ホウエンにてチャンピオンを目指す   作:轍_

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 初めまして轍と申します。
 見切り発車な作品ですがよろしくお願いします。
 暇つぶしで執筆しているので不定期更新となります。
 ご了承ください。


プロローグ

 

 『本中継はホウエンリーグ・サイユウ大会初日Aブロック1回戦、前回チャンピオンのダイゴ選手と大会初出場カイリ選手の試合になります。

 えー、今大会のルールは例年どおりとなってまして、リーグ出場者の登録ポケモンは9匹。選手はその中からポケモンを選び3on3のシングルバトルを行うことになっています。そして技の数はポケモン1体につき4つまでの制限がかけられています。技は毎試合変更可能です。

 これからの1ヵ月にも及ぶ激戦を制して今大会のチャンピオンにかけ昇るのは誰なのか。将又ダイゴ選手の二連覇なるのか! 注目したいところです』

 

 夏のじめじめとした暑さが身に沁みるこの頃。

 俺はウインディを枕にテレビを視聴していた。

 

「ミキ。ちゃんと座って視なさい」

 

 台所で洗い物に勤しんでる母さんがこちらを一瞥して咎めた。

 俺は仕方なく横たえていた体を動かしてきちんと座る。

 

 ――ポケットモンスター――

 

 縮めてポケモン。

 前世で結構な人気を誇ってたコンテンツだ。

 俺もポケモンは大好きで幼い頃から新しいシリーズが出る度にやっててポケモンを厳選して育成それから対人戦までのめりこみ楽しく遊んでたのを覚えている。

 でもこの世界は種族値や努力値が存在してるのか怪しい。

 それに技の効果もゲームと違うみたいだ。

 というのもピカチュウが種族値と努力値を鑑みてもおかしな強さだったり。

 そのピカチュウのでんこうせっかがボーンラッシュに先制できなかったり。

 更にアンコールが相手の次の行動だけを同じにしてたり……

 とにかく前世でやったゲームの知識はある程度の基準にしかならないようなのだ。

 その前世の知識もポケモンから離れ長い時が経ってたのでぼんやりとしている。

 

 この世界の住人としてありえない考えを巡らせてる俺の前世は日本人大学生。

 日中は教授から頼まれた雑用と大学の授業や課題をこなし夜はバイトか友達付き合い。

 そんな日々を送ってた。

 俺はいつものように深夜くたくたになって帰宅そして就寝した。

 ……前世の記憶はそこまでで途切れている。

 たぶん寝てる間に逝ったのだろう。

 

 前世の記憶は今のこの体が5歳の頃に思い出した。

 最初は自分がもう1人いるような違和感を感じたけど時が流れた今となっては最初にあった自我と前世の記憶が混ざりいつのまにか馴染んでしまった。

 

 居間のテレビが会場の大型ディスプレイを映す。

 そこにはダイゴさんとカイリ選手の顔写真が表示されていた。

 でも試合が始まってない現在は両者のポケモンを伏せている。

 試合中にはポケモンのHPゲージや状態が会場の大型ディスプレイに表示されその情報はテレビ画面上部にも映される。

 

 どうしてこんなことができるのか疑問を持った俺は父さんに訊ねたことがある。

 父さんは何故か嬉しそうに教えてくれたが前世の記憶を持つ自分には全く理解できない謎技術だった。

 一応当時の俺は理論はともかくそういういうものだと無理やり納得して父さんの熱弁に頻りにうなずいた。

 その行動が祟ってしまったのか調子に乗った父さんは関係のない知識も披露し始めモンスターボールの仕組みについて語ってたけどこれも前世の理屈が全く通用せず頭を抱えたくなった。

 

 そんなことより試合の方だ。

 前回チャンピオンのダイゴさんが戦うホウエンリーグ初戦。

 今大会の行く末を占う上で重要な1戦になるだろう。

 だから当然ダイゴさんは本腰入れて勝ちにいくはず。

 相手は初出場だが厳しい予備予選を勝ち上がってきた猛者。

 いくらダイゴさんでも手を抜いて勝てる相手ではないと思う。

 

 両選手は既に草のバトルフィールドの端に着いていた。

 対峙した2人はモンスターボールを持ち互いを見据えてる。

 選手の準備を認めた審判が「バトルスタート」の合図を送るとフィールドへモンスターボールが投げられた。

 

 モンスターボールが空中で開くとまばゆい光と共に両選手のポケモンが晒される。

 ダイゴさんが最初に選んだのはエアームド。

 対するカイリ選手のポケモンはムウマージ。

 テレビ画面上部に両選手のポケモンが開示されHPゲージと状態が表示された。

 

 モンスターボールから出たエアームドは飛び上がりながら針岩をバラ撒く。

 それが敵のポケモンを囲んで浮遊した。

 ムウマージは顔に不敵な笑みを浮かべその場から動かない。

 エアームドはステルスロックでムウマージがわるだくみかな。

 

 両選手共に最初に選択した技は攻撃技ではなかった。

 おそらく思索は同じで自分有利な状況へ運ぼうとしてるのだろう。

 

 エアームドは大きく翼を広げ上空にて旋回。

 それを受けてムウマージは上空へ電気を球状に圧縮して打ち出す。

 その攻撃はエアームドの進路上に入っていたがエアームドは体を傾けるだけでラクラクとかわした。

 

 試合は均衡状態に陥った。

 会場の視線が集まり息をするのも億劫な時間が過ぎるなか漸く両者動きだした。

 

 それはまるで映像を早送りにしたかのようだった。

 旋回していたエアームドがムウマージの真上につくと突然広げていた翼を畳み螺旋を描きながら真下へ突っ込んだ。

 後手に回ったムウマージは迎撃態勢に入り上空から自身に迫り来る弾丸へ雷光を幾筋も絶えず放った。

 しかしエアームドにあたらない掠りもしない。

 距離は縮まり遂にエアームドがムウマージを捉えた。

 

 勝負は一瞬にしてついた。

 エアームドが無傷で上空を飛び回り勝ち鬨を挙げていた。

 

 一撃

 

 たとえダイゴさんのよく鍛えられたエアームドだろうと素の攻撃力ではカイリ選手のムウマージを一撃で戦闘不能にはできない……と思う。

 エアームドが最後の攻撃へ移る前の旋回。

 あれは様子見だと思ったけどつるぎのまいだったのかな。

 それと最後の場面に到ってはムウマージの10万ボルト? がエアームドに掠りもしなかった。

 状況を的確に読んで下した判断とポケモン自身のパワーにスピードその2つを踏まえるとダイゴさんは全体的に隙がない。

 

 会場が今のバトルにどよめいてる。

 みんな最初のバトルがこんなあっけなく終わるなんて思ってもみなかったのだろう。

 俺もそうだったし。

 

 カイリ選手はフィールドにうずくまるムウマージをモンスターボールに戻し次のボールを選び取る。

 その選び取ったボールを額にあて目をつむりしばらくそのままの状態で動かなくなる。

 どうにか落ち着こうとしてるのか彼女の容姿と相まって絵になった。

 

 会場では次のバトルが始まる気配を感じたのか喧騒が絶えた。

 

 カイリ選手は漸く目を開きダイゴさんをしっかりと見据えモンスターボールを持った腕を勢い良くふるった。

 流麗なフォームだったが最初の勢いやキレが嘘のようだった。

 

 

 

 

 

 バトルはダイゴさんが手持ちポケモン3匹残しての勝利に終わった。

 圧勝だった。

 最後のバトルではカイリ選手のチラチーノがダイゴさんのサザンドラを追い詰めていた。

 しかしダイゴさんにとって危なかったのはその場面のみで全体的に危なげなく試合を畳んでしまった。

 

 テレビは映す両選手フィールド中央に歩み寄り握手を交わすその場面を。

 厳しいホウエンリーグの予選を潜り抜けてきたとはいえリーグ初出場だから経験が足りなかったのかな。

 

 カイリ選手が悔しがり俯いた。

 その姿を見ていると彼女にすこし同情してしまう。

 リーグ初出場初戦に前回チャンピオンとあたるなど不運としかいえない。

 試合後半には持ち直していたので尚更そう思った。

 

 カイリ選手がポケモンの能力や駆け引きに於いて最初から最後までダイゴさんに力の差を見せつけられてしまったのは確か。

 それでもポケモンはよく鍛えられてた。

 駆け引きも時々だったけどダイゴさんに劣らぬ指示をだしたりしてた。

 そんな悪くない試合をした彼女が負けた理由を挙げるとするなら“相手が悪かった”この一言に尽きると思う。

 

 試合をみてて彼女がブロック抜けする実力があることは何となくわかった。

 この敗戦を引きずらなければいいけど……

 ダイゴさんには負けてしまったがカイリ選手の挑戦的な自分から仕掛けてく戦術は好みだ。

 Aブロックを突破して決勝トーナメントに進んでほしいな。

 そうなったら試合数が増え彼女の戦いを長いあいだ見ることができる。

 

 

 

 

 

 応援の甲斐なくカイリ選手は2戦3戦と負け続けてしまい早々にブロック敗退を喫してしまった。

 それでも彼女は最後の試合となる4戦目を勝利で飾る。

 対戦相手はブロック抜けを決めた選手だったが彼女は2戦3戦目とは違って対戦相手にバトルの駆け引きでことごとく勝ち別人のような試合を展開して簡単に勝利を手に入れてしまったのだ。

 

 あまりに呆気なくカイリ選手が勝ったので対戦相手であるカゲツ選手が手を抜いたのかと勘ぐった。

 理由として彼はAブロック突破が決まってた。

 けれど画面越しの彼の表情は温存して負けた訳でないと語っていた。




 R-15と残酷な描写、アンチ・ヘイトのタグは念のため付けてます
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