僕の前に現れた、僕だけのアリスさん 作:東側Production
翌日の朝、少しだけ良いことがあったためなのか、いつもより早く、というか家族で最も先に起きることができた。自室の机に置かれているアナログ時計は6時15分を指し示していた。僕の家族は大体6時半くらいに起きるから、すなわち今この家族の中で起きているのは自分だけ。
「誰も、起きていないか…」
僕は食品庫から食パンを取り出して、冷蔵庫にあったチョコレートのペーストを取り出したばかりの食パンに塗る。勝手にパンを取り出したことがバレないように元の場所に戻し、袋を元の様になるようにきっちりと締め、口に咥えながら一旦自室に戻る。
自分の部屋の片隅には教科書やノートが詰まっているリュックザックが乱雑に投げ捨てられていた。昨日、アリスさんにあの様なことを言われたせいで赤面しながら帰ってきたせいで、何も考えることができずにそのままベッドに飛び込む様に寝入ってしまった。バッグを持ち上げようとすると、まだ微かに淡い甘い匂いが残っていた。その匂いがアリスさんのものだと思い出すと、再び赤面してしまい、そしてバッグを抱き抱えてしまった。ただ、このままだとにっくき両親が起きてきてしまう。恥ずかしがる心を押さえつけながら、僕は階段を急いで降りて玄関口まで向かい、ドアノブに手をかけた。後ろから1つ、ドアの開く音と親が呼んでくる声が聞こえたが、そんなものはお構いなしに家を飛び出して学校に向かった。
因みにだけど、僕の家から学校までは歩いて30分くらいかかるけど、少し時間があるしお腹も空いたので途中で何か買っていこうかな…
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道の途中にコンビニがあった。いつもは走って学校に向かうので周りのことには目もくれなかったが、こうやってゆっくり歩いていると意外な場所に発見がある。
『夏といえばアイス! 値引き!』
なんていう垂れ幕が入り口の上にあった。今は7月の初め、冷たいものにはちょうど良い季節。食パン1枚だけじゃあ流石にお腹が空いてしまうので、何か買おうと思って店に入る…
店の中はとても涼しく、アニメでは定番の“涼しい店内“だった。そして店内の奥には目立った様に旗状の幕があって、そこには店先に吊るされていた垂れ幕と同じ様なことが書かれていた、涼しい水色の地に白い筆文字で。そこに向かうと、どうしても涎が出てしまう、何故ならそこには数多くのアイスがあって、その内の1つに手を出した… ただ、ここで少し気がかりになったのか自然に財布を取り出して中身を確認する。その中身はあまりにも少なかった… 実は最近、東方projectの新作と今まで持っていなかった作品のDL版があったので思い切って買ってしまった… なので、今の所持金は合計240円。今買おうとしているのが300円なのでどうしても足りない… 今まで意地悪してくる連中が何度も万引きしている現場を見てきたが、自分はどうしてもその様なことができない。諦めて他のところに目を向けると、少し新しいアイスがあった。偶にスーパーで見かける、1つの箱に4つか6つくらいのチョコレートアイスが入っているもの。これならギリギリ所持金に見合っているので、僕はそれを手に取ってレジへ向かう。
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「アリス! 起きなさい!」
「うん… わかった…」
重い体をベッドから引き離すと、すぐ隣の窓からは眩しいほどの光が差し込んでくる。眩しさのために目を閉じると、自室の扉が開く音がした。
「ア〜リ〜ス、時計を見てみなさい?」
「時計……!?」
いまだに閉じようとしている眉を擦って時計の方に目を向けると、その時計は7時45分を示していた。
その驚きで目が覚めたので、予め机の上に置いている制服に急いで着替えて階段を下り、身だしなみを整えるとテーブルの上に置かれた皿の上に置かれたバターロールだけを手に取って玄関に向かった。
「ちょっとアリス!? 他のは食べないの?」
「間に合わないの! 帰ったら食べるから!」
学校までは歩きで50分近くかかってしまう、なので自然と意識も身体も焦ってしまう。玄関のドアを開けて勢いよく外に出て、学校に向かうために走り始めると後ろから大きな声が聞こえてきた。
「アリス〜! 気をつけてね〜!」
私は声で返す代わりに大きく手を振って再び向き直り走った…
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風を切るの如く走っていると、三叉路に1つの人影が見えた。呑気に歩いていて、自分と同じくらいの高さで、そして…… 尊さんみたいな感じで……
「尊さん!」
大きな声で尊さんを呼ぶと、美琴さんはこちらに向いてくれて手を振ってくれた。その手には、何か細い棒のような物が握られていた。
尊さんの元に辿り着くと、膝に手を当てて少し腰を曲げた。
「おはよう、アリスさん。相当疲れてそうだけど…」
「大丈…夫です…… 少し走っていて…」
「そ、そうなんだ…」
「そ、それとなんですけど… その箱は?」
尊さんが持つはこに目線をずらすと、その中には綺麗なチョコレートの色をした玉のようなお菓子が入っていた。
「あぁこれ? これは途中で買ってきたんです。朝食が少し足りなくて… あと1個なんだけど、食べる?」
「良いんですか?」
そう言うと、尊さんは首を縦に振りその箱を差し出した。もう一本入っていた針のような棒でそのお菓子を刺すと、少し溶けていたのか簡単に刺さった。少し溶けかかっていたので急いで口に入れる、噛むと中に包まれていた冷たいバニラのアイスが飛び出てきた。少し溶けかかっていたにも関わらず、とても冷たく、気持ちが良かった。
「美味しいです…」
「美味しいのはわかったんだけど、あとホームルームの時間まで15分だよ?」
「ほぇ?」
少し気が散っていた所為で抜けた声が出てしまったが、ポケットに入っていたスマートフォンを見るともう既にちょうど8:00を示していた。
「あぁ、まずいですよ!」
「分かったなら、早く行こう!」
「は、はいぃ!」
尊さんは私の腕を掴んで、引っ張るようにして走る。私もそれについていき、学校への道を急いだ…
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続く