【完結】蒼い星へ還る日まで〜少女六人、終末世界で自由気ままなスローライフはじめました〜   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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エンゼルコール

「今日も頑張って捕まえるぞー!」

「すっかり凄腕スナイパーですね、光里さん」

「目指せ世界最強!」

 

 とある晴れの日、光里とフランはスナイパーライフルを持って街にやってきていました。また狩りをする為です。

 

「あのビルの上にしようかな」

「わかりました」

 

 光る人が現れない範囲の中で場所を探していると、狙い撃ちをしやすそうな四階建てくらいの廃ビルを見つけました。

 

「鉄砲を背負って階段上がるのだけは、大変なんだよね」

 

 二人はビルの中に入って階段を登っていきますが、これがまた大変。背中に大きな鉄砲を背負っているので、光里は階段を登るのも一苦労です。

 

「よし着いた!」

 

 やっと上までついたところで、鉄砲を一旦下ろして水筒の水を飲んでひと休みです。

 

「私は標的を探しますが、何にしますか」

「鹿肉はまだ冷凍が残ってるから、鶏にしようかな?」

「わかりました」

 

 今日の狙いは鹿ではなく、ニワトリ。鹿肉はまだ冷凍庫に残っている為ですが、ニワトリなんて小さい相手を光里は本当に狙えるのでしょうか。

 

 狙いが決まるとフランは双眼鏡でニワトリを探して、光里は鉄砲と弾の準備をします。

 

「ニワトリ、いました」

「よーし、いくよ!」

 

 そしてニワトリが見つかると、鉄砲の先をビルの外に向けてスコープを覗き込みました。

 

 狙うはビルの下、少し離れたところにいる一羽のニワトリ。光里は呼吸を整え、心を落ち着けて狙いを定めます。

 

「あと、少し……」

 

 肌で感じた風の動きも考えて細かく調整しながらよく狙って、引き金に指をかける光里。

 

 そして指を引き、放った弾は吸い込まれるようにニワトリの頭に命中。見事一撃で仕留めました。

 

「命中。ヘッドショットです」

「やったぁ!」

 

 鉄砲での狙い撃ちは大成功。光里は思わずガッツポーズで喜びます。ですがフランは、喜ぶというより驚いているみたい。

 

「ビルの上からニワトリの頭を狙撃……なんて技術なんですか」

「えへへ……」

 

 ニワトリの狩りは今回が初めてではありませんが、光里は毎回小さなニワトリの頭に易々と鉄砲を当てていました。そして今回もまた。

 

 上手過ぎる。もしかしたら光里は天才なんじゃないかなと、フランはそう思うようになっていました。

 

 あとは仕留めたニワトリを回収して帰るだけ。そう思った矢先でした。

 

「っ!?」

 

 突然、ドクンと跳ねる心臓。危ない、と身体が本能で呼びかけてきます。

 

「光里さん、後ろ!」

「ぐっ……!」

 

 気付いたフランが叫びましたが間に合わず、それは光里に襲いかかりました。光る人が突然現れ、光里の首を絞めてきたのです。

 

 そして光里の首を絞める光る人はやがてその姿を変えて、光里を真似たまるで光里そのものへと姿を変えました。

 

 光る人は光里を真似た姿で、作り物のような笑顔を浮かべて眉一つ動かさず、本物の光里を絞め殺そうと手の力をどんどん強めていきます。

 

「あ、ぁ……」

 

 このままでは、光里が死んでしまう。どうしよう。震えが止まらないフランの足に、コツンと何かが当たりました。

 

 いざという時の為に持ってきていた、M4A1カービンです。

 

「うあぁぁぁぁっ!」

 

 フランはその鉄砲を拾い上げると、叫びを上げながら偽物の光里を撃ちました。何度も何度も、死ね、死んでしまえと。

 

「かはっ……!」

 

 フランの攻撃のおかげで光る人の手が離れた隙に光里はその場を抜け出し、武器のスナイパーライフルを拾い上げると咳き込みながらフランの手を握りました。

 

「逃げよう、フラン!」

「は、はいっ」

 

 その手の温かさにフランも正気を取り戻して鉄砲の引き金から指を離し、二人一緒にこのビルから逃げ出しました。

 

 

 

 

 そしてそれぞれ鉄砲を手に飛行場へと急いで走る中、突然二人の目が赤く光って、視界に赤いフィルターのようなものがかかります。

 

「何これ……」

 

 そしてある文字が浮かび上がってきました。【ANGEL CALL(エンゼルコール) LEVEL1】、と。

 

「この視界、何ですか……!」

「とにかくロボットに乗ろう!」

「は、はいっ!」

 

 この赤く染まった視界は、一体何なのか。自分たちの身体に今何が起きているのか。何もわかりませんが、エンゼルコールという文字の下にこうも書かれていました。【直ちにゼクト・オメガに搭乗してください】、と。

 

 視界に浮かんだ謎のメッセージの言うとおりに、飛行場に着くと二人はすぐにロボットに乗り込んで起動スイッチを動かしました。

 

【ゼクト・オメガ1号機、起動します】

【ゼクト・オメガ5号機、起動します】

「視界が、戻った……?」

 

 光里の1号機が、フランの5号機が起動したと同時に二人の瞳からは赤い光が消えて、視界も元の色に戻りました。

 

 瞳の赤い光は、ロボットに乗り込むと消えるようになっていたみたいです。

 

「戻ってきたか二人とも」

「今の何? 視界がぶわ〜って赤くなったんだけど」

「すみません、わかりません……」

「とにかく無事でよかった……」

「ほんとほんと」

 

 どうやらみんなにも、同じことが起きていたみたい。エンゼルコール。光里たちの身体に起きたこの現象は、一体何なのでしょうか。

 

 何もわからないみんなに、コクピットに機械の声が新たなメッセージを伝えます。

 

【エンゼルコールが発令されました。これより本機は、システムを戦闘モードへ移行します】

 

 ロボットが戦闘モードになった。それはつまり、これから戦いになるということなのでしょう。緊張しながら、みんなは操縦桿をぐっと強く握りしめました。

 

【これより電源を副電源の核融合炉より、主電源の縮退炉に移行します】

「えっ……」

 

 そして戦闘モードに続く言葉に、意味を理解しているフランは思わず驚いてしまいます。

 

【炉心内圧力無限大。疑似ブラックホール、形状安定。縮退炉、始動完了しました】

「縮退炉……」

 

 ついに明かされた、ゼクト・オメガの動力源。それは、フランの予想を遥かに超えるとんでもないものだったのです。

 

 しかしそれについて考える間もなく、コクピットに警報音が鳴り響きました。

 

「何か来る!」

「あれは……戦闘機……?」

「でもなんか光ってるよ〜」

 

 そしてレーダーに映り、空を飛んできたのは光る人と同じようにぼんやりと光った、五つの戦闘機。あれが敵なのでしょうか。

 

 そう思った途端、戦闘機は突然一斉にミサイルをこちらに向けて発射。ロボットには当たらなかったものの、そのうちの一つは煙を吹きながらロボットの頭上を飛び越え、後ろのコンテナハウスに当たってしまいました。

 

「私たちのお家が!」

「あんの野郎ッ!」

 

 ミサイルの直撃で、燃え上がってしまったコンテナハウスを前に悠樹は怒り心頭。コンテナのビームライフルを手にすると、その出力を最大まで上げました。

 

「待ってください!」

「ぶっ潰してやる!」

 

 止めようとするフランの声も届かず、ライフルの引き金を引く悠樹。

 

 次の瞬間。凄まじい閃光と共に荷電粒子の巨大なビームが砲口から空へ向かって放たれ、その一瞬で雲に大きな穴を開けてしまいました。

 

 そしてそこにいたはずの敵の戦闘機は、跡形もなく消えてなくなっていたのです。

 

「なに、今の……」

「何なんだ、今の威力は……」

「絶対にコクピットを開けないでください。今の一撃で大気がプラズマ化しています」

「う、うん」

 

 空気すら焼いてしまうほどの熱量を持つ一撃。それは、撃った本人の悠樹ですら言葉を失ってしまう程の威力でした。

 

「この機体……おかしいです」

「どうしたの、フランちゃん」

「この機体が核兵器かもしれないって、この前言いましたよね」

「そういえば……」

「やっぱ核だった感じ?」

 

 フランは戦いの前までは、この機体の電源は核だと思っていました。それも正しく言えば、核分裂炉というタイプの。

 

「核なんてそんな生易しいものじゃありません。この機体の動力は縮退炉。つまりブラックホールです」

「ブラックホールエンジンというわけか」

「出力はきっと、核の比較になりません」

 

 ですが本当のところは核分裂炉よりも強力な核融合炉ですら副電源でしかなく、主電源にはブラックホールをエネルギーの源とする縮退炉というとんでもないものを使っていたのでした。

 

 その最大出力は、恐らく核分裂炉の一億倍以上。フランの言うとおり比較にならない、文字通り桁が違うとんでもないものです。

 

【エンゼルコール、レベル2が発令されました】

「まだ来るの……?」

 

 ですがどうやら敵はまだ現れるよう。先の五つの戦闘機はレベル1。レベル2では何が現れるのでしょうか。警戒する六人の前に現れたのは、想像を絶するものでした。

 

「ちょっ、やばいって!」

「どうした智実」

「レーダー、レーダー見て!」

「これは……」

 

 智実に言われて、みんなレーダーに目を向けます。そこに映っていたのは、敵がいることを示す赤い点。ではなく……。

 

「なんか……全体赤くなってきてない?」

 

 そう言ったのは悠樹。彼女の言うように、レーダーは端からどんどん赤一色に染まっていきます。これは何を意味しているのでしょうか。

 

「もしかして、あれ……」

 

 ふと空を見上げた光里は、あるものを目にしました。続いてみんなも見てみると、そこには……。

 

「冗談っしょ?」

 

 空の青が見えなくなるほどの、とんでもない数の戦闘機やヘリコプターがこちらへと迫ってきていたのです。

 

【敵兵器群の接近を確認。推定数、約1280万】

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