【完結】蒼い星へ還る日まで〜少女六人、終末世界で自由気ままなスローライフはじめました〜   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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【最終話】蒼い星へ……

 旅立ちの日の当日。

 

 全部の荷物とゼクト・オメガの積み込みを終えたみんなはもう全員ラグナロックに乗り込んでいて、出航の前に光里は悠樹と二人きりで個室にいました。

 

「どう、きつくない?」

「うん、大丈夫。ありがと」

 

 その理由は、ウエディングドレスの着せ付け。廃墟の街で大切に保管されていたものを、みんなで頑張って着られるくらいには直したものです。

 

「にしてもエッロい身体して……。こりゃふららんも堕ちるわけだ」

「もう、悠樹ってば。だめだよ、私フランちゃんのお嫁さんになるんだから」

「冗談冗談」

 

 光里はフランのお嫁さんだとわかっていても、悠樹から見た今の光里はとっても魅力的でした。

 

 肩を出し、腰を絞ったドレスはフランにも言われた光里の色っぽい体型を引き立てて、継ぎ接ぎのドレスがかえって背徳的な雰囲気を醸し出しています。

 

 それでも、悠樹はフランから光里を取ってしまおうなんてつもりはありません。何故なら……。

 

「うち、実はつくみん好きだから。ガチ恋」

「えっ……?」

「あ、本人には内緒ね。いい場面見つけて告るから、応援してて。何年後かはわかんないけどさ」

「うん。悠樹も頑張って」

「ありがと」

 

 まだはっきりと本人には伝えられていないものの、悠樹もまた恋をしていたのです。生活においてずっとパートナーとして寄り添ってきた月美に。

 

「よし、着せ付け終わり!」

「これが、私……」

 

 あれこれ話しているうちに着せ付けは終わり、ついに鏡とご対面。自分のウエディングドレス姿を見た光里は、思わず赤面してしまいました。

 

「自分の花嫁姿、どうよ」

「恥ずかしい……」

「そういうもんだって。てかいつも裸でも気にしないじゃんうちら」

「それはそうだけど……」

 

 悠樹はそう言いますが、恥ずかしいのも無理はありません。

 

 このドレスは廃墟の中でもしっかりと保存されていたとはいえ三百年という時は長いもので、生地が劣化してしまっていたのです。

 

 そこでみんなで案を出し合った結果、特に劣化が激しい部分を取り除いて比較的綺麗な部分から取っても大丈夫そうな部分の布を切り取り補修に使う。

 

 そうしたリメイクの末、ウエディングドレスにしてはスカートは短く、スリットが入って太ももも露わになり、お腹回りも思い切ってのへそ出し。ウエディングドレスと呼ぶにはあまりにもセクシーな衣装になってしまっていたのです。

 

「ほら、背筋伸ばして。胸張らないと、ふららんにも失礼だよ。ふららんの立派な嫁だって、ガツンとアピールしてやれって!」

「ガツンと……よし!」

 

 こんな衣装ですが、みんなが頑張ってできる限りのことをしてくれたドレス。そして露出いっぱいになってしまったこの身体もフランが好きと言ってくれたもので、そう思うと恥じらう必要なんてない。

 

 どこに行っても恥ずかしくないフランのお嫁さんでいられるように。胸を張って、前を向いて、光里は式場への道を歩き始めました。

 

 

 

 

 一方その頃……。

 

「戦艦のブリッジで結婚式なんて前代未聞だよね〜」

「新しい人生の船出には相応しいだろう?」

「それは言えてる〜」

 

 結婚式場として準備していたのは、なんとラグナロックのブリッジ。ここで出航式と結婚式を、一緒にしようというのです。

 

 一通り準備を終えた小夜子と智実はのんびりと休んでいましたが、廊下に繋がる二つの扉からそれぞれ月美と悠樹のハンドサインが見えたところで立ち上がり、小夜子がマイクを手に取りました。

 

「それでは、新郎新婦のご入場だ。……新婦新婦か?」

 

 小夜子にとっても女性同士の結婚式は見るのも聞くのも初めて。なんと言えばいいのか、締まらない宣言にはなりましたがついに二人のお嫁さんが式場へと入場します。

 

「光里、さん……?」

「フランちゃん……」

「見惚れてる見惚れてる」

「悠樹、邪魔しないうちに」

「おっけー」

 

 光里とフランがお互いに見惚れてぼーっとしているうちに、月美と悠樹は付き添っていた二人から離れて持ち場につきました。

 

「フランちゃん、可愛い……」

「光里さんも、とても綺麗です」

「ありがと……」

 

 フランもまた、継ぎ接ぎのドレスでなんだかセクシー。一番歳下で不老の身体になったこともあり未成熟で止まっている身体ですが、露出が多めなドレスはそんな彼女の健康的な可愛らしさを十二分に引き立てています。

 

「それじゃ始めるよ〜。光里とフランの記念すべき、結・婚・式ッ!」

 

 そして智実の宣言と同時にクラッカー……の代わりのM4カービンの空砲の銃声という少し物騒なものが鳴り響き、結婚式が幕を開けました。

 

「皆さん、ありがとうございます」

「ここまでしてくれるなんて……」

「こんな面白い事、やらない手はないっしょ」

 

 あくまで光里とフランの為の結婚式ではありますが、それに乗っかってみんなもお祭り騒ぎ。結婚式という非日常を、全力で楽しんでいます。

 

「早速誓いの言葉といくか」

 

 そう切り出したのは小夜子。結婚式としては定番の、誓いの言葉。ですが……。

 

「新婦、光里。あなたはここにいるフランを、病める時も健やかなる時も……なんだっけ」

「おい!」

「いや、この先忘れるだろ。な?」

「確かにそうだけど!」

「私も覚えてない……」

「あはは……」

 

 早速締まらないスタートに。病める時も健やかなる時も、というフレーズまでは覚えていましたがその先をすっかり忘れてしまっていました。そしてそれはみんなも同じ。言われてみれば出てきません。

 

「まあ色々あるだろうけど、上手いこと仲良くやってく事を誓いますか〜」

「適当じゃん!」

「はい、誓います!」

 

 そして智実が続けたいい加減なフレーズに悠樹がツッコむいつもの展開ですが、フランは満面の笑みで愛を誓うことを宣言しました。

 

「新婦、フラン。あなたはここにいる光里を、病める時も健やかなる時も……まあなんか色々あったときも上手い具合にいい感じにやってく事を誓いますか」

「誓いますっ!」

 

 こちらも相変わらずではありながら光里も愛を誓います。

 

「すっげぇグダグダじゃん」

「でも、楽しい……」

「ま、うちららしいか」

 

 なんとも締まらない結婚式ですが、これでこそ自分たちらしいと。いつもツッコミ役の悠樹も、このグダグダを笑って楽しんでいました。

 

「じゃあ次は、誓いのキスだね〜」

「キス……」

 

 そして次はこれも定番の、誓いのキス。

 

「私は大丈夫です。光里さんは?」

「うん、心の準備はできてるよ」

「届かないので……お願い、していいですか」

 

 みんなの前でのキスは恥ずかしいですが、覚悟を決めてフランは目を閉じ、光里からの口づけを待ちます。

 

「いくよ、フランちゃん」

 

 光里は声でそう言って、撫でるようにフランの頭を支えながら少ししゃがんで顔を近づけ、唇同士を重ねました。

 

「んっ……」

 

 思わず甘い声が漏れてしまうフラン。光里もドキドキを頑張って抑えながらひとときの唇の感触を味わうと、そっと唇を離して向かい合います。

 

「光里さん……大好きです」

「これまでありがとう、フランちゃん。これからもよろしくね」

「はいっ!」

 

 改めて愛情を確かめ合い、こうして二人は晴れて結ばれて。

 

 お祝いの拍手が鳴る中、悠樹はなんだか複雑な表情をしていました。

 

(うちも、いつまでもヘタれてらんないなぁ)

 

 負けてられないと思うと同時に、月美に想いを告げればきっと彼女は応えてくれる。その時は自分がこの結婚式の主役になると思うと、なんだか気恥ずかしさもあります。

 

「それじゃあ……お料理、食べる?」

「お、月美シェフのフルコースだぁ〜!」

 

 そしてここで、月美が悠樹にも手伝ってもらいながら作ったお料理が登場です。

 

「フルコースってほどはないけど……色々、頑張って作った……」

「見た目も随分洒落ているな」

「すごい、プロの料理だ……!」

「キッチンの設備も充実してたから張り切っちゃってさぁ」

「見た目だけかも、しれないけど……」

 

 たくさん並んだお料理はそのどれもがいつもよりも華やかで、まるでプロが作る高級フレンチのよう。ビュッフェ形式で用意されたその数々を、みんな思い思いにお皿に取っていきます。

 

「すごく美味しいです、これ!」

「どれどれ〜?」

 

 魚料理を一口食べただけで目をキラキラと輝かせるフランを見て、智実も同じものを食べてみます。

 

「うわ、美味っ」

「ぶどうジュースもあるから、飲んで……」

「ん〜っ、最高っ!」

 

 ワインとはいきませんが代わりに生搾りのぶどうジュースも用意されて、とっても豪華なお食事会になりました。

 

「鶏肉のポワレ、いいじゃんこれ〜」

「こっちのブイヤベースもいい味だ。サバイバル料理とは思えないな」

「伊達に二年もしてないから……」

「言うようになったじゃん、つくみん」

「悠樹のおかげ……」

 

 あくまで今使える材料でできる限りそれらしく作ったものばかりですが、そのどれもが絶品。一見食べきれないほどあるように思えたお料理の数々は、あっという間に綺麗に完食されてしまいました。

 

「ごちそうさまー!」

「美味しかったです」

「よかった……」

「いやぁ、満腹だわ」

 

 今までになかったような美味しいものに、みんな大満足。お腹を休めるように、それぞれ近くの座席に座ってくつろぎます。

 

「ぶどうジュース、もう一杯もらっていいか」

「うん、あんまり長持ちしないから……」

「じゃあうちもー」

 

 そして残っていたぶどうジュースも無添加の生搾りで、あまり日持ちはしないので遠慮なくみんなで飲み干して。

 

 しばらくお腹を休めたところで、いよいよこの式のクライマックスです。

 

「みんな、準備はいい?」

「もち!」

「いつでもいけるぞ」

「みんな、配置について!」

 

 光里は艦長席に、他のみんなもそれぞれ座席について目の前のモニターを起動し、最後のチェックに入ります。

 

「造船デッキ、隔壁封鎖」

「全外壁封鎖、気密クリア!」

「バラスト、デッキ、注水開始……」 

 

 格納庫と繋がる通路への門が何重ものシャッターで閉ざされると、同時に船の周りのハッチが開いて大量の海水が溢れ出してきました。

 

「主機融合炉の出力、80から90で安定してるよ〜」

「注水完了まで、180秒……」

「リニアカタパルトにアクセス。こちらと連動させました」

「水、上がってきたよ!」

 

 順調に出航準備が進む中、造船デッキの中の水位もどんどん上がってラグナロックが水の中に沈んでいきます。

 

「まるで潜水艦だな」

「わくわくするね〜」

「注水、完了……!」

「正面ゲート、開きます!」

 

 そしてラグナロックの全体が沈みきってデッキが海水に満たされたことを月美が確認すると、フランが施設に信号を送って正面の門を開きました。

 

「いつでもいけるぞ、光里艦長」

「準備はいい?」

「はいっ!」

 

 これで出航準備は全て完了。全員シートベルトをしっかり締めて、フランは光里の膝の上に座って一緒にシートベルトを締めます。

 

「いくよフランちゃん。ケーキ入刀の代わりに!」

「これが私たちの、第一歩!」

 

 そして最終安全装置を解除し、現れたレバーを二人で握り……。

 

『ラグナロック、出航ッ!』

 

 勢い良く倒した瞬間、リニアカタパルトが作動。1500メートルもの巨体が水中トンネルの中を急加速し、凄まじい速さで海へと進み出しました。

 

「太平洋まであと10秒!」

 

 智実が叫び、潜水状態の制御を担当している月美は特に緊張した表情でメーターを見つめます。

 

「出たよ、つくみん!」

「バラスト、排水開始……!」

「浮上するよ、掴まってッ!」

 

 そして海に出た瞬間、月美はスイッチを動かして潜水用の重りの水を捨てます。するとみるみるうちにラグナロックは上昇し、サバァン! と激しい水飛沫を上げながら、海の上へと浮かび上がりました。

 

「みんな、大丈夫?」

「ああ、問題ない」

「無事だよ〜」

 

 リニアカタパルトで海中に射出され、海面に急浮上するというとんでもない勢いでの船出でしたが、無事に全員怪我もなく出航できたようです。

 

「光里さん、外……見てください」

「綺麗な、海……」

「はい、とても綺麗です」

 

 そして窓越しにみんなの目の前に広がるのは、向こう側が見えないほどの広大な海。波打つその海面に陽の光が反射して、月では見たことのないような美しい光景を生み出していました。

 

「これからどうする?」

「オート航行を設定するので、行き先を決めましょう」

「酒造用の米が欲しいな」

「牛乳もあると、チーズとかヨーグルトとかもできる……」

「それなら東北に向かってお米を集めてから、北海道で牛さんに会いに行こう!」

「結局まだ日本だね〜」

「あ、うちハワイとかグアム行きたい! バカンスしよー!」

「やりたいこと、たくさんですね」

 

 終末世界にやってきておよそ二年。空港跡の基地でのスローライフは終わりを迎えました。そしてこれから始まるのは、この広い地球全てを舞台にした壮大な冒険の日々。

 

「うん。だから一つ一つ、全部叶えていこう。時間はたくさんあるんだもん。生きてる限り、この星で……」

 

 それがどれだけの長い旅路になるかは、誰にもわかりません。百年かも、二百年かも……もっとずっと続くのかもしれない。

 

 それでも、みんなは歩み続けます。この星で、この船で、かけがえのない友達と一緒に。

 

蒼い星(このほし)に還る日まで!」

 

 

 

 

 

 

 これは永遠を生きる六人の少女たちの長い、長い旅の、ほんの始まりの物語。




次回、エピローグです。

詳しくは後日あとがきを投稿させていただきますが、この終わり方は書ききれなくて打ち切りなどではなく最初からこのラストを決めた上で執筆していました。

ここまでご愛読ありがとうございました。もう少しだけお付き合いください。
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