カルデアM.U.G.E.N.の座   作:シン・いしい

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エピローグ.カルデアM.U.G.E.N.の座

 ディオは断罪の拳を受け、次元の狭間に呑まれて潰えた。

 

 今度こそ、全ての戦いは終わったのだ。

 

 

「……」

 

 ディオが切断した因果が、再び在るべき形へと戻っていく。星に刻まれた歴史は、ジグソーパズルのように穴を埋めてゆき、やがて全てが元通りになる。

 

 承太郎は収束していく歴史をただ眺めていた。

 

 星の生命の誕生。

 生物の進化。

 人類の出現。

 文明の興り。

 争いや災害。

 

 学校での授業の内容を思い出して照らし合わせてみた。もちろん、仕立てられただけの記憶であるが、聞いていた内容と相違は意外と少ない。

 承太郎はしばらくそんな風景を楽しんでいた。歴史上のどの場所、どの時間だろうが自由に見ることができる。早送りしたり、一時停止したり、巻き戻したり。ありのままの事実を立体映像で観れるというのだから、その臨場感・迫力には感動すら覚えた。

 

「ディオのやろうには勿体無い景色だぜ」

 

 

 やがて時代は近代に入る。

 

「さて、やってみるか」

 

 成り行きとはいえ運命の中心に居座る承太郎は、ディオがそうしようとしていたように、歴史を改竄することができた。であれば、自分の存在をこの世界に定義することも不可能ではない。いわゆる“転生”というやつだ。

 

 だからといって、それは容易ではない。承太郎の存在を受け入れて世界が成立する証拠を見つけなければいけないのだから。長く長く時間をかければいずれは……と言いたいところだが。

 

 彼には時間がない。

 

 ディオという引力を失った承太郎は、やがて運命の大きな流れから外れて消えゆくのは自明の理であった。

 

 間に合うだろうか?

 

 分の悪い賭け、というより、ほぼ不可能と言って差し支えない。承太郎はそのことも承知であった。溺れるにしても藁を掴む性格ではないが、あっさり消えてしまうのも癪だと思っているだけ。

 生き残る期待などしていなかったのだ。

 

 そうして何気なく世界を俯瞰していると、ふと見知った顔を見かけた。

 

「……マシュ」

 

 承太郎は流れる映像を一時停止し、周囲を見回す。

 

 ここは時間神殿。グランド・オーダーの終着点である。そして歴史の分岐点となる瞬間がいま正に訪れようとしていた。

 

 崩れゆく神殿。

 聖門(でぐち)から必死に手を伸ばすマシュ。

 その先には、ひとりの少年。

 

 マシュに語られた伝説の英雄――つまり彼女の先輩(マスター)は、何とも平凡な少年だった。失礼なことに、承太郎は二度見した。もっとゴツい益荒男を想像していたのだが……実際はむしろ細身。こんなヤワそうなヤツに世界を救えるものかと疑いたくもなってくる。

 しかし承太郎は少年の表情を見て考えを改めた。

 その眼に死への恐怖が色濃く映っていたからだ。恐怖を忘れるのではなく、恐怖を呑み込んでここまで来た。それこそ英雄の証明であった。

 

「いいだろう。とりあえずあんたが救世主ってことにしてやるぜ。だが……」

 

 承太郎は再び状況を確認した。

 

 少年は長い階段を駆け上り、聖門を目指している。そこに辿り着けばレイシフト(ワープ)してここを脱出できる。ところがあと少しのところで足場が崩壊して谷底へ真っ逆さま。

 

 そこへマシュが少年を救わんと手を伸ばしている構図。

 

 正史では少年は助からなかった。マシュの手は届かなかったのだ。

 マシュはそれを悔いて、泣いて、病んで、戦って、死んでも更に悔いた。

 

 しかしながら、承太郎の目から見て、マシュに落ち度があるとは思えなかった。マシュは既に限界まで手を伸ばしていて、これ以上進めば彼女ごと転落していただろう。何なら、現段階で転落してもおかしくはないくらいだ。結局、マシュにできることは信じて待つだけだった。

 

 承太郎は……悩んでいた。

 

 もしこの次元に承太郎が介入すれば、少年を助けることはできる。ただし、その未来を確定させてしまうと、それこそ空条承太郎という人間を受け入れる世界はなくなってしまう。つまり承太郎は生還を諦めねば少年を……否、マシュを助けることはできないのだ。

 

 もとより、承太郎が助かる可能性はかなり低い。とはいえ側から見れば、自分を騙していた女を命にかえて助けることになるわけで、それは承太郎にとって面白くない話だ。

 

 ここにきて、承太郎は一つマシュのセリフを思い出した。

 

「あと、一歩足りなかった……か」

 

 実際はどうだろう。

 あと一歩ぶんの距離でこの手が届くのか、際どいところだ。

 

「あと一歩では、助からないと思う。おれは届かない方に賭けるぜ」

 

 承太郎は、少年の背中をぐいっと押し進めた。ちょうど一歩ぶんの距離だ。

 

「マシュ、あんたが言ったことだ。あと一歩だった……ッてな。だから一歩だけだ。それ以上は譲歩しないぜ」

 

 承太郎がこの時空を離れれば再び運命は動き出す。そのとき、マシュの手が今度こそ少年に届くのであれば、そこには運命を変えるほどの“何か”があるということなのだろう。

 

「じゃあな」

 

 

 そうして、承太郎はこの時空を後にした。

 

 

 振り返りもしなかった。

 

 

 忙しい。そう、彼は忙しいのだ。承太郎が宇宙の中心に居られる時間はもう殆どない。

 

 

 さあ、今度こそ脇目もふらず己が生きる道を探そう。

 

 

 しかし。

 ふと気が付いてしまった。

 

 なぜ承太郎はマシュの運命を見届けなかったのか。

 

 それは、マシュなら必ず運命を越えると、そう確信していたからなのだと。

 

 

「やれやれだぜ」

 

 

 

 


 

 

 

 

 冬木特異点、カルデアM.U.G.E.N.の座

 自然消滅

 

 END

 

 




次回更新未定。ようやく終わりです。

 まず、あんまりいない気もしますが(笑)ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。


 ふと二次創作が書きたくなりまして、どうせだったら二次創作でしかできないことをやろうと書き始めました。それで多数のクロスオーバーというわけでございます。

 ちなみに、タイトルの「M.U.G.E.N.」は格闘ゲームエンジン「M.U.G.E.N.」から来ていて、クロスオーバーで様々なキャラクターが勝手に戦う、ということで名前もここからパクリました。

 ベリアル(グラブル)出せなかったのは心残り……今だとプリテンダーかな?それともパティシエ? またクロスオーバー系書いてみようかな…



さようなら~またどこかで。
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