カルデアM.U.G.E.N.の座   作:シン・いしい

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第六節. ズッ友だょ

 アリサは軽やかに身を躍らせながらも、重苦しい表情で周囲を見渡した。

 

 残骸の上を疾駆り蠢くゾンビの合間を縫って到達したのは、瘴気を醸し出す妖しげな森。これまでの冬木の様子からして長閑な自然を期待していたわけではなかったが、大地の魔力と(ゆかり)あるエルフのアリサには、この森の異常さが一層深く理解できていた。

 

 森が苦しんでいる。

 汚濁したマナで大地を穢され、根の先から葉まで犯し蹂躙されている。死ぬことも許されず、実は腐り花は枯れながら生かされ続ける地獄の責め苦。

 アリサは思わず目を瞑り呻いた。

 

「今はティーダさんを探さないと」

 

 ひょいと高い木の上に登り、森を俯瞰する。マナの流れを認識するのはエルフの得意技術であり、流れの不和を追跡するのはハンターの必須技能だ。そのどちらでもあるアリサは、すぐに歪な魔力を察知した。

 教会の方だ。

 あそこに行けば何か分かるかもしれない。

 アリサはそう思い、再び穢れた森の中へ跳び込んだ。

 

「……!」

 

 足先が地に着くと同時、黒と緑の紋様が地面のあちらこちらに浮かび上がった。マナの流れからアリサにも分かる、禍々しいオーラを帯びた結界だ。

 

 そして木の傍らにいつの間にか……まるで雨上がりの虹のように自然に、男が座っていた。あるいは最初から居たのかも知れない。

 

「あなたは……テルミさんですね」

 

 マシュからキャスター・テルミの話は聞いていた。魔術特性、戦闘能力、容姿も。蛇のような瞳孔、原色に近い緑の髪、おおよそ聞いた通りだ。

 

「あらあら〜。オレ様もうそんな有名になっちゃったの?」

 テルミの飄々(ひょうひょう)とした態度にアリサは声を荒げた。

「ティーダさんはどこに居るんですか!」

 刺すような視線を向けられたテルミは「はて」と狐に摘まれたように不思議がる。座ったままの姿勢でキョトンとアリサを見上げて二、三秒硬直する。

「あ、あれ……? まさか」

 アリサは演技とは思えないテルミの表情を見て、ティーダ失踪の件はテルミとは無関係なのではと思いかけた。

「あの雑魚ガキに何か用?」

「っ……勿論、助けに来たんです!」

「お前アイツの何なの?」

「仲間で、友達です」

「……いつからいつまで?」

「この世界に来てから、ずっとです!」

 テルミはアリサの返答を聞くと、顔を隠すようにフードを深く被った。微かにわなないており、一見苦しんでいるように見間違いそうな振る舞いだ。

「く……」

「……?」

 (うずくま)るテルミをアリサが恐る恐る覗き込んだ瞬間、

「アッヒャッヒャヒャヒャッ!」

「……わっ!?」

 テルミは唐突に大声で腹を抱えて笑い始めた。甲高く奇怪に。

「ひぃーッ!

ケヒヒヒッ!

とっ、とっ、ともだッともだち〜ッ!?」

「急に、何なんですか」

 胡乱(うろん)な目つきを寄越すアリサなどどこ吹く風、テルミはさらに笑い転げる。涙目になりながら、地面をバンバン叩き、これでもかというくらいに破顔して。

「ともだち〜?

ずっとおっともだっ……ちぃぃぃ〜?

ひゃっひゃっひゃっ!

ずっともっ……あひひひひっ!

わ、笑い死ぬっ!

アッヒャッヒャヒャヒャッ!」

「いい加減にしてください!」

 テルミはぜえぜえと肩で息をしながら、辿々(たどたど)しく立ち上がった。

「悪い悪い。でもそっちもマナー違反なんじゃないの? 聖杯戦争が無情のバトルロワイヤルとはいえ、いきなり超ド級オトモダチ爆弾かますなんてよぉ」

「何ですかそれ……」

 テルミはフードに付いた土を軽く払う。

「なーんでわざわざ敵を助けようとするかねぇ」

「だから、仲間です!」

「仲間でも敵だろ?」

「……敵なんかじゃないです」

「はぁ〜、理解に苦しむね。けど、居場所くらいは教えてやるよ。セイバーのガキならそこの教会に居るぜぇ」

「え……」

 案外素直に教えてくれたことに驚くアリサ。マシュや承太郎が言うにはテルミは交渉や説得ができる相手ではないとのことだったし、アリサの第一印象も勿論同じだった。

「本当ですか? 罠とかじゃないですよね…?」

「それ訊く意味あるゥ? 俺様が正直者でも嘘つきでも答え一緒じゃん」

 テルミはこれ見よがしに、やれやれと溜息を吐きながらお手上げのポーズ。

「ま、でもオレ様は嘘が大嫌いでね。

誓って言うけど、これホント。

ティーダちゃんなら怪我してたからオレ様が保護してやったのよ、心配はいらないぜぇ」

「え、そうだったんですか……!?

ありがとうございます!」

 アリサは「急ぎますので」と言いつつテルミの脇を通り抜けていく。教会の方向へだ。

 

 ふと、枯葉がざわめくのを感じた。ほんの一瞬だけ風の向きが変わったようなーー

 

 アリサは咄嗟に身を屈めた。

「……ッ!?」

 はらりと彼女の金髪が裂かれ、宙を舞う。そこに見たのはテルミ、それと彼が腕に宿す黒緑のオーラ。背を向けたアリサに対し、テルミは不意打ちの攻撃を行ったのだ。

 巻き込まれたアリサのマントが強酸に一晩浸けられたように枯れ落ちる。もしもあの腕に掴まれていたなら、アリサもそうなっていたであろう。

 

「オレ様、嘘は嫌いだけどよォ。

騙すのは好きなんで♪」

 


 

「ふっ」

 短く息を吐き、アリサは屈んだそのままの姿勢から身を翻してムーンサルトの蹴りを放つ。テルミは半身を傾けて最小限の動きでそれを躱した。

「!」

 さすがのテルミも目の前数センチのところまで矢が迫っていたことには驚きを隠せなかった。

「おっとォ! 危ねえじゃんッ」

 テルミの体表付近に魔力の影が現れ、飛来する矢を絡めとる。

 アリサは接近での宙返り蹴りで攻撃しつつ距離を取り、その動作の中に弓を引く動きを隠していたのである。アリサの洗練された動きを長いマントの陰越しに察知するのは不可能だ。

「よかったよかった。暇潰しくれぇにはなりそうだぜ」

 テルミは不敵に笑い、腕に再び魔力を集中させて直進しアリサに再び掴みかかる。テルミの機動力はティーダやマルコと較べるべくもないが、纏うオーラのぶん射程は長い。

 アリサはバックステップで大きく後方に飛び避けつつ、矢をつがえた。

「見誤ってんだよォ、雑魚が!」

 テルミが叫ぶと同時に腕に渦巻くオーラが爆ぜ、うねる蛇となりアリサを襲う。

 テルミの攻撃タイミングは寸分狂いなくピタリだ。空飛ぶ能力でもなければ、宙に居るアリサに避けるすべはない。しかしアリサは太い木の枝に脚を引っ掛けて空中で軌道をずらし攻撃を逃れる。ベストかと思われた攻撃はアリサの脇下を掠めるだけに終わった。

 テルミが「おおっ」と感嘆の声を上げる。

 追い討ちに蛇をさらに三体召喚して突攻させるも、周囲の木を蹴り飛び跳ね変幻自在のアクロバットを見せるアリサを捉えることはできない。平地であればこうはいかないだろうが、森はアリサのフィールドだ。

「へぇ〜っ。なかなか上手いじゃん。

猿の真似♪」

 悠然と構えるテルミだが、一方でアリサの能力を評価もしていた。

 視界からアリサ消えるその一瞬が訪れるたびに放たれる矢その狙いは正確無比であるが、攻撃の方向、リズム、速度までもが不定的で読みづらい。

 隙を突くことに徹底したスタイル、攻防両面で立体空間を利用する戦術はアーチャーというよりもアサシンのようだ。

「でもパンツ見えちゃってるぜぇ」

「じゃあ、目を瞑っててください」

「ハッ」

 

 一分にも満たない差し合いだったが、互いにこう思っていた。何かおかしい、と。

 

 それは戦闘中に思考を割くほどでもない小さな違和感。

 それはすなわちあまりにも順当に戦闘が展開されている、ということに対する微かな心の引っ掛かり。しかし互いにそれが何なのか、まだ分からなかった。

 テルミの知性が語っていた。早めに決着を付けるべきだ、と。

 アリサの勘が囁いていた。時間を稼ぐべきだ、と。

 

 テルミは胸を地面に擦るかと思うくらいに腰を落とし、蛇のように地を這ってアリサの移動先に詰め寄る。執念深く自動追尾する三匹の蛇とテルミに四面を挟まれて袋のネズミとなったアリサに、魔力を宿した腕を振るう。速度はアリサに見切れないほどではない。しかし――

「――!」

 テルミが薙いだ半径数メートルの木々が粉々に爆砕し、瞬時に黒い灰となって空に溶けた。それは途轍もなく凝縮された魔力の波。先ほどまでの攻撃よりもさらに出力も高く攻撃範囲も広い。

 間一髪、射程外に逃れていたアリサはそのまま反撃の矢を放つ。が、砕かれた木々から変質した黒い灰は魔力の蛇と化し、矢を噛み砕いた。

 ひえっ、と肝を潰すアリサに、黒蛇が地を滑り襲いかかる。対して咄嗟に腰から短刀を抜き払って蛇を裂くが、アリサの攻撃に合わせるように蛇の頭が爆発した。

「きゃああっ!」

 轟音とともにアリサは吹っ飛び、木に激突して地に伏した。すぐさま立ち上がるが、重心が定まらず木に体を預ける。腕や腹からは血が流れ、痛みに息が浅い。ダメージがあったのは明白だ。

 

「あんたさぁ、何か企んでる? それとも、やっぱタダの雑魚?」

 テルミがゆっくりとアリサに歩み寄る。まるで故意に隙を与えるような鈍い動きだ。

「さすがにもーちょっと何かあるよなぁ?」

 アリサは肩で息しながら何とか矢をつがえて放つが、狙いもタイミングも雑な射撃がテルミに当たる筈もなく、ひらりと涼しい顔でかわされる。

「……お?」

 再びテルミがアリサに向き直った時には、アリサの姿はなかった。

「ったく、また鬼ごっこかよォ」

 開幕でテルミが張った結界は内部にいる敵の位置を察知できるものだったが、アリサの隠密能力も高く、正確な位置は分からないようだった。

「マジでアサシンみてぇなヤツ」

 テルミはそうボヤいて歩き始めた。結界のお陰で大凡の方向は分かる。さらに結界の感度を強めれば位置も分かるかもしれない。

 ――が、そうするまでもなく突如テルミの結界が大きな魔力反応を検知した。否、もはや魔力を検知することすらも必要なく。

「……へぇ、こりゃあ……」

 三時の方角、距離にして約五十メートル。エメラルドに美しく輝くエネルギーの奔流は渦となり、森全体を包み込ように広がる。蛍を彷彿とさせる柔らかな光の泡が湧き立ち、荒れ狂う風の中を、しかしてフワフワと漂いながらも吸い寄せられるように渦に集まっていく。

「おっとと」

 テルミは巻き起こる旋風に足をもつれさせながらも渦の中心を見やる。まるで童話のワンシーンのように神秘的な情景、その台風の目に立ち輝く深緑の弓を引くエルフの少女を。

「大地に息吹く生命よ、雨粒に宿る元素よ。

 そして輪廻の狭間に揺蕩う(たましい)よ――応えて。

 我は守護者、罪人、大いなる環に繋がれた贄。その名のもとに再生の刻を宣言する!

 流転なりし鼓動を継ぐものたち、信ずるならその火を空に還せ!」

 風が止み、音が消える。まるで時間の概念を失ったかのように。今というこの時、この場の全てがそこに集約されているようでもあった。

 綿密な術式に編まれた膨大なエネルギーを目前に、しかしテルミは一切の恐れもなく含み笑いする。

「異世界の魔術、期待してるぜぇ」

 テルミが腕を掲げると、足元に幾重もの蛇紋が現れる。それらは泡立ち沸騰し始め、やがて石油のようにドロドロの液体となって波打つ。捕まるすべての光を飲み込み暗い影を伸ばす様は、まるで空間を捕食しているようだ。

 おぞましきうねりはさらに鳴動し、彼の脚をずるずると這い上がって体全体を包みこむ。

「さぁ、せいぜい足掻いてみせろ」

「森よ、お願い。力を貸して……!

 根源への回帰(アトモス・ディニミトラ)!」

 そして極限まで収斂した魔力の点が線となって放たれる。音を置き去り穿つ光で奔る、桁外れの熱量。それはそよ風のように木々をすり抜け、テルミという敵ただ一つを貫かんと輝く。

 万物をアトモスへと還す矢がテルミへ到達するその刹那……纏う黒い靄が蛇のように大きく口を開いた。

「アークエネミー・ウロボロス……喰らい尽くせ!」

 呼応するように靄が光を掴むと、地を揺らし轟雷を響かせ大気を裂きながら光と影が衝突し、のたうつ。

「そおら、ぶっ潰れろォッ!」

 陰陽二つの力は混じり合い対消滅する。

 アリサの放った渾身の奥義は敢えなく大蛇に喰らい尽くされたのだ。

 エメラルドの光は虚しく冷たい風となり潰えていく。

 

「中々いい魔術じゃん? 特に夏場は涼めそうだよな、ん?」

 魔力を使い果たしてうつ伏せに倒れているアリサのもとに、事もなさげにテルミが現れる。あれだけの魔力を使ったというのに、一向に疲労や摩耗が見受けられない。

「そん……な…」

 テルミに全くダメージがないのを認識すると、アリサは悲痛な表情で歯噛みする。

「あっ、お疲れのようなので寝ていても結構ですよ?」

 息も絶え絶え、立ちあがろうとするアリサの頭を踏みつけ倒した。苦悶の声を上げるアリサを見て、テルミは上機嫌に鼻歌をうたう。

「そーいや、一つ気になってたんだけどよ。

さっきの魔術……あれにオレ様を殺す力はないな?」

「……え」

 そう。確かに、エルフの秘術"根源への回帰"には殺傷能力というものはなかった。局所に集まったマナの流れを発散させ最小要素(アトモス)に還す、それを真髄とする奥義だったのだ。

「魔力の素をさらい無色化し、反魔力粒子の拡散によりリソースを根源事象に戻す……って感じかな?」

 アリサは「はっ」と息を呑んだ。

「どうして……」

 それが分かったのか。アリサは今更になってテルミの恐ろしさに戦慄していた。秘術自体に仕組みを隠す工夫があるわけではないが、エルフの大地信仰の長い長い歴史の中で培われ研鑽された神秘であるその術式は、蜘蛛の糸を編んで作られた羽織の如く精緻でか細いバランスで成り立っているのである。

 その本質を一度相対しただけで理解するーーアリサにとってはそんなこと考えたくもない事実。

「んで、気になるのは、よオ」

 言いながら、アリサの顔を踏みつけていた脚を大きく振り、思い切りアリサの腹を蹴り上げる。

「あぐっ……!」

 軽い躰が宙を舞い、力なく地面に転がる。

「てめぇオレ様を舐めてんのか?」

 咳き込み口から血を垂らすアリサに、テルミはさらに追い討ちをかける。魔力蛇の突進をかわせるはずもなく、やすやすと体を絡め取られる。アリサの腰よりも太い蛇に体をひょいと持ち上げられ、木ごと巻きついて拘束される。アリサが全快の状態でも逃れ得ない強度だ。

「なぁんでよォぉ、マジに殺しにこないかねぇ? あんな阿保な芸ができるくらいなら、全部壊しにきたら少しはマシだろうによ」

「……そんなこと……あなただって」

「あぁ?」

 アリサの意外な一言にテルミは眉を吊り上げた。

「あなただって、殺すつもりなんてないくせに……」

「……」

 戦闘開始直後からアリサが感じていた違和感の正体――テルミは殺意をもってアリサを攻撃してはいなかったということ。明確で容赦ない敵意であっても、殺意とは根本的に異なるものだ。尤も、アリサもそれに気が付いたのはついさっきだが。

「本気で私を殺す気なら、すぐに終わっていたはずです」

「ま、そりゃあな。くっそ弱ぇ猿縊るくらい手こずるわきゃあねぇよ」

「だったら、もうやめてください……本当はあなたも……」

 テルミは憮然として溜息を吐く。パチンと指を鳴らすと、アリサを拘束する蛇が一層強く縛りつける。アリサの言葉は終える前に悲鳴に変わった。

「さすがに阿保過ぎてそろそろ笑えねぇ」

 魔力も底をつき体中傷だらけのところに緊縛の責苦。アリサは気が遠のくのを自覚しながら、それでもテルミを見据えた。

「でも、まだ私も殺してない……ティーダさんも、殺してないんですよね……?」

 アリサの予想は当たっていた。テルミは、その狙いは兎も角として事実、ティーダを殺してはいなかった。

 何者であれ見下している彼が、アリサにそれを見透かされたのはどうやら癪に障ったようだ。テルミは外面笑っているようにも見えたが、その目は怒りに満ちている。

「いちいち苛つく猿だ。

いいぜ、教えてやるよ。確かにあのガキもてめぇも殺してちゃいねぇ。

だがそれは英雄ってモンの正体を調べるために生かしておいてるだけなんだよォ!

分かる? 最終的にはみーんな殺すってことだ!」

「……間違ってます……誰かに、勝手に敵同士にされちゃうなんて、悲しいじゃないですか。

みんなで手を取り合って、元の世界に戻る別の方法を探しましょう。そうすれば……」

「カンケーねーの!

聖杯戦争なんて知ったこっちゃあねーんだよ、ボケッ! その聖杯の力以外の方法ってのがあったとしてもそれを使うのはオレ様一人だ!」

「……」

「やっと分かってくれた? ったく、しょーもねぇこと叫ばせやがって。あー、マジ疲れる。さっきの矢ァ潰すよりよっぽど疲れるわ、コレ。もしかしてお前の真奥義?」

「……だったら」

「……?」

「だったら私は最終的にあなたを殺しません」

「…………

…………は?」

「あなたは最終的に私を殺すと言いました。私はそれを間違ってるって言ったんですから。

だから、私はあなたを殺しません」

「え? え? え?

何何何何何何何何ナニナニナニナニ??

え? いやいや、聞き間違いだよなさすがにね?

悪いけどもう一回言ってくんない? 猿語はもちろんナシで」

「……言いますよ、何度でも。

……私はあなたを殺しません」

「どう考えても……殺せない、の間違いだよなぁ?」

「殺せないのは、正しいです。でもできるかどうかに関係なく殺しません」

 数秒の沈黙が流れる。ティーダを救出しに来たと宣言したアリサを笑った時のように、俯いて表情は見えない。

「テメェは本当によ……」

 みしり、と重い音が何処からともなく響く。とともに何もないはずの空間に小さな亀裂がいくつも走り、黒緑のタールが染み出してくる。

「イラつかせるのがクソ上手ぇ猿だッ!」

 テルミの怒声に呼応するように、暗く濁ったオーラがそこら中に間欠泉の如く噴き出す。見た目こそ似通ってはいるが、魔力の濃度は段違いだ。溢れるオーラに触れただけで木や草は瞬く間に溶け落ち吸収されていく。

「予定変更だ……!

テメェは今ここでぶっ殺す!」

 木に縛り付けられるアリサにテルミが一歩ずつ寄るたび、まるで巨象が暴れているかと思い違うほど大きく地が揺れる。同時に、周囲を満たす魔力がテルミに引き寄せられて集まってくる。

 アリサはテルミを見据えることしかできない。ダメージと消耗から考えると、拘束されていなくても反撃など望むべくもない。曰く絶体絶命という状況だ。

 テルミの魔の手がアリサの目の前までゆっくりと迫る。彼女に死の恐怖をしっかり味わわせるように。

 彼女の体が灰に変わるまであと十数センチ、または二、三秒のところで――

「消え失せろ。跡形も……」

 ――不意に、息が詰まったようにテルミの言葉が途切れる。言葉だけではない。アリサを捕食しようとしていた彼のオーラもその腕も、ピタリと動くのをやめていた。

「……なに……!?」

 テルミの顔に驚愕の表情が張り付く。

「こ、れは」

 そのまま、先程まで何のダメージもなかったテルミが膝を地につけ胸を押さえる。

 いつの間にか、周囲の凶悪なオーラも消え失せていた。アリサを拘束していた魔力の蛇も、風に乗って消失していく。

「魔力の反発……か」

「……はい。周囲から魔力を摂取するあなたの能力を利用させてもらいました」

 テルミもまた、ずっと感じていた違和感の正体を理解した。アリサはただ闇雲に逃げていたわけではない。森のマナの流れを観察しテルミの能力を看破、さらに矢に込めて散布した浄化の魔力をテルミに吸収させるために移動先を誘導していたのだ。まるで、風上から毒を流すように、澱みへと追いやって。

 秘術"根源への回帰"を相殺したテルミの魔力比率が大きく傾き、浄化の魔力の反発作用が現れたのだ。

「ただの発作ですから、安静にしていれば動けるようになります」

「……! てめぇ、この後に……及んで……」

 宣言通りテルミにとどめを刺すことはせず、アリサは背を向けて疲労困憊の体を引きずり教会へ向かう。

「待ち、やがれッ! クソッ!」

 一層恨言を連ねるテルミを尻目に。

 

 

 




~以降ステマ~

アリサは絶賛配信中(2023年5月現在)の大人気エロメンコDCG、シャドウバースの八人の主人公キャラクターのうちの一人です。

シャドウバースは何といってもコンテンツが豊富で、対人対戦はもちろんソロモードもパズル、ストーリーと楽しめるところが多いです。イラストも豪華で、ボイスの種類もいちいち多い!しかも無課金でも最強デッキを組むこともできる親切設計なのです。

なお、アリサのクラスは「エルフ」。
カードの連続プレイによって大きな力を発揮するクラスです。


シャドバ関連で一番好きなBGMは「アリサのテーマ」です。ケルトっぽい雰囲気がたまらない…いつも聞いているけど全然飽きない名曲。
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