせ、怒られるんだ。なら、今は楽しもう」
レインもそう言って走り出す。
「…………はぁ~、結局はこうなるのか」
俺はスマホを取り出しある番号に電話を掛けた。
夕日でゴンドラの中が照らされる。
俺と詩乃は向かい合って座り、窓の外を眺めてた。
「綺麗ね」
「そうだな」
夕日に照らされた街、空、そのすべてが綺麗だった。
そして、その夕日に照らされた詩乃の横顔も綺麗だ。
「ねぇ、アヤメ」
「ん、なんだ?」
「その、ありがとう」
詩乃がお礼を言ってきた。
「こうして、遊園地に連れて来てくれて。私、とても嬉しい」
「そうか」
「………ねぇ、本当に良かったの?」
「何が?」
「………私なんかと付き合って」
「………詩乃。次それ言ったら怒るぞ」
「で、でも」
「詩乃!」
大声で詩乃の名前を呼ぶ。
詩乃は固まって動かなくなる。
「……例え、詩乃がどんな過去を背負ってたとしても俺は一緒に居る。それに、俺が詩乃を好きだって気持ちに嘘は無い。だから、そんな悲しいこと言わないでくれ」
「……うん、分かった。ごめん、変なこと聞いて」
そう言って詩乃は俯いた。
その表情は少し悲しそうにしていた。
「……詩乃」
名前に反応して詩乃が顔を上げる。
詩乃が声を出す前に、動く。
俺が移動したことでゴンドラが少し傾く。
そして、詩乃と唇を重ねる。
詩乃は驚いた表情をしていたが、すぐに目を閉じ黙って唇を受け入れる。
何秒がそうして、俺たちは離れる。
詩乃は顔を真っ赤にしてぼーっとしてる。
「大好きだぞ、詩乃」
「……あ、う、うん。私も……大好き」
そこからは互いに顔を赤くして下を向いていた。
ゴンドラが下に着き、詩乃の手を取り降りるとその光景に唖然とした。
「ん?おお、危」
「白牙、これはなんだ?」
簡潔に言うと、目の前では正座させられてるキリトとレイン、クラインがいた。
「和人君、他人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ねばいいって言葉知ってる?」
「あ、明日菜?明日菜さん?明日菜様?何でそんな怒ってらっしゃるのですか?」
ご立腹のアスナと青ざめてるキリト。
「………雫。私とのデートをドタキャンして、何してたの?」
「ち、違うんだ、珪子!俺はそんなつもりは!」
キレかかってるシリカと恐怖に震えるレイン。
「あのさ、クライン。自分が大人げないってこと分かってる?そんなんだから、アンタモテないのよ」
「うお―――!!キツイこというなよ―――――!!」
リズの言葉に涙を流すクライン。
「何があった?」
「まぁ、気にすんな。それより。デートは楽しめたかって、その様子を見りゃ一目瞭然だな」
アルブスの目線は俺と詩乃が繋いでいる手に移る。
「……当ったり前だろ。今日は最高の日だった」
「そうか」
そう言って俺達は笑った。
背後に男三人の悲鳴をBGMに。
次回からキャリバー編に突入!