【完結】蒼い星へ還る日まで〜少女六人、終末世界で自由気ままなスローライフはじめました〜   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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【天使】をやっつけよう

「なんというか、天使というより神のようだな」

「何百メートルどころじゃないっしょあれ」

 

 空を見上げるとそこにいる天使の姿に、みんな思わず圧倒されてしまいます。昔の人たちはこれを天使と名付けたようですが、第一印象はむしろ神様のよう。

 

 下半身が龍のような、まるで伝承の神ナーガのような姿のそれは、3キロメートルはあると思われるくらいの巨大さで見る者に恐怖を与えます。

 

 今からこれと戦うと思うと、流石にみんな物怖じしてしまいます。

 

「まだ雑魚もわんさかいるのに〜!」

 

 それにまだ、恐らく何百万の敵が残っていて天使の周りを飛び回っています。天使と同時にこれらも相手にするのは、考えただけでも大変。

 

 さらに地面が割れ、空高くへと光の柱が何本も次々と現れます。

 

「嫌な予感……」

 

 あまりにも滅茶苦茶な状況に、智実は思わず苦笑い。

 

 次の瞬間、天使の顔が割れて中から六つの眼が現れ、同時に光の柱から無数のレーザーが放たれました。

 

「みんな避けてッ!!」

 

 光里の一声で六機のロボットは一斉に散らばり、レーザーを避けます。

 

「なんて弾幕……」

「凄まじい密度だ。その上味方もお構いなしか」

 

 避けても避けても、レーザーは薙ぎ払うように光里たちを追いかけてきます。そこにいる味方のはずの戦闘機などはお構いなしで巻き込みながら。

 

「くっ……」

「フランちゃん!?」

「アブソルートテリトリーが抜かれました! 気をつけてください!」

 

 これだけ正確かつ数も多いレーザーの照射は避け切れず、フランは機体の右肩に受けてしまいました。

 

 しかも肩の装甲を壊すまでには至っていないものの、これまでは無敵を誇っていたバリアが抜かれて機体にダメージが通ってしまっています。

 

「バリアが効かない、ってこと……?」

「いえ、軽減はできているようです。しかしこれまでのように完全に防げるわけでは……」

 

 バリアが本当に効かないのなら、今頃フランの機体の右腕はなくなっていることでしょう。バリアが効いていることは確かですが、それでも無敵ではなくなった。それだけでもみんなにとってはとんでもない脅威です。

 

「このままじゃマジで誰か死んじゃうよ!?」

「どうすれば……!」

 

 バリアも無敵ではなくなった上に、あれだけ巨大な天使にはビームを撃っても焼け石に水。すぐに再生してしまいます。

 

 その上数え切れないほどの敵からの攻撃。どうすればこの状況で勝てるのか、戦いながらみんな必死に考えます。

 

 そんな時、光里のコクピットにだけ機械音声がまた鳴りました。

 

【エンゼルコール、レベル3の発令により、崩壊砲の使用を提案します】

「それを使えば、天使に勝てるの!?」

【可能です】

 

 音声が提案するのは、【崩壊砲】という武器。それが一体どういうものなのかは全くわかりませんが、それを使えば天使に勝てるのだと音声は言います。

 

 光里は、その声を信じてみることにしました。

 

「みんな、聞いて!」

「光里さん、何か手があるんですか」

「崩壊砲っていうのを使ってみる。みんな、ちょっとだけ時間を稼いで!」

「わかった……」

 

 みんなが戦い続ける中、光里は一人後ろに下がって崩壊砲の起動準備に入ります。

 

「崩壊砲? 私の機体にはそんな武器は……」

「もしかすると、背中に背負っているあれか」

 

 崩壊砲。そんな武器は他の五人のロボットにはついていないみたい。すると恐らく、崩壊砲というのはここに来た時から光里のロボットだけが背負っていた謎の機械の事なのかなと小夜子は予想しました。

 

「みんな、みつりんを守るよ!」

「りょうか〜い!」

 

 ともあれ勝ち筋は見えました。光里が崩壊砲の準備をしている間、他のみんなは彼女を守ることに専念することに。

 

【崩壊砲、起動シークエンス】

 

 そして光里のロボットが後ろの方に着地するとそんな音声がコクピットに鳴り、背中の機械が変形し始めました。

 

「そうか、あの眼か」

 

 一方、小夜子は気付きました。天使の顔が割れて現れた六つの眼。その眼のひとつひとつが、それぞれ自分たち一人一人へと向けられていることに。

 

【アブソルートテリトリー、機体周囲200メートルに展開。エネルギーライン、コネクト。縮退炉、出力120%】

 

 光里のロボット、その背中の機械は本体を超える長さの巨大な鉄砲(ランチャー)へと姿を変えて。同時に機体表面を覆っていたバリアが周囲にまで大きく広がりました。

 

 自爆しようとたくさんの戦闘機が突撃してくるものの、その全てが広がったバリアに阻まれて光里に近づくことすらできません。

 

 ですがレーザーだけは、弱まっているとはいえバリアを抜けて機体の装甲を少しずつ焼いてきます。

 

「他のはいい。光里に向いている眼を潰せッ!」

 

 他のみんなは、光里に向かうレーザーを止めることにしました。狙うは頭にある六つの眼。そのうち光里の機体へと向いている一つです。

 

 きっとこの眼がレーザーの追跡を誘導している。それが小夜子の予想でした。

 

【グラビトンバレル展開。多層次元への空間接続、完了。エネルギー充填及び質量への転換を開始します】

 

 みんなが天使の眼を壊す為に必死になって戦う中、光里のロボットの鉄砲から部品が外れて宙に浮いて銃身を形作り、回転を始めます。

 

 そしてその回転の速さが見えなくなるほどになった時。ロボットの背中から勢い良く虹色の、まるで木のようにも見える形の光の翼が現れました。

 

「あれ、やばいやつじゃない!?」

 

 その後回転する銃身の中に現れたのは、まるで太陽のような光の球。

 

 智実は察しました。光里のロボットにだけ付いていた崩壊砲という武器。それが、想像を遥かに超えるとんでもないものだと。

 

【重力崩壊臨界点到達】

 

 光里のロボットを中心に、吹き荒れる爆風。そして銃身の中の太陽のような光の球は、その爆発の中心で機体の指先ほどの小さな黒い球へと姿を変えます。

 

「やった……!」

 

 一方、月美の放ったビームが決め手になって五人はついに眼を壊すことに成功。その瞬間、光里に向かっていたレーザーだけが狙い通りに全部ピタリと止みました。

 

【ターゲットスコープ、オープン。発射してください】

「みんな、離れて!」

 

 同時に崩壊砲の発射準備がついにできました。みんなが天使から離れると、光里は引き金に指をかけて天使に狙いを定めます。

 

 落ち着いて、呼吸を整えて。鹿やニワトリの時と同じように、いつも通りに撃てばいいと自分に言い聞かせて。

 

「崩壊砲……発射」

 

 引き金を引いた瞬間。閃光が迸り、漆黒のビームが天使の心臓へ向かって放たれ、貫通することなく吸い込まれるように消えていきました。

 

「あれ、何も……」

 

 直撃はした筈なのに、何も起きない。月美が呟いた瞬間でした。

 

「なっ……!」

 

 突然天使の全身がボコボコと膨れ上がり、ビルや家をなぎ倒しながら何倍にも膨張。したと思いきや今度は紙を丸めるように中心に向かって押し潰されていきました。

 

 小夜子はその光景を前に、思わず目を見開きます。

 

「これが……」

 

 もがき苦しむような動きを見せながら、収縮と膨張を繰り返す天使。やがて3キロメートル程あった巨体は手のひらほどの大きさにまで圧縮され、最後はその大きさからは想像もつかない大爆発を起こしました。

 

「あんなのを、一撃で!?」

 

 その光景を目にして、驚きの声を上げる悠樹。

 

 それと同時に、まだ何百万と残っていた敵も光の粒になって消えてしまいました。

 

 光里のロボットから放たれた崩壊砲の黒い光。それはあれだけ巨大で強力な天使を、たったの一撃でやっつけてしまったのです。

 

「これが崩壊砲……」

 

 戦いが終わり、崩壊砲の砲身を再び収納するロボットのコクピットの中で。光里は震えが止まらない手を呆然と見つめていました。

 

 彼女は怖くなってしまったのです。あんなにも強力な、崩壊砲の引き金を自分の手で引いてしまったことが。そんな光里の心情を察して、フランは優しく声をかけます。

 

「大丈夫ですよ、光里さん」

 

 こうして初めての天使との戦いは、なんとか無事に一人も欠けることなく勝利に終わったのでした。

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