サーヴァント・フォーリナー、テラフォーマー。
マシュは、テルミがその野卑で貪欲な味方を召喚したものと勘繰っていたが、その実態は少し違った。もともと冬木の地に召喚されるサーヴァントが一枠空いており、そこにテルミが魔力リソースと触媒を提供しただけに過ぎない。
なお、触媒は例の汚らしい虫ケラだ。
ともかく、テルミは強力な助っ人を得た。
テラフォーマーは群で一つのサーヴァントである故にその数に目が行きがちだが、個の戦闘能力も決して低くない。鋼のように強固な甲皮、頭を破壊されても死せぬ脅威の生命力、頑強な筋繊維から繰り出されるスピードとパワー。特殊な能力こそないが、もはや雑魚敵の範疇にない。
幸い、マシュ陣営は攻守バランスの取れたチームであり、トリック抜きの荒事は得意分野だった。対軍宝具の持ち合わせはないが、マシュの防御能力の高さが持久戦を可能にしていた。
「オラオラオラオラオラオラオラァ!」
スタープラチナがテラフォーマーどもの喉を打ち抜くと、それらはあっさりと地に伏した。
「喉が弱点って読みは当たってたみたいだぜ」
「ええ……敵は頭部に運動脳がなく、破壊しても即座に絶命しないようですね」
喉下の神経を潰されると活動不能となるのは、これのモチーフとなった生物の特徴だ。マシュの予想は当たっていた。その甲斐あって幾分は戦いやすくなったが、それでも戦闘が始まって一時間近く。マシュたちは体力的にも精神的にも限界が迫っていた。対して、テラフォーマーたちは底なし、無尽。
「マシュ姉ちゃん……!
いくらなんでもこれは多すぎよ! マルコはまだまだいけるけど、ティーダがもう限界って言ってるよ!」
「言ってねえよ! でも、コイツら減ってる気がしない! このままじゃヤバイって!」
「……はい。撤退の準備をしましょう。ただ……」
「問題は、そう易々と逃がしてくれるか、ってとこだな」
不気味なのはテルミ。彼はマシュたちがテラフォーマーどもに手を焼いている間、何もせずにただ見物しているだけだった。よもや、魔力が全くの空ッケツというわけではなかろうに。
しかし承太郎は、テルミが余裕ぶったりフザケたりしているわけではないと感付いた。蛇の牙のように鋭く視線を滑らせている。何を観ているのか……そこまでは分からなかった。
「まさか、だが。テルミのヤツはおれたちが簡単に
「あり得ますね。テラフォーマーたちとの互助関係は薄いのかもしれません。きっと、一時的な魔力供給くらいの」
マシュたちにも言えることだが、サーヴァントは皆唯一の勝者を目指す宿命。テルミとて、いつテラフォーマーどもに矛先を向けられるか分からない……ということなのかも知れない。
「一か八か、テルミに攻撃を仕掛けましょう。テラフォーマーたちは、テルミを護りはしないかも知れません」
「あるいは、逆に攻めを緩めるかもな」
ティーダもマルコも頷いた。しかし、マシュたちよりも先にテルミが動いた。
「しゃーねーな、潮時か。つーか多すぎんだよ虫ケラ。普通に不快」
テルミはマシュたちに背を向け、手で円を描く。すると、何もない空間がみしりと音を立ててひび割れ、黒い裂け目が現れた。
「ワームホールです! テルミは……離脱するつもりです!」
「追った方が良さそうだな」
マシュの言葉に反応し、承太郎、マルコ、ティーダが走った。マシュもすぐさま後に続いたが、テラフォーマーどもがマシュに襲いかかり、それを邪魔する。
「くっ……! このっ!」
実は、彼らテラフォーマーには“女性を優先して叩く”という習性があった。それ自体はシールダーの特性と噛み合い有利ではあるが、今ばかりは仇だ。マシュは承太郎たち三人と見事に分断されてしまう。
「ヒャハッ! さすが紅一点、モテモテじゃん?」
テルミはいつも以上に俗悪な笑みを見せると、黒い裂け目に消えて行った。
「テルミを……逃がさないでっ!」
「……!」
やはり危険なのはテルミだ。ここであの超越的なキャスターに逃げられては次のチャンスは来ないだろう。
承太郎はスタープラチナでテラフォーマーのハイキックの脚を取り、
「おおおおおッ! オラァァッ!」
それをハンマー投げのようにスイングして投げ飛ばした。もちろん、投擲物の速度も重量もハンマー投げとは比較にならない。豪速のそれが、モーセが海を割ったように、テラフォーマーどもの隊列を叩き割って道を作った。
「ナイスよ、幽霊のお兄さん! みんな、走って!」
マルコが声を掛けるまでもない。既に各々が走り、テルミが残したワームホールへ突入していった。
次回更新は7/10(月)の13時です。