【完結】蒼い星へ還る日まで〜少女六人、終末世界で自由気ままなスローライフはじめました〜   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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ここはどこ?

 翌日、雲一つない晴れの天気。

 

「私はこれ。醤油ラーメン!」

「シーフードにしますね」

「うちは塩かな」

「あたしみっそ〜」

「とんこつ……あった」

「やっぱり担々麺だな」

 

 六人はコンテナに入っていたケースからそれぞれ好きなカップ麺を選び、タンクの給湯器でお湯を入れてテーブルへと持っていきます。

 

「いい天気ですね」

「こんな天気に外で食べるカップ麺……いい事考えるじゃん光里」

「みんなで朝ごはん、外で食べるともっと美味しいかなって」

「うん、素敵……」

 

 外に出したテーブルを囲み、みんなで朝ごはん。これは光里が言い出した事でした。せっかく晴れていて、他に誰もいなくて迷惑もかからないから、せっかくなら朝ごはんを外で食べようと、そう考えたのです。

 

「朝……にしては、遅い気がしますけど」

 

 ただし太陽はもうすぐ一番高いところまで昇りそう。時計はありませんが時間で言えば11時くらいでしょうか。フランの言うとおり、朝というにはかなり遅い時間になってしまっています。

 

「やばいよね〜、全員お寝坊さんなんてさ〜」

「あのベッドは兵器だわ。対うちら用の兵器だわ、あれは」

 

 というのも智実が言うように、今日の朝は全員が大寝坊をしてしまっていたのです。

 

 ふんわりふかふかのベッドのあまりの心地よさに、朝が来ても二度寝三度寝。そのまま結局お昼まで誰も起きる事はなかったのです。

 

 未知と期待に満ちたこの新生活は、なんとも締まりのないスタートとなったのでした。

 

「ふむ、意外と私は外が好きだったのか」

「そうなの? 小夜子ってザ・インドア派のサブカル女子〜! ってイメージだったんだけど」

「まあそうだな。自他共に認める引きこもり寸前のインドア派だったんだが、この場所に来てからは不思議と外にいたくなる。どうやら私が苦手だったのは日光ではなく人目だったらしい」

「あ、わかる! 人目気にしなくていいからのびのびできるよね!」

「私も同じかもしれません」

「つくみんももっとのびのびしようぜー!」

「がんばる……」

 

 カップ麺が出来上がるまでの三分間を、雑談しながら過ごす光里たち。そうしているうちに、砂時計の砂がもうすぐ全部落ちそうです。

 

「三分経ちましたよ」

「ありがとうフラン」

 

 そして砂が全部落ちきると、みんなカップ麺にスープを入れてかき混ぜ、手を合わせました。

 

「いただきまーす」

 

 最初に光里が一口。続いてみんなもずるずると麺をすすります。その味は……。

 

「……普通だな」

「この普通がいいんっしょ。こんな変な状況で普通っていうのが安心っていうかさぁ」

「普通が今はありがたいです」

 

 なんてことのない、食べ慣れた普通のカップ麺でした。

 

 けれどもみんな嬉しそう。突然わけもわからず投げ出された普通じゃない今に、こんな普通なものを食べられたのですから。

 

 普通というもののありがたみを噛み締めながらカップ麺を堪能した六人は、カップとスープの袋をゴミ箱に捨てると再び椅子に座ってテーブルを囲みました。

 

「それじゃあ今日の作戦……作戦? 作戦会議をしよーう!」

 

 そして光里が音頭を取り、みんなで話し合いを始めるのですが……。

 

「光里さん、すっかりリーダーですね」

「あっ、ごめん! 出しゃばっちゃって……」

 

 気付けば昨日からみんなを引っ張る事が多かった光里は、フランの言うようにまるでリーダーのよう。出しゃばってみんなを困らせたり、嫌な気持ちにさせてないかな。そう不安に思う光里でしたが、みんなはそうは思っていないみたい。

 

「まあいいんじゃない? 謎にしっくり来るし」

「1号機のパイロットがリーダー。うむ、定番じゃないか。燃えるな」

「よっ、光里隊長!」

「私も光里が引っ張ってくれて、その、気が楽というか……」

 

 昨日一日、わからないことばかりの中で光里は前に立ってみんなを引っ張っていました。そんな思い切りのいい光里についていくことでこんな時でもみんな前に進み、これから新生活を始めようというところまで来たのです。

 

 そんな彼女をリーダーと認めない子は、ここには誰一人いませんでした。

 

「あはは……それじゃあ、僭越ながらリーダー頑張らせていただきまーす」

 

 はっきりと言われると恥ずかしくて、照れ笑いをしながらも光里はリーダーという役目を担う事を決めました。

 

 そして早速、光里のリーダーとしての初仕事。作戦会議の始まりです。

 

「で、作戦会議ってこれからの方針をどうするかー、とか決めたりするわけ?」

「そうそう! まずは思いつく人からやりたい事を挙げていこう!」

 

 まず光里は、最初にみんなにやりたい事を尋ねました。いくらみんなからリーダーに選ばれたとは言っても、一人で何でも決めてしまうのは良くないですから。

 

 そして最初に手を挙げたのは、フランでした。

 

「ここがどこなのか。それをまずは把握したいですね」

「見たところ飛行場のようだが……戦闘機らしき残骸も見える。軍事基地か何かだろうか」

「もし戦争するための基地なら、使えるインフラあるかも? そういう所って孤立しても生きていけるように独立したインフラがあるんじゃないかな〜」

「なるほど。ひょーろーぜめ対策……みたいな?」

「そのと〜り」

「使えるものがあれば、生活も豊かに……」

「それにもしかしたら、この世界の手がかりも見つかるかもしれません。なので施設の探索を提案したいのですが、どうでしょう」

 

  何も考えないで一日を過ごしましたが、みんなまだ誰もここがどこなのか、そもそもどういう場所なのかさえ知りません。今後の為にもそれを知っておくべきだと、フランは考えたのです。

 

 軍隊の基地のようにも見えますが調べてみなければわかりませんし、調べることで何か便利なものが見つかるかもしれません。生活を豊かにする為にも、今何が起きているのかを知る為にも、この場所の探索というフランの提案に反対する子はいませんでした。

 

「他には何かないかな?」

 

 光里は他に何かないか訊きますが、みんなもう探索に向かう気が満々。他の意見が出る事はありません。

 

「なら今日は探索に決定!」

 

 こうしてこの日は、みんなで探索と調査を行うことに決まったのでした。

 

「効率も考えて、ふた手に分かれるのは、どうかな……」

「ならフランと私は別チームがいいよね。チームに一人はインテリ組がいた方が色々わかるだろうしさ〜」

「確かにふららんとさとみん天才だもんね、まとめとくのは勿体無いしいいんじゃない?」

 

 次にチーム分けですが、まずフランと智実は別チームに分かれることになりました。この二人は六人の中でも特に知識が豊富なので、どちらか一人はついていた方が調査をしやすいからです。

 

「じゃあ私は智実と一緒がいいな。特に気が合うし」

「ふぇっ!?」

 

 そうと決まった途端、小夜子はすぐに智実の手を握ってそう言います。突然のことに智実はまた顔を真っ赤にしてしまいました。

 

「あたしもこっちでいい? ボケ二人をツッコミ不在で野放しにしとくのはちょっと……ね?」

「心外だな」

 

 そしてそこに悠樹も加わり、こうしてチームAのメンバーが決まりました。

 

「ならチームBは私とフランと月美だね」

「お力になれるようがんばります」

「上手く、できるかな……」

「何か見つかればいいなーって感じだから、成功も失敗もないよ」

 

 そして残りの三人、フランと光里と月美でチームBを結成。この二つのチームで探索に向かうことになりました。

 

「それじゃあみんな、楽しんで行こう!」

 

 向かう先は、この飛行場らしき場所の敷地内に建っている大きな建物。どちらのチームもまずはそこを目指して歩いていきました。

 

 

 

 

 

 建物に入ると同時に、チームAとチームBは別行動を始めました。チームBは入り口から右、そして智実たちチームAは左へと向かったのです。

 

「どしたのさとみん。顔赤いけど」

「そ、そう?」

 

 ですがまた智実は顔を赤くしています。どうしてでしょうか。悠樹は心配して声をかけました。

 

「なんだ、怖いのか?」

「別に、怖くなんか……」

「手、繋ごうか」

「はうぅっ!」

 

 薄暗い建物の中で怖いのかもしれない。そう思った小夜子は手を繋いであげますが、それでも調子は良くならないどころかどんどん顔が赤くなっています。

 

「マジで大丈夫? 帰って休む?」

「大丈夫か智実。本当に熱かもしれんな。どれ、見てやる」

 

 本当に熱かもしれない。そう言って小夜子は前髪を上げて智実と額をくっつけ合い体温を確かめます。

 

 ですがその時、智実が下を向いていた事に気付いた……いいえ、知っていた小夜子は小悪魔のような笑みを浮かべて囁きます。

 

「本当、えっちな奴だな智実は」

 

 その瞬間、智実はまた鼻血を吹き出して倒れてしまいました。

 

「はいはい、さとみんいじめるのはそこまでねー」

「面白いところだったんだけどな」

 

 結局のところ小夜子は最初からわかっていて遊んでいたわけですが、流石に悠樹に止められて今はお預けに。

 

「そ、倉庫だって。まだ見ぬ秘宝が待ってるぞ〜! おじさん楽しみだなぁ〜!」

 

 起き上がった智実は誤魔化すようにテンションを上げながら、すぐそばに見つけた「倉庫」と書かれた扉を勢い良く開けました。

 

「これは……面白いな」

「ほんとにお宝、出てきちゃった……?」

 

 その向こうが、宝の山だったという事を知らずに。

 

 

 

 

 

 一歩その頃チームBは光里が先頭に、月美が後ろについて、フランを挟んで守るように廊下を進んでいました。

 

「どこ行ってみようか」

「司令室を探しませんか。一番偉い人のお部屋なら何かわかる事があるかもしれません」

「全部の扉を開けて回るよりは、いいと思う……」

「決まりだね!」

 

 目指すは司令室。軍隊の基地でなければ司令ではないかもしれませんが、とにかく一番偉い人のお部屋を目指す事になりました。

 

「とは言っても、司令室がどこかわからないと進めないよー」

「この基地、書かれている全ての文字が金属板に立体的に彫り込まれているようです。そのお陰で劣化しても文字が読みやすいですね」

「インクは掠れてるけど、これなら読める。ここは……給湯室」

 

 注意深く観察していくと、フランの言うように壁の文字は金属の板を立体的に加工して文字が書かれています。つまり、文字が浮き出たり凹んでいたりしているのです。

 

 このおかげで、長い時間が経ってインクは消えかかっていますがそれでも文字が綺麗に残って読みやすいままになっていました。

 

「マップ、ありました!」

 

 それは、この建物のお部屋の配置が書いてあるフロアマップも例外ではありませんでした。フランが見つけたそれはやっぱりインクは消えかかっていましたが、それでも立体的なおかげで綺麗に見ることができます。

 

「こっちです!」

 

 興奮して駆け出したフランの後ろを、光里と月美もついて行きます。

 

 廊下を進み、階段を登り、着いた先はやっぱり立体文字で「総司令室」と書かれた扉の前でした。

 

「ここが……」

「開けてみましょう」

「お邪魔しまーす」

 

 扉を開けて、光里を先頭にして部屋の中に入っていく三人。そこは、埃を被っているものの小綺麗な造りの執務室でした。

 

「これが司令室……」

「なんだか校長室って感じかも!」

「確かに……」

 

 その部屋の造りに、少し違うものの学校の校長室を思い出して懐かしさを感じる光里と月美。ですがフランだけは、全く違うことを考えていました。

 

「おかしいですね」

「どうしたのフランちゃん」

「このお部屋……本当に使われていたのでしょうか」

「どういう、こと……?」

 

 司令室なのだから司令官が使っていたものだと、そう思い込んでいた二人はフランの言葉に首を傾げます。勿論フランも、理由もなくこんな事は言いません。その理由を、彼女はお部屋を見て回りながら説明し始めました。

 

「色々と風化はしていますが、ガムテープで塞がれたコンセントにカバーに覆われた家具類。本棚の本なんて全部シュリンクがされたままで読まれた形跡が全くありません」

「しゅりんく?」

「この透明の包装です」

「なるほど!」

 

 まるでこの部屋にある全部が、未開封の新品。新品のまま埃をかぶったようなものばかりだったのです。わざわざ包装し直した、にしては包装の仕方も綺麗で、まるで工場で包んだようなものばかり。

 

 なのでフランは、ここにあるものの殆どが新品のままここに持ち込まれて、一度も開けられていないと考えたのです。

 

「まるで……ここまで朽ち果てて尚、誰かが来る事を見越して……その誰かが使う事を想定していた?」

 

 不可解なこの部屋の状態の、その意味を予想し考え込むフラン。そんな彼女に、光里は声をかけました。

 

「机の引き出し、何かあるよ!」

「見せてください!」

 

 何かある。そう聞いた途端にフランはすぐさま光里の元に向かい、その「何か」を取り出して机の上に乗せました。

 

「何かのケース、でしょうか」

「開けても、いいのかな……」

「そんなの今更だし、開けてみよう!」

 

 どうやら何かを入れるための薄いケースのようなもの。一体何が入っているんだろう。期待しながら開けたその中身は……。

 

「私の推測、当たっていたかもですね」

 

 それは、この場所の真実に一歩迫るものでした。

 

 

 

 

 

「結果報告ー!」

「わー」

「ぱちぱちー」

 

 陽の光も赤くなり始めた頃。探索を終えた両チーム共にテーブルを囲み、光里の号令の元に結果報告会が始まりました。

 

「チームAは何か見つかったものはありますか!」

「これは凄いでございまするぞ〜」

「見てくれ。パック詰めされた大量の腐葉土、カプセルに保存された植物の種。それに肥料のボトル。まだ倉庫にも大量にあるぞ」

「鍬とか鎌もありました〜!」

「すごい、こんなにたくさん……」

 

 智実たちチームAの戦果は、まるで農業スターターキットのような農業用品一式。それもとんでもない量で、まだ建物の中に大量に残しているというのです。

 

「これだけあれば農業とかもできるでしょ。野菜盛りマシマシラーメンも夢じゃない〜!」

「即席食品ばかりに頼ると栄養が偏りますからね。野菜を食べられるようになると助かります」

「それにいつまで保つかもわかんないし、自給自足も考えとかないとヤバめっしょ」

 

 もしこれで野菜が作れるようになれば、保存食に加工されたものではないフレッシュな野菜が食べられるようになり食生活は一気に改善することでしょう。

 

「じゃあやりたい事リスト、畑作りを追加でいいかな!」

「意義なーし」

「私も異論はありません」

「じゃあ決まりだね!」

 

 こうしてチームAの報告が終わると共に、今後の予定に農業へのチャレンジが追加されたのでした。

 

「それでは次は私たちチームB、報告します!」

「私たちは現状の手がかりを知る為、基地司令の執務室を最初に訪ねました。そこで見つかったのがこれです」

「鉄板? 文字が書いてあるな」

 

 続いてフランたちチームBの報告。

 

 彼女たちの目に見える戦果は、たった一枚の鉄板。農業キットに比べると見劣りして見えますが、そこに立体文字で刻まれた文字はなんとも考えさせられるものでした。

 

【人類の未来を、この基地と共に託す】

 

 人類の未来。託す。この基地と共に、ということはこの基地……軍隊の基地で決まりらしいここは人類の未来へと繋がる何かなのでしょうか。

 

 その意味はまだわかりませんが、メッセージのように残されたこれにはきっと何かの意味があるのでしょう。

 

「他にも色々な部屋を見て回りましたが、司令室を含め使用された形跡はなく、コンセントや書物、家具類などがどれも包装されていました。風化こそしていますが、まだ使えるものは少なくないはずです」

「誰かに渡す為にこの基地は作られたまま使われてなかった〜ってことだよね」

「渡すって……誰に?」

「さあ」

 

 メッセージから確実に読み取れる事は、この基地は使われていたものじゃなくて、誰かに渡す為に作られたものだということ。それが誰なのかはわかりませんが、いろんなものが新品で残っていたのもこのメッセージと照らし合わせれば矛盾はしません。

 

「まあ拾ったのはうちらなんだから、別にうちらが使ってもいいんじゃない?」

「これだけボロボロになっても使われてないって事はそうだよね」

「まあ最悪怒られたら謝ればいいだろう」

 

 結局誰に渡したかったのかはわかりませんが、ここまでボロボロになっていてはその人が来る事もないでしょう。基地はこの六人で遠慮なく使わせてもらうことにしました。

 

「私は余裕がある時にでも少しずつ基地内の書物を読み進めてみようと思います。何か新しいことが判れば報告しますね」

「全部フランちゃんに言われちゃったけど……チームBの報告は以上です!」

 

 こうしてチームBの報告が終わり、みんな落ち着いた頃。空を見上げると、もう既に真っ暗で月や星たちが綺麗に見えていました。

 

「暗くなったね〜」

「そう、だね……」

「埃っぽい! シャワー浴びたい!」

「みんなでシャワー浴びたらご飯にしよっか」

「米が食いたいな。レトルトカレーにしよう」

「いいですね」

 

 少しは新しいこともわかってきましたが、全てを知るのはまだまだ先。それにいずれ近いうちに農業という新しいチャレンジも始まります。

 

 光里たちの新生活は、まだまだ始まったばかり。

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