【完結】蒼い星へ還る日まで〜少女六人、終末世界で自由気ままなスローライフはじめました〜   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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表紙を描きました。ぜひご覧ください。


鍋パーティーをしよう

 

 月美が自給自足を提案した日から、一カ月は経ったでしょうか。

 

 少しだけ真実が見えつつある中、そのせいでみんなの暮らしは特に大きく変わるようなことはなく。光里たち六人は、自給自足が中心ののんびりとした生活を楽しんでいました。

 

「バスしか釣れないにゃあ」

 

 今日の釣り担当は智実と小夜子の二人。獲物を入れるバケツの中には五匹もの魚が入っていますが、そのうち鮎が一匹。残りの全部はブラックバスという偏った釣果でした。

 

 せめてもう一匹はバス以外を釣り上げようと、のんびりと釣り糸を垂らしながら智実はある問いかけをします。

 

「小夜子はさ〜、今の暮らしに満足してる?」

「満足……か」

 

 そして少し考えた後、小夜子は答えました。

 

「私はなかなか好きだぞ。仲のいい友達としか関わらなくていいし、それにあれだ。パズルみたいだと私は思う」

「パズル?」

「満ち足りないといえば満ち足りない。何もかもが足りないんだが、その足りない何かを探して自分たちの力で埋めていく事に充実感を覚えるんだ」

「あ〜、それなんだ」

 

 足りないものを埋めていく、まるでパズルを解いていくかのような充実した不満足の日々。その答えに納得がいったのか、智実は頷きながら質問の意味を明かします。

 

「あたし、今の生活で満足だ〜、なんて全然思えないのにさ。なのになんでか充実感はあって……微妙でもやもやしてたんだけど、小夜子が言葉にしてくれて腑に落ちたよ。ありがとね〜」

 

 智実もまた、小夜子と同じ気持ちでした。けれどその微妙な気持ちを飲み込めずに胸の内にもやもやを抱えていたのです。

 

 ですが小夜子が言葉にしてくれたおかげで、智実の心もスッキリしたみたい。

 

「まあゲーム機がないのは大不満だが」

「わかる〜!」

 

 とはいえそれはそれ。オタク二人、ゲーム機はやっぱり欲しいのです。

 

 そんなお話をしているうちに、智実の釣り竿が動き出しました。

 

「よし釣れた〜!」

「鮎か。やったな」

 

 釣れた魚は、今日二匹目の鮎。20センチは超えるなかなかの大きさです。

 

 今日のご飯が釣れたと喜ぶ矢先、ポツポツと雨が降ってきました。

 

「まずいな。雨だ」

「引き返そっか」

 

 そして雨はすぐに本降りに。二人は雨に降られながら、走ってコンテナハウスへと帰っていきました。

 

 

 

 

 

 土砂降りの雨が降り注ぐ中、コンテナハウスでは。

 

「降ってきた降ってきたー!」

「おかえりなさい」

 

 月美と悠樹が待つ部屋に、ずぶ濡れになった光里とフランが帰ってきました。その手には、野菜がいっぱい入ったカゴを持って。

 

「野菜、採れましたよ」

「ほうれん草に小松菜、トマトにレタスにピーマン他いろいろ!」

「うん、立派……」

「すっご」

 

 品種改良された野菜たちはこの短い間でもすくすくと育ち、ついに収穫できるほどになったのです。どれもお店で買う野菜よりは形が歪ですが大きさは充分です。

 

「ただいま〜」

「釣り班も上々だ。鮎が二とバスが四釣れたぞ」

「今日はお魚パーティーだぜ!」

 

 遅れて智実と小夜子も帰ってきました。こちらもたくさんの収穫ですが、やっぱりずぶ濡れです。

 

「その前にシャワー浴びてきたら? 風邪ひくっしょ」

「雨だから、かっぱは忘れないで……」

「はーい」

「行ってきますね」

 

 そしてみんな揃ってずぶ濡れの四人は、雨を洗い流す為、かっぱを持ってシャワーへと向かいました。

 

「雨かぁ。脱衣場とシャワーは屋根あるからいいけど、屋根付きの通路も作らないとかな」

「そうね。また、言ってみる」

 

 これまで何度か雨が降って気付かされた問題がこちら。シャワーがコンテナハウスの外にあるので、雨の日は脱衣場まで雨の中を歩いて行かないといけないのです。もちろん間にずぶ濡れになってしまってはシャワーの意味がありません。

 

 それなら脱衣場まで続く屋根付きの通路を作ればいい。足りないものは自分たちで作る。これが今の彼女たちにとっては当たり前になっていました。

 

「んで、ご飯どうすんの? 魚焼く?」

「それもいいけど……」

 

 みんながシャワーを浴びている間、月美と悠樹は夕飯の支度を始めます。

 

 悠樹は折りたたみテーブルを部屋の真ん中に出して、月美はキッチンに立って包丁で鮎を捌きます。

 

「私に、考えがあるの」

 

 そして捌いた鮎を骨ごとぶつ切りにすると、それに塩をまぶしてから()に入れて焼き始めました。

 

「ただいま〜!」

「いい匂いがしますね」

「あ、早速お魚焼いてるの?」

 

 

 部屋に焼き魚の香ばしい香りが漂う中、シャワーを浴び終わった四人が戻ってきました。魚はこんがりと美味しそうに焼けています。

 

「だがどうしてフライパンじゃなくて鍋なんだ」

「こうするから……」 

 

 しかしこれで出来上がりではありません。月美は水筒を取り出すと、焼き魚の鍋の中に豪快に水を流し込んだのです。

 

「これってもしかして……!」

「鍋パだぁ〜っ!」

「味付けは塩だけだから薄味だけど、きっと美味しいお出汁が取れるはず……」

 

 月美が作っているのは焼き魚ではなく、鮎のお鍋だったのです。

 

「じゃあ野菜切っとくね。小松菜とほうれん草でおっけ?」

「今あるお野菜なら、それくらいで……」

 

 鮎の塩焼きを煮込んで出汁を取っている間に悠樹が慣れた手つきで小松菜とほうれん草を一口サイズに切って、最後にそれを鍋の中へ。そして野菜がしんなりとするまで煮込めば……。

 

「できた……」

「おお、お鍋だ〜!」

「自給自足でここまでできるとは、大したものだ」

 

 今日の夕飯、鮎の塩鍋の出来上がりです。

 

「それじゃあ……」

『いただきまーす』

 

 鍋を卓上IHコンロに乗せて、みんなでテーブルを囲んで手を合わせ。みんな早速野菜とスープを取り皿に取って頬張りました。

 

「んーっ、美味しい!」

「素材の味ってやつ?」

「雨に濡れた後の身体に沁みますね」

 

 味付けは塩だけ。後は魚と野菜から出た旨味だけですが、雨で冷えたみんなの身体にはこの優しい出汁のスープが染み渡ります。このお鍋を自分たちの力で作り上げたのだと思うと、あまりの美味しさと感動に箸は止まりません。

 

「なんだかすっかり慣れてきたよね、この暮らしに」

「そのうち慣れきって、うちら社会復帰できなくなったりして」

「でも○ァミコンくらいは欲しいな」

「あたし○ガサターンがいい〜」

「あと調味料も。塩と砂糖しかないのは、ちょっと……」

「味噌や醤油、欲しいよねー」

 

 雑談をしながら楽しく鮎鍋を食べ進める光里たち。その会話の中、月美はある事を思いつきました。

 

「あっ、魚醤なら作れるかも……」

「確かに味噌とか醤油は麹菌が必要ですが、魚醤であれば魚と塩だけで作れますね。時間はかかりますが……」

 

 魚を塩漬けにするだけの魚醤なら、自分たちでも作ることができる。調味料が欲しいというお話の中で思いついた、新たなる挑戦です。

 

「いいね〜。いろんな魚の魚醤食べ比べ、とかしてみたいかも〜」

「試しにブラックバスで作ってみるか?」

「いいじゃんいいじゃん!」

「こんな美味しいお鍋も食べられるし、今度は調味料も作っちゃうし、もうなんでもできそうだよね私たち」

 

 ここはなんでも買える街とは違う、たった六人の人しかいない別世界。欲しいものがあってもお金で買えないこの環境で暮らしてきた光里たちはいつしか、ないものは作ればいいと考えるようになっていました。

 

 みんなもうすっかり、この生活に馴染んでいます。

 

「小松菜うまっ」

「私はほうれん草派だな」

「栄養もあるから、しっかり食べて……」

 

 新計画のアイデアが生まれたりもしながらみんなでわいわい魚やお出汁、栄養満点の野菜を楽しんで、最後まで誰も箸を止めることはなく。新生活で初めての鍋パーティーは、汁の最後の一滴がなくなるまで続きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、美味しかったね〜」

「またしたいね、お鍋!」

「魚醤ができたら、それも味付けに使えそう……」

 

 美味しいお鍋の後は、みんなで皿洗い。

 

 お話をしながら自分の取り皿は自分で洗い、卓上IHとテーブルも片付けたところで歯を磨き、今日はみんな自分のベッドに戻りました。

 

 ここからは寝る前のお話の時間です。

 

「そういえばフラン、何か新しくわかったことはあったのか?」

「あっ、そうでした」

 

 基地の中でここが伊丹空港という場所であるということがわかってから、実はフランは基地の本をいくつかコンテナハウスに持ち込んで、何かわかるかもしれないと退屈な時に少しずつ読み進めていたのです。

 

「私たちが乗っているあのロボットが何なのか、なども見えてきました」

「本当!?」

 

 そして今回わかったのは、みんなが乗っていたあのロボットの詳しいことについてでした。まずフランが取り出したのは、英語で書かれた何やら難しそうな本でした。

 

「北大西洋条約機構、略称NATOという軍事同盟で開発された、【ゼクト】という戦闘用ロボットの資料が見つかりました。これです」

「そいえばなんか言ってたわ。ゼクトオメガとか」

「見た目も確かに同じだね」

 

 その本に書いてある文字はフラン以外にはわかりませんが、ページを開くと確かに光里たちのロボットと同じ見た目をしたロボットの写真や図面が載っていました。一緒に書いてある長い英文は、きっとこのロボットの解説なのでしょう。

 

「このゼクトは簡潔にまとめると、共通規格による高い拡張性を持つ、水素電池を動力とする人型機動兵器だそうです」

 

 その解説をフランはできる限り簡単にまとめましたが、聞き慣れない漢字のような言葉ばかりでみんなどうやらピンと来ない様子。

 

「智美、わかりやすくしてやってくれ」

「つまり色々カスタマイズできるエコ電池のロボってことだね〜」

 

 智実がさらにわかりやすいよう翻訳した結果、かなり大雑把な説明にはなりましたがこれならみんなもイメージしやすいみたい。

 

「そこまで情報があったなら、私たちのロボットはこっち側の世界のもの……?」

「私たちがいた世界の大阪とこの大阪が異世界だと仮定すれば、そういうことになります」

「気がついたら異世界のロボットに乗ってた、か。結構謎状況じゃんね」

 

 わかったのは、みんなが乗っているロボット【ゼクト・オメガ】は本の中の【ゼクト】にとてもよく似ているということ。ロボットがゼクトから発展したものなら、あれはきっと光里たちの世界ではなくこちらの世界のものなのだろうということです。

 

「これからも何かわかれば報告するので、よろしくお願いします」

 

 今回の報告はこれでおしまい。ですがフランの読書は始まったばかりの。きっとこれからも、フランは色々なことを本で学んではみんなに教えてくれることでしょう。

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