【完結】蒼い星へ還る日まで〜少女六人、終末世界で自由気ままなスローライフはじめました〜   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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ファミレスに行こう

「これでこのカプセルも三回目か」

「結構慣れてきたよね〜」

 

 カプセルに入ってのナノマシン施術も今日で三度目。みんなすっかり慣れたもので、初めほどの戸惑いや驚きもなくカプセルから起き上がるとさっと服を着てしまいます。

 

「服を着るので待っていてくださいね、光里さん」

 

 フランも服を着てから光里を起こしてあげようとしますが、そんな彼女が光里に目を向けると……。

 

「え……」

「み、みつりんが……」

「起き上がれちゃった……」

 

 なんと、光里が自分の力で起き上がってカプセルに座っていたのです。光里自身も、これには驚きを隠せません。

 

「すごい、自分で歩ける……」

 

 恐る恐るカプセルから足を下ろし、立ち上がって歩いてみました。すると歩き慣れていないせいでふらついてはいますが、初めて自分の力で歩くことができたのです。

 

「歩けてる! 歩けてるよわたあぁっ!?」

 

 ですが調子に乗って少し油断した途端に、足がもつれてばたっと転んでしまいました。

 

「大丈夫!?」

「いたた……。車椅子なしで自分で歩くの、初めてだから……」

 

 自分の足で歩ける力を手にしたとはいえ、自分で歩くということに関しては光里はまだ赤ん坊同然。ちゃんと自分の力だけで歩くには、もう少し練習が必要みたいです。

 

「よかったですね、光里さん」

 

 転んだ後起き上がった光里の身体を、フランはそう言って泣きそうな顔でぎゅっと抱きしめました。光里が回復したこと、フランもとっても嬉しいみたい。

 

「光里ちゃん!」

「あ、あやちゃん先生だ〜」

「これは一体……」

 

 そんな中状況を知ってか、沙織さんが光里の名前を呼びながら駆け込んできました。そんな彼女に、光里は何が起きたのかを尋ねます。

 

「ナノマシンが正常に機能したのよ。詳しくはまだ検査が必要だけど、理論上はこれでラビットシンドロームの症状はほぼ完治した筈よ」

「まじか、ナノマシンすげぇ〜」

「まさかこれ程とは……」

 

 この突然の回復は、ナノマシンのお陰。身体機能の補助機能が上手く働いたことで光里の身体のあちこちがナノマシンで強化され、自分で歩けるほどになったのです。

 

 いつも車椅子かベッドから離れられなかった光里がここまで回復するナノマシンの力に、みんなもびっくりです。

 

「ならさならさ、もし他にみつりんと同じ病気の人が出てもナノマシンで一発で治せるんじゃね?」

「それが目標ね」

 

 これなら、他のラビットシンドローム患者も治せるんじゃないかなと悠樹は思いつきましたが、目標と言うにはまだ課題はあるようです。

 

「前に説明した通り、現状のナノマシンには年齢や適性といった問題があって誰にでも使えるわけではないの。だから光里ちゃんを完治させたナノマシンの挙動を分析して、そこから余計な機能をなるべく省くことで適性の問題を緩和した、ラビットシンドローム治療特化の新型ナノマシンを開発するのが今後の目標になっているのよ」

「つまり光里が罹ってる病気の治療に必要な機能だけ絞り込む為に、これからも経過観察しないとってことだね〜」

 

 年齢や適性という問題を緩和した、ラビットシンドローム専用ナノマシンを作る。それがこれからの課題だといいます。

 

 ともあれこうして光里は生まれて初めて、自分の力で自由に動ける健康な身体を手に入れることができたのでした。

 

 

 

 

 

「で、ここからは自由時間なわけだが」

 

 授業も終わり、今からは放課後の自由時間。みんなお昼ご飯もまだ食べてはいませんが、その前に小夜子が光里に尋ねます。

 

「光里、完治祝いに何か食べたいものはあるか」

「えーっと……」

 

 食べたいもの。そう言われて光里は何を食べたいか考えましたが……。

 

「全部かな」

「おお、欲張りだね〜」

「いや、普通じゃね?」

 

 その答えは全部。光里は欲張りだなぁとみんな思いましたが、悠樹はその内心に気付いていました。

 

「みつりんはうちらとは違って小さい頃からお粥くらいしか食べられなかったんだしさ。全部食べたことないんだし、コレとか決めらんないっしょ。だよね?」

「そう、全部食べたことないから全部食べてみたい!」

「つまり何でもいいと。そうなると難しいですよね」

 

 今の光里にとってはお粥やリゾット以外の食べ物全部が初めてで、何が好きかなんて自分でもわかっていません。全部食べたい。それはフランの言うように、何だっていいということでもあります。

 

 ただそう言われると難しいもので、みんなどうしようか頭を悩ませます。

 

「それなら……」

 

 そんな中、月美がいい案を思いついたみたい。

 

「ファミレス、行ってみない……?」

 

 

 

 

 

「なるほど、ファミレスで色々頼んでシェアすればいろんなの味見できるもんね〜」

「光里ちゃん、頼みたいものは……」

「わからないから、みんなのオススメがいいなぁ」

「じゃあ適当に頼むか」

「ドリンクバーもケチらなくていいっしょ。どうせノア持ちだし」

 

 月美の提案で六人は、アララトに再現された東京の街中にあるファミレスにやってきました。そして席につくとみんなで分け合って食べるからと、あまり考えずにタッチパネルでいろんなものを注文していきます。

 

 ちなみに代金は全部ノアが出してくれることになっています。ゼクト・オメガ六機を造るお金と比べたら、女の子六人の食費なんて大したことないということでしょうか。

 

「おひとり様でしょうか」

「はい」

 

 そうして好きなもの、光里におすすめしたいものを注文していく中、入り口の方に見覚えのある姿が見えました。

 

「あれあやちゃん先生じゃない〜?」

「おーい!」

「気付かれちゃったわね」

「あやちゃん先生も飯か」

「あなたたちの……特に光里ちゃんの様子を見に、ね。私は私で何か食べてるから、気にしないでいいわよ」

 

 動けるようになったばかりの光里を心配して見守りに来た沙織さんは、みんなとは違う席で一人でご飯を食べるつもりだったみたい。

 

「先生も一緒に食べようっ!」

「光里さんの言うとおりです。折角ですしご一緒にどうですか」

「それじゃあお言葉に甘えて」

 

 ですが光里の一声で、沙織さんもみんなと一緒に食べることに。

 

「やっぱりこの子たちと一緒でお願いします」

「かしこまりました」

 

 お店の人にそれを伝えると沙織さんは光里たちと同じ場所に座って、タッチパネルで自分の分のドリンクバーを追加で注文しました。

 

 ここからは料理が届くまでお話の時間です。

 

「ちょっと心配してたんだけど月美ちゃん、ちゃんとみんなの輪の中に入れてる?」

「そ、それは……」

「問題ない。興味がある話題になると結構ノリノリで入ってきてくれるぞ」

「スムージーの時、すごく楽しそうだった!」

「みんな、優しいから。話すのは苦手だけど、みんなすごくいい人たち……」

「友達って無理して付き合うもんじゃないとうちは思うんよね。一緒で楽しいからいいのに、無理に絡んで辛くなったら本末転倒じゃん?」

「ごめんなさい。心配は余計だったみたいね」

 

 引っ込み思案で口数が少ない月美がみんなの輪の中に入れているか、沙織さんは先生として心配していたみたい。ですがみんながもう月美の事を受け入れていて、月美もここが居心地良く感じていることを知って一安心しました。

 

「光里さん、ドリンクバーに行きませんか?」

「行きたいっ!」

「杖、忘れないでくださいね。コップは私が持ちますから」

 

 おしゃべりが続く中、光里とフランはドリンクバーのコーナーに飲み物を取りに行きました。光里はまだ歩くのに杖をつかなければいけませんが、コップはフランが持ってくれるので大丈夫です。

 

「先生は、何がいいですか……?」

「ありがとう。でも私は自分で取りにいくわね。紅茶はちょっと自分だけのこだわりがあるの」

「あやちゃん先生、大人〜!」

 

 そして月美は気を配って沙織さんの分も取りに行こうとしますが、沙織さんは何かこだわりがあるらしく自分で取りに行きます。その入れ替わりで、光里とフランが戻ってきました。

 

「みつりん何したの?」

「コーラ、どんな味か気になってたの」

「嬉しそうですね、光里さん」

「フランは何にしたんだ」

「カフェラテですね。研究で夜更しするときによく飲むので、甘いコーヒーが飲み慣れていて安心するんです」

「本当に一番歳下なんこの子」

 

 光里はコーラ、フランはアイスカフェラテ。二人が好きな飲み物を取ってくると、他のみんなも飲み物を取りに行きました。

 

 そして全員が揃ってしばらくしたところで、最初の料理が届きます。

 

「お待たせしました。ビーフハンバーグステーキになります」

 

 最初に届いたのは、熱々の鉄板に乗ったハンバーグ。付け合わせにはブロッコリーとニンジン、ポテトがついています。

 

「これが、ハンバーグ……!」

「みつりんよだれ出てるよ」

「無理もないだろう。まともな固形食は初めてらしいからな」

「光里さん、可愛い……」

 

 初めての固形食、初めてのハンバーグに光里は大興奮。すぐにでも食べてしまいたいところですが、その前に……。

 

「それじゃあみんな、一緒にっ!」

「一緒にって……あぁ、そういうことか」

『いただきまーす』

 

 みんなで手を合わせていただきます。楽しいお食事会の始まりです。

 

「食べ方わかる〜?」

「アニメやドラマで見たから大丈夫……だと思う!」

 

 動画の見様見真似で、光里はナイフとフォークを手に取りハンバーグを切り分けて、恐る恐るぱくりと一口。

 

「こんな……こんなに美味しいものがあったんだ……!」

 

 そのあまりの美味しさに、感動と興奮が収まりません。こんな美味しいもの、生まれてから本当に初めてです。

 

「他にもどんどん来るから、みつりんはセーブ気味でね。すぐ膨れちゃ勿体無いし」

「うんっ!」

 

 けれどまだまだお食事会は始まったばかり。せっかく色々味見できるからとファミレスを選んだのだから、ハンバーグだけでお腹を膨らせてはいけません。

 

「お待たせしました」

 

 続いて届いたのは温泉卵が乗ったカルボナーラにチキングリル、小エビのサラダ。

 

「ねえみんな、どれくらい頼んだの?」

 

 一体どれだけ頼んだのかなと、ふと気になった沙織さんは尋ねます。

 

「一万円分くらいかなぁ。あやちゃん先生も遠慮しないで食べてね〜」

「結構行くわね……」

「ナノマシンで太らないと聞けば、ドカ食いをしてみたくもある」

 

 一万円分。そんなに頼んだのなら、料理はまだまだ届きます。光里だけでなく他のみんなも、今日はたくさん食べるつもりでここに来たのです。

 

「そういえばつくみん、ちゃんと食べてる? さっきから静かだけど」

「やっぱり家で作るのとは味が違う。玉ねぎすら入れてないし、ステーキっていうのはそういう……」

「つくみん?」

「ご、ごめんなさい。こんなレストランに来るのは初めてで……」

 

 静かだった月美を心配して悠樹は声をかけましたが、どうやら大丈夫みたい。ファミレスを提案したのは月美ですが、そんな彼女もまたファミレスは初めてだったようです。

 

「どうやったらこんなの作れるのかなーって考えてたっしょ」

「食べたいものは自分で作ればいいって思ってたけど、家庭のレシピとは違う外食を食べてみたら新しいレシピが浮かんできて……」

「楽しめてるなら何よりっしょ」

 

 あまりお話には入っていない月美ですが、彼女は彼女で目一杯楽しんでるみたい。悠樹もなんだか嬉しい気持ちになってきます。

 

 そして料理を心から楽しんでいる月美に、悠樹は考えていることがありました。

 

「それに思うんよ。一年後にはうちら六人だけで地球に行ってサバイバルするわけじゃん。そしたら料理できるつくみんってめちゃくちゃ頼もしいじゃんってさ」

「私が、頼もしい……?」

「頼りにしてるよ、つくみん」

 

 地球でのサバイバルが始まれば今よりずっとみんな月美に頼ることになると、悠樹はそう考えていたのです。そう言われると、月美もまた嬉しくなってきました。

 

「お野菜かな。キレイな緑色!」

「光里さん、それは……」

「ピーマンか。いいじゃないか、食べてみるといい」

 

 一方その頃、光里が気になったのはチキングリルの付け合わせのピーマン。

 

「うん、食べてみるっ」

「大丈夫かな〜」

「無理はしないでね、光里ちゃん」

 

 苦味のせいで苦手な人も多いピーマンを、食べることに関しては幼い子どもくらいの経験しかない光里が食べられるのかなと。

 

「んっ……」

「食べられなかったら吐き出しても……」

 

 みんなが心配しながら見守る中、光里はわくわくしながらピーマンを頬張ります。その感想は……。

 

「美味しいっ! 甘いけど甘いだけじゃなくてちょっと苦い感じ? これ私大好きかも!」

 

 まさかの好みに刺さったみたいで、この反応には流石にみんなも予想外。ピーマンでここまで喜ぶとは思いませんでした。

 

「赤と黄色の、これもピーマン?」

「赤ピーマンとパプリカって何か違うのか?」

「品種的には一緒だった気がするけど、肉厚な方をパプリカって言う事が多いかな〜」

「ならこれはパプリカかな?」

 

 続けて一緒に盛り付けられていたパプリカも一口。

 

「美味しい! でも緑のピーマンの方が好きかも?」

 

 パプリカもまたとっても美味しいですが、やっぱり大好きなのは緑の苦味があるピーマンのようです。

 

「お待たせしました。ミックスピザになります」

「これもピーマンだよね。たくさん乗ってるところもらっていい?」

「思わぬ大好物が見つかったわね」

 

 ピザが届くと、一番ピーマンが乗っている一切れを持ってぱくり。まさかの大好物の発見に、沙織さんも驚いてしまいました。

 

「レストランにはないけど……ピーマンの肉詰め、今度作ったら食べる……?」

「何それ美味しそう! 月美ちゃん、作ってくれるの!?」

「食べてくれるなら、作ってみたい。他にもチンジャオロースや、煮浸しも……」

「ピーマンのフルコースかな〜?」

 

 本当に嬉しそうにピーマンを食べる光里にもっと食べさせてあげたいと思った月美はいろんなピーマンの料理を思いついたみたいで、今度光里の為に作ってくれるそうです。

 

「でも……ピーマン、苦手な人はいる……?」

「正直うちちょっと苦手だけど、つくみんが作ってくれるなら食べれるかも」

「ピーマンの良さを活かしながら苦手でも食べられるように……頑張るね」

「ピーマンのフルコース……!」

「私も楽しみです」

 

 こうして近いうちに、月美のピーマン料理フルコースが振る舞われることが決まりました。

 

「カルボナーラ、これはなんだか安心する味!」

「リゾットを食べ慣れているなら、確かに近いところもあるな」

「チキン柔らか〜っ!」

 

 ですが今は目の前にある料理を楽しむ時。おしゃべりして感想を言い合いながら、この後もみんなでお腹いっぱいになるまで色々な料理を楽しんだのでした。

 

 

 

 

 

「うわ、何これ。レシート長っ」

「頼みましたからね……」

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