「実験開始」
無機質な機械の声が響く。
私の眼の前には脳みそが丸見えの化物が5体。私の周りに味方は無し。だが、3分もかからずに、化物達は無惨な肉塊へと成り果てた。
コレはこの施設の主の最高傑作である私の機能実験。朧げながらも確かにある自意識が覚えている。
最初の記憶は肥満の進んだ初老の男が培養液の中の私を見て絶叫乱舞していた。
次の記憶は、培養液から出され、脳みその丸見えの怪人を一人殺した。老人のスピーカーから聞こえる興奮したような声が耳に残っている。それからはひたすらに怪人を殺し続けた。
自分の力を自覚するにつれて、この自意識というものが大きくなっていって、老人の声からここが実験施設で私は老人の最高傑作だということが分かった。
◆◇◆◇◆
私の自意識が芽生え始めてから、恐らく1年経った。今ではこの実験施設の風景に飽き飽きする程度の感情は手に入れた。起きては怪人を殺し、起きては怪物を殺しの繰り返し。自分の能力(【個性】というらしい)はある程度把握出来たし、褒められるのは悪くない。別にこの生活が何の良さもないものだという訳ではない。ただ、漠然と、私の居場所はここじゃないと、私の奥の声が叫ぶのだ。
◆◇◆◇◆
また目が覚める。実験の時間だ。培養液から出され、実験場へ転移させられる。今日の相手は……一体だけ?最近は私の実力に合わせ、少なくとも5体以上は相手に用意されていたのだが。特別製の黒とはいえ、私に対して1体だけというのは、どういう意図なのだろう?
「実験開始」
とりあえずすぐに終わらせて―――
『ヒュッ』
次の瞬間、相手はそこそこあった私との距離を、一瞬で消した。
「フフフ。その脳無はオールマイト用に作ったものと同じ性能の脳無をお主用に改変したもの。いつもと同じとはいかんぞ?154番ちゃん♡」
老人の気持ちの悪い声が響く。
私は咄嗟に拳を握り、繰り出された脳無の一撃を迎え撃つ。
「ガアアア!!」
「フッ!」
『バキバキ』
今までどんなに衝撃を加えられても傷一つつかなかった地面にヒビが入る。
拳と拳は互いに拮抗していたが、怪物は隙だらけの私にもう一つの拳を放つ。
迎撃で手一杯だった私はその一撃をまともに食らってしまった。
『ズドン』
凄まじい勢いで壁まで飛ばされ、叩きつけられる。
「ガハッ!」
口の中に鉄の味が広がる。実験で血を流したのは、コレが初めてだった。
口を拭い、追撃を仕掛けようと向かって来る脳無を迎撃すべく、私は個性の一つを開放する。
「来い。我が聖剣。」
現れるのは黒い剣。そして私は黒い鎧に包まれる。この1年で2度しか使わなかった、私の切り札。
「ガアアア!!」
「黙れ。」
喚く脳無の右腕を切り落とす。すぐさま元に戻ろうとする右腕。左腕を切り落とす。また生えようとしている。足、すぐに生えようとしてくる。
切り落とす切り落とす切り落とす切り落とす切り落とす切り落とす切り落とす切り落とす切り落とす切り落とす……。
◆◇◆◇◆
何度も何度も四肢を、首を、胴体を切り落とされ、それでも少女に向かっていく脳無。改造されたその脳に、撤退の文字は主が命令しない限り存在しない。
「面倒な…。」
無機質な瞳で己の手で斬り刻まれる脳無を見る少女。余裕を崩さず、簡単な作業とでもいうように、脳無を斬り刻む。
ソレをモニターで見ていた彼女らの創造主はモニターに向けて告げる。
「すまんのぅ154番ちゃん。儂が今回見たいのは、お主の追い詰められた先の120%の力なんじゃ。」
そして、机の上に備えられた赤いボタンを押した。
◆◇◆◇◆
実験はまだ終わらない。こんなにも手間取るのは初めてだった。今までの脳無も再生能力が備わっているものはいたが、すぐに体力切れをおこして動かなくなっていた。だが、この脳無は再生能力は今までと比べ物にならない程高いし、体力切れを起こす気配もない。このままだといったいどれだけの時間がかかる事か。かと言ってこれ以外にできることも無い。このまま続けるしか――
『ドン』
横から急に衝撃が走り、私の体が宙を舞う。
「ぐっ…いったい何が…!」
見ると、何かの発射台のような物が壁から銃口を覗かせていた。
「ガアアア!!」
私が宙を舞っている隙に、再生を完了させた脳無が向かって来る。何とか着地し、迎撃の構えをとる。
『ドン』
後ろから先程と同じ衝撃。身体が脳無の方へ無防備に突っ込んでいく。
「ガアアア!!」
脳無の渾身の一撃。受け身も取れずに身体が地面に叩きつけられ、地面にヒビが入る。
「ガハッ!!」
肺から空気が消える。意識が消えかかる。
「ガアアア!!」
脳無の容赦の無い追撃。身動きすら取れない私を、脳無の連打が襲う。
先程とは真逆。無慈悲な拳が私を捉え続ける。違う所は、私に再生能力などないという事。もはや私に、為すすべなどなかった。
殴られる、ただひたすらに。
『ドクン』
殴られる、殴られる、殴られる……
『ドクン ドクン』
殴られる殴られる殴られる殴られる殴られる……
『ドクン ドクン ドクン……』
そして―――
『カチッ』
私の中の、何かが変わった。
◆◇◆◇◆
老人は食い入るようにモニターを見ていた。
先程まで為す術なくボコボコにされていた少女。その傷がみるみる治っていく。
「おお!!154番ちゃんに再生能力が!!儂の与えていない個性が!!それに、このエネルギーの上昇!!間違いない、個性の変質!!やった!!やったぞー!!儂の最高傑作が、遂に完成した!!!」
涙を流し、発狂している老人。モニターの先では、黒く輝く聖剣を手に、怪人にトドメを刺そうとする少女の姿があった。
◆◇◆◇◆
ああ。凄く、気分が良い。先程まで殴られていた場所も、今では傷一つない。力が溢れてくる。この力の使い方も感覚で分かる。眼の前の脳無が虫けら程度にしか感じない。
叫びを上げて私を殴り続ける脳無を【魔力放出】によって威力を増した拳で撃ち抜く。脳無は一瞬で遥か天井にぶつかる。あらゆる衝撃に耐える筈の天井にクレーターが出来る。
「ガアアア!!」
天井の穴にハマり、動けなくなくなる脳無。
「聖剣、開放…!」
私は黒く輝く聖剣を天に向けて構える。
「【エクス」
湧き上がる【魔力】全てを込め、放つ。
「カリバー】!!!」
―――その黒い光は、脳無諸共全てを呑み込み、空すら斬り裂いた。
――オルタちゃんの性能紹介――
【身体能力】
ドクター作なので、原作より素の身体能力が高い。後、聖剣の個性を自覚するまで素手で戦ってたし、自覚してからも殆ど素手だったので、素手の戦闘能力が高い。魔力放出ジェットも合わせれば、全盛期オールマイト並みのパンチを繰り出せる。
【魔力放出】
主にジェットに使う。
【直感】
原作通りの性能。
【風王結界《インヴィジブル・エア》】
もちろん使えるよ。
【全て遠き理想郷《アヴァロン》】
再生能力はコレ。コレ持ったアルトリアとかチートじゃん。
【約束された勝利の剣《エクスカリバー》】
言わなくても分かるよね?