【完結】蒼い星へ還る日まで〜少女六人、終末世界で自由気ままなスローライフはじめました〜   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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とある日記

 2049年9月6日。快晴。

 

 俺は故郷から遠く離れた日本に配属された。日本の奴らは島国育ちで排他的なところもあると聞いた。上手くやっていけるか不安だが、幸いここは平和な国だ。いつか故郷に、家族の元に帰る日まで国の為に頑張るか。

 

 

 2049年11月16日。曇り。

 

 日本は最高の国だ。他は知らんが基地の近くの人たちは親切で、飯も美味い。特に基地近くのチェーン店のカレーライスは最高だ。俺の中では最も美味い飯ランキングトップ3には入るね。

 ここはとても住みやすい。アメリカとは違って銃を持って暴れる奴なんかもいないしな。近々家族もこの国に呼ぼうと思っている。

 

 

 2049年12月25日。雪。

 

 今日は最高のクリスマスだ。アメリカの故郷カリフォルニアから愛しの家族が来てくれた。これからは近くで妻や娘の顔を見ていられると思うと、俄然やる気も湧いてくるというものだ。家族が暮らすこの国の平和を、せいぜい守ってやろうじゃないか。

 

 

 2050年1月1日。晴れ。

 

 日本の年明け、正月にはおせち料理なるものを食う文化があるらしい。基地近くに住んでいる婆さんが教えてくれていた。というわけで予約していたおせちが届いていたから今日は家族でおせちパーティーだ。

 初めて見る和食の数々に娘も妻も大喜び。だが俺はもっとガツンとした味の物が欲しいと思った。気がつけば俺は、エビやカマボコにチリソースをつけていた。

 

 

 2050年3月7日。雨。

 

 おかしなニュースが流れやがった。六つの各大陸に、未確認巨大生物が現れて軍と交戦状態に入ったらしい。これが日本伝統の怪獣映画ってやつか?

 

 

 2050年3月8日。雨。

 

 軍から厳戒態勢を命じられた。本国で軍が未確認巨大生物と交戦状態にある、とのことだ。どうやら昨日ニュースで見たあれは、怪獣映画ではなかったらしい。

 

 

 2050年5月20日。晴れ。

 

 最悪の知らせが入った。巨大生物の攻撃でワシントンが陥落した。我らが大統領も死んだらしい。なんてこった。これから俺たちは一体どうなるというんだ。

 

 

 2050年6月2日。晴れ。

 

 国連安保理で、奴らの呼び名が決まった。【天使】だそうだ。皮肉が込められているそうだが冗談じゃない。そしてこの天使を人類の天敵と断定して、対天使に限定した核兵器の無制限使用が条約で定められた。これじゃ核戦争待ったなしだ。

 

 

 2050年6月8日。曇り。

 

 故郷カリフォルニアに出現した天使に、核兵器が使われた。結果? 最悪だよ。カリフォルニアは壊滅。天使は無傷。何の意味もなく、俺の故郷はなくなってしまった。家族だけでも日本に呼んでおいて、本当に良かった。

 

 

 2050年6月20日。雨。

 

 国連安保理の決定が出た。かねてより進んでいた宇宙移民計画。それを急ピッチで進めて、全世界の打ち上げ施設全てを使い全人類を宇宙に脱出させるらしい。移住先は、開発中の月のコロニー。

 まさか、俺が生きているうちにこんな事になるとはな。

 

 

 2050年7月5日。快晴。

 

 悪い知らせだ。中国、朝鮮半島が陥落した。いよいよ奴らが日本に来る。家族はなんとしても守り抜いてみせるさ。

 

 

 2050年7月19日。曇り。

 

 ついに天使が日本に上陸した。場所は石川県。

 その姿はあまりにも神々しく、おぞましかった。神様というのはどうやらとんだクソ野郎らしい。あんなものを送り込んで来るのが、俺達がこれまで信じてきたものだとでもいうのか。

 

 

 2050年8月2日。晴れ。

 

 日本でも地球脱出が始まった。今日に第一便が打ち上げられるところだ。俺も家族も、いつかあれに乗ることができるのだろうか。

 

 

 2050年8月8日。雨。

 

 恐ろしい話が入ってきた。20万人の民間人を乗せた脱出線が、ギアナで天使に撃墜されたらしい。乗員は全員死亡とのことだ。

 わかってはいたが、奴らには血も涙もない。これは、覚悟を決めなければならないかもしれない。

 

 

 2050年8月14日。晴れ。

 

 今日、軍に入って初めて人を殺した。天使による最後の審判を受け入れろ。そう叫ぶ地球脱出反対派のテロリストだ。避難民を乗せたクルーズ船を爆破しようとしていたところを射殺した。何万人もの命を救う為とはいえ、後味は良くないな。

 

 

 2050年8月19日。晴れ。

 

 天使が迫る中、ついに家族の地球脱出のチケットを手に入れた。そして俺も決心がついた。家族を守る為に、護衛部隊に志願しようと思う。

 当然護衛部隊に配属されればもう助からない。地球を脱出できずに取り残されるのが決まっているからだ。悔いはない、といえば嘘になる。娘のウェディングドレス姿を見れなかったのは残念だ。だが、娘がウェディングドレスを着れないまま死ぬのはもっと嫌だ。

 だから俺は戦う事を決めた。国の為でも日本の為でもない。ただ、愛する家族の為に。

 

 

 2050年8月25日。快晴。

 

 俺の家族を乗せた宇宙船が、とうとう宇宙へ打ち上げられた。途中天使の尖兵が現れたが、なんとかぶっ飛ばしてやったさ。奴らに撃ち落とされて打ち上げ成功率はせいぜい60%というのだから、本当にうまくいってよかった。

 そして俺にはもう守るべきものはない。後は残りの命を、他の人間を助ける為に使い潰すだけだ。

 

 

 2050年9月1日。晴れ。

 

 これが最後の記録になる。

 上官から教えられたが、どうやら急ピッチで軍事基地に改造された伊丹空港が、後の世代に託す為に無人で保存される事になっているらしい。伊丹空港は天使との戦争で国際便が減ったせいで関西空港と統合されたそうだが、それで封鎖されるところを接収したそうだ。

 まあ空港が軍事基地になった理由はどうでもいい。重要なのは、この基地がいずれ行われる地球奪還作戦の拠点として後の世代の人間たちに託されるということだ。

 上官からの提案は、この日記を基地で保存しないかという事だった。なんでもこの世界に何が起きたのか、何が起こっていたのかを伝える資料として期待されているらしい。俺はこの提案を呑むことにした。よって、日記をつけるのが今日で最後になる。

 

 

 

 

 

 これを読んだ後の世代の者たちへ。

 

 地球を取り戻してくれ、なんて大それた事は言わない。

 

 どうか胸に刻んで欲しい。俺たちがこの時代に生きていた証を。君たちへ命を繋ぐ為に散った者たちの生き様を。

 

 そして生きてくれ。地球は取り戻せなくてもいい。ただ生きて、その命を未来へと繋いでくれ。

 

 それが俺たちが、この時代の兵士たちが君たちへ託す一番の願いだ。

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